熊本県山鹿市で保健師として働く川上さんのインタビュー記事です。
出身は千葉県という川上さん、大学病院や老人ホームでの看護師経験を経て、結婚・出産を機に熊本県山鹿市へ移住したとのことです。
現在は山鹿市役所の健康増進課で保健師として活躍する中で、看護師経験を活かしながら地域住民に寄り添う保健師の仕事の魅力や、子育てと両立しやすい山鹿市の働きやすさについて伺いました。
ーまずは自己紹介とこれまでの経歴を教えていただけますか?
川上: 千葉県出身で、大学では看護学科に進学し、看護師と保健師の資格を取得しました。新卒で大学の系列病院に就職し、総合外科で6年間看護師として勤務していました。その後、神奈川内の有料老人ホームで看護師として勤務していました。
結婚・出産を経て、令和6年度に山鹿市役所に入庁し、現在は健康増進課で保健師として働いています。
ー大学進学時、医療の道を目指そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
川上: 小学校の中学年の時に入院した経験があるんです。その時に関わってくださった看護師さんがとても優しくて、「私も将来こういう仕事がしたいな」とその時から漠然と思っていました。それが看護師を目指した最初のきっかけですね。
ー看護師になられてから、保健師にキャリアチェンジしようと思ったきっかけも教えていただけますか?
川上:大学を卒業してからは、まず大学病院の総合外科で6年間働き、その後、有料老人ホームでも1年間看護師として勤務したのですが、そこで保健師への関心が強くなりました。
老人ホームでは、一つの病気がきっかけでADL(日常生活動作)が大きく低下してしまう利用者さんを多く見てきました。その経験から、病気になる前の「予防医療」や、地域での健康づくりに関わりたいという気持ちが芽生えたんです。
結婚を機に夫の実家がある山鹿市に移住し、ここで出産・子育てを経験したのですが、地元ではない土地での子育ては、正直、心細い時もありました。そんな時、市の保健師さんと関わる機会が多く、相談に乗ってもらったり、支援してもらったりする中で、保健師さんがすごく心強い存在だと感じたんです。それまでは漠然としていた保健師という職業への興味が、この経験を通して「私も地域で子育てをするお母さんや住民の方々の力になりたい」という明確な目標に変わりました。
ー転職活動はどのように進められましたか?ブランクや子育てもあり、不安もありましたか?
川上: 正直、不安はありましたね。特に一般教養の試験が心配でした。専門知識については、看護師としての実務経験がありましたし、なんとかなるかなと思っていたのですが、一般教養は学業から離れていたこともあり、勉強し直しでしたね(笑)
参考書を買って、子どもたちが寝た後の夜の時間を使って勉強しました。うちは子どもを8時には寝かせるようにしているので、その後が私の勉強時間でしたね。準備期間としては、試験前の2ヶ月くらい集中して取り組んでいたかと思います。
また、集団討議も経験したことがなかったので、どういう風に振る舞えばいいのか分からず、夜な夜なYouTubeを見て勉強していました。
ー実際の試験の雰囲気はいかがでしたか?
川上: 面接に関しては、皆さんとても雰囲気の良い方々で、圧迫感のようなものは全く感じませんでした。もちろん、とても和やかというわけではありませんでしたが、どちらかと言えば話しやすい雰囲気で、自分らしく話すことができたかなと思います。
対策が功を奏したようで、集団討議も何とかうまくいったのではないかと感じています。
ー現在のお仕事内容について教えてください。
川上: 健康増進課で保健師として働いています。山鹿市は地区担当制なので、自分の担当地区を持って、母子保健事業と成人保健事業の両方に関わっています。
具体的には、赤ちゃん訪問や妊婦訪問、乳幼児健診の対応などですね。あとは、妊婦さんの健康診査費用の償還払いなど、少し事務的な、「お役所」というような仕事も担当しています。

ー保健師さんというと、訪問業務が多いイメージですが、実際の1日の業務割合としてはどのくらいですか?
川上: そうですね、確かに外に出て訪問している時間が多いかもしれないですね。デスクワークと訪問の割合で言うと、半々より少し訪問が多いかな、という感じです。担当地区の住民さんのお宅に車で伺うようなことが多いです。
ー行政保健師として、仕事のやりがいや魅力を感じるのはどんな時ですか?
川上: やっぱり訪問業務ですね。直接住民さんのご自宅に伺って、その方の生活を深く知ることができる点に魅力を感じます。特に関心があるのは成人の訪問です。私はこれまで成人領域の看護経験が長かったので、そちらの方が得意分野でもあります。
山鹿市で働いてみて特に面白いなと感じるのは、一次産業に従事されている方が対象になることが多いことです。山鹿市に来るまでは、そういった方々と関わる機会はほとんどありませんでした。
農家の方など、作っている作物によって1日のスケジュールが全く違ったり、生活スタイルも様々だったりします。そういった、これまで自分が経験してきた生活とは違う暮らしぶりを知り、その方々の生活に寄り添いながら「健康のために一緒に何ができるか」を考えていく過程がとても楽しいですし、やりがいを感じています。信頼関係が築けて「ありがとう」と言っていただけた時は本当に嬉しいですね。

ー看護師と保健師、両方を経験されてみて、違いを感じる点はありますか?
川上: 一番大きな違いは、関わる視点だと思います。看護師は、病院に来られる「治療」が必要な方が対象だったので、どうしても医療従事者主導でケアを進めていく側面がありました。もちろん患者さんの意思は尊重しますが、治療方針に沿って進めることが基本です。
一方、保健師は地域で生活している住民さん全体が対象です。病気の方だけでなく、健康な方、健康に不安のある方、子育て中の方、高齢の方など、本当に多様な方々と関わります。その方々の生活全体を見て、その人らしい健康的な生活を送るために何が必要か、ご本人と一緒に考えていくんです。
医療的な知識だけでなく、もっと幅広い知識やコミュニケーション能力、そして何より住民さん主体の姿勢が求められると感じます。保健師はすごくオールラウンダーな仕事だと思いますね。

ー看護師としての経験は、現在の保健師の仕事に活かされていると感じますか?
川上: はい、それはすごく感じます。特に医学的な知識ですね。病気のことや体の仕組み、治療に関する知識は、住民さんの健康相談に乗る際に非常に役立っています。臨床経験があることで、住民さんの話をより深く理解できたり、医療機関との連携がスムーズにいったりする場面も多いです。
ー山鹿市の職場環境や働きやすさについてはいかがですか?子育てとの両立もしやすい環境でしょうか?
川上: すごく良い環境だと思います!まず、子育て経験のある方が職場にとても多いので、子どもの急な発熱などで休まなければならない時も、本当に心良く「大丈夫だよ」と言って休ませてもらえます。
もちろん、その分、他の誰かが休んだ時には私が積極的に業務を引き受けたりして、お互いに助け合うという意識が根付いていますね。チームワークが良い職場だと思います。
研修制度も充実しています。自治体全体の新人研修とは別に、保健師向けの研修もあって、そこで地区診断の方法など、保健師として必要な基本的な知識をしっかり学ぶことができました。業務時間内に勉強会が開かれることも多いので、働きながらスキルアップできる環境です。
看護師時代は、なかなか自分の好きなタイミングで休みを取ることが難しかったのですが、今はカレンダー通りに休めますし、残業もほとんどありません。自分のスケジュールさえ調整すれば、子どもの行事などにも合わせて休みを取りやすいので、ワークライフバランスは格段に取りやすくなりました。
ー移住者として、生活する上での山鹿市の魅力はどんなところに感じますか?
川上: まず歴史や文化を大切にしているところがとても大好きです。山鹿灯籠まつりもそうですし、昔ながらの街並みもきれいで風情があると思っています。こちらに来てから、その歴史の深さに驚きましたし、そういう伝統を地域全体で大切に守っているところが魅力的ですね。
あとは、人が温かいですね!子育てしていると、周りの方が本当に優しく声をかけてくださいます。都会だと、子どもが騒いだりすると少し気まずい思いをすることもありましたが、山鹿ではそんな経験は今のところありません。子どもを大切にしてくれる地域だなと感じます。

ー最後に、保健師を目指す方や山鹿市で働きたいと考えている方へメッセージをお願いします。
川上: 私自身、看護師経験しかなく、保健師として働くことに最初は不安もありました。でも、山鹿市役所は先輩方が本当に温かくサポートしてくださいますし、子育てへの理解も深く、研修制度など学び続けられる環境も整っています。
保健師の仕事は、住民さんの生活に深く関わり、その方の人生に寄り添いながら健康を支援していく、とてもやりがいのある仕事です。特に山鹿市は、地域の方々との距離が近く、温かい人間関係の中で働くことができます。
もし、地域に根差した働き方に興味がある方、人と関わることが好きな方、そしてワークライフバランスを大切にしたいと考えている方がいらっしゃれば、山鹿市はとてもおすすめの場所です。ぜひチャレンジしてみてください!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年3月取材)