神奈川県伊勢原市消防本部で消防士として働く小長井さんのインタビュー記事です。
静岡県出身、大学では建築を学んでいたという小長井さんが、なぜ消防士の道を選び、伊勢原市で働くことを決めたのか。そして、消防学校での経験や、現場の最前線で働く今、何を感じているのか。若手職員だからこそ語れる、仕事のやりがいや伊勢原消防ならではの温かい職場環境の魅力について、熱く語っていただきました。
- 「助けたい」その一心で、憧れの消防士へ
- 厳しいけれど楽しかった!消防学校での成長と仲間との絆
- 現場のリアルとやりがい。若手だからこそ感じる伊勢原消防の魅力
- 風通しの良い職場環境と充実のワークライフバランス
- 未来の仲間へ
「助けたい」その一心で、憧れの消防士へ
ーまずは自己紹介と、これまでの経歴について教えてください。
小長井:静岡県静岡市の出身で、大学進学を機に神奈川県に出てきました。
高校時代はサッカーに打ち込み、大学では建築学を専攻していました。学生時代は特に消防に関連するようなことを学んでいたわけではなく、サークル活動などを楽しむごく普通の学生でしたね。
令和6年4月に入庁し、現在は伊勢原市消防署本署の警備第一課に所属し、消防隊員として勤務しています。

ー大学時代は建築学を専攻していたとのことですが、なぜ消防士を志したのですか?
小長井:一番最初のきっかけは、小学4年生の時に経験した東日本大震災です。テレビの向こうの光景に、当たり前の日常が一瞬で失われてしまうことの恐ろしさを感じました。その時から、人の命を助ける仕事に就きたいと漠然と考えていました。
大学進学時には建築の道に進んだのですが、大学3年生の時に友人が救急車で運ばれるという出来事があり、その際に救急隊員の方の働く姿を間近で見て、小学生の時に抱いた「人を助けたい」という気持ちが再燃したんです。
そこからは消防士を目指すことを決意し、消防士になるための対策を行っていました。
ー地元は静岡とのことでしたが、なぜ伊勢原市で働こうと思ったのですか?
小長井:大学が近かったこともあり、伊勢原市は学生時代からとても馴染みのある街だったんです。実際に学生時代を伊勢原で暮らす中で感じたのは、市民の方々の「地元愛」の強さですね。
本当に温かく、地元のことが大好きな方が多かったので、この街のために働きたい、この街の人たちを守りたい、と自然に思うようになり伊勢原市を受験することを決めました。
厳しいけれど楽しかった!消防学校での成長と仲間との絆
ー消防士といえば消防学校に入校しますよね?入校前、不安などはありませんでしたか?
小長井:正直に言うと、「厳しい」「怖い」というイメージが強かったです(笑)
初めての寮生活ということで、環境の不安もありましたし、厳しい訓練についていけるだろうかと、心配事は多かったですね。
ただ、同じ伊勢原消防の中で同期が5人いたので、入校前は「みんなで頑張ろうな」と励まし合っていました。
ー実際の消防学校での生活、振り返ってみていかがでしたか?
小長井:もちろん訓練は厳しく、苦しいこともたくさんあったのですが、振り返ってみると「楽しかった!」という一言に尽きます。
辛い時こそ「楽しもう!」と思うようにしていたので、自分から積極的に声を出し、同期と励まし合いながら乗り越えました。
暑い夏、汗と泥にまみれながら、仲間と共に一つの目標に向かって突き進んだあの日々は、何にも代えがたい宝物です。人間としても、そして消防士としても、大きく成長できた半年間だったと思っています。
また、私は何よりも生涯付き合える最高の仲間たちとの絆を深めることができたのが一番の成果だと思っています。もし「もう一度戻りたいか?」と聞かれたら、私は迷わず「戻りたい!」と答えますね!

現場のリアルとやりがい。若手だからこそ感じる伊勢原消防の魅力
ーいざ現場に配属されてみて、思い描いていた「消防士」とのギャップはありましたか?
小長井:体を動かす仕事というイメージが強かったのですが、想像以上に事務作業が多いことには驚きましたね。
もちろん、災害現場での活動が主たる業務にはなるのですが、報告書の作成やデータ入力など、デスクワークもとても重要です。
まだまだ覚えることばかりで、私が担っている事務処理はほんの一部なのですが、先輩方がこなしている事務の量を見ていると、これからもっと多くの事務を覚える必要があるんだなと、今から身が引き締まる思いですね。

ーやはり、災害以外でも多くの仕事があるのですね。ちなみに、初めて火災現場に出動した時のことを覚えていますか?
小長井:それは今でも鮮明に覚えています。
火災の出動指令が鳴り、消防署から立ち上る黒煙を目にした瞬間、一気に緊張感が高まりました。最初は恐怖心もありましたが、現場へ向かう道中、先輩方が冷静に声をかけてくださったおかげで、気持ちを落ち着かせることができました。
燃え盛る炎を前に、ただただ「熱い」という感覚だったのを覚えています。火災事案は決して多くはありませんが、いざという時にこそ、消防学校で学んだことや日頃から繰り返している訓練が、どれほど重要であるかを痛感しました。
現場で冷静に、そして確実に行動するためには、基礎の徹底が欠かせません。日々の訓練一つひとつが、私たちの命だけでなく、市民の安全を守ることに繋がっているのだと思っています。
ー消防士として働く中で、一番やりがいを感じるのはどのような瞬間ですか?
小長井:やはり、市民の方から「ありがとう」という言葉をいただいた時ですね。私たちの活動が、誰かの助けになっていると実感できる瞬間だと思います。
現場で安全・確実・迅速に活動するために日々の訓練に励んでいます。その訓練が現場で実践でき、市民の方からお礼の言葉をいただいた際にやりがいを感じます。
また、現場では、ご家族の方が涙ながらに「お願いします」と託してくださることもあり、その想いに応えたい、「絶対に助けるんだ」という気持ちが、私たちの原動力になっています。
感謝の言葉やお手紙をいただくたびに、この仕事を選んで本当に良かったと心から思います。
ー小長井さんが働く中で、伊勢原消防ならではの特徴や魅力はどこにあると感じますか?
小長井:伊勢原市には丹沢大山があるため、山岳救助隊が活躍しています。これは山を管轄する伊勢原消防ならではの特徴だと思っています。
私自身、将来は救助隊をはじめ、消防に関する全ての業務に携わってみたいと思っています。様々な経験を積むことで、多角的な視点を持った消防士になりたいですね。

風通しの良い職場環境と充実のワークライフバランス
ー消防というとどうしても厳しいイメージを持ってしまいますが、実際の職場の雰囲気はいかがですか?
小長井:私も入庁前は少し心配していましたが、伊勢原消防は全くそんなことはありませんでした。
先輩方は本当に優しくて、分からないことがあれば、私が理解できるまで丁寧に教えてくださいます。もちろん、訓練や現場では厳しい指導をいただくこともありますが、それは全て私たちの安全と、市民の皆さんの命を守るためです。
普段は和気あいあいとしていて、若手の私の意見にもしっかりと耳を傾けてくれる、風通しの良い職場です。このオンとオフの切り替えがはっきりしているところが、伊勢原消防の魅力の一つだと思います。

ー消防士は24時間勤務もありますよね?お休みはしっかり取れていますか?
小長井:はい、ワークライフバランスはとても充実しています。
24時間勤務した後は1日非番となり、休みが続くこともあります。平日に休みが取れることも多いので、空いている場所に出かけたり、趣味の時間に使ったりと、プライベートも満喫できています。
もちろん、体を休めるだけでなく、非番の日を使ってスキルアップのための勉強をすることもあります。仕事もプライベートも、両方充実させられるのがこの働き方の良いところです。
未来の仲間へ
ー最後に、消防士を目指す方々にメッセージをお願いします。
小長井:消防士は、市民の皆さんの最も近くで、その命と暮らしを守る、本当にやりがいに満ちた仕事です。
辛いこと、厳しいこともありますが、それ以上に大きな達成感と、仲間との強い絆を得ることができます。
伊勢原消防は厳しくも優しい先輩方がおり適切に指導してくださります。また、若手の意見も聞いてくださるため、とても働きやすい環境です。
そして私自身、県外から伊勢原市に来ましたが、この街の住民の温かさ、そして伊勢原消防の働きやすい環境に日々感謝しています。
もしあなたが「誰かのために働きたい」という熱い想いを持っているなら、ぜひ私たちと一緒に、この伊勢原市で働きましょう!皆さんと現場で会える日を楽しみにしています。

ー本日はありがとうございました。
「もしもう一度戻りたいかと聞かれたら、私は迷わず『戻りたい!』と答えます」
消防学校での厳しい訓練を振り返り、笑顔で語ってくださった小長井さんの言葉が心に残っています。辛く苦しい日々を、仲間と共に「楽しもう!」という前向きな姿勢で乗り越えた経験は、小長井さんの揺るぎない自信となり、消防士としての原点になっているのだと感じました。
消防士という仕事の厳しさを知りながらも、常に明るく、真摯な眼差しで仕事と向き合う小長井さん。その姿は、伊勢原市の温かい人々と街を守りたいという、優しい想いに溢れていました。
「誰かのために働きたい」という熱い想いを胸に、憧れの仕事にまっすぐに取り組む小長井さんの姿は、これから進路を考える多くの方に、きっと勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)