「大切な人たちの命や健康、財産を直接守れる。柳川に勤めているからこそだと思います」
そう語るのは、柳川市消防本部総務課総務係の椛島健太さん。平成23年度に入庁し、警防課での現場経験や福岡県への出向を経て、現在は総務課で消防組織を支える仕事に携わっています。
今回は、地元・柳川市で消防士として働く意義や、現場と総務、それぞれの立場から見えてきた仕事の魅力について、たっぷりとお話を伺いました。
- 中学生の頃からの淡い憧れ。地元・柳川市を選んだ消防士としての原点
- 煙を吸い、死を覚悟した瞬間。現場で知った消防士の意味
- 現場を離れても、消防を支える仕事。総務課だからこそのやりがい
- 育休取得率9割、資格取得も公費で。柳川市消防本部の「働きやすさ」
- 有明海の夕日と絆が支える暮らし。地元のために働きたい人へ
中学生の頃からの淡い憧れ。地元・柳川市を選んだ消防士としての原点
ー本日はよろしくお願いします。まずは簡単なご経歴からお伺いできますか。
椛島:生まれも育ちもずっと柳川で、大学は福岡市内の大学で経済学を学んでいました。大学卒業後は、そのまま柳川市消防本部に入庁しました。消防士になりたいという思いは、中学生の頃から漠然とありました。大学時代も体を動かす仕事に魅力を感じていて、柳川から福岡市内へ電車で通いながら、都市部より地元の空気が自分に合っていると感じていました。
ー就職活動では、他市町村の採用試験も受験されたのですか。
椛島:他都市の消防採用試験も受験して、実は合格もいただいていました。ただ、消防の仕事は命に関わる場面もあります。だからこそ、家族や大切な人がいる地元で、顔の見える方々を守りたいという思いが強くありましたので、最終的には柳川市を選びました。

煙を吸い、死を覚悟した瞬間。現場で知った消防士の意味
ー入庁後は、まず半年間消防学校で学ばれ、その後警防課に配属されたそうですね。当時の様子を教えてください。
椛島:消防学校では、朝から夕方まで訓練漬けの毎日で、まずは自分の限界を知らされるところから始まりました。かなり厳しい期間でしたが、そこでみっちりと基礎を叩き込まれたおかげで、配属後の業務にはスムーズに入ることができました。
柳川市の場合、消防に関することは基本的にすべて対応します。柳川市には専門のレスキュー隊のような体制がないため、火災、救急、救助と、日によって役割が変わりながら、現場対応をしていました。
ー現場で印象に残っている出来事はありますか。
椛島:消火活動中に煙を吸ってしまったことがあって、本当に息ができなくなる瞬間がありました。その時は、死ぬかもしれないなと思いましたね。皆さんもご経験があると思いますが、小学生の頃、避難訓練でハンカチを口に当てるよう指導を受けたり、煙を吸ってはいけないと教わったりします。実際に現場でそれを体感して、あの指導は理にかなっていたのだと実感しました。
ー本当に貴重なご経験ですね。他にも心に残っている経験はありますか。
椛島:平成24年に九州北部豪雨があって、柳川市も大きな被害を受けました。当時採用2年目だったのですが、消防職員総出で、寝食を忘れて24時間体制で対応にあたりました。人生の中でもとても印象に残っている出来事です。
もう一つは熊本地震のときで、緊急消防援助隊として熊本県高森町に派遣されました。消防車が何十台も連なって、夜中に赤色灯を光らせながら車列を組んで向かっていく光景を目の当たりにして、消防の団結力を感じました。

現場を離れても、消防を支える仕事。総務課だからこそのやりがい
ー令和3年度に総務課へ異動されていますね。
椛島:はい。経験のために自分から希望して異動しました。ただ、現場の出動隊は24時間勤務が基本だったのですが、総務課は毎日勤務になります。それまでの勤務とまったく違うため、慣れるまでに1か月ほどかかりました。
ー経験を積むために、自ら異動を希望されたのですね。その後、福岡県にも出向されたそうですね。
椛島:福岡県の防災部局に配属されて、県内消防の取りまとめや、国と市町村の間の橋渡し、いわゆる調整役のような業務をしていました。県は組織が大きい分、仕事の影響力も大きく、対応が広範囲に及ぶからこそ、一つ一つを慎重に進める必要があると実感しました。
ー現在は再び総務課で仕事をされていますが、総務課の仕事にはどのようなやりがいがありますか。
椛島:今私が所属している総務課は、災害の現場に直接出動して市民の方を助けることはできません。ただ、組織体制を整えたり、ルールを作ったり、車両や装備を整えたりすることで、間接的に役に立てる部分があります。
一人一人の消防職員がしっかりと働きやすくなれば、その効果は市民の方にも波及していきます。現場の最前線で動く職員を裏方として支える、他の部署にはない役目だと思っていて、今の部署でとてもやりがいを感じています。
ー裏方としての役割に、しっかりやりがいを感じていらっしゃるのですね。それでも、現場にまた出てみたいと思うことはありますか。
椛島:今の部署だからこそできることにやりがいを感じているので、ここで力を尽くしたいと思っています。消防の組織は、大部分の職員が現場に出動する立場です。そのなかで裏方の業務にあたることは、自分の仕事ひとつで消防職員全体の役に立てる、責任のある仕事だと感じています。

育休取得率9割、資格取得も公費で。柳川市消防本部の「働きやすさ」
ーここからは、働く環境について教えてください。まず、資格取得やスキルアップの支援体制はいかがですか。
椛島:消防車の運転に必要な大型・中型自動車免許はもちろん、資機材を吊り上げる際に必要な玉掛け(クレーンなどで荷を吊り上げる作業)やクレーンの運転などの資格についても、外部の講習機関へ職員を派遣しています。
そのほか、救急救命士の国家資格を取得するための研修にも職員を派遣していますし、消防学校で行われる専門研修にも、毎年10数名ほど派遣している状況です。これらの資格取得にかかる費用は公費で負担しています。
ー手厚い教育体制があるのですね。休暇制度についてはいかがですか。
椛島:育児休暇などの特別休暇は、市の行政職と同じように取得できます。特に柳川市消防本部では、男性の育児休暇取得率が9割ほどになっていて、非常に高い方だと思います。
周りの職員や上司も、休みを取ることを奨励してくれる雰囲気があって、どんどん取ってほしいと言われることが多いです。現場の隊員は朝8時30分から翌日8時30分までの24時間勤務ですが、昼休みや夕食、仮眠の時間もしっかり確保されています。
ー休みを取りやすい環境なのですね。職場の雰囲気はどのように感じていますか。
椛島:消防の仕事というと、厳しい上下関係をイメージされる方も多いかもしれませんが、実際はそこまで堅苦しい雰囲気ではありません。当番制で食事を作るといった慣習もなく、落ち着いた空気の中で働けています。

有明海の夕日と絆が支える暮らし。地元のために働きたい人へ
ー柳川市の魅力について教えてください。
椛島:食べ物がおいしいところですね。有明海があるので、のりやイチゴ、ぶどうなど、特産品がたくさんあります。あとは有明海の夕日が見えるところも魅力です。
市営の公園が有明海沿いに整備されていて、子ども向けの大型遊具があったり、キャンプができたりします。
ー柳川市で働いていて良かったと感じる瞬間はありますか。
椛島:大切な人たちの命や健康、財産を直接守れるというのは、柳川に勤めているからこそだと思います。行政でも、知り合いが庁舎を訪ねてきて、手続きが分からないときに相談されたりする場面があると思いますが、地元の人間として、地元の住民のために役に立つというのは、働いていて良かったと感じる瞬間です。
ー最後に、消防士を目指す方へメッセージをお願いします。
椛島:ありきたりかもしれませんが、地域の役に立ちたい、地元のために働きたいという人には、本当に向いている仕事だと思います。そういう方が仲間になってもらえると、自分たちもとても心強いです。
災害はいつ、どこで起きるか分かりません。災害が起こったときに貢献できる自分でありたいという思いがあれば、ぜひ消防士になってみてほしいと思います。

ー本日はありがとうございました。
椛島さんの言葉からは、現場でも裏方でも変わらない「地元の人を守りたい」という思いが伝わってきました。資格取得の支援体制や働きやすい環境が整っていることも、地元で長く働き続けられる理由の一つなのだと感じます。人の役に立ちたい、地元に貢献したいという思いがある方にとって、柳川市消防本部はきっと力を発揮できる場所です。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)



