「完璧な答えは求めていません。リラックスして、あなたの本当の姿を見せてほしいんです」
愛知県豊明市役所で採用を担当する秘書広報課の西森さんと、指導保育士の柴田さん。
令和8年度の採用試験から、豊明市は大きな改革に踏み切ります。
全職種での小論文廃止や、保育士試験における1次試験のSPI廃止など、これまで以上に「直接会って人を見る」ことを重視。さらに、合否に関係のない「カジュアル面談」を計画するなど、受験者の不安に徹底的に寄り添う姿勢を打ち出しています。
今回は、大きく変わる試験制度の狙いや面接でのポイント、そして全国的にも珍しい「子連れ出勤」制度など、豊明市ならではの魅力についてお二人にお話を伺いました。
「筆記より、直接会いたい」。小論文・SPIを廃止した理由
ー本日はよろしくお願いいたします!まずは、来年度の採用試験における大きな変更点について教えてください。
西森:まず全職種に共通する変更点として、「小論文試験」を廃止します。近年は生成AIの普及などもあり、事前の準備によってある程度対策ができてしまうため、受験者ご本人の本当のお考えや能力が見えづらくなっていると感じていました。
また、優劣をつけるのが難しいという側面もあります。 私たちが探しているのは「この人と一緒に働きたいな」と思える人です。だからこそ、筆記試験よりも、対面でお会いする時間を重視し、人物重視で採用を進めていきたいと考えました。

ー保育士の試験についても変更があるそうですね。
西森:保育士試験については、これまで1次試験で行っていた「SPI試験」を廃止します。1次試験から実際に足を運んでいただき、実技や面接を通して「人」を見させていだく形に変更しました。それに伴い、これまで3次試験まであった選考を2次試験までに短縮し、内定の時期も6月末〜7月頭頃と、従来より1ヶ月半から2ヶ月ほど早まる予定です。より多くの方に受験していただき、豊明市の魅力を知っていただきたいと思っています。
実技試験は「上手さ」より「姿勢」。緊張して頭が真っ白になっても大丈夫
ー1次試験から面接や実技が行われるとのことですが、保育士の試験ではどのような点を見られているのでしょうか?
柴田:保育という仕事は「人が人を育てる」仕事ですので、やはりお人柄を重視しています。子どもに対して最善の利益を求められるか、子どもの気持ちを中心に考えているか。そして、チーム力がとても大切になる職場ですので、自分の考えを述べるだけでなく、相手の意見も聞ける「対話」の姿勢をポイントとして見させていただきます。

ー実技試験については、やはり「上手さ」が求められるのでしょうか?
柴田:人には得手不得手がありますから、上手であるに越したことはありませんが、決してそこだけを見ているわけではありません。例えばピアノを間違えてしまったとしても、目の前にいる子どもを想定してどう声をかけながら進められるか。失敗した時にどういう姿勢でリカバリーできるかという、保育に向かう「姿勢」や「雰囲気」を見せていただきたいと思っています。
ー試験本番は、どうしても緊張してしまう学生も多いと思います。
西森:豊明市の面接は、かなり和やかな雰囲気で進みますので、気負わずに来ていただきたいですね。もし緊張して頭が真っ白になり、言葉が出てこなくなってしまったら、「落ち着くために少し時間をいただけますか」と言っていただければ、全然待ちます!
最初から「完璧な答えは求めていませんよ」とお伝えしていますし、面接前の待機室でも、職員が話しかけて緊張をほぐすようにしています。皆さんが持っている本来の力を発揮していただくのが一番ですから。
本音で話せる「カジュアル面談」を計画。ミスマッチを防ぐために
ー今回、最終試験の前に「カジュアル面談」を導入される予定と伺いました。これはどのような取り組みなのでしょうか?
西森:最終試験の前のタイミングで、希望者の方を対象にオンラインで実施する予定です。選考の合否には一切関係ありません。 試験の場では、実際の職場の雰囲気や働き方、制度について「こんなこと聞いてもいいのかな?」と遠慮してしまい、なかなか聞きづらいこともあると思います。そういった不安や不明な点を、面接ではない「ライトな場」で何でも聞いていただき、解消した上で最終試験に臨んでいただきたいという意図があります。
ー受験生にとっては非常にありがたい機会ですね。
西森:入庁してからのミスマッチは、お互いにとって一番良くありませんからね。この面談を通して、豊明市への理解や思いをさらに深めていただけたら嬉しいです。
顔が見える「ちょうどいい規模感」
ー市役所や保育園の「働く環境」としての魅力についても教えてください。
西森:豊明市役所は、正規職員が450名ほどの「小〜中規模」の自治体です。数年も働けば、ほとんどの職員の顔と名前が一致するようになります。だからこそ、「あそこにはあの人がいるから聞きに行こう」と、部署の垣根を越えた連携や助け合いが非常にスムーズです。また、意思決定のスピードが早いのも特徴です。課内で出たアイデアが、部長までの承認を得られれば、あっという間に市長や副市長まで上がり、良いものであればスピーディーに政策として実行される面白さがあります。

ー公立保育園ならではの魅力についてはいかがですか?
柴田:公立園の強みは、何と言っても「利益を求めず、保育に専念できること」です。経営的な側面を考えずに、目の前の子どもたちにとっての「最善の利益」だけを純粋に追求できる環境は、保育士として非常に働きやすいと感じています。
ー豊明市が求めるのは、どのような人物でしょうか?
西森:受験案内にも記載しますが、文章になってしまうため、簡単にお伝えしますと、大きく3つあります。1つ目は、組織の中で協調性を持って動ける「コミュニケーション能力やチームワーク」。2つ目は、例えばですが、分からないことが出たときにそのままにせず、調べたり、聴いたりするなど自ら発信して行動できるような「受け身ではない姿勢」。3つ目は、世の中の動きに興味を持ち、市民目線で「アンテナを張れる人」です。

柴田:保育士も全く同じですね。近年は昔のように地域や親族などのサポートが常にあるような環境ではなく、保護者の方も悩みを抱えています。だからこそ、私たちから保護者の方に声をかけたり、日々の生活の中からアンテナを張り巡らせておくことが、結果的に子どものためになると考えています。
全国初「子連れ出勤」も。進化し続ける働きやすさ
ー最後に、ワークライフバランスや働きやすさについての取り組みを教えてください。
西森:長く働き続けていただくために、様々な制度を整えています。時差出勤や、週2日までの在宅勤務も可能です。 また、小1の壁に対応するため、小学校3年生までのお子さんを持つ職員を対象にした「子育て部分休務」も導入しています。さらに、預け先が急になくなってしまった時などの緊急的な対応として、小学校3年生まで「子連れ出勤」ができる制度も全国の自治体に先駆けて導入しました。
柴田:保育現場でも、職員の「働きやすさ」をアップデートするために、中堅保育士を集めた「未来会議」という取り組みを行っています。現場の視点から、どうすればもっと有給休暇が取りやすくなるか、職場環境を良くできるかを毎月話し合っています。育休取得率も100%ですし、「お互い様」の精神で、お休みも取りやすいよう工夫しています。
ー充実したサポート体制があるのですね。それでは最後に、受験を検討している皆さんへメッセージをお願いします。
西森:豊明市は、職員同士も、市民の方との距離も近い、あたたかい自治体です。ワークライフバランスを大切にしながら、やりがいを持って働ける環境が整っています。少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ安心してご応募ください!
柴田:保育は、AIには成し得ない「人が人を育てる」素晴らしい仕事です。子どもを大事にし、相手を大事にし、そして自分を大事にできる。そんな保育を、豊明市で一緒にできたら嬉しいです。皆さんと共に笑顔で働ける日を楽しみにしています!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)



