「自分には専門的なスキルがないから、新しい分野への挑戦は難しいかもしれない」 転職を考えるとき、そんな不安が頭をよぎることはありませんか? 特に「自治体DX」という言葉を聞くと、高度なIT知識が必要だと身構えてしまうかもしれません。
静岡県森町。 三方を山に囲まれた自然豊かなこの町で、未経験からデジタル推進の最前線に立ち、組織の変革を担っている一人の職員がいます。 今回お話を伺った三瓶さんは、「ITは絶対にできない」と思っていたくらいにITとは無関係の経験。そんな彼女が、なぜ森町役場を選び、入庁わずか半年でアプリ開発や事業のメイン担当を任されるようになったのでしょうか。
そこにあったのは、コンパクトな組織だからこそ得られる「裁量」と、挑戦を後押しする温かい「信頼」でした。 「公務員=前例踏襲」というイメージを覆す森町の風土と、民間企業の経験が活きる意外な瞬間について、三瓶さんの等身大の言葉で語っていただきました。
- 「IT、絶対できない」からの挑戦。デジタル推進係で挑む業務改善
- 前職は営業企画と採用担当。活きる「考える力」と「伝える力」
- 「裁量の大きさ」を求めて森町へ。転職して感じた良い意味でのギャップ
- 「未来のまちづくり」に貢献するやりがいと、メリハリある働き方
- 変化の最前線へ。コンパクトな組織で一緒に未来を創る仲間を募集
「IT、絶対できない」からの挑戦。デジタル推進係で挑む業務改善
ーまず簡単に、三瓶さんの今のお仕事内容について教えていただけますか?
三瓶:私は現在、政策企画課デジタル推進係(以降、デジタル推進係)に所属しており、オンライン化ツールなどを活用して、各課の業務改善を支援するのが主な仕事です。
庁内では今、オンライン申請のWebフォームや、プログラミング知識がなくても業務アプリが作れるツールを導入しています。こうしたツールを活用して、各課の課題解決や業務改善を技術的にサポートしています。
ーもともとアプリ開発などの専門的な知識があったのでしょうか?
三瓶:それが、私自身ここに入るまで「ITは絶対できない」と思っていたんです(笑)
実は、最初にデジタル推進係への配属を聞いた時、「私には無理だ」と思ったくらい苦手意識がありました。前職もITとは無関係の業界だったので、正直言って業務が務まらないのではないかと思っていました。
そんな中、今年の4月に入庁してしばらくすると、職員係から「休暇申請を電子化したい」という依頼が来たんです。

ーいきなり大きなミッションですね。どう乗り越えたのですか?
三瓶:最初は何をしていいのか全然わかりませんでした。アプリ開発ツールを利用して休暇申請用のアプリを作成したのですが、ノーコードツールとはいえデータベースの知識はあった方がよいと考え、プライベートの時間も使って基本の「キ」から勉強しました。
幸い、上司がIT企業出身で専門性が高く、アプリ開発ツールにも詳しい方だったので、わからない部分は上司に手厚くサポートしていただきながら、なんとか「休暇申請アプリ」を完成させることができました。
今までは紙で管理・集計していたものが、申請から承認、集計まで全てシステムで完結できるようになり、職員係の方からも「すごく楽になりそう」と喜んでもらえました。
最初はあんなに拒否感があったITも、仕組みがわかってくると「面白い」と感じるようになり、今ではもっとスキルを身につけたいと前向きに取り組んでいます。

前職は営業企画と採用担当。活きる「考える力」と「伝える力」
ー前職では、全く違うお仕事をされていたんですね。
三瓶:はい。大学を卒業してから2社経験し、1社目は商業施設のデベロッパーで営業企画を、2社目ではインフラ企業で採用担当をしていました。
ITスキルはゼロからのスタートでしたが、これまでの経験が活きていると感じる部分はたくさんありますね。
ーどのような経験が活きていると感じますか?
三瓶:一番は「自分で考えてコミュニケーションを取りながら進めていく」という姿勢です。
前職も、ただの事務作業ではなく、どうすれば来館されるお客様が喜ぶか、どうすれば良い人材を採用できるかを常に考え、関係者と調整しながら進める仕事でした。
DX推進は、単なる「IT化」が目的ではありません。デジタルも活用して、業務のあり方や住民サービスを「変革」し、住民サービスの利便性向上など新しい価値を生むことが目的です。
そのためには、各課の職員とたくさんコミュニケーションを取り、「業務のあり方」から一緒に見直していく必要があります。そういう点で、前職での経験はすごく活きていますね。
また、採用担当として人前で話すことに慣れていたのもよかったです。先日、庁内のオンライン化ツール活用研修の一部を担当したのですが、多くの方々から「わかりやすかった」と褒めていただきました。これまでの経験が活きたなと実感した瞬間ですね。
ー逆に、民間から転職して「公務員ならではの難しさ」を感じることはありますか?
三瓶:「文章を読む作業」ですね(笑)
民間時代はこんなに大量の文字を読むことがなかったので、様々な通知を読み解いて、調査回答の案を作ったりする作業は、慣れるまでに時間がかかりました。
「裁量の大きさ」を求めて森町へ。転職して感じた良い意味でのギャップ
ーそもそも、なぜ民間企業から公務員へ、そして森町を選んだのでしょうか?
三瓶:前職は静岡市勤務だったのですが、結婚を機に磐田市へ引っ越しました。磐田から静岡まで片道1時間半弱の通勤だったので、これをずっと続けるのは大変だな、と思ったのが最初のきっかけですね。
この先も磐田に住むことは決まっていたので、通勤できる範囲で腰を据えて働ける場所を探し始め、転勤のない「自治体」が選択肢に上がりました。
もちろん森町以外でも様々な自治体があるのですが、その中でも森町を選んだ決め手は「裁量」です。漠然とではありますが、仕事をしていく上で、自分である程度裁量を持って仕事がしたい、という想いを持っていたんです。
森町は近隣と比較してもコンパクトな組織なので、一人ひとりの役割が大きく、裁量の大きな仕事ができるんじゃないか。その分やりがいも感じて成長できるだろうと考え、受験することを決めました。
ー実際に入庁してみて、事前に考えていたイメージとのギャップはありましたか?
三瓶:まさに、「良い意味でのギャップ」がありました。
裁量を求めてはいたものの、正直、公務員の仕事は前例踏襲で、決まったやり方を正確に進めていくことが重要視されると思っていたのですが、森町は職員一人ひとりが「今のままじゃいけない。変えていく必要がある」という意識をきちんと持っていて、変化を恐れずに行動されている方が多いんです。
そして期待していた「裁量の大きさ」も想像以上でした。今、デジタル推進係は係長と私の二人体制なので、業務の一部ではなく、主担当としてたくさんの役割を与えてもらっています。
例えば、デジタルデバイド対策で「スマホ教室」の運営を担当しているんですが、それも業者との調整から実施まで、入庁半年だった私に任せていただきました。
ー入庁半年で事業のメイン担当となるのはすごいですね。
三瓶:もちろん「丸投げ」という意味では全くなくて、上司がしっかりサポートしてくれる体制があります。アプリ開発の時もそうでしたが、わからないことがあれば、きちんと分かりやすく説明してくれます。
「この通りやって」と指示されるのではなく、「自分で考えながらやってごらん」と、自分で考えて進めることができる環境です。だからこそ、成長しながらここまで業務を進めることができたと思います。入庁前に「やりたい」と思っていたことが、しっかり叶えられている実感がありますね。
「未来のまちづくり」に貢献するやりがいと、メリハリある働き方
ーDX推進という、まさに町の変革に携わる仕事ですが、どのような時に「やりがい」を感じますか?
三瓶:やはり、自分の仕事が職員の業務効率化や、その先の住民サービス向上に貢献できていると感じる瞬間ですね。
小さいところでは、自分が作った仕組みや支援に対して、職員の方が「すごく楽になったよ、ありがとう」と声をかけてくれる時に、「やってよかった」と素直に嬉しくなります。
そして、もう少し大きな視点で言うと、今自分がやっていることは、この森町が未来も存続し続けるための、未来のまちづくりにつながる取り組みなんだと感じています。
自分の仕事がそういう大きなものに貢献できていると思うと、責任は大きいですが、その分、何事にも代えがたいやりがいを感じます。

ー一方で、DX推進というと忙しいイメージもありますが、働き方はいかがですか?
三瓶:前職の時はテレワークやフレックスも使える環境だったので、「働き方」という面では、少し選択肢が減るのかなと入庁前には思っていました。
実際に働いてみると、テレワークといった制度はまだ確立されていないものの、休みがしっかり取れるので、働く環境としては恵まれていると感じています。
有給休暇も初年度から付与されますし、課内の管理職や係長は休暇を取得しやすい雰囲気を作ってくださっているので、休暇を申請しにくいと感じたことはありません。
残業については、業務が立て込んでいる時は残業することもありますが、毎日遅くまで残業なんていうことはありません。業務が落ち着いているときは定時で帰りますし、メリハリを持って働くことができていますね。
変化の最前線へ。コンパクトな組織で一緒に未来を創る仲間を募集
ー三瓶さんから見た「森町役場」は、どんな職場ですか?
三瓶:一言でいうと「風通しが良い」ですね。コンパクトな組織なので、職員同士の距離が近くて、連携して仕事が進めやすいです。
そして、皆さん本当に優しい方が多いです。困ったことがあったら、誰に聞いても優しく教えてくれますし、人に恵まれた環境だと感じています。
ちなみに、私の代は20人くらい採用されたのですが、新卒は8人で、残りは全員社会人経験者なんです。警察官だった人や営業だった人など、バックグラウンドが様々ですごく面白いですね。中途入庁の方も多いので、住んでいる場所や経験に関わらず、誰でもすぐに馴染めると思います。
ーでは、そんな森町役場には、どんな人が向いていると思いますか?
三瓶:まさに今、森町は「変わっていこう」という機運がすごく高まっている変革期です。
だからこそ、変化を恐れずに新しいことにチャレンジしたい方、そして、それを自分の力で進めていきたいという主体性のある方は、すごく活躍していただけると思います。
私も最初は「民間からの転職組だし、意見とか言いにくいのかな」なんて思っていたんですけど、全然そんなことはありませんでした。打ち合わせでも係長が「三瓶さんどう思う?」と積極的に意見を聞いてくれますし、その意見を歓迎してくれる雰囲気があります。
ーでは最後に、求職者の方へメッセージをお願いします!
三瓶:コンパクトな組織だからこそ、職員同士が積極的にコミュニケーションを取りながら仕事を進められるのが森町の良いところです!そのような環境で、『自分の裁量で新しいことに挑戦したい!』という想いを持っている方は森町であれば実現していただけると思います。
ぜひ、変革期にある森町を一緒に盛り上げていけたら嬉しいです!

ー本日はありがとうございました。
「最初はITが本当に苦手で……」と苦笑いしながら語る三瓶さんですが、その表情はとても晴れやかでした。未経験の壁を乗り越えられたのは、ご本人の努力はもちろんのこと、森町という組織が持つ「失敗を許容する優しさ」があったからこそだと感じます。
「丸投げ」ではなく、信じて「任せる」。 困ったときは、手を止めて一緒に考えてくれる。
そんな上司や仲間の存在がセーフティネットとなり、思い切ってバットを振れる環境がここにはあります。 組織がコンパクトであることは、一人ひとりの責任が重くなることと同義ですが、森町においては「誰かが必ず見ていてくれる安心感」の裏返しでもあるのでしょう。 自分の経験を信じて、新しい舞台で大きく羽ばたきたい。そう願う人の背中を、森町は力強く、そして温かく押してくれるはずです。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



