長崎県松浦市役所の政策企画課で課長を務める山口さんのインタビュー記事です。福岡市役所での勤務を経てUターンされた山口さんに、松浦市の魅力や特徴、そして小規模自治体ならではの仕事のやりがいについて伺いました。「アジフライの聖地」や「元寇」といった独自の資源を活かし、職員一丸となって街の未来を創る、その最前線で働く魅力に迫ります。
ー山口さんのご経歴を教えていただけますでしょうか。
山口:入庁は平成8年なので、もう30年近くになります。松浦市役所に来る前は、福岡の市役所に約6年ほど勤務していました。松浦市が地元ということもあり、Uターンという形で試験を受け直して、戻ってきたという経緯です。
ー福岡市役所からUターンで松浦市に戻ってこられたのですね。ではまずは、生まれ故郷である松浦市について、どのような街なのか教えていただけますか?
山口:松浦市は、九州の西の端、長崎県本土の北部に位置する、人口約2万人の比較的小規模な市町村です。
福岡からも近く、西九州自動車道という自動車専用道路の整備が着々と進んでいまして、福岡市を起点に佐賀県の武雄市などを経由して九州自動車道に繋がるルートができてきています。現時点でも、松浦市内から福岡市内までは車で1時間半程度で行くことができます。
福岡空港も行けるので、東京などへ行くのにも便利です。あとは佐世保市の中心部までは、車で約40分程度です。日帰りで買い物に行って帰ってくる人も多いですね。

ー松浦市の産業や特産品など、街としての特徴について教えてください。
山口:松浦市といえば、やはり水揚げ量日本一の「アジ」です。市内には松浦魚市場もあります。令和元年から「アジフライの聖地」PRも行っています。
アジフライの聖地PRについてはこちらの動画もご覧ください:https://public-connect.jp/user/employer/1077/blog/626
経済的な効果も大きく、令和5年の1年間だけで、経済波及効果が約30億6千万円、メディア露出などを広告費に換算したパブリシティ効果が約4億4千万円あったそうです。アジフライ目的で来られる観光客も年々増えています。
あとは、「歴史」も松浦市の魅力の1つです。松浦市は、「元寇」、つまり蒙古襲来の主要な舞台となった場所です。歴史の教科書にも出てくる「神風」が吹いたとされるのが、市役所からも見える鷹島沖合の海になります。
そこから広がり、現在は元寇ゆかりの鎌倉武士たちの出身地にあたる自治体ともつながり全国28の自治体(神奈川県鎌倉市、千葉県市川市、宮崎県国富町など)と「元寇所縁(ゆかり)のネットワーク」を発足させています。

職員が様々な文献を調べて、ゆかりのある鎌倉武士をリストアップし、連携先の自治体候補を選定するところから始めました。これもまた、職員の地道な努力が実を結んだ事例です。アジフライと並んで、この「元寇」という歴史も、松浦市をPRする大きな柱となっています。市内には、元寇関連の遺跡や引き揚げられた船の碇などを展示する埋蔵文化財センターもありますので、「元寇の遺跡を見て、アジフライを食べる」という観光ルートも提案しています。

ーでは、次に松浦市役所の組織についてお伺いします。職員数や体制はどのようになっていますか?
山口:松浦市は人口約2万人の小規模な自治体ですが、消防本部を単独で持っています。これは同じくらいの規模の市町村では比較的珍しいかもしれません。消防職員も含めた正規職員数は、令和6年4月1日現在で366名です。
小規模ではありますが、だからこそ職員一人ひとりが市政に果たす役割は非常に大きいです。また、先程の施策についても、アイデア・発端は市長であることも多いですが、それを形にして発展させる優秀な職員ばかりです。
ーでは採用活動についてもお聞きします。松浦市役所では、どのような人材を求めていらっしゃいますか?
山口:松浦市の街づくりに主体的に関わり、自らの力を試したいという強い意欲を持つ人材
や、松浦市への興味関心があり、周囲と協力しながら共に成長していける誠実さや人柄を持つ人材を求めています。
もちろん、税務等、基礎自治体として着実に業務を遂行しなければならない部署もあります。しかし、これからの街づくりを考えると、「住みたい」「住み続けたい」「移住したい」と思ってもらうためには、子育て支援、住環境、仕事など、様々な面での魅力向上に市役所全体で取り組む必要があります。
松浦市という小規模自治体だからこそ味わえる、確かな手応えとやりがいが絶対にありまので、ぜひ松浦市に興味を持っていただき、私たちの仲間となって、一緒にこの街を盛り上げていってほしいですね。
ー今後の採用スケジュールや選考について教えていただけますか?
山口:採用スケジュールについては、現時点ではまだ詳細を詰めている段階です。
例年通りであれば、大学卒業程度であれば6月か7月頃、高校卒業程度であれば9月頃に試験を行うことになるかと思います。社会人経験者採用枠も、引き続き実施していきたいと考えています。詳細な日程が決まり次第、パブリックコネクトでお知らせしますので、そちらをご確認いただければと思います。

ー選考はどのような流れで行われるのでしょうか?また、「街づくりへの意欲」をどのように見極められるのですか?
山口:選考過程としては、まず筆記試験を行います。その後、筆記試験合格者を対象に面接試験(二次試験)を実施するという流れです。面接は現在のところ1回で実施しています。
求める人物像として「意欲のある方」を挙げていますが、面接でそれを前面にアピールしなければならない、ということではありません。
あとは、スキルや経験を持った即戦力であることよりも、ポテンシャルや伸びしろに期待しています。
私も面接に参加しますが、面接で一番大切にしているポイントは、「一緒に働く姿がイメージできるかどうか」です。就業経験のない高校生・大学生の方や、緊張してうまく話せなかった方であっても、誠実さや、他者を思いやる優しさが垣間見えることがあります。そういった部分を大切にしたいと考えています。必ずしも流暢に話せる必要はありません。
ーなるほど。人物重視の選考なのですね。ちなみに、現在の松浦市役所の職員の方々についても教えてください。
山口:366名も職員がいますので、本当に色々なタイプの人間がいます。一括りにするのは難しいですが、人事担当課長としての視点から見ると、比較的おとなしい、真面目なタイプの職員が多いかもしれません。
しかし、先ほどのアジフライや元寇の取り組みのように、いざという時には力を発揮して、事業をぐいぐい前に進めてくれる職員がいます。内に秘めた情熱や能力を持っている職員がおり、積極的に意見を言ってくれる職員も多いです。そういった組織風土は大切にしたいと考えています。

ーありがとうございます。最後に、福利厚生や研修制度、ワークライフバランスなど、働きやすさの面でのアピールポイントがあれば教えてください。
山口:まだこれから制度は整備していく段階ではあります。
そのうえで、現時点で職場内でのOJT(On-the-Job Training)による研修は、各課でしっかりと行われていると感じています。そのおかげか、松浦市では若い職員の離職率は比較的低い傾向にあります。むしろ、中高年層の退職が多いという、少し珍しい状況かもしれません。
最近の良い変化としては、男性職員の育児休業取得が非常に高くなってきています。期間は1ヶ月程度が多いですが、気兼ねなく取得できる環境は整ってきていると思います。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年3月取材)