長崎県平戸市役所で働く吉浦さんのインタビュー記事です。
国家公務員の入国審査官、民間企業の営業職という異色の経歴を持つ吉浦さん。現在は企画課で、市の未来を支える重要な統計調査などを担当されています。
「人生一度きり」を胸に様々な挑戦を続けた彼女が、平戸市役所で見つけた仕事の魅力ややりがい、そして「一致団結してる感がすごい」と語るアットホームな職場の雰囲気について、詳しくお話を伺いました。
- 国家公務員、民間営業を経て平戸市役所へ。異色のキャリアパス
- 責任は重い、でも達成感は大きい。市の未来を支える企画課の仕事
- 仕事のやりがいと、それを支える職場の仲間たち
- メリハリをつけて働く、平戸市役所のワークスタイル
- 大きな夢より、日々の充実。仕事とプライベートを両立させる働き方へ
国家公務員、民間営業を経て平戸市役所へ。異色のキャリアパス
ーまずは、これまでのご経歴を教えていただけますか?
吉浦:出身は佐世保市で、生まれも育ちも佐世保です。高校卒業後に一度東京に出て、国家公務員として6年半働いていました。実は、成田空港でパスポートにハンコを押す、入国審査官をしていたんです。
その後、地元に戻りたいという気持ちが強くなり、佐世保にUターンしました。そこからがまた少し変わっているのですが、「人生一度きりだから、やったことのないことをしたい!」という思いで、民間企業のハウスメーカーに転職しました。
ハウスメーカーを退職後、佐世保市役所で会計年度任用職員として働き、現在は平戸市役所の正規職員として勤務しているという経歴です。
ー国家公務員から民間企業へ、大きなキャリアチェンジですね。
吉浦:はい。もともとおしゃべりが好きで人見知りもしないタイプだったので、住宅メーカーで営業職に挑戦しました。新築のお家を売る仕事で、「うまくいくかな」と期待して飛び込んだのですが、想像以上に厳しい世界でしたね。
一番厳しかったのは、やはりノルマです。毎月業績が発表されて、売上成績がリスト化されるんです。直接的なプレッシャーはなくても、やはり気にしてしまいますし、それがだんだん苦しくなってきて…。
楽しみもあったのですが、厳しい世界だと痛感しました。その経験を機に、もう一度、働き方を見つめ直したんです。
ー様々な経験を経て、再び公務員という道を選ばれた理由と、その中で平戸市とご縁があった経緯を教えてください。
吉浦:一番の魅力は、福利厚生がしっかりしている点です。お休みもきちんと取れますし、今後の出産や子育てといったライフステージを考えても、安心して働き続けられると思いました。
また、民間企業での経験から、仕事の目的の違いも強く感じました。ノルマに追われるのではなく、住民サービスという、もっと根源的な部分を支える仕事がしたい。そういう思いで、再び公務員を目指しました。
ぶっちゃけた話をすると、平戸市を選んだ一番の理由は採用試験の年齢要件でした(笑)。もともとは地元が第一志望でしたが、高卒枠の年齢制限で受験できず…。年齢制限がなく高卒でも受けられる自治体を探したところ、平戸市とご縁があったんです。
とはいえ、祖母が平戸に住んでいたので、小さい頃からなじみのある場所でした。今も佐世保から車で20分ほどの距離で通っています。

責任は重い、でも達成感は大きい。市の未来を支える企画課の仕事
ー現在の仕事内容について詳しく教えていただけますか?
吉浦:企画課の政策企画班に所属していて、主な業務は「統計調査」です。その他にも、離島振興や半島振興、課の庶務に関する業務も担当しています。
企画課の仕事は、その名の通り「平戸市の政策を企画する」ことが中心です。例えば、今後5年、10年の市の方向性を決める総合計画の策定などですね。
ただ、そうした大きな計画策定は、課長や班長といった経験豊富な先輩方が中心となって進めていて、私はまだ会議室の準備など、サポート業務がメインです。
それ以外にも、企画課はどこの課にも属さない突発的な国の業務、例えば経済対策に係る給付金の支給業務などが回ってくることもあります。
ー統計調査は非常に多岐にわたると思いますが、どのような流れで進めるのでしょうか。
吉浦:統計調査は、まず調査に協力してくださる調査員さんと指導員さんを探すところから始まります。各自治会の区長さんにお願いしたり、公募をかけたりして呼びかけるのですが、ここが一番大変なところかもしれません(笑)。
人が集まったら、次は説明会の準備をして、調査内容をしっかりお伝えします。
そして調査当日、例えば今年の国勢調査は10月1日からですが、その日を目途に調査員さんが一斉に市内を巡回し、調査票を配布します。各世帯の方にオンラインや紙で回答いただき、それを全て回収し、内容を審査して国に提出するという流れですね。
ー未経験の業務に、どのようにして慣れていきましたか?
吉浦:やはり2年目から、ぐっと仕事のスピード感が変わりました。1年目は教育係の先輩がマンツーマンでついてくださり、忙しい中でも聞けば必ず手を止めて教えてくれました。その先輩も膨大な仕事量を抱えているのが分かっていたので、「一回で覚えよう!」と必死でメモを取りましたね。
また、統計調査は5年ごとに行われるものが多く、前回の資料を見ても先輩の職員が担当したことのない調査だったりします。なので、5年前の決裁資料を読み解き、「なぜこういう判断をしたのか」という根拠をしっかり理解することを心がけました。
1年目にその「なぜ?」を突き詰めて考えた経験が、2年目以降の仕事の土台になっていると感じます。

仕事のやりがいと、それを支える職場の仲間たち
ー仕事のやりがいや魅力を感じるのは、どんな時ですか?
吉浦:私のいる企画課は、市民の方から直接「ありがとう」と言われる機会が少ない部署なんです。だからこそ、やりがいを感じるのは、大きなプロジェクトをやり遂げた時の「達成感」ですね。
昨年度は家計構造調査と農林業センサスという2つの大きな調査を同時に担当しました。
どちらも5年に一度の調査で、前例を参考にしづらい部分もありましたが、調査内容をしっかり読み解き、調査員の方々と協力して、最終的に全てのデータを集計し、国に提出できた時。その一連の流れを無事に終えられた時の達成感は、本当に大きいものでした。

ー逆に、仕事の厳しさや大変さを感じる部分についてもお聞かせください。
吉浦:大変なことは2つあります。一つは、やはり業務量の多さです。統計調査以外にも複数の業務が常に同時進行していて、1日にこなすべき仕事の種類が本当に多いんです。特に去年は担当者が1人少なかったこともあり、毎日2~3時間の残業が続いて、「説明会までに間に合わせなきゃ!」と焦ることもありました。
もう一つは、調査員さんや指導員さんを探す時の人間関係ですね。やはり、お願いしても断られてしまうことが多く、時には厳しい言葉をかけられることもあります。そうしたマイナスの言葉が積み重なってくると、精神的に厳しいなと感じることもありますね。
でも、そんな中で「いいよ」と引き受けてくださる方に出会うと、もう天使のように見えます(笑)。「ありがとうございます!助かります!」と心から感謝の気持ちが湧いてきます。大変なことも多いですが、そうした繋がりが生まれるのも、この仕事ならではの魅力かもしれません。

ー平戸市役所に入って良かったな、と感じることは何ですか?
吉浦:平戸市役所は、他の大きな自治体とは違って、職員同士の距離がすごく近いんです。すれ違えば大体顔と名前がわかるので、「一致団結してる感」がすごいんですよ。だからこそ、人脈が広がりやすいですし、温かい関係性を築けていると感じます。
先日結婚して名字が変わったのですが、廊下ですれ違う方に「結婚おめでとう!」「名前変わってるじゃん!」と声をかけてもらえたりして。そういうアットホームな雰囲気が、平戸市役所の良いところだなと思います。
メリハリをつけて働く、平戸市役所のワークスタイル
ー職場の雰囲気は、相談しやすい環境ですか?
吉浦:はい、すごく相談しやすいです!何でも言っちゃいます(笑)。上司もすごく熱心な方で、以前も焼肉に連れて行ってもらったんですが、そこでも仕事の話で盛り上がるくらいです。
「俺はこう思って仕事をしてる」と、仕事に対する哲学を語ってくれたり、意外と褒めてくれたり。鞭もあれば飴もある感じで(笑)、ちゃんと見てくれているんだなと感じられるので、とても嬉しいですね。
毎月の班会議でも、「慣れてきた頃が一番ミスをするから、油断しないように」と必ず声かけがあります。そうやって常に気を引き締めてくれる環境があるのは、ありがたいです。

ーワークライフバランスについてお伺いします。残業や休暇の状況はいかがですか?
吉浦:昨年度までは毎日2~3時間残業していましたが、今年は担当者が増えたこともあり、状況は一変しました。この4ヶ月での残業時間は、トータルでも数時間程度です。
もちろん、これから国勢調査が本格化すれば忙しくなるとは思いますが、その繁忙期に向けて、前もって準備を進めています。
お休みもすごく取りやすいです。夏季休暇も5日間しっかり取れましたし、結婚休暇も逆に「早く取りなよ」と言われるくらい(笑)。
みんなで定時後に「海外旅行行きたいね」なんて話で盛り上がるくらい、オンとオフのメリハリがつけやすい職場だと思います。
大きな夢より、日々の充実。仕事とプライベートを両立させる働き方へ
ー最後に、今後どのような職員を目指していきたいか、展望をお聞かせください。
吉浦:正直なところ、「昇格したい!」といった大きな夢は、今のところありません。それよりも、仕事もそこそこに、プライベートもそこそこに、その両方をしっかり充実させていきたいと思っています。
私にとって仕事の充実は、やっぱり最後は「人」だと思うんです。どんなに仕事が忙しくても、大変な状況を分かってくれる仲間がいれば、乗り越えられる。自分から話しやすい環境を作っていくことで、そういう信頼関係を築いていきたいです。
私も先輩方にそうしてもらったように、今後は後輩にも同じように接していける職員でありたいですね。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)