新上五島町役場の新魚目(しんうおのめ)診療所で看護師として働く永田さんのインタビュー記事です。東京や長崎の大学病院などでの豊富な経験を経て、家族との時間を大切にするため新上五島町へ移住。地域医療の最前線で奮闘しながら、ワークライフバランスの取れた充実した日々を送る永田さんに、その魅力ややりがいを伺いました。
ーまず、永田さんが入庁されるまでのご経歴を教えていただけますでしょうか。
永田:学校を卒業後は東京と長崎の大学病院で11年勤務し、その後は夫の転勤に伴い各地で看護師を続けていました。訪問看護や保育園、市の非常勤保健師など、様々な形で医療に携わってきました。2年ごとの転勤生活だったのですが、子どもが小学校に上がるタイミングで、どこかに定住したいという話になり、夫の地元である新上五島町に6年前に移住しました。
最初は町で唯一の病院に勤めたのですが、10年ぶりの夜勤が体力的に厳しく感じていたところ、役場職員として、平日勤務で夜勤がない診療所の看護師募集があり、応募して現在は4年目となります。一貫して北部の新魚目診療所に勤務しています。
看護師の仕事が好きなので、看護師以外の道は考えていませんでした。
ーどのような体制でのお仕事となるのですか?
永田:私たちの診療所は小さいですが、医師一人、看護師四人、そして放射線技師と臨床検査技師が在籍しています。健診から一般外来、外科的な処置まで、小さいながらも幅広く対応しています。
特徴的なのは、へき地診療です。新上五島町の最北西部まで、週に2回、医師と看護師で診療に出向いています。

ー新上五島町には、役場が管轄する診療所が他にもあるのですか。
永田:はい、新魚目診療所の他に、若松診療所と榎津診療所の計3ヶ所あります。なので、将来的には異動の可能性もあると聞いています。
ーへき地診療は、具体的にどのように行われているのですか。
永田:3つの診療所がそれぞれ担当地区を持っていて、週に何回か、決まった場所へ出向いて診療を行っています。新魚目診療所は、火曜日に仲知地区、木曜日に津和崎地区へ行きます。先生と看護師1~2名で行くので、交代で担当しています。遠いところだと車で30分くらいかかりますね
ーこれまでの病院勤務とは異なる点や、新上五島町ならではだと感じることはありますか。
永田:新上五島町ならではの患者さんのエピソードとしては、「釣り針が刺さったから取ってくれ」と来られる方がいらっしゃることですね。釣りをされている方や漁師が多く、海が近いこの町ならではの光景だと思います。釣り針の処置は、ここで働き始めてから経験しました。年に何回かありますね(笑)。
あとは、何よりも当診療所の先生が患者さんたちから非常に信頼されているのを間近で見るのは驚きですね。変わりなく毎月たくさんの患者さんが来てくださるなかで、先生も丁寧に毎回診察をされます。患者さんが深く信頼していただいていることはありがたいですし、自分も学びになります。
また、生活習慣病の指導なども非常に勉強になります。大きな病院のように専門性を深く追求するというよりは、診療所だからこその温かみや、定期的に来られる患者さんとの継続的な関わりの中に、大きなやりがいを感じています。とても楽しいですね。

ー先生と患者さんの信頼関係が厚いのですね。永田さんご自身も、患者さんとの関係構築で気をつけていることはありますか。
永田:1つは、以前お話しした内容をきちんと覚えておくことですね。あとは、かなりお待たせしそうな時はこまめにお声がけするなど、基本的なことですが、丁寧な対応を心がけています。そうするうちに、マスクをしていても顔を覚えていただいて、スーパーなどで声をかけてもらえることもあり、嬉しく感じます。
ー職場の連携体制や雰囲気はいかがですか。
永田:風通しは良く、とても仕事がしやすい環境です。皆さん本当に良い方ばかりで、私が内視鏡など新しい業務も覚えることも多かったのですが、丁寧に指導してくださっています。
実は最近、人の入れ替わりがありまして、一番長い方で7年目の方が一人、その次が私です。あとはまだ入職して半年くらいの方もいます。年齢層は20代から60代近い方まで幅広くいますが、特に違和感なく働いています。
事務の役場職員の方もいらっしゃって、そちらには若い方もいるので、全体としてはバランスの取れた年齢構成で働けているのではないかと思います。
また、外来なので、終業時間がある程度決まっており、患者さんが落ち着いた時間には皆で集まって情報共有をするなど、円滑に業務を行えています。

ーこの職場で働く面白さや、新上五島町で役場の看護師として働くことの魅力は、どのような点にあると思われますか。
永田:まず、平日勤務であることは、ワークライフバランスの面で大きな魅力です。そして、お年寄りの患者さんが多いのですが、90歳を超えてもかくしゃくとされている方がたくさんいらっしゃるんです。
人生経験が豊富なので、お話が面白いですし、先生とのやり取りもまるで漫才のようで、聞いているこちらも楽しくなります。
また、先生と一緒に生活習慣病に関するパンフレットなどを作成して院内に掲示すると、患者さんが興味深そうに見てくださったり、質問してくださったりと、反応がダイレクトに伝わってくるときは嬉しいですね。小さな診療所だからこそ、自分たちの働きかけに対する反応がすぐに見えるというのは、やりがいにつながっています。
ーワークライフバランスについてもう少しお伺いします。平日勤務で、残業はほとんどないとのことでしたが、普段の1日のタイムスケジュールはどのような感じですか。
永田:午前中は、ほぼ診療の介助で、先生について外来業務を行います。患者さんが多い日には、お昼休憩がずれ込んで午後2時くらいまでかかることもあります。通常通り終わった場合、午後は、コロナ禍以降続いている夕方の発熱外来の対応や、空き時間を利用して「分包」といって、お薬をご自身で一包化できない患者さんのために、一回分ずつ袋詰めする作業を大量に行います。
その他、健診の用紙準備など、地道な事務作業も多く、看護師4人で手分けして行っています。隙間時間があればあるだけ、そういった薬局業務や事務作業に充てていますね。
ー夜間の緊急対応などはないのですか。
永田:看護師の夜間対応はありません。ドクターは対応することもありますが、私たちは定時で業務を終えることがほとんどです。
このワークライフバランスの良さは、本当に大きなメリットだと感じています。もちろん、前職の病院勤務もやりがいがありましたが、今の働き方は、子育て中の私にとっては理想的です。

ーこれから一緒に働くとしたら、どのような方に来てほしいですか。
永田:私自身、今は新上五島町の豊かな自然、特に通勤途中の海や緑に日々癒されています。ですから、自然が好きな方にぜひ来てほしいです。
ー永田さんご自身、移住されて6年とのことですが、新上五島町の魅力はどのような点に感じていますか。
永田:ファストフード店などはないですし、買い物の選択肢は少ないかもしれませんが、その分、余計なことに時間を取られません。生活に必要なものは揃いますし、買い物もすぐに終わるので、自分の時間をしっかり確保できます。特にコロナ禍に移住してきたので、しばらくはマスクもせずにのんびりと過ごせた時期もあり、穏やかな時間が流れているのがこの町の良いところだと思います。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年5月取材)