豊明市役所で建築職として働く森下さんと桐部さんのインタビュー記事です。民間企業(ゼネコン)・県の外郭団体での経験を経て、なぜ豊明市で働くことを決めたのか。
現在の仕事内容や、自治体で建築の専門知識を活かすことのやりがい、民間企業との違い、そして気になるワークライフバランスまで、詳しく語っていただきました。建築職を目指す方、必見です!
ーまずはお二人のこれまでのご経歴と、現在の所属部署について教えてください。
桐部:私は愛知工業大学の建築学科出身で、研究室では構造を研究していました。
卒業後は、親や祖父が建築の現場関係の仕事をしていた影響もあり、ゼネコンに就職しました。新築マンションの現場監督を2年半ほど務めましたが、体力的にも厳しいと感じ、転職を決意しました。
その後、三重県の建築関係の外郭団体で、主に建築技師がいない小規模市町村への技術的アドバイスや固定資産税調査などに3年半〜4年ほど携わりました。
1人っ子ということもあり、今後のことを考えて地元の名古屋近辺で仕事を探していたところ、豊明市役所にご縁があり、現在は都市計画課に所属しています。
森下:私は元々理系で、中でも建築が一番身近でイメージしやすかったので建築の道に進みました。
桐部さんと同じく愛知工業大学の建築学科に進学し、卒業後はゼネコンに7年間勤めました。主に自動車メーカーの工場の営繕業務を担当していましたが、新築の現場も2回経験しました。
子どもが生まれたことを機に転職を考え、豊明市役所に入庁し、現在は行政経営部公共施設管理課に所属しています。

ーなぜ公務員、そして豊明市役所を選ばれたのでしょうか?民間企業からの転職とのことですが、きっかけなどあれば教えてください。
桐部:豊明市役所への転職は、友人に誘われて参加した転職フェアがきっかけでした。祖母が刈谷市に住んでおり、よく豊明市を通っていたので馴染みがありましたし、ちょうど建築職の募集があったので、これも縁かなと。
森下:転職を考え始めたタイミングで、豊明市役所のウェブサイトなどを調べる中で、豊明市の公共施設管理課ならこれまでの建築の知識を活かせると思い志望しました。面接でも「この課でこういう仕事がしたい」と伝え、幸運にも希望通り配属されました。
ー転職活動の際、どのような準備や対策をされましたか?
桐部:私は対策としては特にないですが、試験はSPIと小論文だけでした。面接は2回ありましたが、すごく緊張しました!でも、面接官の方々は和やかな雰囲気を作ってくださっていたと思います。
森下:私はSPIの対策を仕事の合間に勉強しました。面接対策としては、豊明市役所のウェブサイトに載っていた市の将来計画や開発計画などを読み込み参考にしました。
ー現在のお仕事内容について、具体的に教えていただけますか?
桐部:都市計画課では、街づくりに係る業務を主に担当しています。その中でも、私は開発許可や建築許可の申請受付を担当しています。申請されたものの法的な確認などを行ったり、相談を受けたりしています。
また、市が行っている木造住宅の耐震改修補助事業にも関わっていて、申請書のチェックや耐震工事の中間検査なども担当しています。関わる相手としては、業者の方が6割、市民の方が4割くらいですね。
森下:公共施設管理課では、公共施設の工事に関する発注から監督までを一貫して担当しています。設計書や図面の作成、積算、発注業務、そして実際の工事の監督などですね。
具体的には、学校施設の屋根改修などを担当しました。現場に足を運んで、図面通りに工事が進んでいるか、数量が合っているかなどを確認することもあります。
デスクワークが中心ですが、現場に出ることもあります。担当する工事は、金額や規模の大小含め様々です。

ーお仕事の中で、特に「やりがい」や「魅力」を感じるのはどのような時ですか?印象的なエピソードがあれば教えてください。
桐部:やりがいを感じる瞬間はいくつかありますね。
一つは、窓口での市民の方とのやり取りです。以前、県営住宅のパンフレットについて質問に来られた外国の方がいました。日本語があまり得意でない方でしたが、英語でコミュニケーションを取り、希望に合いそうな住宅をいくつか提案したんです。
後日、その方が再び窓口に来られて、「家が決まったよ、君に話せてよかった」と言ってくださった時は、本当に嬉しかったですね。
もう一つは、耐震改修の業務です。費用面で躊躇される方も多いのですが、二次災害のリスクや、例えば「お子さん家族が戻ってきたときに住めますよ」といったような改修後のメリットを粘り強く説明することで、改修を決断してくださった方がいたんです。その時は「よっしゃ!」と思いました。
特に耐震化は、こちらから働きかけないと進まない分野なので、試行錯誤しているところです。今、能登半島地震を受けて関心が高まっているこのタイミングで、作成したチラシなどを通じて、どうすれば残りの耐震化率を上げていけるか、成果がどう表れるか、今後楽しみでもあります。

森下:やはり公共性の高い建物の管理や発注に携われる点は大きな魅力で、地域への貢献を実感できる部分です。
また、自分が子どもの頃に通ったような小学校や中学校などの建物が、自分が作成した設計書や図面通りに綺麗に改修されていくのを見るのも、感慨深いものがありますし、やりがいを感じますね。

ー民間企業や、公共機関でのご経験もあるお二人ですが、豊明市役所の仕事との「違い」を感じる点はありますか?
桐部:一番の違いは、何をするにも「決裁」が必要なことですね。前の職場も官公庁関係ではありましたが、ペン1本買うのにも決裁が必要というのは、正直驚きました。
あとは、民間企業ほど厳しい納期に追われることは少ないかもしれません。その分、自分のペースで仕事を進めやすい面もあると感じています。

森下:民間との違いで大きいのは、やはり「説明責任」ですね。設計書一つにしても、「なぜこの金額なのか」「なぜこの仕様なのか」という根拠を、比較検討資料などに基づいて、市民の方や議員の方にいつでも説明できるように準備しておく必要があります。
民間なら自社の判断で進められる部分も、税金を扱っている以上、その使い道について明確な理由を示す必要がある。そこは大きな違いであり、大変さでもあります。
ただ、工事の内容などについては私の場合は前職と業務内容が似ている部分も多く、専門知識も活かせているので、ギャップはそこまで大きく感じませんでした。

ー職場の雰囲気や人間関係はいかがですか?
森下:私の所属する公共施設管理課は、建築技師が多く在籍しているので、専門的なことで分からないことがあっても、周りにすぐ聞ける環境が整っています。これは、特に経験の浅い職員にとっては非常に心強いと思います。皆さん気にかけてくれますし、良い雰囲気です。
桐部:私の係も、年齢の近い職員が多くて和気あいあいとしていますよ。係長もフランクな方で、仕事で叱られた後でも一緒にカラオケに行くくらいです。私と森下さんも、よくランチに一緒に行ったりしてますね。
また、豊明市全体でも建築技師が多く、困ったことがあったら相談しやすいと思います。
ーワークライフバランスについてはいかがでしょうか?残業時間や休暇の取りやすさなど、実情を教えてください。
森下:建設業界自体が波のある業界なので、時期によっては忙しくなりますが、前職(ゼネコン)と比べると、ワークライフバランスは格段によくなったと感じています。
残業時間は平均すると月10~15時間くらいでしょうか。もちろん、年度末などはもう少し増えますが。
桐部:私も同じくらいですね。休暇も、前の職場より全然取りやすいです。去年は11日か12日くらい取ったかな?
森下:私も15日近くは取っていると思います。

ー豊明市という「まち」の魅力はどんなところにあると感じますか?
桐部:個人的には、「そこそこ都会でそこそこ田舎」というバランスがいいところですね。名古屋市内へのアクセスも良いですし。実家からも車で20分くらいと近いです。
あとは、緑が多いところも魅力ですね。特に市の北部に行くと、名古屋から近いのに山奥のような景色が広がっていたりして、驚きます。
森下:交通の便は本当にいいですよね。国道23号線や1号線、主要な道路が通っていますし、名鉄も利用できます。車での移動は特に便利だと思います。
ー最後に、これから豊明市役所を目指す方々へメッセージをお願いします。
森下:「公務員」や「市役所の技術職」というと、少しハードルが高いと感じるかもしれません。「自分にできるだろうか」「資格がないと無理なのでは」といった不安もあるかもしれません。私自身もそうでした。
でも、実際には資格や経験はもちろん大切ですが、それ以上に学ぶ意欲や地域に貢献したいという気持ちが重要だと思います。特に豊明市役所は、建築職であれば周りに相談できる先輩がたくさんいます。先入観にとらわれず、ぜひチャレンジしてみてほしいです。
桐部:森下さんがまとめてくれましたが、本当にその通りだと思います。私も最初は不安がありましたが、入ってみると周りのサポートも手厚いですし、やりがいのある仕事がたくさんあります。少しでも興味があれば、ぜひ挑戦してほしいですね。
—本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年3月取材)