「人の役に立ちたい」。その純粋な想いを、どのような形で仕事に繋げたいですか?
病気や怪我の治療だけでなく、地域に暮らす人々の「健康」そのものを支え、より豊かな日常を守る。そんな働き方ができるのが「保健師」という仕事です。
今回お話を伺ったのは、新潟県庁で働く、入庁1〜3年目の若手保健師、高橋さん、大関さん、遠藤さん。異なるきっかけで同じ道を志した3人が、それぞれの想いを胸に、地域住民の健康と向き合っています。
市町村や民間企業ではなく、なぜ「県」という広域なフィールドを選んだのか?困難なケースと向き合う難しさ、そしてそれを乗り越えた先にある、この仕事ならではの喜びとは。
若手職員が語るリアルな声は、これからのキャリアを考える上で大切なヒントとなるのではないでしょうか。
- それぞれの想いを胸に、地域住民の健康を支える若手保健師
- 「人のためになりたい」それぞれの想いから始まった保健師への道
- なぜ市町村や民間ではなく「新潟県」?県で働く魅力とは
- 困難を乗り越えた先にあるやりがいと、保健師として働く楽しさ
- 風通しが良く、若手が活躍できる職場環境
- 未来の仲間へメッセージ
それぞれの想いを胸に、地域住民の健康を支える若手保健師
ー簡単な自己紹介と、緊張をほぐすために最近はまっていることなどを教えていただけますか?
高橋:医薬予防課の高橋です。最近、数年ぶりに運動を始めました!もともと陸上をやっていたのですが、最近運動不足ということもあり、体育館でランニングをして、気分転換しています。
私は今年の4月に入庁したばかりで、その前は4年間、県立病院で看護師として働いていました。現在はエイズや性感染症の検査や相談、結核対策といった感染症分野の業務を担当しています。
大関:地域保健課の大関です。私のマイブームは弓道とホットヨガです。弓道は高校時代から続けていて、社会人になって再開しました。心身ともにリフレッシュできる大切な時間ですね。
私は入庁2年目で、主に成人の難病患者さんとそのご家族への支援を担当しています。訪問活動のほか、患者さん同士の交流会や、支援者向けの研修会なども企画しています。
遠藤:同じく地域保健課の遠藤です。
はまっていることとは少々異なりますが、家でハムスターを飼っていて、毎日癒やされています。サファイアブルーハムスターという種類で、とても可愛いんですよ(笑)
私は入庁3年目で、今年の4月に新発田保健所から異動してきました。現在は母子保健を担当しており、「小児慢性特定疾病」という難病を抱えるお子さんや、妊産婦さんの支援を行っています。

終始笑顔で取材に応じていただきました。
「人のためになりたい」それぞれの想いから始まった保健師への道
ー皆さんが保健師という仕事を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
遠藤:私は母親が看護師だったので、人のためになる仕事として自然と医療の道を意識していました。でも、実は手術風景や血を見るのが少し苦手だったんです(笑)
そんな時に、病気の治療だけでなく、地域に住む人々の「健康づくり」を支える保健師という仕事を知りました。「これだ!」と思い、大学も保健師を目指せる学部に進学しました。
病院実習でも、退院した後の患者さんの生活に強く興味を引かれたので、地域に密着して長く人を支えられるこの仕事を選んで良かったと思っています。
大関:私のきっかけは、学生時代の高齢者施設でのボランティア経験です。
利用者の方と接する中で「もっと深く人と関わる仕事がしたい」と感じていたのですが、資格がないとどうしても出来ることが限られてしまうことに気づきました。
「医療的な視点からもサポートできるようになりたい」と思い、最初は看護師を目指して大学に入りました。入学当時は保健師という仕事は全く知らなかったのですが、大学3年生の時、保健師経験のある先生から、地域に働きかけて課題を解決していく活動の話を聞いて、「すごく面白そう!」と魅力を感じ、保健師の道に進むことを決めました。
ー高橋さんは看護師からのキャリアチェンジですが、なにかきっかけがあったのですか?
高橋:実は、医療の道に進むと決めた時から、最終的なゴールは保健師だったんです。
小さい頃に経験した中越地震の際、ニュースで見た 避難所で活動する保健師の姿がとても印象的で、「大変な状況にいる人の力になれる仕事って素敵だな」と思ったのがきっかけです。
ただ、まずは臨床現場で看護師としての知識や技術をしっかり身につけたいと考え、県立病院で4年間経験を積んでから、今年の4月に保健師になりました。
なぜ市町村や民間ではなく「新潟県」?県で働く魅力とは
ー保健師が活躍する場は、市町村や民間企業など様々ですが、皆さんが「新潟県庁」を選んだ理由を教えてください。
高橋:「転勤があること」が新潟県庁を選んだ理由の一つです!私は、同じ場所でずっと働くよりは、数年ごとに環境が変わる方が自分には合っていると思ったんです。
仕事を辞めずに新しい環境や仕事にチャレンジできるのは、県職員の大きな魅力だと思います。看護師時代にも2回引っ越しを伴う異動を経験したのですが、新しい土地で住む場所を探すところからワクワクしていました。
遠藤:私も高橋さんと同じで、異動を通じて新潟県内の様々な地域で働けることに魅力を感じました。生まれ育った新潟県が大好きなので、地域ごとの特色や文化に触れながら、その土地の健康課題に取り組めるのは、県保健師ならではのやりがいだと思います。
大関:私はインターンシップに参加した際、職場の雰囲気の良さに惹かれました。1年目の保健師さんが、気兼ねなく先輩に質問や相談をしている姿を見て、「ここなら安心して成長できそうだ」と感じたのが決め手です。実際に働いてみても、その印象は変わらないですね。
ー県庁以外の道も検討されましたか?
遠藤:私は民間の産業保健にも興味があったため、就職活動の際は説明会に出るなどして調べていたのですが、県庁なら人事課や警察本部などで職員の健康管理に携わる、それこそ産業保健に似たキャリアパスもあると知りました。
異動の希望が必ず通るわけではありませんが、幅広い分野に挑戦できる可能性に魅力を感じたので、民間ではなく県庁を選びました。
大関:私も民間の健診センターと迷っていました。
ですが、健診センターの場合はどうしても短期的な関わりになりがちです。私は、自分の支援によって地域や住民の方が少しずつ良い方向に変わっていく過程を見届けたい、という想いが強かったので、継続的に関わることができる行政の保健師を選びました。
困難を乗り越えた先にあるやりがいと、保健師として働く楽しさ
ー実際に保健師として働いてみて、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
遠藤:以前、難病を抱える寝たきりの患者さんと一緒に、災害時を想定した避難訓練を実施したことがあります。
最初は「自分のことより周りを優先してほしい」と参加に消極的だった患者さんが、訓練を終えた時に見せてくれた笑顔が忘れられないですね。
後日、実際に停電や地震があった際に「あの訓練が役立ったよ」と感謝の言葉をいただいた時は、本当にこの仕事をしていて良かったと心から思いました。

大関:私は、自分で企画した研修会や交流会が、参加された方にとって「良い時間だった」と感じてもらえた時にやりがいを感じます。
また、住民の声に耳を傾け、試行錯誤しながらより良いプログラムを創り上げていく過程も、この仕事の面白さですね。
上司から「そもそも、この地域の人たちは難病患者の集いを必要としているの?」と問われたことがありました。毎年恒例だからと漫然と企画していたのですが、常に地域のニーズを問い続け、本当に必要な支援を届けることの大切さを学んだとともに、そこまで根本から考えることができるという点に、この仕事の魅力を感じました。
高橋:私はまだ保健師としての経験が浅いですが、感染症が発生した際など、関係機関の方と顔を合わせて話し合い、同じ目標に向かって連携して取り組めた時に大きな達成感を感じます。
看護師の時は、日々の業務を時間内に終えることに達成感を感じていましたが、保健師の仕事は、一つの案件に長期間かけてじっくりと取り組むことが多いです。大変なこともありますが、その分、無事に解決できた時の喜びは大きいですね。

ー逆に、仕事の難しさや、働く前に抱いていたイメージとのギャップを感じることはありますか?
大関:ご本人は「困っていない」と感じていても、客観的に見ると支援が必要な方に、どう介入していくかという点は常に悩みます。
私たちの想いとご本人の想いにギャップがある中で、信頼関係を築き、適切な支援につなげていく過程は、この仕事の難しさであり、腕の見せ所でもあると感じています。

遠藤:病気が進行していく患者さんとの関わり方には、今も悩むことが多いです。私たちはどうしても先を見据えて、「悪化してからのこと」を考えて様々な提案をしますが、患者さんは「今」を生きていらっしゃいます。
その気持ちに寄り添いながら、ご本人にとって最善の選択ができるよう、主治医やケアマネジャーなど多職種でチームを組んでサポートしていくのですが、いつも「これが患者さんにとって最善だったのだろうか」と自問自答しています。
風通しが良く、若手が活躍できる職場環境
ー南魚沼保健所の職場の雰囲気について教えてください。
遠藤:和気あいあいとしていて、とても穏やかな雰囲気だと思います。特に南魚沼は若手職員が多くて活気がありますね。同世代が多いので、仕事の相談もしやすいですし、プライベートでも仲が良いです。

大関:本当に働きやすいです!遠藤さんがおっしゃるとおり、南魚沼は特に若手職員も多く、先輩や上司に話しかけやすい雰囲気があると感じます。
課を越えた交流も盛んで、地域の県職員が集まるレクリエーション行事では、他の部署の人とチームを組んでバレーボールやボウリングなども楽しんでいます!
高橋:私も入庁したばかりですが、職種や年齢に関係なく、誰もが気軽に話せる風通しの良さを感じています。
わからないことがあっても、サポート役の先輩だけでなく、課長にも直接質問できるような環境なので、安心して仕事に取り組めています。

ーワークライフバランスについてはいかがですか?
高橋:看護師時代と比べて夜勤がなく、土日祝日はカレンダー通りに休めるので、プライベートの時間は格段に増えました。
有給休暇も積極的に取得することが推奨されているので、計画的にリフレッシュできています。
大関:休みは本当に取りやすいです。残業が必要になりそうな時も、上司が業務の優先順位を一緒に考えてくれて、「それは明日で大丈夫だよ」と声をかけてくれるなど、とても配慮していただいていると感じることが多いですね。
訪問のスケジュールも自分で調整できるので、仕事が立て込む時期を予測して、前もって業務を進めておくなど、自分でコントロールしやすい点も働きやすさに繋がっています。
遠藤:私も、とてもワークライフバランスが充実していると思っています。
月に1度、保健師全員でミーティングがあり、業務の進捗状況を共有する場があるので、一人で仕事を抱え込むことがありません。チーム全体でサポートし合う体制が整っているので、心に余裕を持って働くことができています。
未来の仲間へメッセージ
ー最後に、新潟県庁の保健師という仕事に興味を持っている方へメッセージをお願いします。
高橋:新潟県というフィールドで、地域の健康に貢献したい、そして何より新潟県が好きな人は、ぜひ一緒に働いていただきたいなと思います!
大関:新潟県庁には、私のように新卒で入庁した職員だけでなく、民間企業からの転職者や、高橋さんのような看護師経験者など、多様なバックグラウンドを持つ職員がたくさんいます。
様々な視点を持った先輩や同僚から刺激を受けながら、自分自身も成長できる素晴らしい環境です。
遠藤:地域を深く知ることができるのも、この仕事の醍醐味です。
訪問先で住民の方から美味しいお店や地域のイベントについて教えてもらうことも多く、仕事を通じて新潟県の魅力を再発見する毎日です。
自然豊かな環境でのびのびと働きながら、地域の人々の温かさに触れたいと思っている方、ぜひ私たちと一緒に働きましょう!

本日はありがとうございました。
高橋さん、大関さん、遠藤さん。三者三様のきっかけで保健師の道に進まれたお三方ですが、その語り口から共通して伝わってきたのは、住民一人ひとりに真摯に向き合う、誠実で温かい眼差しでした。
特に心に残っているのは、「ご本人の想いと、私たちが考える支援の間にギャップがある」というお話です。ただ一方的に手を差し伸べるのではなく、相手の心に寄り添い、悩み、自問自答しながらも最善の道を探し続ける。その葛藤の中に、この仕事の本当の尊さがあるのだと改めて知りました。
「若手が多くて活気があるんです」と笑顔で語ってくれた、風通しの良い職場の雰囲気。互いに支え合いながら奮闘する姿こそが、新潟県の地域医療の明るい未来を照らしているのだと、心が温かくなる取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)