本部と現場の経験を、未来へつなげる。そう語るのは、成田市消防本部警防課で働く入庁11年目の消防職員。
成田空港を擁する国際都市・成田市で、最前線の救急現場を数多く経験してきた彼女は、現在、育児に励みながら、警防課でドローン管理や大規模訓練の調整といった「組織の土台作り」を担っています。
現場で培った機敏な判断力と、本部での戦略的な思考。その両方を備えた「消防のプロ」を目指し、進化を続ける彼女に、成田市で築くキャリアについてお聞きしました。
【目次】
- ドローン操縦から訓練の調整まで。警防課が担う「現場の支え」
- 「早い処置が命を救う」救急救命士を目指した原点と成田への想い
- 女性ならではの視点と、支え合うチームの絆
- ライフステージの変化を力に。成田市が誇る「働きやすさ」
- 本部と現場、両方の力を兼ね備えた「ハイブリッドな消防職員」を目指して
ドローン操縦から訓練の調整まで。警防課が担う「現場の支え」
ーまずは自己紹介と、これまでの経歴について教えていただけますか。
平成27年4月に入庁し、今年で11年目になります。
キャリアのスタートは成田消防署での消防隊員としての1年間でした。その後は救命士として救急隊で長く現場を経験し、3年半の産休・育休を経て復帰。
一昨年は消防署で日勤として受付や事務を担当し、去年の4月から現在の警防課に配属されて2年目を迎えています。
ー 現在は「警防課」という部署にいらっしゃるとのことですが、警防課はどのようなお仕事をされているのでしょうか。
警防課の仕事は本当に多岐にわたります。消防車両や消防水利(消火栓など)の管理、機関員(車両の運転手)の育成、他自治体との応援協定、救助事務、そして各種訓練の計画・実施など、現場の部隊が円滑に活動するための土台作りを一手に引き受けている部署です。
その中で私が個人的に担当しているのは、訓練企画やドローンの管理や操縦員の育成、SNSなどを使った広報業務、そして統計調査などです。

ー ドローンの操縦員を育成するための講習も、企画されているとか。
はい。座学の資料を自分で作成して講習を行ったり、実技の指導をしたりしています。成田市の職員として、仕事の範囲内で安全に、かつ効果的にドローンを活用できるよう、10時間以上の訓練を積み、国への申請を経て操縦員を養成しています。
ー 訓練の調整についても、今年は特に大きなプロジェクトに関わったとお聞きしました。
令和7年度は、成田空港での航空機事故を想定した「航空機総合訓練」の主担当を任されました。成田市には国際空港がありますから、この訓練は非常に重要です。空港側との細かな調整はもちろん、消防側としての動き、さらには近隣の市町村から応援に来てもらうための協定先との調整など、数ヶ月前から準備を進めていました。
また、5月には「全国消防長会警防防災委員会」の会議が成田で開催され、その会場調整など開催地事務局の主担当も務めました。委員会事務局やホテルの方との打ち合わせなど、事務的な調整能力も求められる1年でした。
「早い処置が命を救う」救急救命士を目指した原点と成田への想い
ー消防職を志したきっかけは何だったのでしょうか。
実は父が別の自治体で消防官をしていまして、幼い頃から働く姿を見て「かっこいいな」と憧れを抱いていました。進路を考える中で、消防の様々な仕事の中でも特に「救急」に惹かれました。
ー なぜ「救急」だったのですか?
命を救うために一番大切なのは、「どれだけ早く現場に駆けつけ、どれだけ早く適切な処置を行うか」だと思ったんです。
病院に運ばれる前の「病院前救護」こそが救命率を左右する。その最前線で活動する救急救命士になりたいと考え、中学生の頃には決めていました。

ー 中学生でそこまで明確に決められてたんですね。医療への適性を確かめるために、アルバイトもされていたとか。
はい。血液や傷口などを見ることの不安もあり、適正を確認することも目的に、歯科助手として3年間アルバイトをしていました。そこで医療の現場や患者さんや子どもと接する経験を積み、「自分はこの道でやっていける」と確信を持つことができました。
ー その後、専門学校を経て成田市に入庁されたわけですが、数ある自治体の中でなぜ「成田市」を選ばれたのでしょうか。
成田市は成田空港を擁する「日本の玄関口」です。日常の救急対応に加え、多様な背景を持つ方への迅速かつ的確な対応が求められる地域であると感じています。
そのような環境の中で、救命士としての知識・技術を高めながら、状況に応じた冷静な判断と丁寧な対応を積み重ね、市民から信頼される職員として成長していきたいと考え、成田市を選びました。

ー 実際に、外国の方の対応をされることも多いですか?
はい、空港内やその周辺での出動も多いです。日本語が通じない場合は、翻訳ツールを使ったり、身振り手振りを交えたりしながら対応します。
観光で来られた方は、説明が必要なことも多いのですが、無事に命を繋ぎ、ご家族に安心していただけた時の喜びは、特別なやりがいです。
女性ならではの視点と、支え合うチームの絆
ー 消防という職場は、まだ男性が多いイメージがありますが、飛び込むことに不安はありませんでしたか?
迷いは全くありませんでした!「救命士として働きたい」という思いが強かったですから。
周りからは「医療従事者なら、他の業種の方が女性は働きやすいんじゃない?」と言われることもありましたが、やはり早い処置があってこその救命率、社会復帰率だと思っていたので、救命士として現場の最前線に出たかったです。

ー 実際に現場に出てみて、大変だったことはありますか。
身体の大きな患者さんを搬送する際、ストレッチャーの操作や持ち上げにパワーが必要な場面では、不安を感じることもありました。でも、それを「できない」ままにするのではなく、日頃からの訓練で補うようにしました。
それと、私の中で大事にしているのは、「努力は怠らず、その中でもできないことは、素直にできない、難しいと言う」ことです。無理をして患者さんに不利益が生じるのが一番いけませんから。
隊の仲間には日頃から自分の考えを伝えていましたし、周りも「大丈夫?」「ここは代わろうか」と常に気にかけてくれました。性別による劣等感を感じることはなく、むしろ「チームとしてどう最善を尽くすか」を共有できる環境だったと思います。
ー 「女性だからこそ」活かせた、と感じる部分はありますか?
女性ならではの声掛けや対応が生かされる場面もあるのの、性別によるものよりこれまで培ってきた経験の影響の方が大きいと考えています。消防学校入校時の訓練ナレーションや消防署在籍時の消防職員意見発表会などで経験を積み、本部に在籍する今もナレーションや訓練の説明など「話す」業務に活かされています。現場活動時に相手に与える「優しさ」「安心感」も、消防職員として必要な力です。
ライフステージの変化を力に。成田市が誇る「働きやすさ」
ー 3年半の育休を経ての復帰。成田市の「働きやすさ」についてはどう感じていますか。
成田市は制度が本当に充実しています。「子の看護等休暇」や「休憩時間の短縮」など、育児中の職員を支える仕組みに何度も助けられました。 特に驚かれるのが、男性の育休取得率の高さです!
成田市消防本部の男性育休取得率は昨年度が94%、今年度も現時点で87%です。男性も女性も当たり前に休みを取り、助け合って戻ってくる。そんな文化が根付いているのが成田消防の最大の魅力かもしれません。

ー それは心強いですね!ライフステージが変わる女性受験生にとっても希望になります。
そうですよね。また、令和7年度からは平日の日中に活動する「本部機動救急隊」も新設されました。
育児等で24時間勤務が難しい時期でも、日中に救命士としてのスキルを維持し、現場感覚を忘れることなく働ける環境が整っています。私も警防課の業務の傍ら、この隊に乗務することがあります。
本部と現場、両方の力を兼ね備えた「ハイブリッドな消防職員」を目指して
ー 入庁11年目を迎え、今後どのような職員を目指していきたいですか。
現場の救急隊として活動していた頃は、傷病者本人やその家族から届く「良くなったよ」というお手紙や電話が何よりの励みでした。今は本部で、現場が安全に動くための「計画力」や「調整力」を学んでいます。 私の目標は、本部の戦略的な視点と、現場の機敏な判断力の両方を兼ね備えた消防職員になることです。
本部の仕事は決して現場と無関係ではありません。むしろ現場を知っているからこそ、より実効性のある計画が立てられる。今の経験は、将来また現場に戻った時、必ず大きな力になると確信しています。
ー 最後に、消防職を目指す方にメッセージをお願いします!
消防の仕事は、体力だけではありません。現場での判断力、優しさ、そして些細な変化に気づく力。思いやりを持って人と接することができるなら、その力は必ず誰かの命を守る力になります。
経験を重ねれば、自分にしかできない役割がきっと見つかります。勇気を持って、ぜひ成田消防の世界に飛び込んできてください。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!
ーありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年12月取材)



