小郡市で建築職として働く松山さんのインタビュー記事です。
民間企業で14年間、設計や施工管理に携わってきた松山さん。家族との時間を大切にしたいという思いから、公務員への転職を決意されました。
民間での経験を活かしながら、公共建築という新たな分野で活躍する松山さんに、公務員の働きやすさや仕事のやりがい、そして小郡市で働く魅力について詳しく伺いました。
ーまずは自己紹介と、これまでの経歴を教えてください。
松山:大学を卒業して、民間の住宅会社に14年間勤めていました。父が大工をやっていて、小さい頃から現場に遊びに行くなど、建築が身近な環境で育ったんです。その影響もあって、大学では建築学科を選び、卒業後は「設計がやりたい」という気持ちで、木造住宅を扱う会社に就職しました。
その後、2つの自治体で経験を積み、現在は小郡市役所で建築職として働いて2年目になります。
ー14年間勤めた民間企業から、公務員へ転職しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
松山:14年という節目を迎え、民間での仕事はやりきったなという気持ちがあったのが一つです。そして、何より大きかったのが家族の存在ですね。3人目の子どもが生まれるタイミングだったのですが、当時の働き方では、なかなか家族との時間を作ることが難しかったんです。
民間企業では、育児に関する制度が今ほど整っていなくて、日曜日も子どもを連れて仕事に行くのが当たり前のような状況でした。「さすがにこのままでは子どもが可哀想だ」と思い、家族との時間をしっかりと確保できる働き方をしたいと強く思うようになりました。

ー転職活動では、最初から公務員を目指していたのですか?
松山:いえ、最初は民間企業への転職を考えていました。ただ、土日休みが確保できる会社がなかなか見つからなくて…。そんな時に、妻が「公務員の募集があるよ。年齢もギリギリでいけるんじゃない?」と見つけてくれたんです(笑)。
ーいくつかの自治体を経験されていますが、最終的に小郡市を選んだ理由を教えてください。
松山:前の自治体で働いていた1年間は、父が仕事中の事故で車椅子生活になったため、実家に戻って単身で生活を支えていました。家族は福岡に残していたので、父親たちの生活が落ち着いたタイミングで、また家族の元に戻ろうと考えたんです。
その時に、たまたま小郡市が建築職を募集しているのを知りました。民間時代に、小郡市内で50〜60軒ほどの住宅建築に携わっていて、申請などで市役所にもよく足を運んでいたので、とても馴染みがあったんです。「慣れ親しんだまちで、これまでの経験を活かせるなら」と思い、小郡市を志望しました。
ー自治体間の転職について、どのように感じられましたか?
松山:正直、「やることは一緒だろう」と思っていたのですが、実際には仕事の進め方や使用するシステムなど、細かいところは全然違いました。
また、転職を繰り返している変な奴と思われないかなと思っていましたが、入庁した頃も「なんだか受け入れてくれてる」というアットホームな雰囲気があり、職場に馴染みやすかったですね。

ー現在の具体的な仕事内容について教えてください。
松山:現在は都市計画課の建築指導係という部署で、主に開発業務と公共施設の営繕(改修工事)を担当しています。
開発業務というのは、宅地開発や大型店舗の建設などに関するもので、事業者の方から「この土地に建物を建てられますか?」といった相談対応や、それに伴う申請の事務処理が中心です。
営繕業務では、市内のコミュニティセンターや、温泉・トレーニング施設が入った健康福祉センターなど、公共施設の改修工事を担当しています。
小郡市は土地利用の動きが活発で、業務ウェイトが開発6割、営繕4割となる時期もあります。
ー開発業務が6割とのことですが、かなり多い印象です。どのような体制で業務にあたっているのでしょうか?
松山:そうなんです。実は小郡市は開発案件が非常に多くて、昨年度は福岡県内でナンバーワンの件数だったんですよ!それだけ小郡市が注目されてるということでもありますが。
ですので、窓口での相談対応と審査に追われる日も少なくありません。図面を描いたり積算をしたりする時間が少ないこともあります。
私が所属する都市計画課には、開発業務や建築確認、市営住宅の管理、公共施設の営繕などを担当しており、建築職の5人でこれらの業務を分担しています。建築指導係の他に、都市計画係に4人、大規模開発を専門に担当するベテランの職員が1人、そして課長がいます。

ー自治体の建築職として働く魅力や、やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
松山:やはり、「公共建築に携われる」ということですね。民間ではなかなか経験できないことですし、自分の仕事がまちの形になって残るというのは、大きなやりがいと誇りを感じます。
もともと図面を描いたり、現場で寸法を測ったり、業者さんと打ち合わせをしたりするのが好きなので、そういった業務に集中できる環境も魅力的です。民間時代に培った木造住宅の知識とはまた違う、鉄骨やコンクリート造の建物を扱うので、新しい発見があって面白いですね。
ー逆に、仕事で大変なことや苦労した経験はありますか?
松山:やはり、これまで経験のなかった「開発業務」を覚えるのは大変でしたね。民間では建物を建てる側の視点でしたが、今は土地の利用に関わる立場。立地条件や法規制など、全く新しい知識が必要だったので、そこは一から勉強しました。
また、公共施設の改修工事も、前の自治体で1年間経験はしましたが、まだまだ学ぶことばかりです。自信がない部分も多いですが、経験豊富な先輩方に教えてもらいながら、日々スキルアップに励んでいます。
ー公務員への転職の大きな理由でもあった「働き方」についてお伺いします。残業や休暇の取得状況はいかがですか?
松山:働き方は劇的に変わりましたね。土日はしっかりと休めていますし、残業も民間の頃に比べたらかなり減りました。月平均で20時間前後でしょうか。
休暇制度も充実していて、有給休暇はもちろん、夏季休暇もしっかり取れます。特に助かっているのが「子どもの看護休暇」です。我が家には子どもが3人いるのですが、急な発熱で病院に連れて行かなければならない時も、気兼ねなく休暇を取ることができます。
職場の皆さんが「大丈夫だよ」と言ってくれるので、本当にありがたいです。
ー民間企業での経験が、現在の仕事に活きていると感じることはありますか?
松山:そうですね、建物の規模感は違いますが、使われている材料や物の“納まり”に関する知識・経験は共通しているので、その辺りは大いに活かせていると思います。
「納まり」というのは、例えば「この場所にこの扉を取り付けたい」という要望があった時に、物理的に設置可能か、設置した場合に人の動線は確保できるか、といったことを判断する感覚のことです。
図面上では問題なさそうに見えても、実際の現場では「ここには入らないですよ」「これでは人が通れませんよ」ということがあります。こういった実践的な感覚は、設計と施工管理の両方を経験してきたからこそ身についたものだと感じていますし、今の仕事でも非常に役立っています。

ー最後に、これから小郡市の建築職を目指す方へメッセージをお願いします。
松山:公共建築という大きな建物に携われるのは、この仕事ならではの大きな魅力です。誇りとやりがいを持って働ける素晴らしい職場だと思います。
私のように民間企業からの転職で、公共建築の経験がなくても心配いりません。木造建築しか知らなくても、設計しかやっていなくても大丈夫です。建築に関する基本的な知識があれば、あとは経験豊富な先輩方が丁寧に教えてくれます。
皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしていますので、ご応募をお待ちしています。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年6月取材)