変化の激しい時代に、10年先の「学び」をどう設計するか。 成田市の未来地図を描く、プロジェクトの最前線ーー
情報化の進展、グローバル化、少子高齢化。社会が大きく変わろうとしている今、行政には長期的な視点に立った舵取りが求められています。 今回インタビューしたのは、教育総務課で「教育振興基本計画」の策定を担う入庁12年目の職員です。
現場を知る「保育課」、運営を知る「学校給食センター」、そして市全体を知る「財政課」。これまでのキャリアで培った多角的な視点を活かし、成田市の教育の未来図を描き出す仕事。 正解のない問いに向き合い、街の未来をデザインする業務の醍醐味に迫ります。

ミッションは「成田の教育、これからの10年」を描くこと
── まずは、現在所属されている「教育総務課」でのお仕事について教えてください。
現在、教育総務課で「教育振興基本計画」の策定を担当しています。これは、成田市の教育や生涯学習に関する今後10年間の指針となる重要な計画です。令和8年度からの開始に向けて、まさに今、その中身を作り上げている大詰めの段階にあります。
計画の内容は、学校教育から生涯学習、スポーツ、文化芸術、そして子育て支援に関わる部分まで、その守備範囲は非常に広大です。


私の役割は、それぞれの担当課が持っている課題や、今後力を入れていきたい事業をヒアリングし、調整し、一つの大きな計画としてまとめ上げることです。
── 今後10年の計画を作るというのは、成田市の未来そのものを描くような、非常に責任の重い仕事ですね。
そうですね、単に各課の要望を並べるだけでは計画になりません。国際情勢の変化、少子高齢化の進行、そして生成AIやICT環境の急速な進展など、社会を取り巻く環境は刻一刻と変わっています。
これからの10年を見据えたとき、新しい技術やトレンドをどう教育に取り入れていくか。一方で、成田市がこれまで大切にしてきた取り組みをどう継続・発展させていくか。
この「変化」と「継続」のバランスを取りながら、最終的に子供たちのためになる計画を作ることが私のミッションです。
【PICK UP!成田市の重要施策:教育ICTと英語教育】
成田市では特色ある教育施策を展開しています。 特筆すべきは、空港都市ならではの英語教育と、先進的なICT教育です。すべての小中学校に外国人英語講師(ALT)を配置し、教育課程特例校として、生きた英語に触れる機会を創出しているほか、GIGAスクール構想に基づく児童生徒1人1台のタブレット端末の活用を進めています。
── 具体的にはどのような流れで業務を進めているのでしょうか?
今年4月に異動してきたばかりなのですが、まずは膨大な資料の読み込みから始まりました。各課が実施している全事業を把握するのはもちろん、国や県の動向、関連する法令や計画も理解していなければ、実効性のある計画は作れません。
現在は、各担当課との打ち合わせを重ねながら素案を作成し、庁内の会議にかけたり、外部の有識者委員会を開催して意見をいただいたりしています。

── 1日のスケジュールはどのような感じですか?
時期や会議の有無にもよりますが、例えば会議がある日であれば、朝は8時15分頃に出勤します。始業後にメールチェックや事務連絡を済ませ、午前中は集中して計画の素案作成に取り組みます。

午後は会議に向けた準備や会場設営を行い、外部の方を招いての会議を2時間ほど実施。その後、会議録の作成や、計画の内容について他課との調整を行い、定時に退勤する、といった流れです。
会議がない日は、じっくりと資料作成に向き合ったり、教育委員会の事務事業に関する点検評価など他の担当業務を行っています。
ターニングポイントとなった「財政課」での5年間
── これまで様々な部署を経験されていますが、ご自身のキャリアパスについて教えていただけますか。
入庁して最初に配属されたのは「保育課」でした。ここでは5年間、保育園の入所受付や運営費の補助金業務、保育士の処遇改善などに携わりました。
待機児童問題が全国的な課題となっていた時期でもあり、国による制度改正の対応などで多忙ではありましたが、市民の方と直接接する機会が多く、「ありがとう」と感謝の言葉をいただけることに大きなやりがいを感じていました。

その後、「学校給食センター」で1年間、給食費の徴収管理やシステム改修などを担当し、次に異動したのが「財政課」でした。
── 財政課には5年間在籍されたとのことですが、やはり市役所の中でも中枢となる部署ですよね。
私にとって非常に大きな経験となった5年間でした。財政課では、担当部局の予算編成や執行管理、予算・決算の取りまとめなどを行いました。
各課から上がってくる予算要求に対し、その事業が本当に必要なのか、市民サービスが向上するものか、金額は適正か、もっと効果的な方法はないかといった様々な視点で査定を行います。
そして、担当部局の査定結果を報告し、市全体の事業の中で調整して予算編成を進めていきます。
── 財政課に異動された当初は、ご苦労もあったのではないでしょうか?
正直、最初は大変でした。異動したのが令和2年、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時期と重なったんです。
誰も経験したことのない未曾有の事態の中で、ワクチン接種事業や各種給付金、助成金などの緊急対策を次々と予算化しなければなりませんでした。
国から連日のように新しい通知が届き、状況が目まぐるしく変わる中で、担当課と連携して予算を確保していく作業は、スピードと正確性が求められる厳しいものでした。

── そのような困難な状況をどう乗り越えられたのですか?
知識不足を補うために、とにかく資料を読み込み勉強しました。それでも分からないことは、恥ずかしがらずに担当課の職員に教えを乞いました。皆さん忙しい中でも丁寧に教えてくださり、そのおかげで事業内容を深く理解することができました。
また、財政課の同僚や上司からのサポートも大きかったです。「こういう視点で考えてみたらどうか」とアドバイスをもらいながら、多角的に物事を見る訓練をさせてもらいました。
── 財政課での経験を通じて、ご自身の中で変化したことはありますか?
「深く考える力」と「説明する力」が身についたと思います。
予算編成を行う中では、なぜその判断をしたのか、根拠を持って論理的に説明できなければなりません。ただ数字を見るのではなく、その事業の背景や目的、市民への効果まで深く掘り下げて考える習慣がつきました。
また、市全体の事業を横断的に見ることで、成田市がどのような政策に力を入れているのか、行政運営の全体像を掴むことができたのも大きな収穫です。この経験は、現在の教育総務課での計画策定業務にも間違いなく生きています。

「外」から見たからこそ分かる、成田市のポテンシャル
── 少し時間を遡りますが、そもそも成田市を志望した理由は何だったのでしょうか?
出身は県外で、大学も都内の経営学部でした。就職活動では民間企業も見ていましたが、より社会貢献性を身近に感じられる仕事がしたいと思い、公務員を志しました。
その中で成田市を選んだのは、やはりその圧倒的な「都市の魅力」と「安定した財政基盤」に惹かれたからです。
── 学生時代、具体的にどのような点を魅力に感じましたか?
就職活動中に色々な自治体を調べる中で、成田市は単なる地方都市ではないと感じました。
日本の空の玄関口である「成田国際空港」があり、年間1000万人以上が訪れる「成田山新勝寺」がある。さらには公設地方卸売市場などの物流拠点もある。
これほど多様で強力な地域資源を持っている街は、全国を探してもそうありません。財政力指数も全国トップクラスで、ここなら一つの分野にとどまらず、ダイナミックで幅広い仕事ができるのではないかと考えました。

── 実際に働いてみて、その「成田市ならでは」の魅力は感じますか?
日々感じています。例えば現在の教育分野一つとっても、国際空港がある街としての英語教育の充実や、ICT環境の整備など、先進的な取り組みを行っています。
学校施設の整備に関しても、体育館への空調設備の導入やネットワーク環境の構築など、時代に合わせた投資を積極的に行っています。
外部の委員会などで他自治体の状況を知る有識者の方からは「成田市の教育は非常に充実していますね」とお褒めの言葉をいただくことも多く、恵まれた環境で仕事ができていることを実感します。
少数精鋭のチームワークと、柔軟な働き方
── 現在の職場の雰囲気についても教えてください。
教育総務課は、課長、課長補佐、係長含め7名という、比較的少人数の部署です。その分、風通しは非常によく、何か困ったことがあればすぐに相談できる環境です。
上司も部下の意見を尊重してくれますし、係員同士でも「これどう思う?」と気軽に話し合える、心理的安全性の高い職場だと感じています。

── ワークライフバランスについてはいかがですか?
とても取りやすい環境です。今の部署は業務の繁閑の波が比較的読みやすいので、計画的に休暇を取得できています。
何より、「お互い様」の精神が根付いているのが良いですね。誰かが休む時は周りが自然とフォローする体制ができているので、休むことに罪悪感を感じることもありません。
私が入庁してからの12年間を振り返っても、男性の育児休業取得が進むなど、市役所全体として働きやすい環境づくりがどんどん推進されていると感じます。
変化の時代、求められるのは「アンテナ」と「アップデート」
── 今後、どのような職員を目指していきたいですか?
社会の変化に対応できる職員であり続けたいと思っています。
先ほどもお話ししましたが、これからは少子高齢化や情報化がさらに加速し、私たちの生活や働き方も大きく変わっていくでしょう。これまで通りのやり方が通用しなくなる場面も増えてくるはずです。
そうした中で、常にアンテナを高く張って新しい情報をキャッチアップし、その時々に必要なスキルを身につけていく姿勢が不可欠だと感じています。

── 具体的に関心を持っているスキルなどはありますか?
やはりICT(情報通信技術)に関する知識・スキルは必須だと感じています。
これはシステム担当者だけの話ではありません。私たちのような行政職であっても、アナログで行っている業務をデジタルに置き換えて効率化したり、ICTを活用して市民サービスの利便性を向上させたりする発想が求められます。
「どうすればもっと便利になるか」を考えるためには、まず自分自身が最新のツールや技術について理解していなければなりません。そういった意味でも、学び続ける姿勢を大切にしていきたいです。
メッセージ:成田市でしかできない経験が、ここにある
── 最後に、成田市役所への就職・転職を考えている方へメッセージをお願いします。
市役所の仕事というと、「事務的」「保守的」「デスクワークばかり」というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。私も学生時代はそう思っていました。
でも、実際に働いてみると、そのイメージは良い意味で裏切られます。
保育、給食、財政、教育……私が経験してきた部署だけでも、業務内容は全く異なります。数年ごとに転職するような感覚で、新しい分野の知識を学び、様々な角度から社会貢献ができる。これは公務員ならではの面白さです。
特に成田市は、空港や観光資源、大規模なイベントなど、他の自治体にはないスケールの大きな仕事に関われるチャンスがあります。
「安定」だけでなく「挑戦」や「多様な経験」を求めている方にとって、成田市は最高のフィールドだと思います。職場も温かく、新しい仲間を受け入れる準備はできています。成田市の未来を一緒に創っていける方と働けることを楽しみにしています。
ーありがとうございました。
財政課で未曾有のコロナ禍を乗り越え、今は正解のない「未来の教育」という難問に挑む。そのキャリアは、決して平坦な道のりではなかったはずです。 豊富な地域資源をどう最大化するかを考え抜くその姿勢は、まさにプロフェッショナル。
「安定した基盤があるからこそ、思い切った未来が描ける」。その言葉が、成田市で働く醍醐味を物語っていました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



