「企画段階から建物ができて運営されて解体されるまで、建物の誕生から終わりまでずっと携われるんですよね」
そう語るのは、岡垣町役場都市建設課で建築技術職として働く實松さん。大学院で建築を学び、設計事務所での勤務を経て入庁し、今年で入庁15年目を迎えました。
一方、工業高校で建築を学び、高校卒業後すぐに岡垣町へ入庁した近藤さんは現在4年目。先輩とともに、小中学校や公民館、複合公共施設など町内の公共建築物に幅広く携わっています。
今回は、岡垣町の建築技術職として働く魅力や仕事の内容、職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
- ものづくりへの憧れ、そして岡垣へ。それぞれの入庁までの道のり
- 公共建築を「発注する側」として担う。3フェーズで進む仕事の全貌
- 「やっとできた」その瞬間の感慨。心に残る、二つのプロジェクト
- 後輩ではなく“頼れる同志”。風通しのいい職場で育む、二人の関係
- ものづくりへの純粋な思いを、岡垣のまちへ。建築技術職をめざす方へ
ものづくりへの憧れ、そして岡垣へ。それぞれの入庁までの道のり
ーまず、建築の道を志したきっかけを教えてください。
實松:大学受験の頃ですね。デザインをしている人たちを見て、かっこいいなという憧れがあって志したのがきっかけです。大学・大学院と建築を専攻して、小さな設計事務所で働きました。
近藤:私は中学3年生の頃に、テレビで舞台セットを見て興味を持ったんです。「こういうものを作ってみたいな」と思って、ものづくりができる工業高校の建築科に進みました。学んでいく中で、将来は建築物に関わる仕事がしたいという気持ちが固まっていきました。
ーなぜ公務員を、そして岡垣町を選ばれたのでしょうか。
實松:国内外有名建築を見に行くのが好きで、特に建築デザインとそこで過ごす人が一つの風景となっている建築に惹かれました。一度は建築設計事務所で勤務しましたが、建物を作るだけではなく、その建築物が長く地域に愛され、暮らしを支え続けられるような仕事がしたいと思い建築系公務員を目指しました。
岡垣町には親戚が多く住んでおり、海好きの父親とも幾度となく通った幼少期から馴染みのある地域でしたので、建築系公務員の採用情報を見た時には運命を感じました。
近藤:高校時代に体調を崩した時期があって、進路指導の先生に相談したら「福利厚生なら公務員が一番」と言われたんです。建築に進みたいという気持ちもあって、設計から工事監理まで全体的に関われる公務員をめざしました。
岡垣町は先生がいくつか持ってきてくれた自治体の中の一つで、電車で通勤できる距離だったというのも選んだ理由の一つです。
ー近藤さんと岡垣町の接点は、入庁前からあったんですか?
近藤:もともと卓球をしていて、大会で「岡垣サンリーアイ」(岡垣町の複合公共施設)に何度か来たことがあったんです。その施設が公共建築だったと知って、今は実際にその施設を管理する仕事も担当しているので、なんか不思議な縁だなと思います。

公共建築を「発注する側」として担う。3フェーズで進む仕事の全貌
ーお二人が所属する都市建設課の建築係では、具体的にどのような業務を担っているのでしょうか。
實松:建築の改修工事に関わる設計の発注、工事の発注、それから新しい建築物の企画なども担当しています。岡垣町には小中学校・体育館・武道館・公民館・庁舎・町営住宅・複合施設の岡垣サンリーアイなど、50件ほどの公共施設があります。それらのメンテナンスが仕事の中心ですね。
ー工事が完成するまでには、どんな流れがあるのですか?
實松:大まかに3段階あります。まず1段階目に、公共建築物を所管している課の職員と打合せして、「どんなことをしたいか」をまとめます。2段階目に、打合せしたことを図面等にします。そして3段階目に実際に工事をする、という流れです。できあがった図面が「町がやりたいこととあっているか」を確認するのも大事な仕事です。
近藤:昨年度は例年より多めの14〜15件ほどの工事を担当しました。小さな改修工事であれば設計も自分たちで行って、工事を発注することもあります。
ー仕事の上で難しいと感じるのはどんな部分ですか?
實松:施設を所管する課の職員、施設を利用する人、設計事務所、工事関係者など、いろんなフェーズで多くの人と関わっていくのがこの仕事です。それぞれのニーズをどう引き出して、設計や工事の担い手にうまく伝えていくかというコミュニケーションが、この仕事の難しくも面白い点だと思います。
近藤:高校で建築の基礎は学んでいましたが、実際に現場に行くと知らないことがたくさんありました。例えば、塗料一つとっても、何十種類もあって工程も役割もそれぞれ違います。
現場で専門用語が飛び交うのを聞いて、戻ってから調べて…という繰り返しで少しずつ知識を積んできました。大変でもあるし、新しい発見もあって楽しいところでもあります。

「やっとできた」その瞬間の感慨。心に残る、二つのプロジェクト
ーこれまでで特に印象に残っているプロジェクトはありますか?
實松:おかがきPR課の改修ですね。岡垣町が町のPRに力を入れるため「おかがきPR課を作りたい」という話が持ち上がって、増築案から内部改修案まであれこれ試しながら進めていきました。玄関近くの場所にどんなレイアウトにすれば機能するかを、関係者とパースを描きながら一つひとつ詰めていきました。
ずっと「こうしたい。こうすればよくなるのでは!?」という気持ちを胸の中で温め続けながら業務に取り組んだので、完成したときの嬉しさはひとしおでした。
近藤:岡垣サンリーアイにキッズスペースを作ったことが印象に残っています。小さな工事だったので設計を私が行いました。岡垣サンリーアイは曲線が印象的な建築物なので、子ども達が好みそうな階段下のスペースに、曲線を用いたキッズスペースを計画しました。
初めての設計担当で本当にうまくいくかドキドキしましたが、完成後に小さな子どもと保護者の方が楽しそうに利用しているのを見たときは安心と同時にとてもうれしく思いました。今でも、岡垣サンリーアイに行く度に気になって見てしまいます。
ーできあがった時の達成感は、どんなものでしょう?
實松:プロジェクトは、企画から完成まで長い時間がかかります。そこにずっと自分たちが携わって、できたときの達成感は非常に大きいです。
近藤:公共建築は不特定多数の方が利用するので、子どもからご高齢の方まで、いろんな人の声が聞けるのも魅力です。基本的にはご要望やご意見をいただくことが多いので、勉強することが多いのですが(笑)、たまに「よかったよ」と言われるとめちゃくちゃ嬉しいですね。

後輩ではなく“頼れる同志”。風通しのいい職場で育む、二人の関係
ー職場の雰囲気や、上司・先輩との関係はいかがですか?
近藤:思ったことを伝えやすい環境だと思います。分からないことを「教えてください」と聞きやすいですし、課をまたいだやりとりでも、ざっくばらんに意見が言える雰囲気がありますね。
入庁したばかりの頃は、實松係長にマンツーマンで現場や打ち合わせに出ていただいて、業者さんとのやりとりを通じていろんなことを学ばせてもらいました。
實松:近藤さんはスポンジのようにいろんなことを吸収してくれるんです。設計内容や工事の進め方等、気づいたら自分よりも上手にやっているところもあるし(笑)、いろんなことに気づいてくれます。今はもう後輩というより、頼れる同志のような感覚を持っています。
ーワークライフバランスについては、いかがでしょうか。
實松:残業は多いときは多いといった感じで、夏休み以降に工事が増えてくる時期と年度末の工事や設計の完了が重なる時期が、特に忙しいですね。逆に落ち着いている時期は定時で帰れるので、メリハリはあると思います。
近藤:休みは取りやすいですよ。夏季休暇(年5日、6〜10月の間に取得可能)は昨年度も全部消化できました。

ものづくりへの純粋な思いを、岡垣のまちへ。建築技術職をめざす方へ
ー最後に、岡垣町の建築技術職をめざす方へメッセージをお願いします。
實松:純粋にものづくりが好きな人と一緒に仕事がしたいなと思っています。ものづくりへのピュアなモチベーションがあって、それを通じて社会貢献をしたいという気持ちがある方に、ぜひ来てほしいです。
近藤:岡垣町の公共建築全体に関われるという点で、やりがいを感じられる場所だと思います。企画段階から建物が誕生し、運営を経て解体されるまで、その一生の各段階で携われるのがこの仕事の醍醐味。ぜひ一緒に働きましょう。

ー本日はありがとうございました。
入庁のきっかけも経歴もまったく異なる二人ですが、お話をする姿はどこか穏やかで、互いへの信頼が伝わってきました。「同志」と呼び合うその関係性こそ、岡垣町の職場風土を象徴しているのかもしれません。
建物の一生に寄り添いながら、まちの暮らしを支える岡垣町・建築技術職の仕事。ものづくりへの情熱がある方はぜひ扉を叩いてみてください。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



