米子市役所の収納推進課で働く田代さん(入庁4年目)のインタビュー記事です。観光の仕事に憧れて入庁したものの、最初の配属は予想外の部署でした。前例のない困難な業務や異動を経て気づいた、公務員ならではのやりがいや職場の温かい雰囲気、そして昇任して芽生えた新たな目標について語っていただきました。
地元・山陰を盛り上げたい。「観光業への憧れ」から市役所という選択肢へ
ーまずは自己紹介と、米子市役所に入庁された経緯を教えてください。
出身は米子市の隣の自治体です。進学で一度福岡に出ましたが、就職を機に山陰に戻り、新卒で米子市役所に入庁しました。
米子市は鳥取県の中でも特に商業が盛んな街です。JRの伯備線や境線、山陰本線が乗り入れ、高速道路も通り、米子鬼太郎空港もある。まさに多くの観光客が訪れる「交通の要衝」です。私は昔から観光系の仕事に就きたいという思いがあり、「山陰全体を盛り上げていけるような大きな仕事」ができるのは、この地域の中心である米子市役所だと考え志望しました。
ー当初から公務員一本で考えていたのでしょうか?
いえ、最初は福岡に残ることも考えましたし、民間企業も視野に入れていました。実は当初、「公務員」というよりも「観光業に携わること」を軸に考えていたんです。
きっかけは、大学教授の勧めで参加した北九州市の観光課でのインターンシップでした。それまでは「公務員=お堅い仕事」というイメージしかなく、観光のようにワイワイ盛り上げる仕事とは結びついていませんでした。
しかし、実際にイベント運営に携わらせていただき、企業との調整や当日の案内、マスコットキャラクターのアテンドなどを行う中で、行政が地域活性化のために様々な主体と協力し、尽力している姿を目の当たりにしました。 「行政でもこんなに楽しい仕事、色々な人と関われる仕事ができるんだ」と気づいたのが、公務員を意識し始めた原点ですね。
予想外の配属。前例のないコロナ対応で「がむしゃら」に学んだ日々
ー最初の配属先は、希望していた観光分野とは全く違う部署だったそうですね。
はい、配属されたのは「新型コロナワクチン接種推進室」でした。当時はまさにコロナ禍の真っ只中。本庁舎勤務でもなかったので同期とも離れ離れになり、最初は不安のほうが大きかったですね。
業務としては、ワクチンの個別接種担当として、各医療機関へのワクチン分配や数の調整、接種券の作成などを行っていました。その後、集団接種を担当することになり、市内施設の設営や手配など、現場を走り回っていました。
ー新設部署ということで、大変な点も多かったのではないでしょうか?
そうですね。新設された部署なので過去の記録もなく、手本にするマニュアルもありませんでした。必要な対応も日々刻々と変わる中、手探り状態で目の前の業務をこなすのに精一杯でした。
正直なところ、当時は「やりがい」や「使命感」を感じる余裕すらなく、「ただがむしゃらに日々を乗り越えていた」という記憶です。それでも、過酷な環境の中で親身にサポートしてくださった先輩や上司の方々とは、今でも近況を報告し合ったり飲みに行ったりと、素敵な関係を築くことができました。あの時間は、私にとって非常に大切な経験だったと振り返っています。
異動で知った「チームで働く安心感」。数字で成果が見える収納推進課のやりがい
ー入庁して2年弱で、現在の部署へ異動されたと伺いました。
はい、令和5年11月に現在の「収納推進課」へ異動しました。ここは市税や国民健康保険料などの徴収、収納状況の管理などを行う部署です。最初の部署とは業務内容がガラリと変わり、いわゆる「市役所らしい」業務になりました。

ー新しい部署での業務はいかがでしたか?
まず驚いたのは、人数の多さとサポート体制の手厚さです。 最初の部署では手探りな部分も多かったのですが、今の部署には長年徴収業務に携わっているベテランの先輩や上司がたくさんいます。分からないことがあればすぐに相談でき、困った時には助けてもらえる。「一人じゃない」という環境が本当にありがたかったですね。
業務としては、一人ひとりに担当地区が割り振られ、その地区の滞納整理を自己完結型で行います。最終的には自分の責任で進める仕事ですが、その分、滞納が解消された時や、市民の方の相談に乗って解決できた時には、はっきりとした成果が見えます。
「観光」とはベクトルが違いますが、「市民の方の役に立てた」「市の財政を支えている」という実感が数字としても現れるので、大きな達成感があるんです。 実際にやってみて、「意外と自分にはこういう仕事が合っているのかもしれない」と気づきました。今は「観光に行きたい」という気持ちよりも、今の仕事への誇りや面白さの方が勝っていますね。
また、上司も部下の頑張りをしっかり見て、正当に評価してくださいます。「あの案件、よく頑張ったな」と声をかけてもらえるだけでモチベーションが上がりますし、「仕事の手応え」をしっかりと感じながら働けています。

「お堅い」イメージが良い意味で崩れた。プライベートも充実できる温かい職場
ー職場の雰囲気について教えてください。
公務員というと「静かでお堅い」イメージを持つ方もいるかもしれませんが、収納推進課はとても活気があります。 市民の方と直接関わる部署なので、電話や窓口対応も多いですし、法律が絡む難しい案件が発生した時は、先輩・後輩関係なく皆で議論して解決策を探っています。
職員同士、プライベートでも仲が良いですよ。よく食事に連れて行っていただいたり、一緒に遊んだり。市役所のソフトバレーボールチームに所属しているので、その活動を通じて他部署の同期や先輩とも交流ができています。皆さん気さくに声をかけてくれますし、人の温かさを感じるのは良い意味でのギャップでした。

ーワークライフバランスについてはいかがでしょうか?
今の部署は自分で計画を立てて仕事を進められるので、休みも取りやすいですし、残業も自分でコントロールできます。仕事もプライベートも充実させられる環境だと、胸を張って言えますね。
ー米子市での暮らし心地はどうですか?
米子は住みやすくて気に入っています。最近は米子駅も新しくなり、駅の北側と南側がつながって便利になりました。駅周辺にお店も増えて、街全体に活気を感じますね。 最近は県外出身の職員も増えていて、多様なバックグラウンドを持つ人が集まっているので、馴染みやすい雰囲気があると思います。
今後の目標。視座を高く持ち、組織全体を見渡せる職員に
ー今後の目標や、力を入れたいことはありますか?
最近、課長が「業務改善」に力を入れていて、「現場目線で問題点や改善したいことがあれば積極的に声を出してほしい」と言ってくださっています。人員が限られていく中で、いかに業務を効率化していくかがこれからの課題です。
先日、課内の業務改善について課長や係長と協議をする機会があったのですが、そこでハッとさせられることがありました。 私は目の前の業務をどう効率化するかしか考えていなかったのですが、課長は「課全体のコンセンサス(合意形成)」や「誰か一人に負担が偏らないような組織づくり」という、もっと高い視座で物事を考えておられたんです。
ー「一つ上の目線」を持つことの大切さに気づかれたのですね。
そうです。単に作業を減らすだけでなく、職員が不平不満なく働ける環境をどう作るか、将来的に人が入れ替わっても回る仕組みをどう作るか。管理職の方々はそういった広い視野で見ているんだと気づき、非常に勉強になりました。
今後は、私も自分の業務だけでなく、係長や課長がどのような視点で組織を見ているのかを想像しながら働いていきたいです。そうやって視座を高く持つことが、結果として後輩への適切なアドバイスや、より良い職場環境づくりに繋がっていくのだと思います。
米子市役所には、若手の意見も素直に聞いて議論してくれる風通しの良さがあります。この環境を活かして、自分自身もさらに成長していきたいですね。

ー本日はありがとうございました。
入庁直後からコロナ対応という最前線に立ち、決して平坦ではない道のりを歩んでこられた田代さん。しかし、その経験があったからこそ、現在の「やりがい」や「仲間の大切さ」をより深く実感されているように感じました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年10月取材)



