石川県能美市役所で土木技術職として活躍する松榮さんと前川さん。民間企業出身の松榮さんと、高専卒新卒入庁の前川さん。異なる経歴を持つ2人に、能美市役所で働く魅力、やりがい、そしてワークライフバランスについて伺いました。
―簡単に2人のご経歴を教えてください
松榮:私は大学を卒業してからすぐ地元石川県の民間企業に入りまして、そこで12年ほど働いた後に、能美市に転職して現在4年目です。
前川:高専で土木関係を専攻し、卒業後に今年度新卒で入庁しました。
ーもともと公務員志望だったのですか?
前川:そうです。民間企業もいいなと思った時期もあったんですけど、行政と民間どちらにもインターンに行ったうえで、公務員を選びました。
行政のインターンで県庁に1週間ほど行っていたのですが、積算業務などもあわせてできるのが自分には合っていて楽しいなと思えたんです。逆に民間で行ったコンサル会社だと設計の業務などが難しいなと。
もともとまちづくりや防災等の興味があったのも理由の1つです。土木の仕事といっても、公務員だと橋梁や道路、災害対策など幅広い分野に対応が可能です。その点も魅力でした。
ーどれくらい勉強しましたか?
前川:受験前年の冬頃から勉強を始めました。国家公務員も視野に入れていたので、その分しっかり勉強しました。参考書や過去問を2周はしたと思います。
ー松榮さんは地元の民間企業にお勤めだったとのことですが、具体的にはどんな仕事をしていたのですか?
松榮:主に、国道や県道、市町村道の道路建設現場の施工管理をしていました。また、空港の誘導路や陸上競技場も担当したことがあります。地元企業ですが全国を忙しく飛び回っていました。
ー能美市役所へ転職したきっかけは何だったのでしょうか?
松榮:もともとは転職するつもりはありませんでした。ただ、子どもがいる中で1年間単身赴任の出張であったり、夜勤体制になったりと家族と過ごす時間が短くなってしまう時期が多くありました。
そんな中で、家族が能美市役所の求人を見つけ、年齢的にも最後の機会と、家族と話し合ってチャレンジすることを決めました。試験対策はしていません。それで受からなければ今の仕事を続けていこうと思っていましたが、縁があり合格し、そのまま転職しました(笑)
ー公務員を志望していたというよりは、家族の状況に合わせて転職をされたんですね。転職にあたって抵抗や不安はありませんでしたか?
松榮:抵抗や不安は全くありませんでした。強いて言うなら収入面くらいでしょうか。でも、あまり深く考えないタイプなので(笑)
ーでは現在のお仕事についてお聞きします。土木課には何人の職員の方が在籍しているのでしょうか?
松榮:土木課は建設グループ6人、維持グループ4人、庶務グループ2人の12人に課長兼次長と部長を合わせ14人が在籍しています。私と前川さんは建設グループに所属しています。
ーなるほど。グループ内では担当業務はどのように割り振られているのでしょうか?
松榮:基本的には個別に案件を割り振って担当しています。私は以前、民間企業で舗装工事をメインに担当していたので、市役所に入ってからも舗装工事の案件を持つことが多かったのですが、最近は交通安全事業や急傾斜地崩壊対策事業など、幅広い業務を担当するようになりました。
ー前川さんは入社1年目とのことですが、最初から案件を任されたのでしょうか?
前川:はい、すぐに担当する工事を割り当てられ、今期も4、5件の工事を担当しています。とはいえ、周りの先輩に聞きながら案件は進めていました。皆さんそれぞれの案件で忙しいため、タイミングを見計らって質問するようにしています。一緒にどうしたら良いか考えたり、調べたりして、なぜこうなるのか詳しく教えてくださり、色々経験しながら新しく知ることができています。
ー松榮さんは指導する先輩にあたるんですよね。後輩指導で何か気を付けていることはありますか?
松榮:質問はいつでも丁寧に答えるよう気をつけています。入庁当初、課内はもっと忙しさにピリピリした雰囲気で、自分が他の方々に聞くのも憚られる感じもありました。しかし最近はそういった雰囲気はなく、上司の方々が率先して穏やかな雰囲気づくりをしてくださって、質問しやすい環境になってきています。
だからこそ、自分もならって後輩がいつでも聞きやすい環境にしていきたいと思っています。
―教育については、専属担当もあるのですか?
松榮:専属担当は今のところないですね。とはいえ、どの職員の案件も、個人の判断だけで進めていくことはなく、グループ内で共有し協力して進めています。どう予算を分配するのか、工事の進め方など、上司やグループの皆さんと協力していくので、当然前川さんの案件も皆で協力しながら進めていきます。
ー前川さんも職場の雰囲気は良いと感じていますか?
前川:はい。皆さん優しく教えてくださるので、とても働きやすいです。女性職員も庶務グループにいるのみで技術職は他にいないのですが、それも全く気になりません。安心して仕事に取り組むことができています。
ー入庁前後でギャップを感じたことはありますか?
前川:2、3日に1回程度で、思ったよりも外に出ることが多いことには驚きました。でも、デスクワークばかりというのも私は苦手なので、外に出られる方が嬉しいです(笑)
ー仕事でやりがいを感じるのはどんな時ですか?
前川:図面を見たり積算業務をするのは楽しいですし、自分が担当した場所が変化していく様子を実際に見ることができるのは、大きなやりがいになっています。
今担当している側溝設置と道路舗装の工事もまさにそうで、楽しいですね。
松榮:これまで自分が対応したことがなかった業務にも携われることは非常にやりがいがあります。
ー民間での経験が活きる場面も多いですか?
松榮:はい。例えば、舗装工事でどこまで補修が必要なのか。軽度な損傷であれば自分で路面の状況を確認し、外部コンサルに頼ることなく判断することも可能で例えば、舗装工事で路面の現状を自分で確認し、どこまで補修が必要なのか外部コンサルに依頼しなくても自身判断することも可能で。2024年1月の地震の際にも、市民の方から道路のひび割れ等、損傷の報告がたくさん寄せられましたが、地震によるものなのか、以前からあったものなのかを判断し円滑に進めていくことができました。
もちろん必要な工事はありますが、税金が使われる公共工事において、何でもかんでもやっていいということはありません。重要性を判断する能力は、公務員として働く上で重要だと感じています。
住民の方から「あなたが見て何が分かるんだ」と言われることもあります。そのときにも、自分の知見を基にきちんとご説明することは非常に重要です。
ーでは、ワークライフバランスはいかがですか?
前川:基本的に定時で帰ることができていますし、残業してもそこまで遅くならず、休みも希望どおり取ることができるので、仕事と生活のバランスは取れていると思います。周囲の先輩職員もやることが終われば定時に帰っているので、皆さんワークライフバランスは取れていると思います。
松榮:やることさえやっていれば、自由に仕事をできる環境といえます。もちろん、人によって仕事の進め方はそれぞれです。今日中にここまでやろうと決めて、定時までに終わらなくても残って終わらせる人もいれば、残りは明日やればいいと言って帰る人もいます。様々な価値観にあわせて働ける環境です。
ー最後に、就職活動中の方に向けてメッセージをお願いします。
松榮:私は民間企業と公務員の両方を経験しているので、就職活動をしている方に伝えたいことがあります。大学や高校で専門的な勉強をしていたとしても、社会に出ればスタートラインはみんな同じです。私は大学でコンクリートを専攻していましたが、最初の就職先は舗装会社で、アスファルトばかり扱っていました。面接でも「コンクリートを専攻しているのに、アスファルトばかりの会社でいいのか」と聞かれたこともありました(笑)
大切なのは、自分が専攻していた分野にとらわれずに、幅広い視野を持つことです。市役所には公務員でも、様々な部署があります。入庁してから、自分が本当にやりたい仕事を見つけることができるかもしれません。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年2月取材)