沖縄県与那原町の子育て支援課で社会福祉士(課長補佐)として働く知念さんに、社会福祉士の業務内容、職場環境、仕事のやりがいなどをお聞きしました。
ー入庁前の経歴について教えてください。
知念:県内の福祉系大学に在学中に、社会福祉士を取得しました。卒業後、平成17年から7年間知的障がい者の入所施設で生活支援員として働いた後、与那原町役場に入庁しました。
ー福祉の仕事に興味を持たれたきっかけや、入所施設に就職された経緯を教えてください。
知念:私が中学生か高校生の頃に、祖母がデイサービスに通っていたのですが、その時迎えに来た職員の方が祖母に優しく丁寧に対応している姿を見て「福祉の仕事っていいな、困っている人や支援が必要な人に関わる仕事に就きたいな」と思い、福祉系の大学に進むことを決めました。
大学で福祉を学んだり、社会福祉士の資格に取り組む中で、病院や施設の相談員になることも検討しました。ただ、そういった相談業務をする上でもまずは介護の現場での経験を積むことが重要だと思い、入所施設で働くことにしました。
ーその後、なぜ与那原町の社会福祉士へなられたのですか?
知念:行政の場合、政策や事業に関わることで一部の方でなく広い範囲で支援ができることに魅力を感じたためです。
県庁や他の市町村も受験しましたが、最終的に与那原町を選びました。小さな町で人と人が繋がっている温かさが魅力的でした。また、私が入庁した時期は町村でも社会福祉士の採用が始まったタイミングで、与那原町役場の一人目の社会福祉士として入庁しました。
ー入庁後の経歴について教えてください。
知念: 平成24年から令和4年までの10年間、福祉課 障害福祉担当に配属され、相談支援や障害福祉サービスの決定、手話奉仕員養成講座やペアレントトレーニングといった各種事業に携わりました。
令和4年4月からは子育て支援課に異動し、児童相談や医療的ケアの支援、障がい児等に加配をつけるといった特別支援保育の業務、貧困対策事業などに取り組んでいます。
ー今、子育て支援課で重点的に取り組んでいることは何ですか?
知念:子育て支援課は児童相談や貧困対策などを担当する相談班と、幼稚園・保育所などを担当する事務班に分かれているのですが、今回は社会福祉士が関わる場面の多い相談班の業務についてお話します。
相談班では、学校等との連携を強化し、児童相談体制の強化や児童虐待の防止に努めています。未然防止のための普及啓発活動として、町のホームページやLINEを活用した情報発信や講演会の開催も考えています。
また、貧困対策事業についても内容を精査し、新しい事業の検討を行っています。さらに、子育て世代の親御さんの負担軽減のため、各種サービス申請手続きの電子化も進めています。
ー社会福祉士の方が入庁された場合、どのように関わっていくのでしょうか?
知念: 児童虐待対策は、相談員が2名、貧困対策は相談員が2名、計4名の相談員が会計年度任用職員として働いています。
今後社会福祉士が採用される際には、相談員とも連携し、支援者会議を通じて意見交換を行い、より徹底した支援を住民に提供できる体制にしたいと考えています。
普及啓発活動についても、情報発信や講演会の企画をお願いできればと思っています。これらを通じて、問題を未然に防ぐための取り組みを強化していきたいです。相談支援を通じて見えてくる課題を反映させながら、効果的な企画を一緒に進めていきたいと思っています。
ー業務について、決まった1年の流れはありますか?
知念:社会福祉士の場合、相談支援に関わることが多く、基本的にはその時々に起こったことに対応します。緊急性のある案件もあるので、優先して対応しなければならない場合も多いです。
決まったものとしては、毎月定例で相談班のメンバーと会議を行っています。また、児童虐待対策に関しては、6月ごろに各関係機関の代表者を集めた大きな会議や、年3回の実務者会議があります。それ以外には適宜、個別の支援者会議を行い、進捗確認を含めて年間約30回ほどの会議を行っています。
会議の多い時期や緊急の対応が必要な時期には特に忙しくなります。例えば、ゴールデンウィーク明けは学校や役場が閉まっている間に起こった問題への対応が必要で、その後の支援者会議などが多くなります。
大きい市町村と違って、兼務が多くなるため、業務の幅広さが増すことがあります。
ー社会福祉士の方が入った場合の、1日の流れのイメージを教えていただけますか。
知念:具体的な1日の流れは毎日異なりますが、例えば朝来たら相談員とケースの共有を行い、その日の動きを確認します。その後、支援者会議があれば出席したり、子供の所在確認のために学校から依頼があれば家庭訪問を行います。午後は記録をまとめたり、警察や児童相談所など関係機関からの問い合わせに対応したりします。
ー新しく入る方のために整えていることについて教えてください。
知念:3年前に2人目の社会福祉士が入庁した際に、他の職員と業務を分担するなどして事務負担を減らすことで、相談支援に集中できるための環境整備を行いました。
役場では専門性を活かすことが重要ですが、人が少ないため事務を並行して行う必要がありす。ただし、本来の社会福祉士としての役割を果たすために、上司とも話し合い、事務負担の少ない体制を整えるよう調整を進めています。
ー前職での経験で、町役場での仕事に繋がっていることは何でしょうか。
知念:前職の入所施設には男性だけでも50名ほどの入所者の方がいて、主に身の回りの世話を行っていました。介護から相談(支援)になったという違いはありますが、支援をするという、基本的な姿勢は同じです。
入所施設での経験があるため、施設の方が窓口にいらっしゃった際に「施設の立場を理解してるから安心して相談できる」と言っていただけることもありました。これは私の強みであると思います。
また、部署間の異動についても、福祉課も子育て支援課での業務も、障がい児の支援や保護者との面談など共通する部分もあり、異動前の経験を活かせました。
ーどのような時にやりがいを感じますか?
知念:支援が必要な方々、例えば子供や保護者、障がい者、高齢者などが自立して幸せな生活を送れるようになることに関われるのは非常にやりがいを感じます。
現在の子育て支援課ですと、児童相談や虐待対応など、気持ちが重くなることもあります。しかし、子供たちが与那原町の将来を担っていると思うと、支援することにやりがいを感じています。子供たちが安心して福祉を受けられる社会を作ること、保護者が経済的な困難を軽減し、子育てがしやすくなったと感じてもらえると、支援していて良かったと感じます。
また、個別支援だけでなく、新たな事業を作り、多くの方を一度に支援できる点も行政の社会福祉士としての魅力であり、やりがいに繋がっています。
ー新しい社会福祉士の方に求める人物像はありますか?
知念: 支援が必要な方のニーズを考え、自ら何をすべきかを考えられる職員が望ましいです。また、コミュニケーション能力があり、他者と連携しながら物事を進められる人が向いていると思います。
ー与那原町を目指す方へのメッセージをお願いします。
知念: 与那原町は人が温かく居心地の良い町です。社会福祉士の専門性を生かし、町民が幸せに過ごせるよう一緒に支援していける仲間をお待ちしています。入庁後は先輩方が丁寧に教えていきますので、安心して来てください。