「公務員って、なんだか堅そう…。」
生まれ育ったまちへの想いを胸に、知多市役所へ入庁した松木さん。
入庁前は、松木さんもまた「公務員は堅い」という先入観を抱いていました。しかし、実際に飛び込んでみた市役所の世界は、想像とは少し違う、温かさと挑戦に満ちた場所でした。
入庁2年目の松木さんが感じた、公務員の仕事のリアルな姿や、ワークライフバランス、そして地域に貢献することの喜びを、お伺いしました。
「堅い」イメージからの出発点
―松木さんが公務員を目指されたきっかけを教えてください。
松木:私は生まれも育ちも知多市です。大学時代も実家から通っており、これまで一度もこのまちを離れたことはありません。大学では国際系の学部で外国語や文化を学んでいました。
正直なところ、はじめから強く公務員を目指していたわけではありませんでした。大学4年生になり、まわりが本格的に就職活動をはじめるなかで、自分はまだやりたいことが見つからず、少し焦りを感じていたんです。
そんなとき、自宅に届いた知多市の広報紙で、職員採用募集の記事が目に留まりました。それが、市役所という選択肢を意識した最初のきっかけです。

―市役所以外に、民間企業なども検討されていたのでしょうか?
松木:民間企業も数社受けました。でも、どこか「本当にこの仕事でいいのだろうか」という迷いがありました。そんななか、たまたま目にした広報紙の記事が、私の背中を押してくれたんです。
―公務員に対して、当時はどのようなイメージをお持ちでしたか?
松木:やはり「堅い」というイメージが強かったですね。自分にはあまり向いていないのではないか、デスクワークばかりの仕事なのだろうか、と漠然と考えていました。
想像とは違った、温かい職場の姿
―その「堅い」というイメージは、選考過程でどのように変わっていきましたか?
松木:選考がはじまる前に参加した採用説明会が、大きな転機になりました。そこで、自分と年齢の近い先輩職員の方々から直接お話を聞く機会があったんです。想像していたよりもずっと気さくで、「今どきの若者」のような雰囲気の方もいらっしゃって、それまで抱いていた堅苦しいイメージが良い意味で裏切られました。
「もっとリラックスして考えてもいいのかもしれない」と感じ、少しずつ職場の温かい雰囲気に触れることができました。

―最終面接は、副市長や部長といった方々がずらりと並ぶ、緊張感のある場だったそうですね。
松木:はい、とても緊張しました。何度も頭が真っ白になり、言葉に詰まってしまったことも覚えています。でも、そんななかでも、生まれ育ったこの知多市で「地元への恩返しの気持ちを持って仕事に取り組みたい」という思いだけは、精一杯伝えようと心に決めていました。
カメラを片手にまちへ飛び出す。広報の仕事は、想像以上にクリエイティブ
―入庁後、秘書広報課の広報担当に配属されたとのことですが、どのようなお仕事をされているのでしょうか?
松木:私の主な担当は、毎月全世帯に配布される広報紙の作成です。この広報紙づくりが、私の仕事の大きな柱になっています。それに加えて、市のホームページやSNSの運用、さらには市民の方々から寄せられるご意見やお問い合わせに対応する「広聴」という役割も担っています。

―広報の仕事は、具体的にどのような流れで進んでいくのですか?
松木:市役所の仕事というと、庁舎の中でのデスクワークを想像されるかもしれませんが、私の場合は「広報」と書かれた腕章をつけて、カメラを片手にまちへ飛び出すことが日常です。
市内でお祭りやイベント、大切な式典があれば現場に駆けつけ、その場の活気や人々の笑顔を写真に収めます。参加者の方や主催者の方にお話を聞き、その想いを記事にしていくんです。
―デスクワークだけではない、ダイナミックな仕事なのですね。
松木:はい、そこが入庁前に抱いていたイメージとの一番のギャップでした。地域のケーブルテレビで放送する番組の制作も行っています。
プロのディレクターやカメラマンの方々と一緒に、一つの作品を作り上げていく現場は、とても刺激的で、「市役所にはこんなクリエイティブな仕事もあるのか!」と大きな驚きがありました。
―広報紙の特集企画なども、ご自身で考えられるのですか?
松木:私たちの広報紙では、行政からのお知らせだけでなく、毎号特集ページを設けています。例えば、お祭りや二十歳のつどいなどのイベントの様子を伝えたり、市の取り組みや地域の課題を深く掘り下げたりします。
テーマ設定から取材、記事の執筆、レイアウトや写真の構成まで、すべて自分で考えて形にしています。毎月、一つの作品を世に送り出すような、そんな感覚に近いかもしれません。

―これまでで、特に印象に残っているお仕事はありますか?
松木:はじめて特集を担当した、去年の9月号の防災特集ですね。ちょうど企画を固めてレイアウトも決まりかけた頃に、南海トラフ地震に関する臨時情報が発表されたんです。
もちろん、市民の安全に関わる大切な情報ですから、載せないわけにはいきません。急遽、すべての構成を見直し、最新の情報を盛り込むことになりました。
次々と更新される情報と、迫りくる印刷の締め切りとの間で、本当に大変でした。ただ、全世帯に確実にお届けできる広報紙という媒体で、正確な情報を届けなければならないという使命感に燃えました。無事に発行できた時の達成感は、今でも忘れられません。
一人ひとりの挑戦を支える、温かい環境
―公務員というと、休みが取れないというイメージもありますが、実際はいかがですか?
松木:休暇については、職場の理解が非常にあり、とても取りやすい環境です。もちろん、大きなイベントや広報紙の発行スケジュールなどによっては、どうしても休めない日はありますが、それ以外の日は直前の申請でも「しっかり休んでね」と快く送り出してもらえます。
上司や先輩方も計画的に休暇を取っているので、周りに気兼ねして休みづらい、といった雰囲気は全くありません。
公務員という選択肢を、もっと身近に
―最後に、これから公務員を目指す方々へメッセージをお願いします。
松木:知多市役所は、若手職員にも様々なことに挑戦させてもらえる機会が多く、先輩や上司が常に温かくサポートしてくれる環境です。
そのなかで、自分の裁量で仕事を任せてもらえる場面も多く、日々大きなやりがいを感じています。
私自身、最初は「公務員は堅い」というイメージを持っていましたが、実際に働いてみて、そのイメージは良い意味で覆されました。もし、この記事を読んで少しでも興味を持ってくれたり、選択肢の一つとして考えてくれたりする方がいれば、ぜひ一度、挑戦してみてほしいなと思います。

―今日はありがとうございました。
「公務員=堅い」というイメージを持って知多市役所の門を叩いた松木さん。しかし、インタビューを通して見えてきたのは、そのイメージを軽やかに裏切る、若手職員への温かい眼差しと、挑戦を後押しする風通しの良い組織でした。
特に印象的だったのは、広報紙の防災特集で、市民に正確な情報を届けたいという強い使命感に燃え、構成をイチから見直したというエピソードです。
「地域のために何かしたい」という温かい想いを胸に市役所に飛び込んだ松木さんだからこそ、どんなときもブレることなく、市民一人ひとりの安全に真摯に向き合えるのだと感じました。
生まれ育ったまちへの愛着を、仕事を通して形にする。その喜びを、生き生きとした表情で語ってくださった松木さんの姿は、公務員の仕事の新たな魅力を教えてくれたようでした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)



