新潟県南魚沼地域振興局林業振興課できのこ振興担当として働く北上さんのインタビューとなります。林業職として入庁した北上さんがこれまでに経験した幅広い業務についてお聞きしました。
外からは中々イメージすることができない、自治体林業職としての働き方や特徴がわかる内容となっています。
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
北上:私は新潟市で生まれ育ちました。周囲に田んぼは広がってはいたものの、森林に触れるといった機会はあまり多くなかったのですが、オープンキャンパスで農学部の自然の中で活動するフィールドワークに魅力を感じ、大学では森林環境学を学ぼうと思いました。
大学を卒業後、平成29年度に新潟県庁に林業職として入庁しました。

ー自治体で働きたいと思ったきっかけについて教えてください。
北上:元々大学で学んだことを活かして、生まれ育った地元に貢献したいということは漠然と考えていました。
大学3年時に新潟地域振興局でのインターンシップに参加したことで、地域住民と直接関わり、課題やニーズを肌で感じることができたことに加え、行政職員の働き方というものを知り、地域社会を支える自治体で働きたいと思うようになりました。
また、私が所属していた研究室の教授がスノービーチ【雪国のブナ】プロジェクトの発起人であったことも、自治体への思いを強くするきっかけとなりました。このプロジェクトは、地域資源であるブナを活用した持続可能な地域づくりを目指すといったものなのですが、まさに私が考えていた地域貢献とはこういうものだと思ったのです。


ー自治体で働くとなると、市町村といった選択もあったかと思いますが、なぜ県庁を選んだのでしょうか?
北上:私は林業職として働きたいと考えていたのですが、市町村単位での林業職の募集はあまり行われていないため、必然的に国や県が選択肢となりました。
その上で、国と県を比べた時、より地元貢献ができる職場といった考えから新潟県庁を志望しました。
ー入庁してから、これまでにどのような業務を経験されたのですか?
北上:入庁後最初の4年間は本庁の治山課森林計画係という県全体の森林状況を管理する部署に所属し、統計の作成や情報照会対応などを行っていました。
林業職として採用されたので、当然フィールドワークがメインになるのかと思っていたのですが、まさかの本庁勤務で、イメージしていたようなフィールドワークはほとんどなかったですね(笑)
その後、南魚沼地域振興局林業振興課の地域振興担当として、森林整備に関する補助事業や担い手対策業務に従事しました。
そして、今年度からは同じく南魚沼地域振興局林業振興課内できのこ振興担当となり、きのこ産業に関する補助事業などを担当しています。また、魚沼きのこ・山菜振興協議会の事務も担当しており、フィールドワークというよりも生産現場の調査や魚沼きのこのPRイベントに参加する機会が多いですね。
ーきのこ担当ですか?かなり限定的な名称ですが具体的にどのような業務を行っているのでしょうか?
北上:「きのこ振興担当?」って思いますよね(笑)きのこ振興担当は、県庁の出先機関である地域振興局においても全ての部署に置かれているわけではなく、きのこで独立した係があるのは南魚沼地域振興局のみとなります。なんと管内で管轄している5市町だけで、県内の約6割ものきのこを生産しています。
主な業務としては、先程のとおり補助事業事務や協議会事務(PR活動やHPの更新、生産者向けの研修会の開催など)になります。
補助事業事務では、生産量の増加やコスト削減等を目標に掲げ、きのこ生産者さんへ機械導入等のお手伝いをしています。
協議会事務では、魚沼きのこのPR活動として、6月の南魚沼グルメマラソン(南魚沼市)や10月の大農業祭×食まちうおぬま(魚沼市)等のイベントに、生産者さんや団体の方と一緒にブースを出展しました。八色しいたけ事業協同組合と一緒にブースを出展したグルメマラソンでは、首都圏をはじめとする県外から参加されている方が多く、毎年買ってくれているという方もいらっしゃって、そういった声を聞くと、やはりやりがいを感じますね。


また、他のイベントでは「きのこ」に興味や関心を持ってもらうために「きのこ釣りゲーム」を考案してみました。その結果、子連れのご家族に大好評!これがきっかけで、地元魚沼の特産である「きのこ」に興味を持ち、好きになってもらえたら嬉しいです。今後も試行錯誤しながら、安心・安全の「魚沼きのこ」をPRしていきたいと思っております。

ーきのこ以外でこれまでの業務で何か印象に残っているようなものはありますか?
北上:森林整備に関する補助事業を担当していた際に行った、研修会内容の見直しがとても印象に残っています。
造林補助事業というのはとても複雑で、担当者でも理解が難しい内容です。要領なども毎年更新されるため、林業に新規参入したくても補助事業を正確に把握できない、ベテランでも毎年変わる内容に戸惑うといった状況がありました
そのため、毎年のように研修会は開催していたのですが、内容が年毎の改正点などに偏り、制度の基本的な部分や実際の手続きに関する部分が抜け落ちていました。そこで、書類作成や事務手続きに関する実用的な内容も含めた研修会も開催することとし、さらに、午前は初心者向け、午後はベテラン向けのようにレベルを分けて実施しました。
実際に「実用的だった」「こういうのが知りたかった」という声をいただき、大変嬉しかったです。他局からも研修会の参考にしたいという声をいただき、とても苦労した分、やった甲斐がありましたね。

ー新潟県庁ならではだと思うような経験や業務はありますか?
北上:それこそ「きのこ振興担当」は新潟県庁ならではの業務かもしれません。
林業における「きのこ」の位置づけとしては、特用林産物(竹や漆、木炭など)というカテゴリーに分類されておりますが、そのなかの「きのこ」に特化し、力を入れて担当を置いているところは、もしかすると新潟県以外あまりないのでは?と勝手ながら思っております。
きのこ振興では、今までの業務とは全く異なる分野の方々と関わる仕事なので、とても新鮮に感じています。生産者の方々も熱心な方が多いですね。
きのこだけを対象としているからこそ、そこに集中することができますし、生産者の方々の期待に応えられるように日々頑張らなければと思っています。

ーでは、働く環境として新潟県庁はどのような特徴があると感じますか?
北上:林業職でいうと、特に出先機関は外に出る機会が多いこともあり、のびのびと業務をしているイメージです。また、意見が言いやすい関係性で風通しもいいと思っています。
ー北上さんは、どんな人が林業職に向いていると思いますか?
北上:外に出るのが好きな人や、人と話すのが好きな人に向いている仕事だと思います。生産者や林業関係者と話すだけでなく、きのこ振興担当に関しては、月に1~2回ほど工場を訪問するような機会もあります。
また、私達は林業普及指導員も担っているので、担当している森林組合や林業事業体の職員さんと山に入り、現場を見ながら打ち合わせや助言をするようなこともあります。
一言で「林業職」といっても、配属される場所は林政課、治山課、地域振興局など、その業務内容も様々です。どの方面であっても林業という仕事はとても面白いですし、業務の幅が広いから飽きることもないと思いますよ。
ー求職者の方にメッセージをお願いします。
北上:初めての就職、県庁への就職など、不安に感じることはあるかもしれませんが、新潟県では新採用時にサポートする職員がついてくれるので、入庁後も業務に対する不安は持たずに働くことができます。
フィールドワークや、とにかく外に出ることが好きな人には是非受験してもらいたいと思っています。
また、新潟県は自然がとても豊かで、登山やスノーボードなど、四季折々のアウトドアスポーツを楽しんでいる人も多くいます。職員として、仲間として、是非一緒に楽しみましょう!


ー本日はありがとうございました。