大学・大学院と都内で建築を学び、街づくりの最前線を志していた川口さん。当初は民間企業への就職をメインに考えていた川口さんが、なぜ地元である伊勢原市役所を選び、建築職としての第一歩を踏み出す決意をしたのでしょうか。そこには、「地元」ならではの安心感、改めて気づいた「暮らしの足元」を支えることの尊さがありました。
入庁してからの1年間、市営住宅の管理運営という「対人」業務を主軸に、現場とデスクワークの両面で奮闘してきた川口さん。建築の専門知識を活かしつつも、それ以上に市民一人ひとりの背景に触れる日々に、どのような変化や成長を感じているのか。2年目を迎えた今だからこそ語れる、仕事のリアリティと伊勢原市という職場の温かさ。これから公務員を目指す方や、専門職としてのキャリアに悩む方へ、自分らしい選択をするためのヒントが詰まったインタビューをお届けします。
- 民間志望から一転。地元・伊勢原市役所を選んだ理由
- 「技術」の先にある「人」を学ぶ。市営住宅管理という仕事のリアリティ
- チームで守る、一人にさせない。「メンター制度」と職場の支え
- 1年の経験を経て見えてきた「スケジュール感」と「やりがい」
- 未来の仲間へ。伊勢原市役所が求める「柔軟さ」と「明るさ」
民間志望から一転。地元・伊勢原市役所を選んだ理由
ー川口さんは大学院まで建築を専攻されていたとのことですが、就職活動の当初から公務員を目指されていたのでしょうか。
川口:いえ、実は最初は民間企業をメインに活動していました。大学の研究室時代に地方自治体の方と関わる機会があったのですが、当時はどうしても「行政ができることには限界があるのではないか」と感じていた部分があったんです。
もっと自由に、自分のやりたい街づくりを実現するには民間の方が合っているのではないかと考え、民間企業からも内定をいただいていました。
ーそこから伊勢原市役所への入庁へと舵を切ったきっかけは何だったのですか?
川口:物理的な距離と、自分自身の体調が大きなきっかけでした。内定をいただいていた企業は、勤務地への通勤に片道2時間近くかかる場所だったんです。ちょうどその時期に少し体調を崩してしまい、毎日往復4時間を移動に費やす生活を続けることに、少し不安を感じていました。
そんな時、地元である伊勢原市役所がまだ職員を募集していることを知り、「一度、自分の生まれ育った街で働くことを真剣に考えてみよう」と受験を決めたんです。

ー地元での勤務は、やはり通勤面など負担は少ないですか?
川口:今は自宅から車で10分程度で職場に着きます。都内への通学に1時間半程度かけていた頃を思うと、体力的にも精神的にも本当に余裕が持てるようになりました。
浮いた時間を自分の生活や休息に充てられるのは、長く働き続ける上ですごく大きなメリットだと感じています。
「技術」の先にある「人」を学ぶ。市営住宅管理という仕事のリアリティ
ー現在、建築住宅課ではどのような業務を担当されているのですか。
川口:住宅係に所属し、主に市営住宅の運営管理を担当しています。具体的には、新しい入居者の募集業務や、現在住まわれている方の家賃算定、建物の設備修繕の対応などです。
建築職として入庁しましたが、振り返ってみると1年目は想像以上に「対人」のコミュニケーションが主軸となる業務が多かったです。

ー専門的な技術職としてのイメージと、実際の業務にギャップはありましたか?
川口:ありましたね。大学では構造やデザイン、都市計画といった「理論」を学んできましたが、現場では「そこに住む人の生活」が何より優先されます。
市営住宅には様々な方が入居されています。例えば、設備が故障した際の修繕対応一つとっても、単に直せばいいわけではなく、入居者の方の困りごとにどう寄り添うか、市の負担なのか入居者の方の負担なのかを条例に照らしてどう説明するかといった、誠実な対話が求められます。

ー対人業務の中で、特に印象に残っていることや苦労したことはありますか。
川口:正直にお話しすると、最初の頃は、市民の方との認識の違いに戸惑い、悩む場面もありました。ご案内したルールが生活の実情と合わなかったり、お伝えした内容が思うように伝わらなかったりして、厳しいご意見をいただくことも少なくありませんでした。
今までの学生生活では経験したことがないような、真正面から感情をぶつけていただく経験に、最初は足がすくんでしまい、落ち込むこともありました。
でも、1年間じっくりと対話を重ねる中で気づいたんです。それは、その方の「暮らし」がかかっているからこその、切実な熱量なのだと。単なる事務的な手続きではなく、その先にあるお一人おひとりの生活の重みを肌で感じたことで、少しずつですが、相手の立場に立って物事を捉えられるようになってきたと感じています。
チームで守る、一人にさせない。「メンター制度」と職場の支え
ーそうした厳しい場面を、どのようにして乗り越えてこられたのでしょうか。
川口:職場の先輩方の存在が本当に大きかったです。伊勢原市役所では、私が入庁した頃から「メンター制度」が本格的に始まりました。
同じ部内の先輩がメンターとして付いてくださり、業務の進め方はもちろん、「精神的にしんどいことはないか」と常に気にかけてくださるんです。
窓口で状況が難しくなりそうな時は、先輩が察知してさりげなくフォローに入ってくださる。その「一人じゃない」という安心感があったからこそ、今日までやってこれたのだと思います。
ー職場の雰囲気や、人間関係の風通しはいかがですか。
川口:すごく温かい職場ですよ!建築住宅課は、建築職だけでなく事務職の先輩も多いのですが、職種の垣根なく相談しやすい雰囲気があります。
分からないことがあればすぐに誰かに聞けますし、プライベートな雑談も交えながら、リラックスして仕事に取り組めています。

ー休暇の取りやすさなど、ワークライフバランスの面ではいかがでしょうか?
川口:ワークライフバランスは非常に良いと感じています。私は1年目から月に1回は必ず有給をいただいていましたし、繁忙期であっても周囲と調整すれば連休を取ることも可能です。
システム上で申請して承認をもらった後は、チーム内のスケジュールに共有するだけなので、休むことに対して変なストレスを感じることは全くありません。周りの先輩方も計画的に休まれているので、自分も気兼ねなくリフレッシュできています。
1年の経験を経て見えてきた「スケジュール感」と「やりがい」
ー入庁2年目を迎え、自分自身の中で変化を感じる部分はありますか。
川口:仕事の「意味」と「スケジュール」がリンクして見えるようになってきたことです。
1年目は、先輩に言われるまま「とりあえずこれをやる」という状態でしたが、今は「8月は募集のしおりを作る時期だな」「年度末は、年度内の業務のまとめや来年度の契約業務に加え、市営住宅の募集業務等が重なるから忙しくなるな。」と、1年間の仕事の回り方が把握できるようになりました。先を見越して自分で動けるようになったことは、大きな成長だと感じています。
ー働いていて「この仕事をやっていて良かった」と実感する瞬間はどんな時ですか?
川口:募集の受付に来られた時に、住まいの不安から暗い表情をされていた方が、無事に入居が決まった後に現場でお会いして、挨拶した際に、明るい笑顔で返してくださった時です。
その表情を見た瞬間に、「あ、自分たちの仕事はこの人の生活を支える手助けになったんだ」と、理屈ではなく心で実感できました。
建築というハードの知識を使いながら、ソフトである「人の幸せ」に貢献できる。それがこの仕事の醍醐味だと思います。

ー専門職として、今後挑戦してみたいことや展望はありますか。
川口:実は今、特定の「この部署に行きたい」という強い希望はないんです。この1年間、実際に働いてみて、外から見ていただけでは分からなかった自分の適性や、仕事の奥深さに気づかされました。
伊勢原市役所の中には、建築職が活躍できるフィールドが他にもたくさんあります。どこへ異動になっても、今の部署で学んでいる「現場の声を聞く姿勢」を大切にしながら、柔軟にチャレンジしていきたいと思っています。
未来の仲間へ。伊勢原市役所が求める「柔軟さ」と「明るさ」
ー最後に、伊勢原市役所を目指している受験者の皆さんへメッセージをお願いします。
川口:伊勢原市は、小田急線1本で新宿まで1時間以内で行ける利便性がありながら、休日は鳥の声が聞こえるほど静かで豊かな自然が残っている、本当に「ほどよい田舎」で住みやすい街です。
市役所の仕事は、特に私のいる部署などは、市民の方と直接関わる機会が非常に多いです。
ー川口さんとしては、どのような人が市役所の仕事に向いていると思われますか。
川口:コミュニケーションを大切にできる、明るい方ならきっと楽しく働けると思います。専門知識はもちろん大切ですが、予期せぬトラブルや急な相談に「まずはやってみます」と前向きに、臨機応変に対応できる柔軟さがあれば、先輩たちが必ず支えてくれます。自分の直感を信じて、ぜひ一歩踏み出してみてください。皆さんと一緒に、この大好きな地元を支えていける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
「2時間かけて都心へ通うよりも、10分で着く地元で腰を据えて働きたい」。川口さんの語る志望動機は、一見すると合理的ですが、その根底には「自分を大切にし、納得感を持って働く」という、誠実なキャリア観が流れていました。
専門職として入庁しながらも、技術の誇示ではなく「対人」の難しさに正面から向き合い、市民の笑顔に救われたと語る彼女の姿は、教育・研修やメンター制度といった「人を育てる土壌」が伊勢原市役所にしっかり根付いていることを物語っています。2年目という、一番悩み、かつ一番伸びる時期にいる川口さん。彼女の成長こそが、伊勢原の住まいと未来をより温かいものに変えていくのだと確信させられる、清々しい取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年4月取材)



