長崎県新上五島町の地域包括支援センター所長の村井さん、所長補佐で保健師の江口さんに、町が抱える課題と解決に向けた取り組み、新上五島町で働く魅力についてお話を伺いました。
ー入庁までのご経歴についてお聞かせください。
村井:昭和62年度に行政事務として新上五島町役場に入庁後、窓口での住民対応や戸籍関係、総務課、子どもの福祉など、約40年でさまざまな業務を経験しました。今年度より地域包括支援センターの所長を務めております。
江口:平成11年に入庁し、保健師として勤め始めて約20年です。現在、地域包括支援センターの所長補佐という立場で高齢者福祉に携わっています。
ーお二人とも新上五島町のご出身なのでしょうか?
村井:私は新上五島町が地元です。
江口:佐世保市出身です。元々は長崎県の職員として新上五島町の保健所に勤めていたのですが、地域の運動会などに誘われるがままに参加していたら、町に馴染みすぎてしまって(笑)。そのまま新上五島町に就職しました。
ー地域包括支援センターの職員構成や概要についてお聞かせください。
村井:正規職員が8名。私が務める事務職、保健師とケアマネージャーが各2名、栄養士、介護員、産休中の社会福祉士が各1名という構成です。また、ケアマネージャーや介護予防プランナーを担う会計年度任用職員も8名おり、前職が看護師である職員を中心にケアプランの作成、訪問といった業務を担当しています。
新上五島町の地域包括支援センターは、65歳以上のご高齢の方々の生活に関するあらゆる面をサポートするというのが基本姿勢です。介護予防はもちろん虐待や精神面など、対応業務は多岐にわたります。
江口:そのほか、40歳以上の第2号被保険者の方で介護が必要となった場合にも、地域包括支援センターでサポートを行っていますね。
村井:活動場所としては、役場近隣の新上五島町温水プールという公共施設の一画をお借りしています。
ー地域包括支援センターへの相談はどのような形で受けるのでしょうか?
江口:直接来所される方も電話相談の方も、同じくらい多いですね。最初の窓口対応や訪問は基本的に正規職員が行います。町は現在、お子さんが島外や遠くの都会にいらっしゃるという方が多く、高齢ご夫婦の二人暮らしや独居の割合も高い。また、自発的な相談もなかなか上がりにくいという課題があります。
ですが、新上五島町は地域の横の繋がりがまだ残っているんです。民生委員やご近所の方から「心配なので行ってもらえないか」という相談をいただけるので、そこから訪問に繋がることも多いですね。
ー異なる領域の専門職が多い中で、業務の振り分けはどのように行われているのでしょうか?
江口:地区担当という形で職員を配置し、週2回は情報共有や支援方針について話し合う場を設けています。そこで、どの領域の専門職を中心に進めていくかを決めていますね。
村井:相談を受けて訪問を実施した結果、介護保険などが必要となった場合には、会計年度任用職員のケアマネージャーが担当を受け持ちサービスを組み立てていく流れです。
対応が難しい特殊なケースの場合は正規社員の保健師やケアマネージャー、社会福祉士がそのまま受け持つこともあります。つど話し合いながら方針を決めていく形ですね。
ー現在は社会福祉士の方が産休をとっておられるとのことですが、業務における社会福祉士の役割や求めることについてお聞かせください。
村井:たとえば成年後見制度や虐待の防止・早期発見など、社会的な課題に対してどういったアプローチができるかを考える、というところが社会福祉士の専門性であると考えています。今後、社会福祉士として新たに入庁する職員に対しても、やはり同じような能力を期待していますね。
ー江口さんは新上五島町外でのご経験もあるとのことですが、新上五島町と他の自治体とでは働き方や課題も異なるのでしょうか?
江口:そうですね。短期間でしたが佐世保市の保健師のほか、電力会社の産業保健師としても勤めていました。そういった経験があるからこそみえる新上五島町の課題としては、医療や介護の資源が限られていることが挙げられます。
だからこそ、「住民にとって本当に必要なものはなにか」を自分たちで吸い上げる必要があるんですね。また、国や県による制度を町にそのまま当てはめようとしてもうまくいきません。どうすればうまくいくのかを関係者や住民とともに考え、作り上げていく必要があるというのは、新上五島町ならではの取り組み方だと思います。
ー住民の方々との協力体制はどのようにとられているのでしょうか?
江口:元々新上五島町では、介護保険制度が始まる前から「元気なお年寄りを増やそう、元気に年を取ろう」という取り組みが進められていました。介護予防事業として運動をしたり、孤食にならないよう「みんなでご飯を作って食べよう」という活動が公民館単位で行われていたんです。
畑で作った野菜でたくあんを作って、ご飯と味噌汁を用意するところから始めよう、と。
そして、活動の中でボランティアさんたちの育成も行われていました。そういった背景から介護予防活動が広がり、役場と住民との協働という文化も根付いていったんですね。
自然発生的な互助活動が当たり前のように行われている部分は、この島の良いところだと思います。現在はボランティアの中心となっているリーダーの高齢化も進んでいるため、世代交代が課題です。
ー新上五島町での仕事ならではのやりがいや、面白みについてお聞かせください。
村井:みんなで話し合いをして、足りないものを作っていく。「この人にはこれが要るけど、うちにはこれがないね。じゃあどうしようか」という課題に対しみんなで知恵を出し合う、というところにやりがいを感じますね。
地域包括支援センターの職員や社会福祉協議会、上五島病院のスタッフなど専門職の方々は、「みんなでこの人のために何かしよう」という想いが強いんです。
決められた路線をただ進むのではなく、自分たちが持つ専門性を出し合ってより良い方法を一生懸命考えるというのは、非常に面白いのではないでしょうか。私自身も、そんな方々の間近で仕事ができることを嬉しく思います。
江口:関係事業所の人や病院スタッフ、住民の方々との関わりの中で、他の役場職員とは一味違う働きができます。創造性のある仕事が好きな方なら、きっとやりがいを感じて働くことができるのではないでしょうか。
また、お医者さんやリハビリの先生などの専門職と横並びになって一緒の立場で考えていける環境も、新上五島町の大きな魅力です。
ー地域包括支援センター職員の年齢構成についてお聞かせください。
村井:専門職は中途採用の方も多いので、現在の年齢層は40代以上が多いですね。会計年度任用職員の皆さんも60代です。今回の社会福祉士の募集にあたって設定している年齢上限につきましても、40歳くらいを予定しております。
ー新上五島町での暮らしの魅力についてお聞かせください。
江口:食べ物がすごく美味しいです!近所の方々も、手作りのものをたくさん差し入れしてくださるんですよ。また、仕事のあとは毎日のように海に入りに行っていました。それくらい海が美しいんです。子育てもしやすいですね。
川や海といった自然に囲まれ、生き物と触れ合いながら子育てができる。若い世代の方々が仕事や生活をするうえでも、新上五島町はすごく良い環境であると私は思っています。
ー最後に、新上五島町の職員を志す方に向けて一言お願いいたします。
江口:新上五島町は、専門職がすごく頼りにされる存在であり、また「やりたいことをやれる」という意味では仕事の自由度も高いです。目指していることがあり、そこに向かって頑張りたいという想いを形にしやすいですし、みんなが応援してくれる環境がある。私たちと一緒に取り組んでいこうよ、というスタンスでお待ちしております。
ー本日はありがとうございました。