「踏み出さないと、始まらない。ダメだったら仕方がない、という気持ちで受けました」
そう穏やかに語るのは、令和5年度に岡垣町役場へ入庁し、生涯学習課 公民館係で社会体育を担当する惠良さん。北九州市出身で、卒業後は食品容器メーカーなどで営業職を経験してきた、民間からの転身組です。
今回は、社会人を経て公務員を目指す方に向けて、惠良さんが役場へ踏み出すまでの道のり、社会体育に関する業務を担う一般事務職の仕事、働き方や職場の雰囲気まで、たっぷりとお話を伺いました。
- 営業から役場へ。家族と地元のために選んだ、二度目の公務員チャレンジ
- 面接で語った「やりたい仕事」が、配属先に。社会体育を担う一般事務の現場
- イメージと真逆だった役場の仕事。突発対応の連続と、その先のやりがい
- 休みも取りやすい、ざっくばらんな職場。一歩を踏み出せない人へ
営業から役場へ。家族と地元のために選んだ、二度目の公務員チャレンジ
ー惠良さんのご経歴を伺えればと思います。
惠良:福岡県の北九州市の出身で、生まれてから大学卒業まで、ずっと北九州で過ごしてきました。大学ではスポーツ学部で学び、高校から続けていた陸上競技に打ち込んでいて、本当にスポーツしかしていない学生時代でしたね。
卒業後は、人と関わる仕事ならスポーツで培ったものを活かせるかなと思い、食品容器メーカーの営業職に就きました。大阪で3年半ほど働き、北九州を離れたのはその時が初めてでした。
ーそこから公務員を目指したのは、どんなきっかけがあったのでしょうか。
惠良:実は大学卒業時にも一度公務員試験を受けていて、その時は縁が無く民間に進みました。1社目を退職したタイミングで九州に戻り、福岡市で営業を2年半ほどしました。
社会人1年目で結婚し、妻も北九州の出身で、私は長男。いずれ両親のことも見ないといけませんし、出身地に戻りたい思いがずっとありました。また、子どもも2人おり、2社とも全国転勤があり得る会社で、転勤のたびに子どもの環境が変わるのは避けたいなと思ったんです。
公務員なら過ごしてきた地域に安定して住み続けられる。年齢的にも最後のチャンスでしたから、「ダメだったら仕方がない」という気持ちで受けてみようと思いました。
ー数ある自治体の中で、岡垣町を選んだのはなぜですか。
惠良:北九州から通える範囲で探していたところ、ちょうど岡垣町が追加の採用試験を行っていたんです。私は北九州市の中でも遠賀郡寄りに住んでいるので、通勤は車で30分、混んでいても40分ほどと、意外と近いんです。
ー働きながらの受験勉強や面接は、大変だったのではないでしょうか。
惠良:営業なので数字も作りながら、勉強の時間をどう作るか。家族もいますから、一人の時間はなかなか取りづらくて…。
ただ、幸いなことに、岡垣町は一次試験がSPI3でした。学生時代の就活で対策はしていたので、専門的な準備をそこまでせずに臨めました。負担を少なく準備できるという点でも、これはチャンスだなと思いました。
個人面接は町長、副町長、教育長が並んでいて、うまく答えることに必死で、何を聞かれたかあまり覚えていないくらいです(笑)。ただ「役場で何がしたいか」と聞かれて、ずっと陸上をしてきたので地域のマラソン大会を支えたい、と希望の配属先まで挙げたのを覚えています。

面接で語った「やりたい仕事」が、配属先に。社会体育を担う一般事務の現場
ー令和5年度に入庁され、配属は生涯学習課の公民館係。具体的なお仕事を教えてください。
惠良:公民館係の中でも、私は社会体育の担当です。面接で「やりたい」と話した、まさにその分野に配属され、体育施設の管理、町のスポーツに関する事業の運営、町民がスポーツに親しむための環境づくりなどを担当しています。
勤務は公民館なので、公民館や体育館の予約操作、不具合対応といった窓口業務にも携わっています。
ースポーツ教室は、どれくらいの頻度で開かれるのでしょう。
惠良:子ども向けもあれば、高齢者向けの運動教室もあって、内容は多種多様です。毎月1回は何かしらのイベントを土日に開いていて、大きな行事が続くのは10月、11月。スポーツの秋なので、そこが繁忙期ですね。
ーイベントは、準備から開催後まで、どんな流れで進むのですか。
惠良:スポーツ推進委員さんや体育協会の方々が運営をサポートしてくださいます。委員さんと毎月1回打ち合わせをして進め方を決め、当日は進行をお手伝いする形です。
イベントの周知は、チラシを設置したり、小中学校に通っている子どもが対象なら学校に協力いただき、チラシを全員に配っていただいたり、広報誌やホームページにも載せます。
申し込みの受付もこちらで行い、終わったあとはアンケートを取って委員さんに課題や反省点等を報告し、次年度の改善をまとめます。そこに至るまでに本当に多くの関係者と関わるので、真摯に対応する事を、自分の中で最も大事にしています。

イメージと真逆だった役場の仕事。突発対応の連続と、その先のやりがい
ー入庁前に抱いていた公務員像と、ギャップを感じることはありますか。
惠良:もともとは、定例的な業務を窓口でこなすイメージがありましたが、実際は真逆でしたね。施設の修繕も突発的に声が上がりますし、地元のプロスポーツチームと連携協定を結ぶような、予定していなかった業務も入ってきます。窓口で申請を受けて証明書を交付する、というイメージとは、もう全く違いました。
ー大変だな、と感じるのはどんなところでしょう。
惠良:やはり、イベントを開催する都合上、土日の出勤が多いことですね。公務員は平日勤務で土日休み、というイメージを私自身も持っていたので、そこはギャップでした。
イベントの直前などは、残業することもあります。家族がいる中で土日の出勤が入ってくるのは、今の部署ならではの厳しさかなと。正直にお伝えすると、これは現実としてあります。
ー逆に、やりがいや達成感を覚えるのはどんなときですか。
惠良:イベント後のアンケートに「すごく楽しかったです」と書かれていることがあって、そういう嬉しい声を直接聞ける部署なんです。また、当日、参加者の楽しそうな表情を目の前で見られるのも、この仕事ならではですね。
特に印象的だったのが、令和6年度の「ツール・ド・九州」という自転車の国際大会で岡垣町・宗像市がコースとして選ばれた際、私は大会前のイベントとして自転車に乗れない子ども向けの「初めての自転車教室」を主担当として開きました。
前例のないイベントで調整は苦労もありましたが、自転車に乗れない子が一生懸命に練習し、少しでも上達して帰る姿を見れて、やってきてよかったと心から思えました。初めて一人で動いた事業でもあって、一番印象に残っています。


休みも取りやすい、ざっくばらんな職場。一歩を踏み出せない人へ
ー職場の雰囲気はいかがですか。
惠良:職員同士、すごくざっくばらんに話せる環境です。不安なことがあれば上司にすぐ確認できますし、休みもしっかり取れます。私自身、イベントでの出勤が土日にある中で、子どもの行事と重なることもあって。
そのときに「子どもの行事なので、この教室をお願いできますか」と相談すると、「全然行っていいよ」と言ってもらえるような、とても温かい職場環境です。

ー休暇や残業の実態、民間時代と比べて変わったと感じる点はいかがでしょうか。
惠良:秋は行事が重なり、準備や資料作成で残ることが増え、土日出勤も丸一日になることがあります。ただ、休日に出勤した分は、一定時間以上なら振替休日として取得できますし、夏季休暇5日間も前年度は全部消化、有給休暇も10日間くらいは取れています。営業の頃は休日でも電話がかかってくる可能性があって安心して休めませんでしたが、今は気持ちの持ちようが全く違いますね。
残業も勤務した分はしっかり支払っていただける。民間だと固定給のところもありますから、そこは大きく変わったと感じます。
ー最後に、惠良さんと同じように社会人を経験され、公務員に一歩踏み出せずにいる方へメッセージをお願いします。
惠良:何事も、踏み出さないと始まらないと思うんです。私自身、「踏み出してダメだったら仕方がない」という気持ちで受けました。まずは一歩踏み出しチャレンジすること。それを一番お伝えしたいです。
私はずっと北九州で育ち、岡垣町は正直、縁もゆかりもない土地でした。でも実際に働いてみると、自然が豊かで、人もとても温かい。アクセスも良く、北九州市民の私でも車で十分通えます。
町をよく知る町民の方はもちろんですが、町外の人でも通いやすく、皆を支えてくれる雰囲気のある町です。ぜひご応募をお待ちしています!

ー本日はありがとうございました。
問いのひとつひとつに、ゆっくりと言葉を選んで答えてくれた惠良さん。家族のために安定を選び、最後のチャンスと自分に言い聞かせて踏み出した一歩。その先で出会ったのは、窓口で完結しない、人と関わり続ける現場でした。
乗れなかった子どもたちが自転車をこぎ出す瞬間に立ち会えるのは、社会体育を担う一般事務職ならではの景色なのでしょう。
「踏み出さないと、始まらない」――その言葉は、かつての自分自身への答え合わせのようにも聞こえました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



