北海道釧路市役所で働く天川さんのインタビュー記事です。
大学時代から地域活性化といった分野に興味があったという天川さんに、仕事のやりがい、釧路での暮らし、そして公務員という働き方についてお話を伺いました。
ビジネスサポートセンター運営や官民連携の新会社設立、小中学生向けの起業体験プログラムなど、普段想像するような「公務員」とは少し異なった、多岐にわたる業務に挑戦する様子が伝わります!
ーまずは、これまでのご経歴と釧路市役所に入庁された経緯を教えてください。
天川:私は群馬県桐生市の出身で、高校を卒業するまでの18年間は群馬で過ごし、大学進学で千葉県に移りました。元々地域活性化といった分野に関心があったため、大学生活でもイベント運営などを通じて地域の方々と関わり、その分野での興味を深めていました。
大学卒業後は東京の会社に勤務していました。リノベーションをメイン事業とする会社でしたが、シェアハウス事業や商品開発事業、物販事業なども手がけており、私はシェアハウスの管理業務担当として入社し、最終的には物販店舗の責任者などを務めました。
そして2020年に、縁あって釧路市役所に入庁し、現在は産業振興部の商業労政課に所属しています。
ー転職のきっかけ、そして釧路市役所を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
天川:きっかけは大きく2つあります。1つは、大学時代から抱いていた地域活性化への思いです。前職でも関連する業務に少しは携わっていましたが、もっと本格的に地域に関わる仕事がしたいという気持ちが強くなったんです。
もう1つは、結婚です。妻の地元が釧路だったことから、結婚を機に釧路で働くことを考え始めました。その中で、地域活性化や地方創生に関わりたいという自分の思いと、釧路市役所の仕事が合致すると感じ、受験を決意しました。
最初から公務員一本で考えていたわけではないのですが、釧路で働くことを考えたときに、自分のやりたいことと最も近い選択肢が釧路市役所でした。
ー現在担当されている業務内容について、詳しく教えていただけますか?
天川:入庁してから現在まで異動はなく、商業労政課で勤務をしています。入庁1年目は、ちょうどコロナ禍の真っ只中でしたので、特に影響を受けていた地元の中小企業の皆さんへの支援策を担当することが多かったです。
それと並行して、1年目から「釧路市ビジネスサポートセンター k-Biz」という施設の業務にも関わってきました。k-Bizは、商業労政課が運営する、地元の事業者さんからお話を聞き、売上アップの提案をする無料の経営相談所です。
k-Bizは職員が1名常駐する体制のため、2年目から4年目の途中までの2年半は、k-Bizに席を置いて事務局職員として勤務していました。
4年目には、k-Bizの取り組みから発展する形で、市内でスタートアップ企業を生み出すための人材育成を目的に釧路市や地元の商工会議所、金融機関などが出資する官民連携のプログラミング会社「株式会社k-Hack」の設立が決まり、立ち上げから関わりました。全国的にも珍しい取り組みだと思いますが、釧路にスタートアップを生み出す土壌を作ることを目指しています。

その後、本庁の商業労政課に戻り、入庁5年目となる今、現在はk-Bizとk-Hackの業務に加え、4年目の時に庁内で事業提案の公募が行われたのですが、その際に私が提案し採択された「小中学生向けの起業体験プログラム」の事業も担当しています。

ー5年目とはいえ、非常に多岐にわたる業務を担当されているのですね!中でも特に印象に残っている経験はありますか?
天川:やはりk-Bizで働いていた2年半の経験は非常に印象深いですね。市役所職員という立場でありながら、k-Bizという外部の施設に席を置き、民間の第一線で活躍されてきたセンター長や副センター長といった方々と日常的に一緒に仕事をする環境でした。
皆さんとても優秀なことはもちろんですが、常に地域をより良くするためにどうしたらよいかを考え、実際に行動している姿を間近で見ることで、日々多くのことを学ばせていただくことができました。入庁して早い段階でそうした環境に身を置けたことは、自身の仕事への向き合い方を考える上で、本当に貴重な経験だったと感じています。
また、k-Bizでは、事業者さんの相談に乗るだけでなく、売上アップという目標に向けて一緒に伴走する支援も行っています。私もその伴走支援に携わらせていただいたのですが、これは通常の市役所の業務ではなかなか経験できないことです。
通常、市の職員が一事業者に対して具体的な経営課題の解決に深く関わることはありません。しかしk-Bizでは、事業者さんが抱えるリアルな悩みや日々の努力に直接触れることができるんです。地元の事業者の方々がこれほど多様な挑戦をされていることを肌で感じ、「市の職員としてもっと貢献しなければ」という思いが強くなりました。
ー「公務員」からはあまりイメージできないような経験ですね。天川さんがやりがいを感じるのはどのような時ですか?
天川:やりがいを感じるのは、自分の仕事を通して、地域に少しでも「良い変化」を起こせたと実感できた瞬間です。k-Biz時代はそうした場面を多く経験できましたが、本庁に戻ると直接的な成果が見えにくい業務もあります。
それでも、どんな形であれ、自分の仕事が誰かの役に立ち、良い方向につながっていると感じられた時は、この仕事をしていて良かったなと心から思います。
ー民間企業と市役所で、働き方や組織文化の違いを感じることはありますか?また、入庁前に抱いていた公務員のイメージと実際ではギャップはありましたか?
天川:働き方の違いで大きいのは、意思決定のスピード感や物事を実行するまでのプロセスですね。民間企業、特に私がいた会社では、常に状況に合わせてスピーディーに判断し、新しいことを始めたり、やり方を変えたりする必要がありました。
一方、市役所では、税金を使って事業を行うという性質上、庁内外の多くの関係者と時間をかけて議論し、様々な角度から検討を重ね、合意形成を図りながら慎重に進めていく必要があります。これは当然のことではありますが、民間とは大きく異なる点だと感じます。
イメージしていた公務員像とのギャップで言うと、思っていた以上に意欲的で前向きに仕事に取り組んでいる職員が多いことに驚きました。一般的に「公務員はルーティンワークを淡々とこなす」というイメージがあるかもしれませんが、実際には、より良くしようと熱意を持って働いている方が本当に多いです。そうした環境で働けることは、自分にとって大きな刺激になっています。
ー転職、そして釧路に移住されて、ワークライフバランスに変化はありましたか?
天川:これは大きく変わりましたね。前職時代は独身だったこともあり、ワークライフバランスを強く意識する機会は少なかったのですが、家族ができてからは、その重要性を実感しています。釧路市役所はワークライフバランスを考えやすい環境だと感じています。
子どもが生まれてからは育児休業も取得させていただきましたし、子どもが入院してしまった時にも、長めのお休みをいただくことができました。子育てをする上で、周囲の理解とサポートには本当に感謝しています。
育休を取得する際も、もちろん業務の調整は必要でしたが、上司や同僚が「気兼ねなく取っていいよ」と温かく送り出してくれて、気まずさを感じるようなことは全くありませんでした。制度が整っているだけでなく、実際に利用しやすい雰囲気があるのは、非常にありがたいです。
妻の支えがあることももちろんですが、今の職場環境だからこそ仕事と育児の両立ができていると感じています。
ー実際に移住されてみて、釧路市の魅力はどんなところに感じますか?
天川:魅力は本当にたくさんありますが、最近特に実感しているのは自然の豊かさですね。実は最近カヌーを始めまして、カヌースクールに通っているんです(笑)入庁1年目に初めて釧路川でカヌー下りをした時の印象が強く、始めることにしました。
もちろん関東や地元の群馬にも自然が豊かな場所はありますが、釧路、そして北海道の自然はスケールが違います。広大な釧路湿原をはじめ、手つかずの雄大な自然がすぐそばにあるんです。都市機能がある程度整った街に住みながら、車で少し走るだけで、そうした大自然の中に身を置ける。この「利便性」と「大自然」が両立している点は、釧路の大きな魅力だと思います。
また、空港が近いことも便利ですね。釧路空港から飛行機に乗れば、東京などへもアクセスしやすいです。
そして、何と言っても食べ物がおいしい!これは間違いなく大きな魅力です。特に私は海のない群馬県出身なので、新鮮な海産物のおいしさには今でも感動します。
ー最後に、この記事を読んでいる、公務員を目指している方や釧路市役所に関心のある方へメッセージをお願いします。
天川:釧路市役所は、今まさに変化しようとしている時期にあると感じています。私が担当している新規事業のように、職員の声から新しい取り組みが生まれたり、庁内で積極的に意見交換が行われたりしています。
「公務員」と聞くと、「堅い」「変化が少ない」といったイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、現在の釧路市役所は、より良い組織、より良い街を目指して、新しいことに挑戦しようという前向きな雰囲気に満ちています。入庁していただければ、その変化をきっと感じていただけるはずです。
市職員という立場で、地域が動いていくプロセスに関われることは、非常に大きなやりがいです。そうした変化や新しい挑戦に興味がある方は、ぜひ釧路市役所の門を叩いてみてください。最近は若手の職員も増えていますので、活気もありますよ。
皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年3月取材)