愛知県春日井市役所で土木技術職として働く佐藤さんのインタビュー記事です。
高専で学んだ専門知識を活かし、市民の生活に不可欠な「水」というインフラを支える仕事。その具体的な業務内容や、自分の仕事が生活を支えているという実感、そして若手でも主体的に活躍できる職場環境の魅力に迫りました。
目に見える仕事を。土木技術職という選択
ーまずは簡単な自己紹介をお願いします。
佐藤:生まれも育ちも春日井市で、工業高等専門学校(高専)を卒業後、令和2年度に土木技術職として入庁しました。
これまで異動はなく、入庁してからずっと上下水道部水道工務課で勤務をしています。
ー土木のことを学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
佐藤:中学生の頃に、友人に誘われて高専のオープンキャンパスに行ったのが、この道に進む最初のきっかけでした。普通の高校とは違い、専門的な科目を学べるといった点に興味があり、見学に行ってみることにしました。
実際に見学してみると、実技的な授業や、社会に直接役立つようなことを多く学べる学校だと知り、「ここで学びたい!」と思って受験を決めました。
高専では、いわゆる土木科にあたる環境都市工学科に在籍し、5年間、地盤工学や水理学といった専門知識を学びました。
ー高専には土木以外のコースもあったと思いますが、なぜ土木を選んだのでしょうか?
佐藤:高専には、機械科や情報系の学科、建築学科などもあります。その中で土木を選んだのは、当時から「目に見える仕事」に興味があったからです。
当時はインフラなんて難しい言葉は知りませんでしたが、道路や橋、そして今担当している水道といった、生活をする上で毎日当たり前に使っているものがどうやって作られているんだろう?という純粋な好奇心もありました。
また、土木を専攻すれば、ゼネコンや建設コンサルタント、そして自治体など、活躍できるフィールドが広いことにも魅力を感じていましたね。
ー高専卒業後は大学への進学(編入)は考えなかったですか?
佐藤:選択肢としては、より高度な知識を身に付けるため、大学に編入するという道もありました。実際にクラスの3割くらいの同級生は大学に編入する道を選んでいたかと思います。
しかし、私は学んだ知識を早く現場で活かしてみたいという思いが強かったので、卒業後は就職することを第一に考えていました。
ー民間企業を含め様々な選択肢がある中で、春日井市役所を志望した理由を教えてください。
佐藤:高専在学中に行ったインターンシップが大きなきっかけとなりました。
水道工務課のインターンシップに参加したのですが、そこで、学校で学んでいる水理学などの知識が、まさしく現場で使われているのを目の当たりにして、「ここで働きたい」という気持ちが芽生えました。
他にも道路課や河川排水課なども見学させていただき、市役所の土木職が、公園づくりから河川管理、道路整備まで、本当にオールマイティに街のインフラを支えていることを知りました。
ここなら、幅広い知識と経験を積めるに違いないと感じ、働くのなら市役所がいいと思いました。
市役所の中でも春日井市を選んだのは、やはり生まれ育った地元だからです。ありきたりに聞こえるかもしれませんが、自分の育った街に貢献したいという思いが強かったですね。
市民の当たり前を守る。水道工務課の仕事とは
ー現在所属されている水道工務課では、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
佐藤:メインの業務は、市民生活に欠かせない水道管の維持管理です。近年問題になっている水道管の老朽化対策や、地震に備えた耐震化を進めるため、古くなった水道管を新しいものに入れ替える工事の発注から施工管理までを担当しています。
特徴的なのは、工事の「設計」も自分たちで行う点です。通常、設計はコンサルタントに委託することも多いのですが、私たちは自分たちで現地調査を行い、「ここに古い管があるから、新しい管はこのルートで通そう」といった計画を立て、図面を引いていきます。

そして、設計が終わると発注業務を行い、工事を請け負う業者と密に連絡を取りながら、1つの工事を完成させていきます。デスクワークだけでなく、週に2、3回は現場に出て、工事の進捗を確認したり、断水や洗管(管内の水を綺麗にする作業)作業を自ら行ったりもします。
また、突発的な水道管の破裂や漏水といった緊急事態への対応も重要な仕事です。修繕業者と一緒に現場へ駆けつけ、1日も早い復旧を目指します。入庁前は「技術職であっても役所の仕事はデスクワークがメイン」と思っていましたが、実際はかなりアクティブに現場を飛び回っています。

ー学校で学んだ専門知識が、実際の業務で活かされていると感じることはありますか?
佐藤:これは、すごく実感しています。学生時代は、「ここで習った難しい計算式や理論は、本当に現場で使う機会があるのだろうか…」と、正直かなり不安に思っていました(笑)
実際に働いてみると、学生時代の知識や経験を活かして考える機会が沢山あります。
例えば水道管の水の流れを計算する「水理学」の知識は、各家庭に濁った水が届かないようにしたり、水の出が悪くならないようにしたりするための計画を立てる上で不可欠です。
もちろん、学校で学んだことのすべてをそのまま使うわけではありませんが、基礎となる知識があるからこそ、現場を理解し、的確な判断をすることができるのだと実感しています。
学んだことが無駄ではなかったと思える瞬間は、とても嬉しいですね。
自分の仕事が生活を支える。土木技術職のやりがい
ーこれまでで、何か印象に残っているエピソードなどはありますか?
佐藤:年間で何件も工事を担当するので、「これ!」と1つに絞るのは難しいですが、やはり工事を終え、住民の方から直接感謝の言葉をいただけた時は、何よりの励みになりますね。
「水は蛇口をひねれば当たり前に出るもの」と思われていますが、その当たり前を維持するためには、日々の地道な努力が必要です。
工事中はご不便をおかけすることもあり、時には厳しいお言葉をいただくこともありますが、新しい水道管に変わり、綺麗で安全な水が安定して届くようになった時、「ありがとう」と言っていただけると、この仕事をしていて本当に良かったなと思います。
また、1度だけですが、ポンプ場を新設するための造成工事を担当したこともあります。水道管の工事は地中に埋まってしまうので、完成しても成果が目に見えにくいのですが、この時は何もない土地がみるみるうちに形を変えていく様子を目の当たりにしました。
「ここは自分がやった工事なんだ」と、自分の仕事によって目に見える形で街が変わっていくことを実感でき、大きな達成感とやりがいを感じましたね。

ー佐藤さんは、土木技術職として働く魅力はどういったところにあると思いますか?
佐藤:様々な分野のプロフェッショナルと一緒に仕事ができることですね。工事業者はもちろん、設計コンサルタントや、水道資材のメーカーなど、市役所には本当に色々な業種の方々が来られます。
そうした方々と仕事の話をする中で、自分の知らなかった知識や新しい視点を得られるのは、非常に刺激的で、自分の成長にも繋がっていると感じます。幅広く市民生活を支える「市役所」だからこそ得られる、貴重な経験だと思います。
若手の意見も尊重される、風通しの良い職場環境
ー春日井市役所は、働く場所としてどのような雰囲気ですか?
佐藤:すごくアットホームな職場だと思います。私はまだ水道工務課しか経験していませんが、仕事で他の部署の方と関わる機会も多く、皆さんとても仲が良い印象です。
そして、何より皆さん優しいです(笑)
もちろん、仕事ですから厳しく指導をいただく場面もありますが、普段はとても穏やかで、若手職員のことを気にかけてくれる方ばかりです。人間関係で悩むようなことがなく、とても働きやすい環境だと思っています。

ー若い方であっても、積極的に意見が言えるような環境なのでしょうか?
佐藤:そう感じています。もちろん最初の1〜2年は知識も経験もなく、なかなか自分の意見を言う機会はなかったですが、今では積極的に発言するようにしています。
たとえ自分の考えが間違っていても、先輩や上司が「それは違うよ」と丁寧に教えてくれますし、逆に良い意見であれば「その案で進めよう」と背中を押してくれます。若手の意見だからと無下にされることはなく、自分の考えを大切にしながら仕事を進めていける環境です。
ーワークライフバランスについてはいかがですか?
佐藤:やはり公務員ということもあり、基本的な福利厚生は充実していると思っています。育休や産休制度もしっかりと整備されているので、ワークライフバランスを大切にしながら働ける職場だと感じています。
抱えている工事やその進捗によっては残業が発生したり、休みにくい期間が発生することもありますが、基本的には自分で業務を調整して柔軟に休暇も取得できます。
周囲の方の理解もあるので、休みを取りにくいといった雰囲気は全くなく、仕事もプライベートも大切にした働き方ができる環境ですよ。
専門知識を活かして働きたいあなたへ
ー最後に、現在就職活動をしている方にメッセージをお願いします。
佐藤:自治体か民間企業かで悩んでいる方もいると思いますが、自治体は「安定」しているだけでなく、「やりがい」も非常に大きい仕事です。
どこの自治体で働くか迷っている方には、ぜひ春日井市をおすすめしたいです。名古屋市に隣接していて生活しやすく、人も温かい。そんな素晴らしい街のインフラを、自分の手で支えていけることは、何物にも代えがたい喜びです
また、若手の意見も尊重される風通しの良い環境で、幅広い知識を学びながら成長できます。
「専門知識を1つの分野だけでなく、幅広く活かしたい」「自分の仕事で地元に貢献したい」そんな思いを持っている方なら、きっと春日井市役所で大きなやりがいを見つけられるはずです。
皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)