南相馬市役所で働く菅原さんのインタビュー記事です。
高校卒業後すぐに入庁した菅原さんに、学生から社会人へ、そして市役所職員として働くことに、どのような期待と不安があったのかをお聞きしました。
入庁前後のギャップや仕事のやりがい、温かい職場の雰囲気など、働くうえで気になる点を若手職員の視点でお話しいただきました。
- 【きっかけは、高校時代のインターンシップ】
- 【採用試験の対策は「作文」がカギ!】
- 【入庁後のリアルと成長の日々】
- 【やりがいは「自分の成長」。温かい職場が支えてくれる】
- 【未来の後輩へ「みんな優しいから大丈夫!」】
【きっかけは、高校時代のインターンシップ】
ーまずは、これまでの経歴について簡単に教えてください。
菅原:出身は南相馬市で、震災で一時期避難したこともありましたが、避難していた時期を除けばずっと南相馬で育ちました。
市内の農業高校を卒業後、すぐ市役所に入庁し、今年で5年目になります。最初の3年間は教育委員会に所属し、4年目からは税務課・資産税係で働いています。
ー高校卒業後、すぐの入庁だったのですね。公務員、そして市役所で働くことを意識したきっかけは何だったのでしょうか?
菅原:高校2年生の時、市役所でのインターンシップに参加する機会があったんです。それまでは特に「これをやりたい!」という明確な目標はなく、「事務系の仕事がいいな」と、なんとなく思っていた程度でした。
インターンシップで初めて市役所の業務を体験し、高校を卒業してすぐに働いている人がいることも知りました。「高校を卒業してすぐでも、市役所で働けるんだ」という思うようになり、市役所で働くことを意識するようになりました。
ーインターンシップでの経験が大きかったのですね。特に南相馬市役所を志望された理由はありますか?
菅原:やはり、一番の理由はそのインターンシップで感じた職場の雰囲気がすごく良かったとことですね。たった2、3日の短い体験でしたが、職員の皆さんがとにかく優しかったんです。
学生で何もできなかった私に対しても、すごく丁寧に接してくれて、ちょっとしたことでも褒めてくれたのもうれしかったです(笑)
この温かい雰囲気の中で働きたいなと思い、「将来働くなら南相馬市役所がいい」と強く思うようになりました。
大学生であれば、民間企業や複数の自治体を併願するといったこともあるかと思いますが、高校生ということもあったので、「じゃあ、南相馬市役所一本に集中しよう!」と決意しました。
ー進学する、という選択肢は無かったのでしょうか?
菅原:親からは「必ずしも大学に行く必要はない」と言われていたこともあり、大学への進学は全く考えていませんでした。
やりたいことが決まっていれば、専門学校といった選択肢もあったのかもしれませんが、何か明確な目標があったわけではありませんでした。「地元で就職しようかな」とぼんやり考えていたくらいでしたね。
【採用試験の対策は「作文」がカギ!】
ー市役所の採用試験に向けて、どのような対策をされましたか?
菅原:とにかく作文練習と面接練習をたくさんやりました!私の通っていた農業高校は、座学よりも実習など「働くこと」に力を入れている学校だったので、勉強面は自分で対策を考えて実行していきました。
市販の教材を買ったり、YouTubeの公務員対策動画を見たりもしましたが、何より助けになったのは学校の先生たちのサポートです。毎週のように作文を書いて、毎日面接練習に付き合ってくださって、本当に生徒の就職活動に対して協力的でした。これには今でも感謝しています。
ー手厚いサポートがあったのですね。今振り返ってみて、後輩に一番おすすめしたい試験対策はありますか?
菅原:これは間違いなく作文練習ですね。作文を書く練習をしておくと、自分の考えが整理されるので、面接にもすごく活きてくるんです。
面接で何か聞かれた時に、「あ、これ作文で書いた内容だ」って、スッと答えられるようにもなるので、作文対策は是非頑張っていただきたいですね。
ーちなみに、面接の自己PRではどのようなことを伝えたか覚えていますか?
菅原:これと言ってアピールできるような強みは無かったですが、部活動で副部長を務めていた経験があったので、部長と一緒に練習メニューを考えたり、チームをまとめたりしたエピソードを交えながら、これまで自身が真面目に取り組んできた姿勢や「何事もとにかく一生懸命やります」という思いを伝えました(笑)
【入庁後のリアルと成長の日々】
ー実際に市役所で働いてみて、「公務員」に対するイメージは変わりましたか?
菅原:インターンシップで少しは雰囲気はわかっていましたが、入庁前は、やはり市役所に対して「真面目で硬い」「みんな黙々とパソコンに向かっている」というイメージを持っていたました。ただ、入ってみたら思った以上に雰囲気が明るくて、良い意味でのギャップがありましたね。
また、市民の方と直接関わらない部署も多い、ということも入庁してから知りました。最初の配属先だった教育委員会では、市民の方より学校の先生と話すことの方が多く、イメージしていたような市役所の仕事とは違いましたね。
ー高校を卒業後すぐに働き始めたわけですが、入庁直後不安に思っていたことなどはありますか?
菅原:正直なところ、最初は不安だらけでしたね(笑)
高校生までは周りがみんな同級生で、先生だけが大人という世界でしたが、市役所に入ると全く逆で、周りは全員が大人。そんな「大人」という存在に対して、知らず知らずのうちに壁を感じてしまって、「どのように接したら良いのか」、「自分はどのように見られるのか」、と漠然とした不安だけがありました。
ただ、実際に働き始めてみると皆さんとても良い人ばかりで、どちらかというと友達のお父さん、お母さんのような感覚で接してくれたので、そこまで不安に思うことは無かったんだなと思いましたね。
ー入庁後はどのような業務を経験されたのですか?
菅原:最初の3年間は教育委員会で、学校の健康診断の日程調整や遠足のバスの手配など、学校運営を裏で支える仕事をしていました。
先ほどお話ししたように、主に学校の先生方とのやりとりが中心で、市民の方と接する機会はあまりありませんでした。
その後、現在の税務課に異動になり、課名のとおり税に関する業務を行っています。去年は家屋に関する課税関係を担当していたため、新築家屋の調査で実際に現場を回ったりする機会もあったのですが、今年は土地関係の担当となり、基本的にはパソコンの画面と向き合っていることが多くなりました。

所有者が変わった際のデータ更新や、亡くなられた方の相続人調査など、課税台帳を更新しつつ、納税通知書を適切正確にに送付する業務ですね。
土地や建物、法律の専門知識は全く無く、ゼロからのスタートだったので、周りの先輩に聞きながら、日々勉強の繰り返しです。最初は「異動ってこんなに大変なのか」と思ったのですが、やり始めてみると新しい知識がどんどん増えてきて、自分のためになっているんだなと感じるようになりました。
そう考えると、定期的に異動によって新しい部署を経験できるのも悪くないと思いますね。
【やりがいは「自分の成長」。温かい職場が支えてくれる】
ー仕事のやりがいを感じるのは、どのような時ですか?
菅原:市民の方から窓口で質問をされた時に、それにパッと答えられた瞬間は、「あ、嬉しいな」って思います。現在の部署だと、業務内容的に直接感謝される機会はあまり多くないのですが、1年前は答えられなかったことに答えられるようになった時、自分の成長を実感できて、それが一番のやりがいになっています。
また、個人的な経験になってしまいますが、教職員の健康診断を担当した際に、学生時代にお世話になった先生とお会いして「え、何してんの?」って声をかけてくれたんです。懐かしい先生に会えたこと、そして今でも覚えていてくれたことが、すごく嬉しかったですね。地元ならではの温かい繋がりを感じられる仕事だと思います。
ー職場の働きやすさはいかがですか?
菅原:すごく働きやすいです。今の部署は残業もほとんどなく、基本は定時で帰ることができています。休みもすごく取りやすくて、「この日休みたいけど、言いづらいな…」と感じたことは一度もありません。
そして、インターンシップの時からずっと感じていることですが、本当に周囲が良い人ばかりです。これが一番の働きやすさかもしれないですね。
【未来の後輩へ「みんな優しいから大丈夫!」】
ー学生時代を振り返って、「これをやっておけばよかった」と思うことはありますか?
菅原:仕事面で言えば、断然パソコンです!入庁してすぐ、自分のパソコンのできなさ加減に愕然として、初任給でパソコンを買いました(笑)
Excelの入門書も一緒に買って、家に帰ってから勉強していました。市役所の仕事はWordやExcelを使う場面が本当に多いので、学生のうちから少しでも慣れておくと、絶対に良いと思います。
ー最後に、これから市役所を目指す方々へメッセージをお願いします。
菅原:南相馬市役所はみんな優しいから、大丈夫!ということを伝えたいですね。
入庁前は色々と心配になるかもしれませんが、本当に温かい先輩たちが、パソコンの使い方から社会人としてのマナーまで丁寧に教えてくれるので安心です。私の場合は高校卒業後、そのまま市役所で働く道を選びましたが、高卒で入ったからこそ、周りが子どもを扱うように優しく育ててくれる、そんな特権もあるかもしれません(笑)
私は今思えば、自分の進路を決める就職活動はとても楽しかったと思っています。皆さんも就職活動を楽しんでいただければと思います。
南相馬市役所でお会いできることを楽しみにしています。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年6月取材)