今回、インタビューに登場していただいたのは、長崎県長与町役場の政策企画課新図書館等建設係で勤務する田中優喜さんと松本浩平さんです。令和9年度の開館を控える複合施設建設プロジェクトの担当をするお二人に、その概要や仕事内容、やりがいについてお伺いしました。
—これまで携わられてきたお仕事について教えてください。
松本:大学卒業後、民間企業で勤務し、長与町役場に入庁しました。平成27年に入庁したので、今年で10年目です。入庁後は生涯学習課に配属され、イベントの企画運営や図書館の施設運営、新図書館の基本構想・基本計画の策定に携わってきました。
生涯学習課が企画運営するイベントは、子どもを十数人集めて開く工作教室から、何百人も来場する講演会など、多種多様です。イベント運営のために土日の出勤が多かったものの、仕事のやりがいがありましたし、何より楽しかったですね。イベントに向けて集中して準備をして、当日を迎えるという区切りは、ルーティーンワークにはない面白さがありました。
社会教育主事という資格を取得したこともあってか、入庁当時から8年もの間ずっと生涯学習課に所属していましたが、昨年異動になり、今は政策企画課新図書館等建設係で勤務して、2年目です。

田中:大学院を卒業後、平成24年に土木技術者として長与町役場に入庁しました。地元である長崎県内で働きたくて、転居を伴う異動のない公務員の道を選んだんです。
役場内では異動が多く、これまでに道路の維持管理や区画整理事業、農業系の業務も経験しました。加えて、学校の維持管理、箱物建築系の仕事にも携わるようになり、その流れで政策企画課新図書館等建設係ができたのと同時に配属され、現在3年目です。技術職員として、新図書館建築に関わる積算業務を主に担当しています。

—政策企画課新図書館等建設係ではどのような仕事をされているのですか?新図書館建設プロジェクトについて教えてください。
松本:政策企画課新図書館等建設係は、老朽化した長与町図書館と長与町健康センターを新たな複合施設として整備するべく新設された係です。令和9年4月のオープンに向けて、新図書館建設プロジェクトを進めています。
田中:これまでにはない、図書館と健康センターの複合された大型施設です。長与町でももう何十年も経験のない大事業で、前例がほぼないような状況で事業を進めています。
ーいつからプロジェクトは始まっているのですか?
松本:新図書館等建設係が立ち上げられたのは3年前ですが、最初の長与町立図書館整備基本計画書が策定されたのは平成26年になります。
田中:このため、新図書館等建設係が発足した時には、図書館と健康センターの複合施設にすることや、大方の予算、発注のスケジュール、開館日まで既に決まっている状態です。その中で、私はどのような規模の建物を建設するかを検討し、設計し、業者に工事の発注をする、という業務からスタートしました。
設計はつい最近まで行っていました。それぞれの部局から意見を聞いて設定に反映し、また話を聞いて調整する、といったことの繰り返しです。ようやく工事の発注をしたのですが、昨今の物価高騰の煽りを受け予算通りにならず、組み直しをしている状況です。
松本:私は新図書館オープンに関する管理運営計画や周知啓発活動を主に担当しています。図書館と健康センターの複合施設ですから、図書館を管轄する生涯学習課と、健康センターを管轄する健康保険課の両方とやりとりを進めつつ、どのように運営するかを相談しています。
周知啓発活動においては、生涯学習課勤務時代の経験を活かしてイベントを開催しています。つい先日も建設地でイベントを開催いたしました。これからは施設運営に関して、シルバー人材センターなど、外部事業者を交えての協議も増えてくると思います。
現在は、施設使用料の設定金額を協議中です。施設内に貸し部屋を設けるのですが、その料金を町民と町民以外とで別料金を設定するかなどですね。建物の維持管理費や光熱費、人件費なども勘案して、設定金額を考えているところです。
令和9年4月の開館が決定しているので、令和8年度末までにはすべての業務を終えなくてはなりません。新施設オープンのために条例を制定する必要もありますし、そのために議会で説明もしなくてはなりません。今は資料を作りながら、どんどん準備を進めています。
ー外部事業者との協力体制はどのような形式ですか?
田中:複合施設の設計者を決定するために、プロポーザル方式を採用したのですが、意匠性の高い建物を作るために、地元の業者だけでなく、広く募集をかけました。40社を超える応募があり、そこから5社に絞り審査の様子を動画配信いたしました。かなり変わった取り組みだったと思います。
その結果、脱炭素を掲げた環境に配慮した建物というコンセプトが選ばれました。二酸化炭素排出量を抑えるための木造2階建てで、耐火木造建築です。そのうえで電気代が実質0円になる省エネと創エネを兼ね備えた『ZEB』認証を受ける予定の建物です。『ZEB』の耐火木造図書館は、日本初となるはずです。
松本:公募で業者を選定したのは、審査の透明性が高くなっただけでなく、町民の認知度アップにもつながったと思います。設計者が決まったのが3月で、翌月にちょうど私が異動してきましたので、町民の熱も冷めやらぬうちにイベントを開催しました。
設計者による講演会を開催したり、完成後の建物をイメージできるように建設予定地に施設実寸大の線を引いて町民を案内したり、ARで立体バーチャル図書館を見られるようにしたり。いい施設ができることを町民の方に広く知っていただきたくて長与町のホームページでは、イベントレポートを随時更新しています。


複合施設の名称は、公募により「ホンテラッセ長与」に決定しました。現在の長与町図書館は古いこともあり、長時間滞在できるような建物ではないんです。ですから、新図書館は町民の方がのんびり過ごせるような場所にしたいですね。

—新図書館等建設係の組織体制について教えてください。
田中:新図書館等建設係には、4名のメンバーが所属しています。正職員では、課長補佐の事務職が1名、松本さん、土木技術職の私の3名。加えて、長崎県庁の建築技術職OBの方が会計年度任用職員として加わってくださいました。工事の発注も始まりましたし、経験のある方からアドバイスをいただけるので、非常に頼もしく思っています。
新施設建設にあたって他の部署と連携することも多く、いくつもの会議があります。町長をはじめ三役が入った決定機関の会議や推進会議、担当者会議、ワーキンググループなど、新図書館建設のためにいろんな階層で協議中です。
そんな中で難しさを感じるのは、健康センターと図書館を管轄するのが別の部署である点です。図書館は教育長、健康センターは町長の管轄内。それぞれ主張したい点が異なっていて、なかなか交わりません。ですから、複合施設の運営計画を立てるには、双方の主張を調整するのが必要です。
松本:多くの部署が関わるプロジェクトなので、意見が合わないこともしばしばあります。大変ではありますが、衝突を乗り越えて少しずつプロジェクトが進むところに、ふたりともやりがいを感じています。
田中:手探りで進みながらも、形になったときには達成感がありますよね。
—プロジェクトでお忙しいとは思いますが、残業はありますか?ワークライフバランスは取れていますか?
松本:プロジェクトの運営がより具体的に進み始めたこともあり、やることが増えてきましたね。ただ、もうひと踏ん張りといったところです。
田中:検討段階は手がかかりますが、発注する業者が決まって動き始めれば、忙しさも落ち着くはずです。ワークライフバランスは取れていると思います。プロジェクトを抱えているからといって、過度に残業をすることもありません。
—長与町の魅力を教えてください。
松本:私はもともと長崎市出身なのですが、長与町役場に入庁したのを機に、長与町に引っ越してきました。どの職員に聞いても同意してくれると思うのですが、長与町はとても暮らしやすいと思います。例えば、交通面。長崎市や時津町にもアクセスがいいんですよ。
また、長与町には優しい人が多いという印象があります。長与町には自治会があって私は班長を担当しているのですが、集まりの時には感謝の声をかけていただけて嬉しいですね。
新図書館が完成したら、長与町のシンボルになるはずです。町民の方に来て満足していただけるだけでなく、自ら外の方々に発信していただけるような場所になったらいいなと思っています。
「長与町におもしろそうな施設があるから行ってみようか」と、足を運んでいただくきっかけになったらいいですね。