愛知県春日井市役所の福祉政策課で働く吉田さんのインタビュー記事です。
入庁2年目というフレッシュな視点で、公務員のイメージを覆す仕事のリアルと、地元で働く魅力についてお話しいただきました。決してルーティンワークだけでない、「正解のない問い」に向き合う日々や、未来に向け働くやりがいなど、想像とは異なる働き方について知ることができる内容です。
- 市民として感じた「市役所」の仕事の大切さ。
- 「若手が生き生きしている」。春日井市を選んだ理由
- イメージが一変。正解のない問いに向き合う毎日
- 市民の声がやりがいになる瞬間
- 休暇もキャリアも、安心して描ける職場
- 未来の後輩へ
市民として感じた「市役所」の仕事の大切さ。
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
吉田:生まれも育ちも春日井市で、実家は市役所が見えるくらい近くにあり、子どもの頃から慣れ親しんだ環境で育ちました。
大学では総合政策学部を専攻し、ゼミでは社会保障や社会福祉について学んでいました。卒業後、令和6年度に新卒で春日井市役所に入庁し、現在は福祉政策課で働いています。

ー吉田さんは、ずっと公務員を目指していたのですか?
吉田:いえ、大学に入ったばかりの頃は、自分が何をしたいのか具体的に決まっていなくて、漠然と「まちづくり」に興味がある程度でした。
だからこそ、幅広い分野を学べる総合政策学部を選んだんです。民間企業か公務員なのかという点も含めて、進路についてはあまり深く考えていませんでした。
ーそこから、公務員になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
吉田:大きなきっかけが2つあります。1つ目は、大学生の時に祖母が認知症になり、介護が必要になったことです。
意志が強くしっかり者だった祖母が、日に日に認知症の症状が強くなっていく姿を見るのはとても辛かったです。そんな時、母が市役所に相談し、介護サービスやケアマネージャーさん、日中に過ごせる場所などを紹介してもらいました。
おかげで祖母は自分の居場所を見つけることができ、生き生きと過ごすことができるようになったんです。
その経験を通して、「市役所って、住民票をもらうだけの場所じゃなかったんだ!」と知ることができました。
それまではどこか他人事だった市役所の仕事が、自分たちの生活を根底から支えてくれる、本当に困った時に頼れる存在なのだと実感しました。
これが、市役所の仕事を初めて意識したきっかけです。
ーご家族の経験がきっかけとなったのですね。もう1つのきっかけは何だったのでしょう?
吉田:大学3年生の時に参加した、春日井市役所のインターンシップです。そこで配属されたのが、偶然にも今働いている福祉政策課でした。
仕事内容を実際に体験させてもらい、職員の方々から直接話を聞く中で、「ここで働いてみたい」という気持ちが強くなりました。市民として外から見ていただけでは分からなかった、市役所の仕事の奥深さや職員の方の熱意に触れたことが、最終的な決め手になりましたね。
「若手が生き生きしている」。春日井市を選んだ理由
ー数ある自治体の中から春日井市役所を選んだのは、やはり地元だからでしょうか?
吉田:県内の自治体をいくつか受験していたのですが、その中で春日井市役所を選んだ1番の理由は、やはり慣れ親しんだ地元だったことです。
家族や友人、昔からお世話になっている人たちがたくさん住んでいるこの街の暮らしを、今度は自分が支える側になりたいという思いが強かったですね。
また、インターンシップで感じた職場の雰囲気も大きな決め手でした。若手の職員の方々がとても生き生きと働いていて、自分の意見をきちんと発信している姿が印象的だったんです。
公務員というと、少し硬くて厳しいイメージがあったのですが、そのイメージが良い意味で覆されました。自分の目で「ここでなら自分らしく働けそうだ」と感じられたことが大きかったですね。

ー市役所で働こうと決めてから、どのような対策をされましたか?
吉田:まずは、自分の街である春日井市のことをもっと深く知ることから始めました。
地域のお祭りやボランティア活動に積極的に参加したり、アルバイト先の喫茶店で常連のおじいちゃんおばあちゃんから市が開催しているイベントの話を聞いたり。そうやって、市民の目線で市の取り組みに触れるようにしていました。
そうやって色々と調べてみると、ずっと住んでいたにも関わらず、地元にはこれまで全く気が付かなかった多くの魅力や課題があるんだと改めて知りました。
筆記試験対策としては、苦手だった数学を大学の友達と一緒に勉強しました。
また、新聞の地域版を読むことで面接にも備えました。ちょうど大学の卒業論文も春日井市に関係するテーマだったので、市の行政計画などを読み込み、市の取り組みを勉強したことも、結果的に面接対策に繋がったと思います。
ー就職活動を振り返って、未来の後輩に「これはやっておくと良い」というアドバイスはありますか?
吉田:実際に地域の活動に参加してみることですね。
私自身、地域食堂のお手伝いをする機会があったのですが、そこで働く人や利用する人の生の声を聞くことで、市役所の仕事が「書類の中」だけのものではないと実感しました。
地域に出て、自分の目で見て、人と話すことで、仕事への理解が深まりますし、何より働くイメージが具体的になります。机の上での勉強も大切ですが、ぜひ現場に足を運んでみてもらいたいです。
イメージが一変。正解のない問いに向き合う毎日
ー入庁前の「公務員」のイメージと、実際に働いてみて感じたギャップを教えてください。
吉田:入庁前は、正直「ルーティンワーク」「真面目」「硬い」というイメージでした(笑)
でも、実際に働いてみると全くイメージと違いましたね。特に私のいる部署は、毎日違うことを考え、正解のない課題に向き合っています。みんなで意見を出し合い、議論を重ねていく場面が非常に多く、常に頭をフル回転させています。
働く人たちの印象も大きく変わりました。もっとお堅い雰囲気かと思っていたのですが、気さくで親切な方ばかりで、職場はとても明るいです。このギャップは、嬉しい驚きでした。
ー現在、どのようなお仕事を担当されているのですか?
吉田:主に2つの大きな業務を担当しています。
1つは、福祉に関する行政計画の策定です。これは、市民の活動団体や事業者の方々にヒアリングを重ね、市の将来の福祉のあり方を決めていく仕事です。
もう1つは、総合的な福祉拠点の再整備事業です。既存の施設を建て替えるにあたり、中高生にもっと利用してもらうにはどうすればいいかなど、施設の新たな構想を練っています。
どちらも市の未来関わる重要な業務で、2年目の自分がこのような業務に携わるとは思っていませんでした。責任は大きいですが、その分やりがいも感じています。

ーちなみに入庁したばかりの頃、苦労したことなどはありましたか?
吉田:これはもうたくさんありました。最初は会議で飛び交う専門用語も全く分からず、どこへ行っても、何を聞いていても「今、何の話をしてるんだろう…」と戸惑うことばかりでした。
また、PCスキルも不足していて…これも働き始めの頃はすごく苦労しましたね。大学時代はレポートを書くくらいしか経験がなかったので、Excelでグラフを作るところから先輩に教えてもらっていました。今更ですが、大学生のうちにもっとExcelやWordを触っておけばよかった、と心から思います。
市民の声がやりがいになる瞬間
ー仕事のやりがいは、どんな時に感じますか?
吉田:現在の私の仕事は、すぐに結果が見えるものばかりではありません。しかし、想像以上に挑戦できる仕事だと感じています。
だからこそ、自分たちの考えたことが、実現に向けて軌道に乗っていくことを実感できた瞬間は本当に嬉しいですね。市民の方の暮らしやすさに繋がる基盤となる第一歩に携われていることにやりがいを感じます。
また、以前、市の事業を運営していく中で、利用者の方から感謝の言葉をいただいたことがありました。それは、過去の先輩たちが知恵を絞って作り上げてくれた事業です。
そのバトンを受け継ぎ、未来に繋げていく。この連鎖の中に自分がいること、そしてそれが誰かの「ありがとう」になっていることを感じられるのが、この仕事の醍醐味だと思います。
休暇もキャリアも、安心して描ける職場
ー職場の雰囲気や教育制度についてはいかがですか?
吉田:職場の雰囲気は、かなり良いと思います。インターンで感じたイメージのとおり、年齢や経験に関係なく、活発に議論ができる環境です。
私も入庁1年目の頃は、何も分からず不安でしたが、「若い世代の視点や先入観のない立場で、どう思う?」と先輩たちが私の意見を求めてくれたこともあります。自分の立場を活かした意見を尊重してくれる、風通しの良い職場だと感じています。
教育制度もしっかりしていて、入庁後の数日間の研修を終えるとすぐに部署に配属され、OJTで仕事を覚えていきます。
私の場合は6年目の先輩や、指導員としてついてくださる上司が、本当にゼロから丁寧に教えてくれました。分からないことがあっても気軽に質問できる雰囲気を作ってくださったので、安心して仕事に取り組むことができましたね。
ー吉田さんが、春日井市役所で働く魅力は何だと思いますか?
吉田:春日井市役所に限ったことではないかもしれませんが、福利厚生が充実していて、ワークライフバランスが取りやすいことだと思います。特に休暇制度は手厚くて、年次休暇20日に加えて、いつでも取得できる「厚生休暇」が6日間あります。
この厚生休暇は、他の自治体では「夏季休暇」として夏季に限定した利用となっていることが多いようですが、春日井市では特定の時期に限定されず、年間を通していつでも取得できるんです。
自分の業務のスケジュールに合わせて休暇を取得できるため、連休を取って旅行にも行っていました。

また、育児休業だけでなく、復帰後の働き方も充実しているため、ライフステージの変化に対応しやすい制度が整っています。男女関係なくキャリアを継続できる環境は、将来を考える上で大きな安心材料になっていますね。
未来の後輩へ
ー公務員を目指す学生に向けて、メッセージをお願いします。
吉田:市役所の仕事は、皆さんが思っている以上に幅広く、クリエイティブで、面白い環境です。様々な分野を経験しながら、自分の街に詳しくなれるのは、他の仕事ではなかなか味わえない魅力だと思います。
そして何より、市民の暮らしに直接関わり、その変化を間近で感じられる、やりがいのある仕事です。
春日井市役所は、若手でも安心して挑戦できる、温かくて頼れる先輩がたくさんいる職場です。少しでも興味があれば、ぜひ不安がらずに飛び込んできてほしいなと思います。
皆さんのチャレンジを応援しています!

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)