「この島、いいな」という直感、そして曾祖父との不思議な縁に導かれ、千葉から新上五島町へと移住した松下さん。
知り合いゼロの環境から始まった島暮らしと、1年目からイベント運営や出張をこなすアクティブな公務員生活。「人の温かさに助けられた」と語る松下さんが、移住前後の不安を乗り越えて見つけた、この島ならではの働きがいと心豊かな暮らしの形に迫ります。
- 福岡から千葉、そして五島へ。旅で見つけた「ここだ」という直感
- 「デスクワークだけじゃない」五島の魅力を発信するアクティブな日々
- 知り合いゼロからのスタート。島の人々と職場が支えてくれた新生活
- 1年目から挑戦できる環境。移住者だからこそ気づけた「島の価値」
- オンとオフの切り替え。五島で見つけた、心豊かになれる暮らしの形
福岡から千葉、そして五島へ。旅で見つけた「ここだ」という直感
ーまずは、松下さんのこれまでの歩みを教えてください。
松下:生まれは福岡県で、10歳まで過ごしていました。その後は親の転勤で千葉県に引越し、大学を卒業するまでずっと千葉で過ごしていました。
もともと、将来は何かしら「人の役に立ちたい」という気持ちが根底にあったんです。就職を考えた際、その想いを実現しつつ、将来の安定性や生活のバランスをしっかり保てる仕事は何かと考えた結果、公務員という道に辿り着きました。
ー千葉県で過ごされていた松下さんが、なぜ新上五島町を志望されたのでしょうか?
松下:実は、最初から「この自治体!」と決めていたわけではないんです。両親から「実際に色々な場所を旅しながら、自分が納得できる自治体を探してみるのもいいんじゃないか」とアドバイスをもらって。その言葉通り、日本各地を巡る旅に出ました。
そんな時、曾祖父がかつて新上五島町に住んでいたことをふと思い出したんです。不思議な縁を感じて五島列島に足を運んでみました。
そこで出会った地元の方々と仲良くなり、会話を重ねる中で「ああ、なんて温かい場所なんだろう」と心から感動しました。
島の美しい景色はもちろんですが、何よりもそこに住む「人」の温かさに強く惹かれ、「この島に住みたい!」という直感に従って受験を決めました。
ー採用試験や面接での思い出はありますか?
松下:一次試験の筆記、二次試験の作文と面接、すべて現地で受けました。千葉からの受験だったので移動は大変でしたが、それ以上に「ここで働きたい」という気持ちが強かったですね。
面接では、「なぜ千葉からこの島へ?」という質問は当然ありましたが、曾祖父との縁や、旅で感じた島の魅力をありのままに伝えました。移住に対する本気度を、自分の言葉でしっかりと伝えることができたのが良かったのだと思います。

「デスクワークだけじゃない」五島の魅力を発信するアクティブな日々
ー現在担当されているお仕事について教えてください。
松下:私は現在、観光商工課(五島うどん課)に所属しています。主な業務は、修学旅行などの教育旅行に関する補助金申請の受付や、町の公式キャラクターのデザイン申請管理、着ぐるみの貸し出しなど多岐にわたります。
特に印象深いのは、季節ごとのイベント運営です。春はホタル、夏は海開き、秋は神楽、冬は教会でのコンサートなど、年間を通じて島の魅力を発信する行事が目白押しです。
私たちの課はメンバー全員でこれらのイベントを支えており、常に活気に溢れています。
ー今年度は「海開き」を担当されたそうですね。
松下:はい。夏の一大イベントである海開きの運営をメインで担当しました。前年度の事例を参考にしながらも、今年はさらに内容をブラッシュアップしようと試行錯誤を重ねました。
特に「魚のつかみ取り体験」は、子どもたちに喜んでもらおうと漁協の方々と何度も打ち合わせを重ねて実現させた企画です。当日の子どもたちの弾けるような笑顔を見た瞬間、準備の疲れなんて吹き飛んでしまいました。
島民の方から「楽しみにしているよ」と声をかけていただいたり、イベント後に「ありがとう」と言っていただけたりすることが、今の私にとって最大の原動力になっています。

知り合いゼロからのスタート。島の人々と職場が支えてくれた新生活
ー移住にあたって、不安だったことはありませんか?
松下:正直、不安はかなりありました。曾祖父のルーツはあるものの、実際に親戚が住んでいるわけではありませんでしたし、友人や知人も全くいない状態でのスタートでしたから。「果たして独りでやっていけるのか」という不安はありました。
ですが、いざ入庁してみると、その不安はすぐに解消されました。職場の先輩方が本当に親身になってくださって、家探しを一緒にしてくれたり、美味しいお店を教えてくれたりと、公私ともにサポートしてくれたんです。
ー「人の温かさ」が、松下さんの支えになったのですね。
松下:その通りです。職場だけでなく、近所の方々も温かく声をかけてくださいます。島全体がひとつの大きな家族のような雰囲気があって、孤独を感じる暇がないくらい、皆さんが気にかけてくれるんです。この距離感の近さは、都会では決して味わえなかった心地よさだと感じています。

1年目から挑戦できる環境。移住者だからこそ気づけた「島の価値」
ー職場の雰囲気や、上司・同僚との関係はいかがですか?
松下:風通しが非常に良く、自分の意見を言いやすい環境です。「1年目だから大人しくしていなければならない」という雰囲気は一切なく、むしろ「どんどん経験してこい」と背中を押してもらえます。そのおかげで、私自身も何度も出張を経験させていただきました。
1年目から各地へ赴き、現場で「どうすれば町の魅力をより効果的に伝えられるか」を肌で感じ、考える機会をいただけるのは非常に貴重な経験です。
若手のうちからこうしたチャンスを積極的に与えてもらえる環境は、自身の成長にも大きく繋がっていると実感しています。

ー移住者ならではの視点が仕事に活きた場面はありますか?
松下:渋谷で期間限定の「上五島 ツバキッサ」というPRショップを出店した時のことです。都会の企業が提案してくれた店名に対して、課内からは「少しダサいのではないか」という意見も上がっていました。
しかし、私は都会での感覚から「今の東京では、こういうレトロで直球な名前の方が若者に受けるんです」と自信を持って伝えました。結果としてその意見が採用され、実際の店舗も大変好評をいただきました。
ずっと島にいる方にとっては当たり前の風景でも、外から来た私にはキラキラ輝く魅力に見えることがたくさんあります。その「外からの視点」を大切にすることが、町のPRには不可欠だと考えています。

オンとオフの切り替え。五島で見つけた、心豊かになれる暮らしの形
ー島での生活や、ワークライフバランスについて教えてください。
松下:残業については、イベント前などの忙しい時期はどうしても発生してしまいます。ですが、上司が「定時を過ぎたら早く切り上げて帰りなさい」と声をかけてくださるので、無理な働き方をすることはありません。
休日出勤をした場合も、必ず代休を取るように指導されるので、心身ともにリフレッシュできています。
また、5日間の夏季休暇も取得できたので、「しっかり働いて、しっかり休む」というメリハリのある生活が送れています。
ー休日はどのように過ごされていますか?
松下:千葉にいた頃はインドア派でゲームばかりしていたのですが、こちらに来てからはすっかりアクティブになりました(笑)。
天気の良い日にはドライブをしたり、誰もいない静かな海辺で読書をしたり、夕日を眺めたり。何よりの楽しみは「食」です。五島の魚の美味しさは、本当に別次元です!
初めて刺身を食べた時、その身の締まり方と甘みに衝撃を受けました。美味しいご飯を食べて、美しい景色を眺める。そんな贅沢な時間が当たり前にあるこの暮らしに、今は心から満足しています。
ー最後に、新上五島町への応募を考えている方へメッセージをお願いします。
松下:移住や転職には大きな勇気が必要だと思います。でも、新上五島町には挑戦を温かく見守り、困った時には手を差し伸べてくれる仲間がたくさんいます。
「知り合いがいないから不安」という方も大丈夫です。勇気を持って一歩踏み出せば、想像以上に温かい世界が待っています。皆さんとこの美しい島で、一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
インタビュー中、松下さんが時折見せる晴れやかな笑顔がとても印象的でした。千葉という都会から、曾祖父のルーツを辿って海を越えてやってきた一人の青年。その心細さを打ち消したのは、島の圧倒的な自然と、何よりも「人」の温かさでした。
「旅をしながら住む場所を決める」という、一見大胆な選択。けれど、自分の直感を信じて飛び込んだ先には、1年目から町の未来を創る手応えと、波の音を聴きながら本を開く贅沢な日常がありました。
新上五島町。ここには、あなたの「本当の居場所」が、潮風とともに待っているかもしれません。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)



