生まれ育った新上五島町で、10年間医療機関の事務として働いてきた井内さん。結婚・出産を経て、「この豊かな自然と子育てしやすい環境を次世代に繋げたい」という想いが強まりました。
年齢制限の緩和を機に、将来の不安を払拭し、町への貢献を目指して役場への転職を決意。住民生活課で、住民の生活に最も身近な窓口業務に奔走する彼女が語る、新上五島町で働く魅力と、一歩踏み出した先で見つけた景色とは。
地元への愛着と、将来への決断
ーまずは、これまでのご経歴について教えていただけますか?
井内:私は生まれも育ちもこの新上五島町です。人生のほとんどを、この美しい海と豊かな自然に囲まれた町で過ごしてきました。
役場に入庁する前は、約10年間、町内の医療機関に勤務していました。そこでは「医師事務作業補助」という、ドクターの文書作成や事務作業をサポートする専門的な役割を担っていました。
ー長年勤めた医療機関から、役場へ転職しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
井内:前職は「会計年度任用職員」という形態でした。任用期間に定めがあり、期間ごとに採用試験を受ける必要があったため、将来に対して漠然とした不安を抱えていたんです。
そんな時、役場の採用試験の年齢制限が引き上げられたことを知り、「今なら挑戦できる、長く安定して働き続けたい」と考えたのが一つの理由です。
ーご自身の中での心境の変化も大きかったのでしょうか?
井内:そうですね。ちょうど結婚や出産を経験した時期でもありました。子どもを育てる中で、今まで当たり前だと思っていたこの町の自然の豊かさや、生活のしやすさ、そして子育てに最適な環境であることに改めて気づかされたんです。
「この素晴らしい環境を次世代まで守り、地域に直接貢献したい」という想いが強くなり、役場の門を叩く決意をしました。

育児と仕事、二人三脚で挑んだ試験対策
ー働きながら、そして育児をしながらの試験勉強は並大抵ではなかったと思います。どのように対策されましたか?
井内:とにかく大変でした(笑)。一次試験は教養試験でしたので、まずは勉強時間を確保することに苦労しました。フルタイムで働き、帰宅すれば育児が待っています。毎日、子どもを寝かしつけた後、夫にも協力してもらいながら机に向かいました。
募集が出てからの2、3ヶ月間は、土日も含めてコツコツと集中して取り組みました。
ーその努力が実り、二次試験の面接へと進まれたわけですが、面接の雰囲気はいかがでしたか?
井内:緊張しすぎて最初は頭が真っ白になりそうでした(笑)。ですが、当時の総務課長さんたちがとても話しやすい雰囲気を作ってくださったんです。
準備した回答を丸暗記して話すというよりは、一人の人間としての思いを会話を通して聞いてもらえたという印象でした。多くの質問をいただきましたが、最後は和やかに終えることができました。
住民の人生に寄り添う「窓口」の責任
ー現在は「住民生活課」に配属されていますね。最初にお仕事内容を聞いた時の感想を教えてください。
井内:最初は、戸惑いの方が大きかったです。病院勤務の経験から、健康保険や福祉に関連する部署を想像していたので、「住民生活課って具体的に何をするんだろう?」と。
ホームページで調べたりしましたが、全く知識がない状態で飛び込むことに、正直なところ不安しかありませんでした。
ー具体的にはどのような業務を担当されているのでしょうか?
井内:住民票や戸籍の証明書発行、転居・転入・転出の住民異動の手続き、年金事務、マイナンバーカードの交付など、窓口業務全般です。その中で私は主にパスポート事務を担当しており、申請の受付から交付までを任されています。
パスポートの審査は非常に厳格です。写真一枚をとっても「前髪が少し目にかかっている」だけで通らないことがある世界。私が通したつもりでも後から指摘が入ることもあるため、住民の方に二度手間をおかけしないよう、責任の重さを噛み締めながら対応しています。
ー日々、膨大な制度を理解しなければならないと思いますが、どのように学んでいますか?
井内:基本的には国や日本年金機構のマニュアルを徹底的に読み込んでいます。特に年金制度は複雑で、自分たちの判断だけで進められないことも多いです。
そんな時は、年金事務所に直接電話で問い合わせるなどして、正確な情報を住民の方にお伝えできるよう努めています。毎日が勉強の連続ですが、制度への理解が深まるにつれ、自分の成長が誰かの助けになる実感が持てるようになりました。

支え合う職場の温かさと、子育て世代への理解
ー役場に対して、当初抱いていたイメージと現在の印象に違いはありますか?
井内:住民として窓口に行っていた頃は、役場は「静かでお堅い場所」というイメージでした。ところが、実際に入ってみると、皆さんとても和やかで温かいんです。
分からないことがあっても先輩や上司がすぐに手を差し伸べてくださり、常にサポートし合える環境があります。良い意味で大きなギャップがありましたね。
ー子育て中ということもあり、働きやすさも気になるところだと思います。
井内:そこが一番の魅力かもしれません。先日、子どもがインフルエンザで急に発熱した際、急な休みだったにも関わらず「看護休暇」をいただきました。職場全体が「お互い様」という雰囲気で、子育て世代に対して非常に理解があるんです。
夏休みなどの休暇もしっかり取得でき、ワークライフバランスを保てる環境は、新上五島町役場で働く大きな強みだと思います。
ー他部署との連携も多い仕事だと思いますが、いかがですか?
井内:窓口に来られる住民の方は、住民生活課だけでなく、福祉課や健康保険課、税務課など、さまざまな手続きを必要とされています。そのため、他部署との連携は欠かせません。
前職の病院でも、医師や看護師、他部署と協力しながら業務を進めていたので、その際の「連携する力」や「広い視野を持つ意識」は、今の職場でも大いに役立っていると感じます。

憧れの背中を追いかけて、町を支える一人に
ーこの1年間で、特に心に残っているエピソードがあれば教えてください。
井内:初めて婚姻届や出生届を受理した瞬間です。証明書を発行して「おめでとうございます」とお伝えした時、住民の方の笑顔に触れ、人の人生の節目に深く関わる仕事なんだと改めて背筋が伸びる思いでした。
ー井内さん自身が目指している理想の職員像はありますか?
井内:実は私自身、数年前に婚姻届をこの役場に出したんです。その時に担当してくださった職員さんが、とても明るく手際よく手続きを進めてくださった姿が今でも目に焼き付いています。
今はまだミスをしないよう確認することで精一杯ですが、いつかはあの時の職員さんのように、住民の方の心に温かい記憶を残せる対応ができるようになりたいです。
ー最後に、新上五島町役場を目指す未来の仲間たちへメッセージをお願いします。
井内:新しい環境への挑戦には不安がつきものです。私自身も「自分に務まるだろうか」と悩みましたが、一歩踏み出した先には、温かい仲間と住民の方からの「ありがとう」という言葉が待っていました。
新上五島町をより良く、より過ごしやすい町にしていくために、皆さんの力が必要です。研修制度もサポート体制も整っていますので、ぜひ一歩踏み出してみてください。一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
「この町が好き」という素直な想いを言葉にする井内さん。その柔らかな表情の奥には、母親として、そして町の職員として、大切なものを守ろうとする強い意志が感じられました。
複雑な年金制度や厳格なパスポート事務に真摯に向き合う彼女の姿勢は、まさに町と住民を繋ぐ架け橋そのものです。新上五島町の透き通るような海のように、澄んだ志を持つ彼女が、今日も窓口で誰かの新しい門出を優しく支えています。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)



