蛇口をひねれば、当たり前のように水が出る。その「当たり前」は、地面の下に張り巡らされた水道管と、それを支える人たちによって成り立っています。
かずさ水道広域連合企業団は、千葉県の木更津市・君津市・富津市・袖ケ浦市の4市に水道を供給する特別地方公共団体です。令和元年、4市がそれぞれ行っていた水道事業と、君津広域水道企業団の水道用水供給事業がひとつになって生まれました。
今回お話を伺ったのは、老朽化した水道管を更新する仕事の「設計」を担う土木職の神田さん。高専から木更津市役所へ、そしてかずさ水道へ。現在は1歳のお子さんを育てながら、育児のための休暇を使いながら働いています。土木職としてのやりがいと、子育てと両立する日々のリアルを聞きました。
神田さんのプロフィール
工務課 管路工事設計班所属。木更津工業高等専門学校 環境都市工学科を卒業後、平成27年に木更津市役所へ土木職として入庁。水道部門に配属される。令和2年、かずさ水道広域連合企業団へ。現在は社会人11年目。1歳のお子さんの子育てをしながら、老朽化した水道管の更新に関わる現地調査・設計・発注を担当している。

老朽化した水道管を、現地調査から設計・発注まで
▼ まずは、現在のご所属と仕事内容を教えてください。
「工務課の管路工事設計班というところで働いています。業務内容としては、老朽化している水道管を新しいものに更新していく仕事の、現地調査から設計、発注までを担当しています。業者さんが決まってから、工事班に引き継ぐところまでが私の仕事です」
水道管は古くなると漏水が起きやすくなります。どの区間を、いつ、どのように新しい管に入れ替えるか。その計画を図面に落とし込み、工事として発注できる形に仕上げていくのが設計班の役割です。
「設計を委託する場合は、業者さんが現地を見て『こんな様子でしたよ』と教えてくれるので、それが実際に合っているかを確認しに行くこともあります。自分で一から設計する場合は、現場の延長や道路の様子を自分の目で見に行きます」
現地調査は年度の第1四半期に集中し、その後は設計が中心になるそうです。取材時はちょうど設計の繁忙期。日中はパソコンに向かい、図面と向き合う日々だといいます。
高専で土木を選び、木更津市役所へ
▼ そもそも、土木の道を選んだきっかけは何だったのでしょうか?
「中学3年生のときに高専のオープンキャンパスや体験授業に行って、いろんな学科を見た中で、『土木なら自分でも5年間やれるかな』と思ったのがきっかけです」
進学したのは木更津高専の環境都市工学科。本科5年に加えて専攻科で2年間学んだ後に、木更津市役所に入庁されました。
▼ 公務員、そして木更津市役所を選んだ理由を教えてください。
「安定しているイメージが強かったのと、土日に必ずお休みがあること。それから、長く木更津に通っていたこともあって、木更津に関わる仕事ができればいいなという思いがありました」
▼ 入庁後の配属は水道部門でした。予想していましたか?
「全然していませんでした。むしろ『水道も土木の中に入っているんだ』という感じでしたね。初めて見る材料や、名前を聞いたこともない言葉が多くて、一つずつ学ぶ日々でした」
それでも、周囲は大ベテランばかりの職場。日々の業務だけでなく、困難な場面も先輩職員の支えがありました。また、「みんなで早く帰るよ」という雰囲気だったそうです。残業もほとんどなく、新人時代を安心して過ごせたといいます。
市役所から"かずさ水道"へ——「積み上げた5年間を活かしたい」
令和元年、4市の水道事業が統合され、かずさ水道広域連合企業団が発足。木更津市役所の水道業務も企業団に移管されました。市役所職員には、市役所に残る道と、かずさ水道の職員として移る道の両方がありました。
▼ 神田さんは、かずさ水道に移ることを選びました。どんな心境だったのでしょうか?
「入庁したときは名前も分からなかったものが、5年で知識や経験を積み上げ、工事の最初から最後までを自分で理解できるようになっていました。そこで別の部署に戻ると、また一からになってしまう。せっかく積み上げてきたものを活かせる職場に残りたい、という思いがありました」
6年目のタイミングで手を挙げ、かずさ水道の所属となった神田さん。勤務場所は、もともと木更津市水道部が使っていた建物をそのまま企業団が使用しているため、通勤環境は変わらなかったといいます。
4市のインフラを支える、仕事のスケール
▼ かずさ水道になって、仕事はどう変わりましたか?
「規模の大きい工事や発注本数が増えて、4月・5月の年度初めが繁忙期になりましたね」
担当エリアも変わりました。以前は木更津市内の工事を担当していましたが、いまは管路工事設計班全員が4市全域の仕事を受け持ちます。

とある1日——朝6時起床、15時15分退勤
神田さんは現在、育児のための部分休暇を使い、15時15分までの勤務スタイルで働いています。管路工事設計班でのとある1日を追ってみましょう。

▼ 管路工事設計班は、基本的に内勤が中心なのでしょうか?
「いまは組織が管路工事設計班と管路工事班に分かれているので、管路工事設計班にいると基本的にはずっとパソコンに向かう仕事です。管路工事班に配属されると、逆に朝から夕方まで現場にいる日もあります。私が入庁した頃は、設計から工事の完了までを1人で見ていたので、設計も現場も両方あるような過ごし方でした」
管路工事班は、発注先の業者と契約した後の工程を担います。掘削の立ち会いに行ったり、仮設の水道管が完成したら水を流して管をきれいにし、各家庭に給水できる状態に整えたり。現場と密に関わるポジションです。
子どもが3歳になるまで使える「育児休暇」
▼ 15時15分までの勤務というのは、どういう制度なのですか?
「企業団には子どもが1歳半になるまで、1日の中で2時間休める特別休暇の制度があるんです。15分区切りで、朝30分と夕方1時間半でもいいし、朝夕1時間ずつでもいい。自分で自由に組めます。私はいま、終業前にまとめて2時間取っているので、15時15分までの勤務になっています」
この特別休暇は給与が減らない仕組みで、子どもが1歳半から3歳になるまでは1日1時間に変わりつつ、継続して利用できます。それとは別に、勤務時間そのものを短くする時短勤務制度(こちらは給与が減額)もあり、家庭の状況に合わせて選べるそうです。
「復帰するときに制度の案内を受け、子育て中の職員への支援が充実していると感じました。これは使わないわけにはいかないなと(笑)。3歳まではこの休み方をさせてもらおうと思っています」
「早く帰りな」と言ってくれる職場で——もどかしさと、感謝と
▼ 子育てをしながら働く今の環境を、率直にどう感じていますか?
「一緒に働いている人に、同じくらいの子どもがいるパパさんが多いんです。『早く帰りな』とすごく言ってくださるので、そこは本当にありがたいなと思っています」
一方で、難しさも。
「育児が始まる前と後では、働き方が変わりました。締め切りに間に合わないかもしれない、残りたいけど残れない、という時が結構あって。以前と同じ働き方はできないので、もどかしい気持ちもあります。でも『やれないかも』となると、周りの方が『じゃあここはやるよ』と言ってくださって。すごく助けられているなと思います」
なお、出産前も残業はほとんどなく、繁忙期の4月・5月に残ることがあった程度だったそうです。「区切りのいいところまでやってしまおう、と10分15分残ることはありましたが、苦になるような働き方ではなかったですね」と振り返ります。
自分で考えて、提案できることが楽しい
▼ 育休を挟みつつ10年以上。この仕事の何が面白いと感じますか?
「最初は全然分からない状態でやっていたのが、だんだん『ここはこういう意味だったんだ』と分かるようになってきて。『こうした方がもっと良いんじゃないか』と自分の考えを取り入れられるようになってきたのが、面白いところです」
「水道管って古いものが多くて、実際に掘ってみないと分からないことが結構あるんです。その日のうちに判断を求められることも多い。『これ、どうしたらいいかな』と言われたことに、自分で考えた結果を提案できるのは、楽しいところだなと思っています」
女性の土木職も活躍する職場
土木と聞くと男性の多い職場を想像するかもしれません。実際の構成を聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
「管路工事設計班は8名で、うち女性が2名。管路工事班は20名で、南部班と北部班に分かれているんですが、班長は2人とも女性です。現場担当にも女性が1名いるので、管路工事班には女性が3名いますね」
現場の最前線から設計まで、女性の土木職が当たり前に活躍している。子育て中の職員を「早く帰りな」と送り出す文化と合わせて、かずさ水道の職場の空気を映すエピソードでした。
おわりに
「安心できるかずさの水を次世代へ」。かずさ水道広域連合企業団が掲げる言葉のとおり、地面の下のインフラを次の世代へつなぐ仕事は、これからますます重要になっていきます。
積み上げた専門性を活かして4市のまちを支えながら、子育てとも両立できる。神田さんの働き方は、土木の道を歩む人、そしてこれから家庭と仕事の両立を考える人にとって、ひとつの心強い実例ではないでしょうか。
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この記事は、2026年7月24日にパブリックコネクト編集部が取材した内容をもとに作成しています。
記載の内容・所属・数値は取材当時のものです。



