地元である熊本県玉名市で生まれ育ち、新卒で市役所に入庁したIさん。電算、秘書、農業、議会事務局……と多彩な部署を渡り歩き、現在は人事担当として未来の仲間を迎える立場にあります。
玉名市役所は、職員数約500人という「顔の見える」規模感だからこそ、自分の仕事が街の景色を変え、市民の笑顔に直結する手応えを感じられる場所です。
今回は、かつて自らも育児休業を取得し、現在は柔軟な働き方の導入にも取り組むIさんに、玉名市で働く魅力と、人事の視点から受験生へ伝えたい「想い」を詳しく伺いました。
- 地元・玉名への愛着と、直感で選んだ「市役所」という道
- 合併から農業支援まで。多岐にわたる経験が広げた視野
- 温かな職場と、男性も当たり前に取得する育休
- DXで変わる、市民に寄り添う新しい市役所の形
- 人事担当者が伝えたい、受験者へのアドバイスとメッセージ
地元・玉名への愛着と、直感で選んだ「市役所」という道
ーまずは、これまでの歩みと公務員を目指されたきっかけを教えてください。
I:私は生まれも育ちもこの玉名市で、大学も県内の学校に実家から通っていました。卒業後、新卒で玉名市役所に入庁し、今年で24年目になります。
公務員を意識し始めたのは高校生の頃ですね。改めて振り返ってみると、特別なきっかけがあったわけではないのですが、父が地元の消防士だった影響もあり、「自分は将来、公務員として働くんだろうな」となんとなくイメージしていました。
民間企業に就職するという選択肢が不思議と浮かばず、大学も社会科学系の学部を選び、そのまま自然な流れで地元の役所という道を選びました。
ー就職活動では、他の自治体や国家公務員なども検討されましたか?
I:当時は就職氷河期でしたから、受けられる試験はいくつか受けました。実は国家公務員の筆記試験にも合格したのですが、どうしても自分がそこで働く姿がイメージできなかったんです。
地元を離れて環境を変えたい気持ちもありましたが、玉名市は自分がずっと住んできた街ですし、働く姿が一番しっくりきたため、最後は玉名市役所への入庁を決めました。
合併から農業支援まで。多岐にわたる経験が広げた視野
ー入庁されてから、どのようなキャリアを歩んでこられたのですか?
I:最初の配属は電算関係の部署でした。専門知識はゼロでしたが、当時はちょうど市町村合併という大きな転換期。ネットワークの構築など、新しい街の基盤を作る最前線に携われたのは、今思えば非常に貴重な財産ですね。
その後は秘書係を4年経験し、企画、農業、教育、議会事務局と、本当に幅広い分野を経験しました。現在は総務課の人事研修係で、採用やインターンシップをメインに担当しています。

ー特に印象に残っているお仕事はありますか?
I:農林水産政策課(現在の農業政策課)にいた頃、国が推進する「農地バンク」という新制度の活用を担当した時ですね。バラバラになっていた農地を集約して、意欲ある農家さんや法人に貸し出す仕組みなのですが、当時はまだ事務の流れも定まっていない手探りの状態でした。
悩みながらも真っ正面から向き合った日々があるからこそ、今でもその地域の田園風景を見ると、「ここは自分が関わった場所だ」と懐かしさとともに少し誇らしい気持ちにもなりますね。
ー自治体職員ならではの「難しさ」を感じる場面はありますか?
I:やはり定期的な「異動(配置換え)」ですね。数年ごとに全く異なる法律や制度を扱う部署へ移るので、そのたびにゼロからの勉強になります。また、思い入れのあるプロジェクトの途中で異動が決まり、最後まで見届けられないもどかしさを感じることもあります。
ただ、それは裏を返せば、常に新しい知識を得て、自分の世界を広げ続けられるチャンスでもあります。その変化を「面白い」と楽しめる前向きな姿勢が、この仕事には欠かせないと感じています。

温かな職場と、男性も当たり前に取得する育休
ー職場の雰囲気について教えてください。
I:入庁した頃にまず感じたのは、「どこか学校のような温かい雰囲気だな」ということでした。現在の職員数は約500人と多すぎない規模感ですし、地元出身者や同じ学校の出身者が多いこともあって共通の話題も豊富なんです。
転勤がないため、異動しても同じ庁舎内で以前の同僚と顔を合わせられますし、困った時には部署の垣根を越えて気軽に相談し合える。そんなアットホームな空気感は、今も変わらず玉名市役所の大きな魅力だと感じています。
ーワークライフバランスについてはいかがでしょうか?
I:休みは非常に取りやすい環境です。全職員の平均で年間14日程度の年次有給休暇を取得しています。私自身は、5年ほど前に長女が生まれた際、約1ヶ月の育児休業も取得しました。
当時はまだ男性の育休取得は珍しかったのですが、上司も同僚も「ぜひ取っておいで」と快く送り出してくれました。その経験があるからこそ、今は人事の立場として、若手職員にも積極的に育休や休暇取得を勧めています。今では男性の取得もごく当たり前の光景になっていて、令和7年度の取得率は90%近かったですね。
ー新しい働き方に関する制度も導入されているそうですね。
I:はい。今年の2月から、育児などを行う職員を対象とした「早出遅出勤務」という制度をスタートさせました。これは時短勤務ではなく、1日の勤務時間はそのままに、始業と終業を最大1時間スライドできる制度です。
私自身も週に一度、30分前倒しして勤務しています。保育園の送り迎えや家族との時間を大切にするなど、職員それぞれのライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が浸透しつつあります。

DXで変わる、市民に寄り添う新しい市役所の形
ー現在取り組んでいる、街の新しい魅力について教えてください。
I:玉名市は今、DX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に進めています。中でも今年の3月にスタートしたのが「書かない窓口」です。これまでは、手続きごとに何枚もの申請書に住所や氏名など記入していただく必要がありましたが、「書かない窓口」では職員が必要事項を確認しながら一緒に手続きを進め、可能な限りまとめて手続きを行います。これによって、市民の方の負担は減りますし、市役所には当たり前に存在する記載台も徐々に撤去される予定です。
また、LINEで申請できる手続きも拡大中ですが、言い換えると市役所に来なくていい手続きが拡大中ということになります。デジタルの力で「より市民の皆さんに寄り添う市役所」へと進化している真っ最中です。

ー変化の激しい時期だからこそ、やりがいも大きそうですね。
I:そうですね。伝統を守るだけでなく、新しい仕組みを自分たちの手で作り上げていける、非常にワクワクするフェーズにあります。民間企業での経験を持つ中途採用の方も増えていますし、多様な視点が混ざり合うことで、市役所全体に【新しい風】が吹いているのを感じます。
人事担当者が伝えたい、受験者へのアドバイスとメッセージ
ー今年度から採用試験の内容を変更されたと伺いました。
I:はい、より多くの方がチャレンジしやすいよう、試験内容を見直しました。これまでの4次選考を3次までに短縮し、録画面接を廃止しました。
1次試験はSPI3ですので、公務員専願の方だけでなく、民間志望の方も併願しやすい形にしています。また、最終試験で実施していた集団討論も廃止しています。
ー人事の立場から、受験生の皆さんにアドバイスをいただけますか?
I:一番大切にしてほしいのは、【「等身大の言葉」で伝えること】ですね。面接をスマートにこなそうとするのではなく、あなた自身の経験に基づいた、自分の心からの言葉で「なぜ玉名市なのか」「この街で何を成し遂げたいのか」をストレートにぶつけてほしいと思っています。
市役所の仕事は決して華やかなことばかりではありませんが、自分の仕事が街の未来を創り、誰かの役に立っているという確かな手応えを得られる仕事です。ぜひ、飾らないあなた自身の想いを聞かせてください。
ーこれからを担う若手職員の方に期待することはありますか?
I:目の前の業務に真摯に取り組むことも非常に大事なのですが、あわせて少し「長いスパン」を意識してもらえると嬉しいですね。
5年後、10年後に今の自分の仕事がどう影響するのか。今は自分が担当していても、将来は必ず誰かに引き継ぐものですから、先を見据えて逆算して考える視点を持つことは非常に重要です。
失敗を恐れず、未来の玉名を自分たちの手で創っていくという意欲を持って、前向きに挑戦し続けてほしいですね。
ー最後に、求職者の皆さんへメッセージをお願いします。
I:新卒の方も転職の方も、採用試験を受けることは人生における大きなチャレンジだと思います。かつての私がそうだったように、不安や迷いもあると思いますが、まずは悔いのないよう、万全の準備をして臨んでいただければと思います。
また、志望先を決める際は、直接声をきく、肌で感じることを大事にしてほしいと思います。志望する団体の説明会などには足を運んでほしいですし、大学1・2年生など将来のキャリアを考えている方も、ぜひ説明会やインターンシップに足を運んでみてください。
玉名市役所は、職員一人ひとりの挑戦を後押しし、支え合える場所です。熱意を持った皆さんと、この玉名市役所で一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
人事担当として若手職員や受験生を温かく見守るIさん。インタビュー中も、ご自身の失敗談や苦労話を笑顔で話してくださる姿が印象的でした。
入庁当初に感じた「学校のような職場」という言葉通り、玉名市役所には一人ひとりの個性を認め、尊重し合う土壌があるのだと思います。
「飾らず、等身大の言葉で」。そのアドバイスには、ありのままのあなたを受け入れたいという、街と組織の誠実さが込められていました。玉名の未来を共に歩む新しい仲間を、この温かな場所が心待ちにしています。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年4月取材)



