千葉県印西市役所の資産経営課で機械技師として働く職員のインタビュー記事です。
新卒で入庁し14年。地元である印西市が発展していく様子を、仕事を通じて最前線で感じてきました。
インフラから教育施設、市の資産全体へと、多彩なフィールドで専門性を磨いてきた職員のそのキャリアの軌跡と、自治体技術職だからこそ味わえる仕事のやりがい、そして印西市ならではの魅力について、詳しくお話を伺いました。
“縁”に導かれて地元の技師に。14年目の今、思うこと。
ーこれまでのご経歴を含めて自己紹介をお願いします。
大学で機械工学を学んだ後、新卒で印西市役所に入庁して14年目になります。プライベートでは二児の父として、日々育児と仕事の両立に奮闘しています。
機械の道に進んだきっかけは、航空整備士だった父の影響です。幼い頃から工具や機械に触れる機会が多く、自然と技術職に興味を持つようになりました。
大学やインターンシップでの経験を通じて、「技術は暮らしを支えているものだ」と実感し、そうした仕事に携わりたいという気持ちが芽生えました。
公務員という選択肢に強い確信があったわけではありませんでしたが、地元の印西市役所が機械技師を募集していることを知り、これも何かの縁だと感じて受験したのが入庁のきっかけです。
振り返ると、浅はかだった部分もあったかもしれませんが、結果的にこの道を選んで本当によかったと思っています。

インフラ、学校、公共施設へ。多彩な部署で磨いた技術職としての専門性。
ー入庁から14年、どのようなお仕事を経験されましたか?
大きく分けて3つの部署を経験しました。最初の5年間は下水道課で、中継ポンプ場の維持管理や宅地開発に伴う排水設備の許認可業務などを担当し、設計から工事監督まで一貫して携わりました。当時は千葉ニュータウン事業の終盤で、まちが大きく変わる最前線に関われたのは貴重な経験でした。
ー次の部署ではどのようなお仕事を?
次の5年間は教育総務課で、学校施設の設備点検や修繕、更新工事を担当しました。ここで初めて空調や給排水といった「建築設備」に本格的に携わり、小学校の校舎増築工事などを通じて専門性を深めることができ、今の仕事の大きな礎になっています。

ーそして、現在の資産経営課に至るのですね。
はい。現在は資産経営課で4年目になります。公民館や図書館など、市が保有する施設の機械設備に関する設計・積算・工事監督といった「工事」に特化した業務を行っています。約5年周期の異動で、知識と経験を蓄えながらステップアップできていると感じます。
思い出の空き地が街になる。地元出身だからこそ感じられる、まちづくりの最前線。
ーこれまでで特に印象に残っている業務や、やりがいを感じたエピソードはありますか?
最初の5年間の下水道課での経験です。私は印西市のニュータウンで育ったのですが、子どもの頃に遊んでいた空き地が開発され、街になっていく様子をずっと見てきました。人が集まり、活気が生まれて、まちが形づくられていく、そんな変化を地元で暮らしながら肌で感じてきました。下水道課での許認可業務は、まさにその「まちづくり」の最前線。図面や現地調査を通じて、自分が育った街の変化をリアルタイムで体感できたことは、非常に貴重な体験でした。
ーご自身の原風景と仕事が繋がっているのですね。地元出身ならではの面白さもありそうですね。
教育総務課時代、偶然にも母校の改修工事を担当したこともありました。打ち合わせに行くと、当時の恩師が校長先生になっていて。「お世話になった先生方や後輩のために」と、自然と力が入りましたね。自分の思い出の場所や人との繋がりの中で仕事ができるのも、地元で働くからこそのやりがいだと思います。
ーそれはモチベーションになりますね。
はい。あとは、現場の「困った」を解決できた時ですね。老朽化した施設の担当者の方から相談を受け、予算や法規などの制約の中で、様々な要素を調整しながら解決策を見出せた時は、この仕事の面白さを実感します。
一人で抱えないチームへ。変化を恐れない印西市役所の「働きやすさ」
ー職場の雰囲気はいかがですか?技術職として働きやすい環境でしょうか。
働きやすい環境だと思います。以前は、設備に関して専門的な案件を一人で抱え込んでしまうこともありました。ですが、今年から定期的に係内ミーティングを開くようになって、雰囲気が大きく変わり働きやすくなりましたね。
週に1回を目標にミーティングを行うことで、自分が抱えている課題や、「これでいいのかな?」と感じる素朴な疑問を、早い段階でチーム全員に共有できるようになったんです。専門分野に関わらず、同じ案件に関わるチームとして些細な事でも相談し合えるので、一人で悩むことがなくなりました。周りの職員が抱えている課題も把握できるようになりました。個々の仕事が、よりチームとして動けるようになったと実感しています。

ー市役所全体としてはいかがでしょう?
令和6年7月に藤代市長が就任してから、職員の働き方に対する意識が大きく変わったと感じています。業務の効率化やサービスの質向上に向けて、現場でも「今までのやり方を見直してみよう」という空気が強まってきました。
特に印象的なのは、若手職員が中心となって立ち上げたプロジェクトチームです。日頃感じている課題を自分たちで掘り下げて、古い慣習を少しずつ見直していく、そんな動きが、現場から自然に生まれてきています。
トップダウンだけじゃなく、ボトムアップの意見もちゃんと届くようになってきていて、組織としての風通しも良くなっている実感があります。
まだまだ試行錯誤の部分もありますが、「自分たちで変えていける」という前向きな空気が、少しずつ根づいてきている気がします。
知識ゼロからの挑戦。資格取得と自己研鑽で目指す「プロフェッショナルな職員像」
ー入庁してみて、大変だったことはありますか?
入庁当初は、下水道や建築設備の専門知識が全くなく、ゼロから勉強し直すのが大変でした。日々の業務と並行して資格取得にも励み、まず下水道課で「2級土木施工管理技士」を取得。その後、建築設備の経験を積み、現在は「1級管工事施工管理技士」の取得に向けて勉強しています。
ー常に学び続けていらっしゃるのですね。
最近はスキルの高い社会人経験者の方も入庁されるので、自分もプロとして知識や経験、資格を身につけなければという良い危機感があります。常に自己研鑽を続け、内外から信頼される職員でありたいです。
ーワークライフバランスについてもお伺いできますか。
工事の発注時期など、時期によっては残業が増えることもありますが、現在の部署は比較的自分で仕事のペースをコントロールしやすいです。私には小さい子どもがいるので、なるべく早く帰宅して、家族との時間を作るようにしています。
特にありがたいのが、今年から始まった休暇制度の拡充です。これまでの子の看護休暇は、子どもが病気をした時などにしか使えませんでしたが、新たに、入学式や誕生日会といった子どものイベントに参加するためにも使えるようになりました。これは、子育て世代の職員にとって、本当にありがたい制度だと感じています。
計画段階から関われる「自治体技術職」ならではの醍醐味。
ー最後に、これから印西市役所を目指す方々へメッセージをお願いします。
現在、印西市では学校の新設など大規模な整備計画が進んでおり、私たち機械技師の役割もますます重要になっています。自治体技術職の魅力は、単に設備を整えるだけでなく、「市民のためにどう活かすか」という視点で計画段階から深く関われることです。まちづくりの一員として発注者の立場で仕事ができるのは、民間では味わえない醍醐味だと思います。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)



