長崎県平戸市役所で電気技師として働く岩崎さんのインタビュー記事です。
市営住宅や学校、消防署といった市有施設の電気設備を一手に担う電気技師。その仕事は、市民の安全で快適な暮らしに欠かせない重要な役割を担っています。
十数年ぶりの採用枠で平戸市役所に入庁したという岩崎さんに、電気技師の具体的な仕事内容から、地元で働くからこそ感じられるやりがい、そして未来の仲間へのメッセージまで、詳しくお話を伺いました。
- 「手に職を」その想いから始まった、公務員への道
- まちのあらゆる施設の「灯り」を支える、電気技師の仕事
- 「ありがとう」の一言が、仕事の原動力になる
- チームで支え合う。平戸市役所のリアルな働き方
- 自分の仕事が、ふるさとの景色になる喜び
「手に職を」その想いから始まった、公務員への道
ーまずは自己紹介と、公務員の電気技師を目指したきっかけを教えてください。
岩崎:生まれも育ちも平戸市です。高校卒業後、しばらくは特に目標もなく過ごしていたのですが、「何か手に職をつけないと」という思いから、電気関係の専門学校に進学しました。そこで電気工事士や電気主任技術者の資格を取得しました。
卒業後の進路を考えた時、もちろん民間の会社という選択肢もあったのですが、私たちの頃は就職が厳しい時代でして。そんな折、たまたま平戸市が十数年ぶりに電気職の採用を行うことを知ったんです。
地元ということもあり、「これも何かの縁かもしれない」と思って受験したのがきっかけです。なので、正直に言うと「絶対に公務員になりたかった」という強い思いがあったわけではないんです(笑)。

まちのあらゆる施設の「灯り」を支える、電気技師の仕事
ー入庁してから現在まで、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか?
岩崎:最初の配属は、現在も所属している都市計画課でした。その後、水道局へ異動し、3年ほど勤務した後に再び都市計画課に戻ってきました。
水道局では、浄水場の施設管理や、街中に張り巡らされている水道本管の漏水修繕など、より現場に近い仕事を担当していました。水道管の修繕などは全くの初心者だったので、日々が勉強でしたね。
基本的には、どちらか一方の部署の電気技師として採用され、その分野の専門職として勤務し続けるケースが多いので、当時、水道局に異動したことは貴重な経験になったと思います。
ー現在の都市計画課での具体的な仕事内容や体制について教えてください。
岩崎:都市計画課では、市役所の庁舎をはじめ、市営住宅、学校、消防署、病院といった、平戸市が所有するあらゆる施設の管理・整備を行っています。
その中でも私は電気技師として、施設の電気設備に加え、水回り・空調などの機械設備に関する部分も兼務しています。現在の体制は、私と同じ電気職がもう1人、そして建物の専門家である建築職が4人、合計6人のチームで動いています。

ー専門的なお仕事ですが、改修工事はどのような流れで進めるのですか?
岩崎:例えば学校の改修工事であれば、まず担当課である教育委員会から「〇〇学校のこの部分を改修したい」という依頼が来ます。それを受けて、私たちは現地に赴き、現場調査を行うことから始めます。
調査が終わると事務所に戻り、今度は図面の作成です。そして、その図面を基に工事にかかる費用を見積もる「積算」を行い、入札の準備を進めます。
入札によって工事業者が決まったら、業者の方と詳細な打ち合わせを重ねながら工事を進めていき、最終的に完成した施設を検査して問題がなければ完了、という流れになります。
この一連のフローを、年間で100件から150件ほど担当しています。

「ありがとう」の一言が、仕事の原動力になる
ー電気技師として、仕事のやりがいや面白みを感じるのはどんな時ですか?
岩崎:電気設備の仕事は、工事が完成した時点では、まだ本当の意味で完了したとは言えないんです。実際に施設が使われ、電気が灯り、設備が問題なく動いて初めて、その価値が生まれます。
なので、工事後に利用者の方から「問題なく使えているよ」「おかげで快適になったよ」といった声を聞けた時に、心から「やって良かったな」と思いますね。もちろん、その逆で「ちょっと問題が発生しました」という連絡が来ることもありますが(笑)。
最近特に嬉しかったのは、市内の照明をLED化する事業に携わった時のことです。野球場のナイター照明などをLEDに交換したのですが、地元の方から「すごく明るくなった!」と言っていただけたときは、自分の仕事が直接まちの役に立っていると実感でき、大きな喜びを感じました。

ーこれまでで最も印象に残っている、大変だったお仕事はありますか?
岩崎:水道局から都市計画課に戻ってきた1年目のことですね。当時、電気職の先輩が退職されることになり、その方の仕事を全て引き継ぐことになったんです。しかも、そのタイミングで図書館や消防本部の新築といった、大規模な工事が何件も重なっていまして…。
前任者がいないので聞きたいことも聞けず、何が何だか分からない状況からのスタートでした。とにかく1人で膨大な業務をこなさなければならなかったので、1つのことに時間をかけすぎず、「とにかく終わらせる」ということに集中し、がむしゃらに仕事を進めていきました。
あの時の経験は、私の仕事に対する姿勢を大きく変えるきっかけになった、大変だったけれど忘れられない思い出です。
チームで支え合う。平戸市役所のリアルな働き方
ー1年の中で、特に忙しい時期はいつ頃ですか?
岩崎:学校の工事は生徒がいない夏休み中に進めることが多いので、夏の時期は特に忙しくなりますね。学校関係の工事がひと段落しても、もちろん他の施設の工事がありますので、年度末もやはり多忙になります。
ー職場の雰囲気や、同僚・上司との関係性について教えてください。
岩崎:仕事は建築職のメンバーと協力しながら進めることが多いですが、お互いにサポートし合いながら、上手くやれていると思います。
上司も私たちのことをしっかり見てくれていて、困った時にはサポートしてくれますし、特に不満はありませんね。
自分の仕事が、ふるさとの景色になる喜び
ー岩崎さんが感じる、平戸市役所で働く魅力とは何ですか?
岩崎:やはり、自分が生まれ育った地元で働けること、そして自分の仕事が直接まちの役に立っていると実感できることですね。自分が整備した施設を、自分の家族や友人たちが利用しているのを見ると、やはり嬉しいものです。
家族から「あそこの施設、きれいになったね」なんて話が出ると、言葉には出しませんが、やはり嬉しいものです。あえて「あれは自分がやったんだ」とは言わないんですけどね。
自分の仕事が、ふるさとの景色の一部になっていく。これこそが、地元で働く一番の魅力だと思います。


ー最後に、これから平戸市の電気技師を目指す方へメッセージをお願いします。
岩崎:私たちの仕事は、常に新しい知識や技術を学び続けることが求められますが、入庁前から、何か特別な高い志を持っている必要はないと思っています。それよりも大切なのは、入ってからちゃんと勉強する姿勢や、人の話を素直に聞く謙虚さです。
私たち電気職は、現在2人体制で市の施設全体を見ています。正直なところ、だんだん体力的に厳しくなってきたと感じる場面もあります(笑)。
だからこそ、新しい方の力が必要です。意欲あふれる皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)