たつの市役所総務部総務課の中谷さんのインタビュー記事です。 食品メーカーや地域経済を支える支援機関での勤務を経て、2025年に社会人枠で入庁されました。 現在は総務課で職員の健康管理や研修運営に携わっています。 転勤のない地元で働く魅力や、民間との仕事の進め方の違い、そして裏方から組織を支える総務職ならではのやりがいについて、等身大の本音を語っていただきました。
- 理工学部の知識を活かした食品企業から、故郷・西播磨への帰還
- 社会人採用枠への挑戦。仕事と家庭を両立しながらの試験対策
- 職員を支える「総務課」での日々。裏方から支えるやりがいとは
- たつの市ならではの魅力と、これからの展望
理工学部の知識を活かした食品企業から、故郷・西播磨への帰還
ーまずはこれまでのご経歴と、たつの市役所に入庁される前の歩みについて教えていただけますか。
中谷:私は大学の理工学部で応用化学を専攻していました。当時は微生物や食品の成分について研究していたこともあり、卒業後はその知識を活かせる食品メーカーに就職しました。製造現場での仕事はやりがいもありましたが、全国に工場がある企業だったので、転勤の可能性はあり、家庭の事情もあったので地元である西播磨に戻ってくることになりました。
それで次に入職したのが地域の経営者の方々をサポートする中小企業支援機関でした。そこで約5年間、中小企業の経営支援などに携わらせていただきました。
ーなぜそこから、「市役所」を目指されたのでしょうか。
中谷:地域の課題を肌で感じるようになったのですが、そこで会社が成長して軌道に乗ったタイミングで、人手を求めて都会へ移転してしまうケースを何度も目の当たりにしました。「もっと利便性の高い姫路や神戸、あるいは同じ西播磨でもたつの市の方へ移転するんだ」という声をよく聞いていたんです。
企業が去れば地域から活気が失われ、若者の働く場所もなくなってしまう。そのジレンマを感じる中で、単にビジネスの支援をするだけでなく、住環境の整備や子育て支援など、もっと複合的な視点から街を盛り上げなければならないのではないか、と考えるようになりました。
また、私には3人の子供がいることも大きな理由です。子供たちが大きくなった時、この西播磨に魅力的な企業や活気ある街が残っていてほしい。いつか彼らが外に出たとしても、「帰ってきたい」と思える場所にしておきたいという思いがありました。
社会人採用枠への挑戦。仕事と家庭を両立しながらの試験対策
ー30代での転職、それも公務員試験への挑戦に不安はありませんでしたか。
中谷:年齢的に30代半ばに差し掛かっていましたので、これが最後のチャンスかもしれないという思いはありました。ただ、たつの市の採用試験を調べたところ、社会人経験者枠の筆記試験が「教養試験のみ」で、専門試験や論文がないことを知りました。これなら働きながらでも挑戦しやすいと感じ、一歩踏み出すことができました。
ー具体的な試験対策はどのように進められたのでしょうか。
中谷:正直なところ、まとまった勉強時間を確保するのは難しかったです。1日1時間できれば良い方でしたね。その代わり、通勤時間を有効活用しました。
ー試験当日の雰囲気はいかがでしたか。
中谷:1次試験の集団面接はかなり緊張しました。周りの受験生も皆さん非常にしっかりとした受け答えをされていて、「これはまずいな」と圧倒されそうになりましたね(笑)。民間企業の面接は1対1や少人数が多いですが、市役所の面接は面接官が4、5人も並んでいて、独特の緊張感がありました。

職員を支える「総務課」での日々。裏方から支えるやりがいとは
ー無事合格され、2025年に入庁されました。現在はどのような業務を担当されていますか。
中谷:総務部総務課人事給与係に配属されました。主な業務は、職員の健康管理、研修の調整、そして共済組合の事務の3本柱です。職員が心身ともに健康で働けるよう健康診断の計画を立てて運営したり、新人研修から専門的な外部研修までの派遣調整を行ったりしています。
ー意外にも「市民」ではなく「職員」を相手にする部署だったのですね。
中谷:そうなんです。最初は「まさか自分が総務課に」という驚きもありましたが、今ではこの仕事の奥深さを感じています。健康診断の集団検診の段取りなどは、前職の商工会議所時代にも経験があったので、その時の知識が非常に役立っています。
ー業務を覚える中で苦労した点はありますか。
中谷:一番の違いは「予算」の考え方ですね。民間企業、特に最初の製造業の時は、注文が増えれば設備投資も比較的スムーズに進みます。しかし、役所は全て税金で運営されています。新しい研修を取り入れたいと思っても、今年度の予算で賄えるのか、それが本当に職員や市民のためになるのか、非常に厳しく精査されます。最初は戸惑いましたが、この「基盤の強さ」こそが行政の信頼を支えているのだと理解できるようになりました。
ー職場の雰囲気はいかがですか。「縦割りで厳しい」というイメージを持つ方も多いかと思いますが。
中谷:総務課は非常に気さくな方が多く、とても恵まれていると感じています。年齢の近い職員もいて相談しやすいですし、分からないことがあっても先輩方が親身になって教えてくださいます。同期が同じ4月に一斉に入庁するのも、社会人採用の身としては非常に心強いポイントでした。
ー「同期」の存在は大きいですね。
中谷:ええ。前回の転職は1人だけの採用だったので、孤独感があったんです。でも今回は、同じ悩みを共有できる仲間が周りにいる。それは大きな安心感に繋がっています。また、私は入庁してすぐに「新人の中谷さん」として全庁的に紹介していただいたので、面識のない他部署の職員さんからも「中谷さん、これについて教えて」と声をかけていただけることが多く、早い段階で職場の一員になれた実感がありました。

たつの市ならではの魅力と、これからの展望
ー実際にたつの市役所で働いてみて、街の印象に変化はありましたか。
中谷:たつの市は、平成の合併で1市3町が一つになった街ですが、旧町ごとのイベントや文化が今もしっかりと息づいています。本庁にいると、市内のあらゆるイベント情報が入ってくるので、「こんなに面白い行事が各地であるんだ!」と毎日が新鮮です。休日に子供たちを連れてどこに行こうかと考えるのが、今の楽しみの一つになっています。
ー仕事とプライベート、いわゆるワークライフバランスについてはいかがでしょう。
中谷:公務員は定時で帰れるというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、時期によっては忙
しい時もあります。ただ、民間企業、特に製造業のように生産量に左右されて急な残業が発生するといった不安定さは少ないです。給与面も含めて将来の計画が立てやすいので、子育て世代にとっては非常に魅力的な環境だと思います。
ー転職を迷っている社会人の方へ、メッセージをいただけますか。
中谷:民間から公務員へという選択は、大きな変化のように思えるかもしれません。でも、民間での経験は、事務スキルであれ対人交渉であれ、必ずどこかで活きます。私自身、商工会議所での事務経験があったからこそ、今の総務の仕事にもスムーズに入ることができました。
ー「民間での経験」は決して無駄にならない、と。
中谷:はい。むしろ、異なる視点を持っていることは武器になります。たつの市役所は、新しい風を拒むような場所ではありません。バリバリ新しいことに挑戦したい人も、着実に地域を支えたい人も、それぞれのニーズを満たせる仕事が必ずあります。あまり身構えず、挑戦してみてほしいですね。
ー最後に、中谷さんのこれからの目標を教えてください。
中谷:まずは今の総務課の業務を完璧にマスターし、職員から「中谷に聞けば大丈夫」と信頼される存在になりたいです。そしてゆくゆくは、過去の経験も活かして、企業支援や地域振興といった、より街の活性化に直接関わる業務にも挑戦してみたいです。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年04月取材)
今回インタビューをさせていただいた中谷さんは、3人のお子さんを育てるパパでもあります。「子供たちが帰ってきたいと思える街にしたい」という言葉の裏には、確固たる覚悟と地元への深い愛情が感じられました。



