福岡県宗像市で一般行政職として働く山口さんのインタビュー記事です。
民間企業(鉄道会社)で約13年のキャリアを積んだ後、宗像市の「まちづくり人材枠」採用試験に挑戦。
40代でのキャリアチェンジへの不安、現在の仕事のやりがい、そして温かい職場の雰囲気まで、リアルな言葉で語っていただきました。
これまでのキャリアと転職のきっかけ
ーまずは自己紹介と、これまでのキャリアについて教えてください。
山口:出身は北九州市で、大学院を卒業後、2011年から鉄道会社で働いていました。最初は旅行部門に所属し、BtoBやBtoCの営業、旅行の添乗員、社員旅行の手配や企業向けの団体臨時列車の企画などを担当していました。
その後、駅員や列車乗務員を経験し、さらに研修センターで新規の乗務員を養成する講師も務めました。
最後は財務部や財務経理業務を受注するグループ会社に出向し、今年の1月に宗像市に入庁しました。
ー鉄道会社で本当に多様なキャリアを歩んでこられたのですね。そのような中、なぜ転職を考え、そして宗像市を選ばれたのでしょうか?
山口:きっかけは、結婚を機に宗像市へ移住したことです。当時、夫の職場が博多、私は門司にあり、ちょうど中間地点で交通の便が良かったのが宗像市でした。
最初は利便性で選んだのですが、住んでみると宗像市の街が本当に住みやすくて。このまま宗像市に住み続けたいなと思っていた矢先に子どもを授かり、定住を決意しました。
そうした中で、「自分が宗像市のためにできることはないだろうか」と考えるようになったんです。
一方で、子育てをしながら前職の働き方を続けることに難しさも感じていました。仕事だけに集中できた頃とは違い、自分のライフスタイルをうまくシフトできないもどかしさがあって…。
そんな時、たまたま駅で宗像市の職員募集の広告を見かけたのと、ゴミのことを調べるためにアクセスした宗像市のホームページでも職員募集広告が出ていて、調べてみると「まちづくり人材枠」という経験者採用の枠があることを知り、「これだ!」と思って応募を決めました。
ーなるほど。宗像市への愛着と、ご自身のライフステージの変化が、転職を考える大きなきっかけになったのですね。
山口:そうですね。これから先もずっと住み続けるこの街のために何かしたいという想いと、子育てと仕事を両立できる自分らしい働き方を見つけたいという想い、その二つが重なったタイミングでした。

40代からの挑戦と採用試験
ー40代で未経験の公務員へ挑戦する、その決断には勇気が必要だったのではないでしょうか?
山口:正直に言うと、「絶対に転職したい」という強い意気込みから始まったわけではなく、宗像市だからこそ挑戦してみたい、という気持ちでした。
今まで仕事がどれだけきつくても「辞めたい」とは思わなかったのですが、あの日たまたま目に入った職員募集の広告をきっかけに、自分の中の「やってみたい」「こんなチャンスはもうないかもしれない」という気持ちを優先したといった感じです。
もし不合格だったとしても、これまで自分が積み重ねてきたキャリアを整理し、この先の働き方を見つめ直す良い機会になると思っていました。
試験を受けてお話を聞いていただく中で、不思議と自分の考えが整理されていき、とても穏やかな気持ちで転職に臨むことができたのを覚えています。
ー試験ではプレゼンテーションもあったと伺いました。
山口:はい、私が受験した「まちづくり人材枠」では、面接の前にプレゼンテーションがありました。
与えられたお題に対し、事前に資料を作成して提出し、当日に発表する形式でした。面接官の方々を前にして、とても緊張したのを覚えています。
ー他の自治体の併願はされなかったのですか?
山口:はい、併願はしていません。先ほどお話ししたとおり、「宗像市だから働きたい」という想いが強かったので、他の自治体は一切受けませんでした。
現在の仕事とやりがい
ー現在の所属と具体的な仕事内容について教えてください。
山口:現在は、経営企画課の企画政策係に所属しています。主な業務は、市の実施計画の進行管理や、各課が実施する事業の評価など、市役所全体の動きに関わる仕事です。
それに加えて、国の補助金に関する報告や取りまとめをはじめ、福津市と連携した共同事業、SDGs啓発のためのイベント企画、さらには、新しい取り組みとして多文化共生の政策立案を担当しています。

ー非常に多岐にわたるお仕事ですね!その中で、特にやりがいや面白さを感じるのはどんな部分ですか?
山口:新しいことを考える部署なので、自分のアイデアをアウトプットして、上司や同僚とブラッシュアップしながら形にしていく過程は、とても楽しくやりがいを感じます。
特に今、主担当として進めている「多文化共生」に関する政策は、ゼロから作り上げている段階です。必要なデータを整理し、「どうすれば多様な背景を持つ人々が暮らしやすい街になるか」を考え、計画し、施策を作る。市にとってとても重要な仕事を担わせてもらっているなと感じています。
また、市役所の仕事は一人では完結しないものがほとんどです。様々な部署の方と連携し、一つの目標に向かって一緒に仕事を進めていけることにも、大きな魅力を感じています。
ー前職でのご経験は、現在の仕事にどのように活かされていますか?
山口:あらゆる場面で活きていると感じます。例えば、国の補助金の業務では大きな金額を扱うのですが、前職の財務部門で培った数字の見方やデータ整理のスキルが役立っています。正直、数字は苦手だったのですが、あの時頑張っておいてよかったと心から思います(笑)。
また、イベント企画の業務では、段取りの整理や関係各所との調整等の事前準備のプロセスにおいて、旅行業での行程作成や研修センターでのカリキュラム作成の経験と通じる部分が多いです。
そういった計画立案やスケジュール管理の能力は、今の仕事のベースになっていると思いますので、経験を積ませてくれた前職の会社に感謝しています。
宗像市のリアルな職場環境
ー入庁する前に抱いていた市役所のイメージと、実際に入ってみて感じたギャップはありましたか?
山口:入庁前は、正直「すごくお堅い組織なんだろうな」というイメージを持っていました。決められたルールの中で、決められたとおりにしか仕事が進まない、そんな少し窮屈な場所を想像していたんです。
でも、実際に入ってみると全く違いました。特に私の所属する企画政策係は、とても柔軟に多様な意見を取り入れてくれますし、何より職場全体の雰囲気がとても温かいんです。
これは嬉しい、良い意味でのギャップでした。
ー職場の人間関係はいかがですか?
山口:一言で言うと、すごく良好です!(笑) 上司の方も同僚の方も、皆さん本当に優しいですね。
わからないことを質問した時は、どんなにお忙しくても必ず時間を作って話を聞いてくれるんです。質問をすると、倍くらいの情報を返してくださることもあって(笑)。本当にコミュニケーションが取りやすく、助けられています。
実は、私以外にもう一人「山口さん」が同じ係にいることもあって、皆さん下の名前で呼んでくださったり、他の課の方々も気さくに声をかけてくださるので、とても馴染みやすい環境だと感じています。

ー子育てとの両立など、働きやすさについても教えてください。
山口:働き方の面では、フレックス制度を大いに活用させてもらっています。夫が泊まり勤務のある仕事なので、ワンオペで育児をしなければならない日もあるのですが、出勤時間を調整できるので本当に助かります。
子どもの急な体調不良の際も、看護休暇を気兼ねなく取らせてもらえる雰囲気で、子育て世代にとっては非常に働きやすい環境だと思います。
未来の仲間へのメッセージ
ー実際に移住し、働いてみて感じる「宗像市の魅力」とは何でしょうか?
山口:一言でいうと「そこそこな都会」であることです。私は以前、東京に9年ほど住んでいたのですが、都会の喧騒よりも、少し落ち着いた環境の方が自分には合っていると感じています。
宗像市は、自然も豊かでありながら、ショッピングセンターや飲食店も充実していて、生活に必要なものは市内で完結します。子どもを遊ばせる公園もたくさんありますし、子育てするには最高の環境です。
仕事も暮らしも、すべてがちょうどいい。それが宗像市の魅力だと思います。

ー最後に、これから「まちづくり人材枠」の受験を考えている40代の方々へメッセージをお願いします。
山口:市役所の仕事は、自身が住むまちの暮らしやすさへの貢献や、よりよくすることへのやりがいを感じることができます。部署の異動によって全く違う業種に挑戦できるところも、魅力的なところだと思います。新しいことを学んだり、多様な経験を積んだりすることに喜びを感じる方、チャレンジ精神が旺盛な方には、とても向いていると思います。
そして何より、宗像市は職員も市民の方々も本当に温かい人ばかりです。私も入庁当初は不安でいっぱいでしたが、周りの方々に支えられて、毎日楽しく仕事をすることができています。
民間企業で培った経験は、必ず市役所の仕事でも活かせます。もし少しでも興味があれば、ぜひ勇気を出して挑戦してみてほしいです。
皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)