岐阜県多治見市役所で保育士として働く高見さんのインタビュー記事です。保育士を目指したきっかけから、多治見市の公立保育園を選んだ理由、そして日々の仕事で感じるやりがいまでを伺いました。子どもたちの成長を間近で見守り、保護者や地域と共に喜びを分かち合う。
きっかけは実習、先生たちの優しさ
ーご経歴を教えて下さい。
高見:短大を卒業後、多治見市に保育士として入庁し、今年で8年目になります。現在は市之倉保育園で5歳児クラスを担当しています。
―なぜ多治見市の保育園に決められたのですか?
高見:多治見市の実習がきっかけです。3回多治見市にある公立の幼稚園に行きましたが、どの園でも先生方が本当に優しくて、親切にしてくださいました。
さらにそこで先生に「多治見市で働いてみない?」と声をかけてくださったんです。それで、多治見市を第一志望として受けることに決めました。
ー実習での良い出会いが決め手になったのですね。実際に入庁されてからのキャリアについて教えてください。
高見:最初に着任したのは、共栄保育園です。多治見市内では比較的人数が少ない、小規模な園でした。最初は2歳児クラスの担当だったのですが、一緒に組んだ先輩の先生が書類の書き方から子どもとの関わり方、行事の準備まで、本当に一から丁寧に教えてくださいました。
そして、初めての異動で現在の市之倉保育園に来て、今年で2年目になります。この園も比較的人数が少なく、全園児合わせても100人未満です。3歳児だけが2クラスで、他の年齢はすべて1クラスという構成です。今は13人の5歳児クラスを一人で担当しています。
市之倉保育園の大きな特徴は、地域の方々との関わりが非常に深いことです。園の周りには「遊べる森」という場所があるのですが、そこを「緑の森づくり部会」という地域のボランティアの方々が、子どもたちが安全に遊べるように常に整備してくださっているんです。
地域全体で子どもたちを育てていこうという温かい雰囲気に包まれていることが、市之倉保育園の何よりの魅力であり、本当にありがたいことだと感じています。
みんなの「遊び」の発展を考え実践する
ー地域の方々が保育に深く関わってくださるのは、とても心強いですね。多治見市全体として、何か統一された保育方針のようなものはあるのでしょうか?
高見:市全体の方針として、「子どもたちが安心して過ごせる環境づくりと、豊かな心を育てる」という目標を掲げています。
基本的な保育内容は、各クラスの子どもの様子や一人ひとりの育ちに合わせて担任が考えていきます。ただ、完全に独立しているわけではなく、縦のつながりも重視しています。各年齢の成長を考えた取り組みを行いつつも、担任同士で話し合いながら、園全体としての育ちの流れを意識して活動を進めています。
ー園の中だけでなく、他園の先生方と情報交換をする機会もあるのでしょうか?
高見:直接的な交流の場があります。年に4回、各年齢の担任ごとに「研究会」が開催されるんです。公立・私立の先生たちが集まって、今の時期の子どもの発達について学んだり、より良い保育のための取り組みについて話し合ったりします。
事前に決まったテーマがあり各園で実践してきたことを持ち寄り、話し合います。昨年は「子どもの体づくり」がテーマでどうすれば楽しみながら体作りができるかを話し合いました。
ー他の園の実践例は、とても参考になりそうですね。
高見:例えば、「だるまさんがころんだ」一つとっても、発展があります。友達と手をつないでやってみると、どちらかが動いたらアウトになるので、自分だけじゃなく友達の動きも意識する必要があります。さらに、段ボールやマットで障害物を作り、「振り向いたら、そこに隠れないとアウト」というルールにすると、止まるだけでなく「どこに隠れるか」を瞬時に判断し、友達と協力しながら体をコントロールする動きが加わります。
このように、一つの遊びでも、ほんの少しルールを変えるだけで、子どもたちの楽しさも、私たちがねらう育ちの側面も大きく変わっていく。そうした発見を研究会で学び、そのまま自分のクラスに持ち帰って実践できるので、保育の引き出しがどんどん増えていくのを実感します。

成長がやりがい、忘れられない経験
ー日々の保育にすぐに活かせる学びがあるのは素晴らしいですね。さて、仕事のやりがいについてもお伺いいたします。
高見:やはり一番は、子どもの成長に立ち会えることです。これは何年経っても変わらない、最大の喜びですね。
去年のクラスに、人前に出るのが苦手で、発表の場になると固まってしまう子がいました。でも、その子が運動会で「お母さんにかっこいいところを見せたい」という気持ちを力に変えて、リレーや鉄棒、かけっこに堂々と挑戦したんです。
4月の頃は人前に立つことさえできなかった子が、自分の意志で、ドキドキする気持ちと戦いながら最後まで全力でやりきった姿を見たときは、本当に胸が熱くなりました。
終わった後、保護者の方も涙ながらに個をかけてくださって。こうやって分かち合えるのも保育士という仕事ならではの素晴らしい瞬間だと思います。
ーお子さんの成長を、保護者の方と分かち合えるのは素敵ですね。
高見:もう一つ、忘れられないエピソードがあります。年度の初め、まだ信頼関係ができていない頃に、ある子から「先生あっち行って」「来ないで」と、強い言葉で拒絶され続けたことがありました。正直、心が折れそうになる時もありましたが、「先生はあなたのことが大好きだよ、大切だよ」と、毎日伝え続けました。
するとある時、その子の方から「先生」と声をかけてくれて、「僕ね、おうちでこんな遊びしたんだよ」と、自分の話をしてくれるようになったんです。そして、ついに「先生、僕ね、先生のこと好きだよ」と言ってくれました。
仕事をしていると、体力面でも精神面でも疲れることはあります。でも、子どもたちが元気いっぱいに挨拶してくれたり、こんな風に信頼を寄せてくれたりする姿を見ると、全ての疲れが吹き飛んでしまいますね。「この子たちと一緒に過ごせて幸せだな、保育士になって良かったな」と心から思います。
ー素晴らしいお話ですね。次に、働き方についてお伺いします。職場の雰囲気はどのような感じですか?
高見:今の職場は、本当に和気あいあいとしています。休憩時間には、先生同士でパズルゲームで盛り上がったり、プライベートな話で会話が弾んだり。保育の相談はもちろんですが、そうした雑談ができる温かい雰囲気があるので、悩み事もすごく相談しやすいです。
園長先生や副園長先生も、いつも私たちのことを気にかけてくださって、忙しい中でも質問に行くと、すぐに時間を取って丁寧に教えてくれます。
先輩後輩の垣根もあまりなく、助け合いの文化が根付いていますね。例えば、私が一人でクラスの畑を耕していると、それを見つけたベテランの先生が「大変でしょ、手伝うよー!」とすぐに駆けつけてくださるんです。
そんな温かい人間関係が、この園の自慢です。以前いた共栄保育園も、同じようにとても温かい雰囲気でした。
ー新人や若手の職員に対するサポート体制はいかがでしょうか。
高見:多治見市は、新人の先生方が不安なく現場に立てるようなサポート体制がとても手厚いと感じます。学生の時に学んだことと、実際の現場はやはり違う部分も多いので、そのギャップを埋めるための配慮がたくさんあります。
例えば、園長経験のある先生が各園を回って、実際の保育を見ながら具体的にアドバイスをしてくださる研修があります。また、新人のうちは、できるだけ一人でクラスを持つのではなく、複数担任のクラスに配置されることが多いです。分からないことや不安なことを、すぐに隣の先輩に聞ける環境を整えてくださるので、一人で悩みを抱え込むことなく、安心して成長していくことができると思います。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年6月取材)