―笑顔は公務員にとって最強の武器。
――安城市と国交省、二つの視点を持つ若手職員が描く未来。
公務員という仕事に、皆さんはどんなイメージを抱いていますか?決められた枠組みの中で、淡々と事務をこなす姿でしょうか。
安城市役所の神谷さんは、そんな先入観を鮮やかに塗り替えてくれます。隣接する岡崎市で育ち、自らの意志で安城市を職場に選んだ神谷さん。
入庁3年目にして、国土交通省への派遣研修という大きな挑戦を選びました。
安城市での実直な窓口業務から、国土交通省へ。揺れ動く心境や、外に出たからこそ気づいた『安城市の魅力』、そして働く上で最も大切にしている姿勢について、等身大の言葉で語っていただきました。
誇りある父の背中を追い、実行力の安城市へ
ー神谷さんは現在、安城市役所職員でありながら、国土交通省に勤務中とお聞きしました。まずは、神谷さんが公務員という道、そして安城市役所を選んだ理由から教えていただけますか。
神谷:私の父が、同じ土木職として別の自治体で働いていたことが一番のきっかけです。父が地域のために実直に働き、私たち家族を不自由なく支えてくれた姿をずっと見てきました。だから、自分も同じように土木の知識を活かして、誰かの暮らしを支える仕事がしたいと、ごく自然に思うようになったんです。
ーご自身も、お父様と同じ「土木」の道を志されたのですね。
神谷:実はもともと建築を志望していたのですが、受験で建築学科には縁がなくて(笑)。最終的に受かったのが土木学科でした。当時は少し落ち込みましたが、今思えば道は繋がっていたのだと感じます。土木は、橋や道路、水道といった、人の暮らしの「根っこ」を支える仕事です。建築よりももっと広い視点でまちづくりに関われるこの仕事に、今は誇りを持っています。
ー数ある自治体の中で、なぜ安城市だったのでしょうか。
神谷:私は隣の岡崎市の出身なのですが、就職先を考える際、地元(岡崎市)に入るか、それとも近隣の市に入るか、とても悩みました。最終的に安城市を選んだのは、インターンシップに参加した際、安城市の「財政力の豊かさ」と「事業の実行力」を強く感じたからです。豊かな財政を背景に、市民のために着実に事業を進めていく安城市の姿勢を目の当たりにして、
「ここなら、自分のやりたいことがしっかりと形にできる、動かせる」
と確信したのを覚えています。
水道の蛇口から繋がる、市民との絆
ー入庁して最初の2年間は、どのようなお仕事をされていたのですか?
神谷:水道工務課の給水係という部署にいました。市民の皆さんが毎日使う水道、道路の下を走る配管から「蛇口」までを繋ぐための仕事です。新しい家が建つ時の工事申請を受け付けたり、現場に行って検査をしたり。派手な仕事ではありませんが、私たちが適切に業務を行わないと、市民の皆さんは水が使えません。「蛇口をひねれば水が出る」という当たり前の日常を、一番近いところで守っている実感が持てる、とてもやりがいのある仕事でした。
ー市役所の仕事といえば、窓口での市民対応も重要ですよね。大変なことはありませんでしたか。
神谷:窓口業務は、私の社会人としての基礎を形作ってくれました。丁寧な説明を心がけても、時には厳しいお言葉をいただくこともあります。「言葉遣いがなっていない」と市民の方にご指摘いただいたこともありましたが、そうした経験があったからこそ、相手の立場に立って物事を考える大切さを身をもって学べました。
安城市役所は、上司や先輩が本当に温かく見守ってくれる組織です。失敗しても「次、どうすればいいか一緒に考えよう」と言ってくれる環境があったから、萎縮せずに成長できました。また、ワークライフバランスも整っていて、プライベートを大切にしながら、オンとオフを切り替えて働けるのも大きな魅力です。
突然届いた「霞が関」への切符。3日間で下した決断
ーそして入庁3年目、大きな転機が訪れます。国への派遣研修というお話を聞いた時は、どのようなお気持ちでしたか。
神谷:正直、頭が真っ白になりました。ある日突然、部長に呼ばれて「国交省に行ってほしい。3日で返事をくれ」と言われたんです。県庁への派遣研修はあっても、若手のうちに霞が関に行くなんて聞いたことがなかったので、本当に驚きましたし、パニックでした(笑)。
ーその決断を下すのは、相当な勇気が必要だったのではないでしょうか。
神谷:ものすごく悩みました。でも、私の背中を押してくれたのは、やはり家族でした。 「こんなチャンスは二度とないぞ。行ってこい」と即答されて。安城市役所の先輩たちも「安城の代表として頑張ってこい」と笑顔で送り出してくれました。
不安よりも、誰も経験したことがないことに挑戦してみたい、広い世界を見てみたいという好奇心が勝ったんです。
今思えば、あの時飛び込んで本当に良かった。霞が関での日々は、安城市の中にいただけでは決して得られなかった視点を与えてくれています。
霞が関で知った「国の視点」と、外から見た「安城の魅力」
ー実際、国交省でのお仕事はどのような内容なのでしょうか。
神谷:現在は、都市局の街路交通施設課というところで、国の政策のうち所管業務に関する部分の照会対応をメインで担当しています。1日に100件から200件届くメールの中には、とても素早い対応が求められる内容が多数あり、勤務時間の大半はメール作業に専念しています。
ー市役所時代とは、仕事の感覚も違いますか?
神谷:全く違いますね。国は、制度や法律という「枠組み」を作る場所です。安城市にいた頃は、その枠組みをどう運用するかを考えていましたが、今は「なぜこの枠組みが必要なのか」という根本を学んでいます。国が何を考え、どこを目指しているのか、その鼓動を間近で感じられるのは本当に刺激的です。
また、働き方の面でも気づきがありました。国交省ではチャットツールが公務の基盤になっていて、テレワークも日常的です。こうした柔軟な働き方は、安城市にもぜひ持ち帰りたい良い文化だと感じています。
一方で、市役所のような「ウェットな人間関係」の尊さにも改めて気づかされました。国交省は効率的で淡白な面がありますが、安城市役所には、誰かが困っていればみんなが声をかけ、対面で解決していく温かさがありました。人を動かすのは、最後は「顔の見える信頼関係」なんだなと、東京に来て痛感しています。
経験を安城へ。熱い想いを引き出す「架け橋」になりたい
ーその貴重な経験を、将来安城市にどう還元していきたいですか?
神谷:全国の自治体の事例を見ていると、本当に素晴らしいまちづくりをしているところには、必ずと言っていいほど「まちを本気で良くしたい」と燃えている熱い職員さんがいます。
私も、国で学んだ制度の知識を武器に、安城市の職員や市民の皆さんが「こんなことをやってみたい!」と思った時に、その背中を力強く押せる人になりたいです。国と安城の架け橋になって、新しいまちづくりの火を灯していく。そんな存在を目指したいと考えています。
ー神谷さんが思う、安城市役所で活躍できる職員の姿とは、どのようなものでしょうか。
神谷:一言で言えば「視野が広い人」だと思います。自分の担当業務だけを見るのではなく、その仕事が他の部署にどう影響するか、市民の方にどう見えるかまで想像できる人。そして、リスクを先回りして察知し、未然に防ぐ能力も欠かせません。
でも、それ以上に大切なのは「周りを巻き込む力」かもしれません。安城市役所は決して大きな組織ではありませんが、一人でできることには限界があります。周りに助けを求め、一緒に進んでいける人が、最終的には大きな成果を上げているように感じます。
未来の仲間へ。大切にしたいのは、シンプルな「笑顔」

ーこれから安城市役所、あるいは公務員を目指す方にメッセージをお願いします。
神谷:特別な能力が必要なわけではありません。知識は、入ってから学べばなんとかなります(笑)。私が一番大切にしているのは、とてもシンプルなことですが「ニコニコすること」です。
ー「ニコニコすること」、ですか…?
神谷:仕事がどれだけ忙しくても、ニコニコしている人の周りには自然と人が集まってきます。相談もしやすいし、助けてあげたいとも思われる。人間関係が円滑にいけば、仕事のスピードも質も上がります。笑顔は、公務員にとって最強の武器なんです。
ー神谷さんの笑顔を見ていると、安城市の未来がとても明るいものに感じられます。
神谷:ありがとうございます。先日インフルエンザで寝込んだ時に、国土交通省の職場の皆さんがチャットで「布団で寝る人のスタンプ」を並べてお見舞いしてくれるような、そんな温かい環境に支えられています。
国交省で働いている私も、安城市で汗を流している仲間も、根底にあるのは「誰かのために」という想いです。公務員という仕事は、決して楽なことばかりではありません。でも、自分が関わった工事が完了したり、蛇口から水が出るのを見たりした時の達成感は、何物にも代えがたいものです。
安城市役所は、3年目の若手にこんな大きなチャンスをくれる、器の大きな職場です。地元を愛し、新しいことにもワクワクできる、そんな皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。嫌なことがあっても、一緒にニコニコして乗り越えましょう!
―今日はありがとうございました。
―神谷さんが見せてくれる真っ直ぐな笑顔。
その明るさに、取材チームの心も自然と解きほぐされていくような時間でした。
「公務員にとって笑顔は最強の武器」と語る神谷さんの言葉は、決して楽ではない道のりを、自らの意志で光に変えてきた人だけが持つ、優しくも力強い説得力がありました。
父の背中を追い、地元のインフラを支える誇りを胸に、安城市から霞が関へ。大きな環境の変化に戸惑いながらも、「まちの未来」をより良くするための種を、今この瞬間も拾い集めています。
効率的な仕組みと、泥臭い人間関係。その両方の尊さを知る神谷さんが安城市に戻る時、このまちにどんな新しい風が吹くのでしょうか。神谷さんの柔らかな笑顔の先に、誰もが自分らしく挑戦し、支え合える安城市の未来が、鮮やかに重なって見えた取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年1月取材)



