石川県加賀市役所健康課所属の保健師3名のインタビューです。新卒で入庁した酒井さんと松井さん、看護師経験を経て中途採用で入庁した中嶋さんにお話を伺い、保健師になった理由や、仕事のやりがいについて教えていただきました。
—加賀市役所で保健師として働こうと思ったのはなぜですか?
酒井:私は地元が隣の市で、もともとは看護師になるつもりでしたが、大学時代の実習や、母が保健師をしていることもあり、保健師に興味を持ち入庁いたしました。
中嶋:私は以前に隣の小松市の民間病院で働いていました。その時に多くの患者さんや患者さんのご家族が病気になったことを後悔されていたのが私の心に残っていました。急性期医療に携わることで、疾病予防の大切さを痛感しました。
保健師は全くキャリアプランになかったのですが、そこから保健師という職業もいいなと思うようになりました。入院中だけでなく、市民の皆様と切れ目なく関わることができる保健師は疾病予防にとって非常に重要であり、その仕事がやりたいと思えました。
松井:私も病気を未然に防ぐといった点に興味を持ったのがきっかけです。大学で看護を学んでいくうちに保健師という職業にも興味を持ちました。在学中に保健師の資格も取得できたので、保健師として地元の加賀市で働くことに決めました。
—加賀市役所で保健師として働く場合、どのような部署に配属されるのですか?組織体制について教えてください。
中嶋:加賀市役所で保健師が配属されている部署は6つあります。私たちが所属する健康課のほか、人事課、子育て応援ステーション、地域包括支援センター、相談支援課、こども育成相談センターです。
松井:人事課では、職員の衛生管理や健康管理など、主に加賀市役所の職員向けの業務を担当します。子育て応援ステーションは主に母子、18歳までの市民が対象です。健康課は19歳以上が対象で、地域包括支援センターは65歳以上の市民の皆さんの健康のために働いています。
私たちが所属する健康課は成人保健分野の全般を担当しており、特定健診やがん検診など各種健診、その後の保健指導など、病気を未然に防ぐための仕事が主です。5名の保健師が所属しており、業務を分担しています。
—みなさんの現在の業務内容を教えてください。
酒井:私は健康づくり担当です。ラジオ体操教室やウォーク会など、市民の皆さんの食と運動を通した健康づくりを推進しています。市役所単体で動くだけでなく、企業や地元の団体と協働して事業を展開しています。企業と協力して、健診会場で肌年齢や骨密度などの測定をしたり、健康ポイントアプリを利用して健康管理をすることを働きかけています。
このほか、精神保健分野も担当しており、心の健康づくりのために市民の皆さんの相談に乗ることもあります。
中嶋:私は、後期高齢者の重症化予防を担当しています。市には糖尿病管理台帳というものがあるのでそれを利用して、市民の皆さんが重症化しないように働きかけています。さらに、今年度からは肝炎ウイルス対象者のフォローアップの担当にもなり、これからご自宅訪問や連絡対応を行っていく予定です。
松井:私は、74歳までの市民の皆さんの重症化予防を担当しています。特定健診で血圧や血糖値、コレステロールなどが一定基準よりも高い方を対象にして自宅を訪問して保健指導を行ったり、連絡対応を行っています。病院を受診するよう勧めたり、食事や運動などの生活習慣の見直し、できるだけ健康でいられるための支援をするのが仕事です。
酒井:市民の皆さんとは、電話でお話をするよりも直接会ってお話をすることが多いです。ご自宅へ訪問をする場合と、市役所での相談日に来庁される場合のどちらもあります。
松井:健診結果が出た後に、訪問対象となる方をピックアップしています。年間を通して随時検診を行って訪問回数は、多い時で週に3回くらいです。訪問がない時は窓口業務や事務対応をしています。
—入庁後に研修制度や育成制度はありましたか?
酒井:入庁後は先輩保健師がプリセプター(マンツーマンでの指導)としてついてくださいました。ただ、私が入庁した令和3年度は新型コロナウイルスの対応業務のために対応が特殊だったかもしれません。入庁して1カ月半ほどで健康課の業務からは外れて、他の業務を担当していました。ただ、本来の業務に戻った際は、また先輩についていただき、一緒に訪問に行って業務を教わるようになりました。
松井:つきっきりというわけではありませんが、入庁して半年くらいは訪問や窓口対応など、市民の皆さんと関わる業務では先輩保健師が付き添って教えてくださいました。付き添い期間が終わってからも、わからないことがあれば先輩や上司に質問しながら業務を教えていただきました。
—看護師とは違う点もありますか?
中嶋:検査結果に関しても、病院での看護師時代ならば、医師に報告するほどではない数値であったとしても、保健師の場合は1つの傾向として見逃すことはできません。健診の結果には生活習慣が絡んでいます。その結果の値を見て、健康のために深く追求することができますし、それは保健師だからこそのやりがいだと感じています。
また、保健師は個人単位の健康だけでなく、地域という大きな単位での健康を考えるところに仕事の面白さや難しさがあります。例えば、丘の上にある地区では膝を痛める方が多いとか、地区ごとに健康状態や生活習慣が似ている傾向があります。
地区ごとの特性をもとに、市民の皆さまの生活を想像するように心がけています。地区ごとに行う健康教育の教室や講演では、対象者にあわせて内容を変えたりして工夫をしています。
酒井:地区での講座や訪問など、市民の皆様のお話を直接聞ける機会があるのは大きいですね。みなさんの声を仕事に活かすようにしています。
—加賀市役所での働き方について教えてください。残業はありますか?また、お休みは取りやすいですか?
松井:年度はじめや年度末、予算の時期には残業が少し増えます。
中嶋:看護師として働いていた時と比べると、お休みの日数がとても多いです。週末に業務がある場合もあるのでカレンダー通りとはいきませんが、休日の日数はとても多いです。
酒井:忙しい時期もありますが、早く帰れる日はみなさん残業しないですぐに退庁しています。健康課は有給休暇も取りやすい部署だと感じています。
—保健師同士、職員同士の関係性はいかがですか?
中嶋:課の中では相談したり交流したりと関係性はいいです。他の課もきっと同じなのではないかと思います。
松井:他部署の保健師と一緒に研修を受けることもあるのですが、そういったきっかけがあると交流が増えますね。先日も金沢市で一緒に研修を受けた保健師とは、お昼ご飯を食べたり、仕事の相談もするようになりました。
—印象に残っている業務ややりがいを感じたことがあれば教えてください。
松井:地域でのがん検診で要精検になった市民の皆様に病院受診を勧めたところ、がんの早期発見ができたことがありました。後から「検診を受けてよかった」と声をかけていただけたのが嬉しかったですね。病気の進行を防ぐための支援ができたので、保健師の仕事をしていてよかったと思いました。
中嶋:最近では、病気の治療を中断されてしまった方のお宅を何度も訪問し、先輩方や他の課の職員にも相談した結果、治療につなげることができました。看護師だったら治療を中断した方を医療に繋げる機会すらないのですが、保健師として働いているからこそ成しえたことです。保健師になってよかったと思いました。
酒井:私も、対象者のご家族から精神保健に関する相談を受け、関係機関と連携した結果、医療に繋げることができた方がいました。業務を通じて他機関との連携やネットワークづくりを学ばせていただいたと実感した仕事でした。
中嶋:今は目の前の業務をがむしゃらにこなすので精一杯なのですが、何年後かには「保健師として大きな仕事ができたな」と感じられる成果が出せるといいなと思っています。
ーありがとうございました。