福岡県小郡市で土木職として働く永渕さんのインタビュー記事です。
民間企業での多忙な日々から一転、公務員として新たなキャリアをスタートさせた永渕さん。今回は、そんな永渕さんの転職のきっかけや現在の働き方、そして大規模プロジェクトに携わった経験など、市役所で働く魅力についてたっぷりとお話を伺いました。
―まず、これまでのご経歴を教えてください。
永渕:出身は小郡市で、市内の公立の小中学校を卒業後、高校は久留米市内の高校に進学しました。親の勧めもあって理系を選択し、大学は県外の国立大学の工学部に入学。「社会開発システム工学科」で、物理学から水理学まで幅広く学びました。その後、大学院に進み、社会基盤工学を専攻しました。
大学院修了後は、建設コンサルタントとして民間の企業に就職し、5年間勤務しました。そこでは、官公庁から発注された道路の設計、都市計画などの業務に携わっていました。主に国土交通省関係の業務が多く、1年目は道路設計、2年目から5年目までは都市計画の部署で、高速道路の整備効果の分析や、地方公共団体の公共交通網形成計画(当時)の策定など、多岐にわたる業務を経験しました。
―民間から公務員を目指されたきっかけを教えてください。
永渕:本音を言うと、もう少し自分の時間が欲しかった、というのが一番の理由です。前職では本当に貴重な経験をさせていただいたのですが、夜遅くまで働く日も多く、満員電車での通勤も1時間半ほどかかっていたので、ワークライフバランスを考えると、このまま働き続けることに不安を感じていたんです。
具体的に転職を考えたとき、地元である小郡市で働ければ、通勤時間も短縮でき、時間に余裕が生まれるのではと思いました。
また、建設コンサルタントとして受注者側の立場を経験したことで、今度は発注者側として、これまでの知識や経験を活かせるのではないかと考えたのも、転職を決めた大きな理由の一つです。

―数ある自治体の中で、小郡市を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
永渕:やはり、自分が生まれ育った町だった、ということが大きいですね。前職で他の自治体の計画を立てる際も、自然と「小郡市の計画はどうなっているんだろう」と気になっていました。どうせなら、より情熱を持って取り組める地元で働きたいと思ったんです。それに、何より家から近いのは魅力的でした(笑)。
―現在の業務内容について教えてください。
永渕:今は道路改良の部署で、主に既存の道路の拡幅や、新しい道路の建設に携わっています。道路を作るには、設計から用地の取得、工事、そして供用開始まで、様々なステップを踏む必要があります。特に、用地取得は地権者の方々との交渉が不可欠で、道路事業の9割を占めると言われるほど重要な部分です。
―民間時代の経験やスキルが、今の仕事に活かされていると感じることはありますか?
永渕:それは大いにあります。まず、専門知識の面では、土木の設計に関する基本的な知識や専門用語は、前職で身につけたものがそのまま活きています。市役所に入ってからも、馴染みのある分野だったのでスムーズに業務に入ることができました。
もう一つ大きいのは、ソフトウェアのスキルです。建設コンサルタントの仕事は、限られた時間の中で、いかに効率的に、そして正確に成果物を出すかが求められます。そのため、設計ソフトや製図ソフト(CAD)、イラストレーター、GIS(地理情報システム)など、本当に多種多様なソフトを駆使していました。
市役所でも、互換性のあるソフトを使う場面は多いので、前職で培ったスキルは大きなアドバンテージになっています。
―これまでで最も印象に残っているお仕事は何ですか?
永渕:入庁後、最も心に残っているのは、佐賀県鳥栖市と県境をまたぐ「小郡鳥栖南スマートインターチェンジ」の建設事業です。この事業には、転職してからの6年間のうち、5年間携わりました。市の事業としては非常に規模が大きく、関係者も多岐にわたるため、調整は大変でしたが、その分、完成した時の達成感は非常に大きかったです。一つの事業にこれだけ長く深く関われたことは、私のキャリアにとって大きな財産になったと感じています。
―その大規模プロジェクトの中で、特に大変だったことは何ですか?
永渕:やはり、用地取得です。事業スケジュールがタイトな中、約30件の地権者の方々と交渉を進めなければなりませんでした。土地への思い入れが強い方も多く、交渉は簡単ではありませんでしたが、道路の重要性を丁寧に説明し、最終的には全ての方にご納得いただくことができました。
このような仕事は、正直、建設コンサルタント時代には全く想像していなかったところです。ただ、この経験を通じて、地域の方々とのコミュニケーションの大切さを改めて感じることができました。


―入庁前後で、市役所のイメージにギャップはありましたか?
永渕:入庁前は、公務員は受け身で堅苦しい仕事、というイメージがありました。しかし、実際に入ってみると、皆さん非常にクリエイティブで、積極的に問題解決に取り組む姿勢に驚きました。
―職場の雰囲気はいかがですか?
永渕:若手が多く、活気のある職場です。管理職の方々も気さくで、真面目に取り組むべきところはきちんとしながらも、いい意味での「ゆるさ」も持ち合わせている、そんな雰囲気です。若手の意見にも耳を傾けてくれますし、無理やりではなく、自然な形でコミュニケーションを取ってくれるので、非常に働きやすい環境だと思います。
私も係長という立場になりましたが、部下の意見はまず受け止めることを大切にしています。もちろん、自分の考えを伝えることもありますが、お互いの意見を尊重し合いながら、より良いものを作り上げていきたいと考えています。
―残業や休暇の取りやすさについてはいかがでしょうか?
永渕:残業は必要に応じてありますが、しなくてもいい時は、部下と一緒に早く帰るようにしています。休暇も非常に取りやすく、有給休暇の他に、夏季休暇や子育てに関する休暇といった制度なども整っています。前職では、休みを取るにも少し気を使う雰囲気がありましたが、今はそんなこともなく、プライベートも大切にしながら働けていると感じています。
―改めて、永渕さんが思う「小郡市の魅力」を教えてください。
永渕:私が勝手に言っているだけなんですが、小郡市は「福岡県の要である腰の位置」にあると思っています(笑)。
これはつまり、小郡市が福岡県の、ひいては九州の交通の要衝である、ということです。高速道路も鉄道もそれぞれが南北と東西に走り、交通の便は非常に良いです。先ほどお話ししたスマートインターチェンジの完成により、市内に2つもインターチェンジがある自治体になりました。これは現時点では全国的に見ても珍しいことだと思います。
それに、最近ではコストコもできて、街は今まさに発展の途上にあります。全国的に人口減少が急激に進む中で、人口も減ることなく、これからますます成長していくポテンシャルを秘めた街。それが小郡市の魅力です。
―最後に、これから小郡市の土木職を目指す方々へメッセージをお願いします。
永渕:土木職は、経験や知識が直接活かせる仕事です。即戦力として活躍したい方も、これから専門知識を身につけたい方も、一度は土木から離れていた方も、小郡市にはどなたでも輝ける環境があります。公務員と聞くと堅いイメージがあるかもしれませんが、実際は非常にクリエイティブで、自由な発想で仕事に取り組める、やりがいのある職場です。
将来性あふれるこの小郡市で、皆さんと一緒に未来を創っていけることを楽しみにしています!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年6月取材)