様々な部署を経験し、現在うきはブランド推進課の課長3年目の手島直樹さんに、これまでの仕事内容や人材育成で心がけていること等について伺いました。
ーはじめに、これまでのご経歴をお聞かせください。
手島:1995年度に旧吉井町役場に入庁し、約30年務めています。入庁当時は会計課に配属され窓口業務を行ないました。その後、戸籍や住民票を取り扱う住民係を経験し、いわゆる「平成の大合併」を行なうために2002年5月合併事務局へ異動しました。
うきは市は旧吉井町と旧浮羽町の2つが合併してできたのですが、その2町からそれぞれ2名事務局職員が出されたうちの1人でした。そこでまさに新しい市の名称や、市章といううきは市を表わすマークを決め、市役所の場所を決めるといった仕事に取り組みました。非常に刺激的で、大変でしたけれどもすごく楽しかった2年間でした。
その後、隣市の久留米市役所の中にある広域行政組合に出向し、帰任し教育委員会、水資源対策係、企画調整係を歴任しまして、2022年4月に現在のうきはブランド推進課所属となりました。
現うきは市長は2012年から現職に就かれていますが、その3年後に立ち上げられた組織で、課長としては私が3代目か4代目になると思います。
課が設立された当時は、「消滅可能性都市」という名称が出てきて、地方の人口減少が取り上げられ、地方創生の動きを活発化させようという議論が世の中でも盛んに行なわれていました時期でした。だからこそその課題に対して常に最前線で業務にあたっていくものとしてブランド推進課がつくられました。諸先輩方がそれに応えてきた結果として、移住者の増加やIターン就業者の増加を最近は毎年継続できています。
ーうきはブランド推進課の体制と業務内容について教えてください。
手島:多少変動がありましたが、現在は4つの係でできています。ブランド戦略係・地域振興係・商工振興係・ラグビータウンプロジェクト推進係です。いずれの係もうきは市の地域資源を活用して市の魅力を高めることを仕事にしています。
人数は全体で31名です。正規職員が11名、地域おこし協力隊の方が17名、あと会計年度任用職員数名という構成です。
ブランド戦略係の業務内容は対外的なシティプロモーションです。知名度向上に向けた施策に取り組んでいますが、それを通じて市民がうきは市民であることに今以上に誇りを持てる状態にすることも目指しています。
実は私自身がまさに当事者なのですが、以前は出身地を説明するのに「久留米市の隣です」って言っていたんですよ。ただ最近は福岡県内では意外とうきは市の名前が知られてきているんですよね。
市民の皆様が自信をもってうきは市出身だと言えるようになってきていると実感していまして、それが私はとても嬉しいです。この部署ができて約10年の一番の成果だなって思っています。
ーブランド推進では具体的にどんな取組みを行っているんですか?
手島:「フルーツ王国うきは」と銘打って果物のPRを行っています。うきは市は冬から春にかけてイチゴ、初夏の桃やブルーベリー、8月からは梨やブドウ、秋には柿といったように、1年中美味しい果物を収穫でき、食べることができます。
しかもそれぞれ品種が非常に多いんです。例えば梨は5月から7月の2カ月間で41種類が収穫されています。ほかにもブドウが58種類、柿が19種類など。ここまで多いと週ごとに違う品種がメインになるので同じ品種を買うためには1年後をお楽しみに、となるわけです(笑)。
こちらはマスコミでも頻繁に取り上げられ市内でも話題になり、県の内外に広まって知名度向上につながっています。
さらに、うきは市の環境はフランスのワイン産地ボルドーやアルザスと地質・地形が似ている珍しい土地だということも判明しました。この特徴的な環境を「うきはテロワール」と名付けて、新たなPRも開始しています。
ーブランド推進の成果は他にもございますか?
手島:これまでの取組みの結果として民間の力で市内に変化が起き始めています。まず2020年前後からのコロナ禍の数年間、幸いにもうきは市は通常以上に観光客が来られました。
自然豊かで人と距離が取れて美味しい果物がたくさんあるというところで、日帰りで福岡都市圏からの人気を集めたんです。それによって、カフェやスイーツを提供する店舗の出店が非常に増えました。
また、実はうきは市はきれいな地下水が豊富に出る地域という特徴もあります。実は水道代タダのまちで、全ご家庭でも井戸から出る地下水を直接利用されています。このような自治体は全国でも唯一です。
さらに、昨年春以降から市内に10軒ほどの宿泊施設がオープンいたしました。インバウンド需要に対する民間の戦略もあり、市としても課題に捉えていた宿泊施設の少なさが解消してきています。
また、道の駅うきはの改修計画や、さらなるブランド向上に向けて関西圏の方々にもうきは市に訪問して頂けるようなPRをしていこうとしています。
ーそうなんですね!では話を変えて、若手職員への育成についても教えていただけますか?
手島:これは市としてという観点ではなく私なりに日々考えて行なっていることですが、新しく入ってきた職員については、最初はまず丁寧に一つ一つ教えて2カ月ほどはどの程度の対応力があるか様子をみる時期だと考えています。
もちろん初めから何でもできるという方はいませんので、職員ごとの対応力に応じて任せる度合いとフォローする度合いを決めています。また、私が直接指導するようなかたちではなく、係長以下の成長も考えて直接の指導者を通して成長を見守っています。
あとは、どの部署に在籍していたときでも、自身でなにか制度を変えようということを伝えています。ちょっとした制度の拡充でももちろんいいですし、何か一つ爪痕を残そうよと。現行の制度で固執してしまうと、それでは楽しくないですよね。
守破離という言葉があるように、新人の頃はまずは教わったことを守って確実に身につけることは必要だと思いますが、その段階を過ぎたら少し殻を破って「これやりたいんですけど」って言えた時点が成長したときだと私は思っています。
なので、何か課題がある部分を見つけたときには現状を変えていけるように何をどうしていこうかっていう話しをできるように背中を押すように心がけています。そして良い発言などがあればその場で褒めるなど、必ず反応をするようにしています。
そして、自分で進めていける部分が増えていったときには自由度を高めていって力を発揮してもらい、私は議会での説明であったりの上席としての役割を果たしながら応援するという方向に回るようにしています。
ー最後に何かお話ししておきたいことはありますか?
手島:完全に余談ですけれども、私は少年サッカーの指導者を長年やっておりまして。日本サッカー協会がその昔「グリーンカード」というのを普及させようとしたんですよ。イエローカードやレッドカードと同じで選手に示すものとして。
それが、何かいいプレーや良い行ないをしたら出すというものでして、例えばラインアウトした相手ボールを拾いに走ってくれたらグリーンカード1枚、といったかたちです。今でも私は使っているのですが、子どもってめっちゃ喜ぶんですよね。
良いプレーが見られたらグリーンカードを出す、そういうことを仕事でもしていきたいですしそんな自治体になっていければ良いなと考えています。
ーどうもありがとうございました。