長野県軽井沢町役場、令和7年度に入庁した新人職員3名のインタビュー記事です。前職が電気工事士の上條さん、専門学校を中途退学して入庁した尾髙さん、民間学童保育所から転職された東海林さん。経歴も入庁時期も異なる3人が口を揃えて「業務に役立っている」と語るのが、毎月1回開催される若手職員を対象とした「フォローアップ研修」です。
「聞き手はアドバイスをしてはいけない」というユニークなルールの下で行われるこの研修が、どのように若手の不安を解消し、成長を促しているのかお聞きいたしました。
「誰かを最後まで支えたい」「憧れの地で働きたい」。三者三様の入庁ストーリー
ーまずは皆さんのご経歴と、軽井沢町役場に入庁したきっかけを教えてください。
上條: 前職は10年ほど電気工事士をしていました。結婚してこどもが生まれたのを機に、妻の実家がある佐久市へ引っ越すことになり、妻のすすめもあり公務員を目指しました。求人へ応募していく中で、軽井沢町が一番早く内定をくださったこともあり、ご縁を感じて入庁を決めました。

尾髙: 私は佐久市出身で、公務員専門学校に通っていました。もともと4月入庁を目指していましたが、軽井沢町で10月採用の枠があることを知り、応募しました。一番の理由は「軽井沢」というブランド力への憧れです。また、早く社会人になって家族の負担を減らしたいという思いもあり、専門学校を中退して一足早く入庁する道を選びました。

東海林: 前職は民間の放課後児童クラブで7年間働いていました。転職のきっかけは、民間では支援の限界を感じたことです。家庭の事情で利用料が払えなくなると、支援を打ち切らざるを得ない場面がありました。最後まで寄り添い続けられるのは行政しかないと思い、公務員を目指しました。
自宅から軽井沢までの通勤時間は多少かかりますが、軽井沢町を選んだ決め手は「住民との協働」に積極的な姿勢に惹かれたことでした。
それぞれの現場で感じる仕事の重み
ー現在担当されている業務内容について教えてください。
東海林: 児童手当などの公的扶助を担当しています。事務作業だけでなく、窓口で保護者の方からお話を聞く対人業務も意外と多いです。業務にも慣れて自分のアイデアを形にできる機会も増えてきたので、やりがいを感じています。
尾髙: 住民票の発行や印鑑証明の交付、マイナンバーカードの交付などが基本ですが、最近は戸籍の届出処理も勉強し始めました。死亡届や婚姻届など、人生の節目に関わる書類なので、責任の重さを感じています。窓口は混雑することもあり、臨機応変な対応が求められる毎日です。
上條: 水道施設の点検や維持管理を行っています。現場仕事と、報告書作成などの事務仕事が半分ずつくらいですね。前職の経験は活きていますが、役所ならではの「決裁」や「合意形成」のプロセスは民間とは違うので、そこは戸惑いつつも慣れていっている最中です。
「アドバイスはいらない」。若手職員がフラットに繋がる「フォローアップ研修」

ー軽井沢町役場では、若手職員向けの研修が充実していると伺いました。具体的にどのような内容なのでしょうか?
東海林: 入庁3年目までの若手職員を対象にした「フォローアップ研修」が月に1回開催されています。 人材育成アドバイザーの吉田創さんが講師として来てくださるのですが、知識を詰め込む座学ではなく、「経験学習」をテーマにしたワークショップ形式の研修です。
具体的には、この1ヶ月の業務の中で印象に残った出来事(ミスしたこと、クレーム対応、うまくいったことなど)を1つピックアップし、専用のワークシートに書き出します。
「なぜそれが起きたのか」「その時周りはどうだったか」「次はどうすればいいか」といった項目を言語化し、それをペアワークの中で共有します。
東海林:共有を受けても、聞き手はアドバイスをしてはいけません。 相手の話を遮らず、否定せず、ただ聞く。質問はしてもいいですが、それは相手が自ら答えを導き出すための手助けとしての質問です。
普段の業務だとどうしても「こうしたらいいよ」と答えを求めてしまいがちですが、この研修では「自分で考えるプロセス」を大切にしています。他部署の同期や先輩・後輩とペアになるので、普段関わりのない職員と話せる貴重な機会にもなっています。

ー実際に研修を受けてみて、気づきはありましたか?
上條:自分の中で何となく感じていたモヤモヤや出来事を「文章に書き出す」ことで、客観視できるのが良いなと感じています。 「あの時、自分はこう思っていたんだ」「実はこういう背景があったんだ」と冷静に分析できますし、ペアの方から全く違う視点の意見をもらうことで、「そういう捉え方もあるのか」と視野が広がります。
普段は水道の仕事で頭がいっぱいですが、他部署の方たちの話を聞くことで、役場全体の仕事が見えてくるのも面白いですね。

尾髙:ミスを振り返ることで、改めて基本的なことでもその大切さに気づくことがあります。例えば、「忙しい状況でも確認を怠らない」など。研修を通して、同じミスをしないような対応を考えるなど改めて業務に取組む姿勢が変わっていると思いますね。
東海林: 私は「聞く力」がついたと感じています。 相手の話を遮らずに最後まで聞くというのは、住民対応でも非常に重要です。相手がどういう思考プロセスでその結論に至ったのかを丸ごと受け止める訓練になるので、窓口業務にも活きていると思います。
お堅いイメージを覆す「温かいフレンドリーな職場!」
ー職場の雰囲気について教えてください。入庁前とのギャップはありましたか?
東海林: 良い意味でギャップがありました。入庁前は「役所=堅苦しい、静か、事務的」というイメージで、ピリピリしているのかなと覚悟していたんです。 でも実際は、すごく温かくてフレンドリーでした。
先輩が声をかけてお菓子をくれたり、雑談で盛り上がったり。もちろん仕事は真剣にやりますが、常に張り詰めているわけではなく、和やかな雰囲気で仕事ができています。 分からないことがあって他部署に電話をしても、皆さん嫌な顔一つせず丁寧に教えてくれるので、本当に人に恵まれているなと感じます。
上條: 私も民間の現場仕事が長かったので、役所の「書類を通して許可を得る」という手続きの多さには最初驚きました。 ただ、それは裏を返せば「組織として動いている」という安心感でもあります。一人で抱え込まず、チームで仕事を進める体制ができているので、相談もしやすいですね。
尾髙:窓口業務は事務的な印象を持っていましたが、実際は一人ひとりの状況に応じた柔軟な対応が求められていると感じました。また、思っていた以上に一緒に働く職員の方が話しやすく面白い方たちで協力しあいながら業務を行いとても楽しく仕事をすることができています。
ーワークライフバランスやプライベートについてはいかがですか?
東海林: 残業は繁忙期を除けばほとんどなく、定時で帰れています。有給休暇も非常に取りやすく、係内で調整すれば翌日の休みも可能です。私は趣味で吹奏楽を続けていて、土日は練習やステージがあるのですが、仕事と無理なく両立できています。 周りの職員も趣味を楽しんでいる人が多く、公私ともにアクティブな人が多い印象です。
尾髙: 私はまだ入ったばかりですが、先輩たちが優しく教えてくれるので安心して働けています。専門学校時代の友人と遊ぶ時間もしっかり確保できていますし、軽井沢という環境自体が良いので、これからもっと楽しんでいきたいですね。
住民の「やりたい」が溢れる町。軽井沢だからできる挑戦
ー最後に、軽井沢町役場で働く魅力について教えてください。
東海林: 軽井沢町は、住民の方々のエネルギーがすごいです。「こういうことをやりたい!」という熱い思いや、私たち職員が持っていないような専門スキルを持った方がたくさんいらっしゃいます。
住民の方々から刺激を受けながら仕事ができるのは、この町ならではの魅力だと思います。 「何かやってみたい」という住民の思いをサポートし、一緒に形にしていく。そんなクリエイティブな仕事ができるのが、軽井沢町役場の面白さです。
上條: 私は移住組ですが、軽井沢は自然豊かで環境が本当に素晴らしいです。仕事だけでなく、生活の場としても最高の場所だと感じています。 中途採用でもハンデなく活躍できますし、研修制度もしっかりしているので、公務員を目指す方は安心して飛び込んできてほしいですね。
尾髙:軽井沢町は、自然・観光・定住のバランスが取れた魅力のある町で、その発展と住民の方の生活を支えているということに大きなやりがいを感じます。住民との距離が近く、一つひとつの業務が町の未来に繋がっていると実感できる点が魅力だと思います。

ー本日はありがとうございました。
「アドバイスはいらない。ただ聞くだけ」フォローアップ研修のルールは、一見シンプルですが、多様な背景を持つ職員が集まる軽井沢町役場の「受容性」を象徴しています。世界的な軽井沢のブランドイメージの裏側には、若手の職員を成長させる効果的な研修がありました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年1月取材)




