建築技術職と聞くと、「現場作業・監督がメイン」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、新潟県三条市役所の建築課で働く柴嶺さんは、全く異なった働き方をしています。実はデスクワークも多く、庁内ではビジネスカジュアルな装いで業務に臨んでいます。新卒で入庁して以来、著名な建築家が設計した複合市立図書館「まちやま」などの巨大プロジェクトから、小規模な施設の修繕まで幅広く手掛けてきました。今回は、技術者としての確かな手応えと、家族のように温かい職場の雰囲気についてお話を伺いました。
- きっかけはテレビ番組?建築そして行政の道へと進んだ理由
- 試験で初めて三条市に?等身大の志望動機と現在の姿
- 大規模複合施設を手掛けて感じた、市民に愛される建物の本当の価値
- デスクワークが8割?ビジネスカジュアルで働く、建築技術職の日常とは
- まるで家族のような温かさ。手厚いサポート体制と未来の仲間へのメッセージ
きっかけはテレビ番組?建築そして行政の道へと進んだ理由
ーまずは、柴嶺さんが「建築」に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか?
柴嶺:最初に建築を意識したのは、おそらく小学生の頃だったと思います。当時、テレビで住宅のリフォームや劇的改修を行う番組が流行っていて、それを見るのがすごく好きだったんです。純粋に、こんなことができる仕事はすごいな、という想いを持っていました。
また、ちょうど同じくらいの時期に、新潟県内にビックスワン(新潟スタジアム)が完成したんです。それを見に行ったときに「こんなに大きな建物を建てられるなんてすごいな」と興味を持ったことを、今でも覚えています。

ー子どもの頃の憧れが進路に繋がったのですね。自治体で働くということも考えていたのでしょうか?
柴嶺:いえ、実は大学に入った段階では公務員になろうとは全く考えていませんでした(笑)。
大学4年生のときに研究室へ配属されたのですが、そこは純粋な建築デザインというよりも、都市計画を主として扱う研究室だったんです。街づくりを通じて市の職員さんや地域住民の方々と接する機会が増える中で、「行政の立場から地域を支える仕事も面白そうだな」と意識するようになりました。
その後、大学院まで進んだのですが、就職のことを強く意識していたわけではなく、4年時の研究を「もう少し突き詰めたい」という思いと、まだ社会に出たくないというモラトリアムな気持ちも半分くらいあったというのが正直なところです。ただ、大学院で研究を続ける中でも、行政でなら自分も活躍できるかもしれないという想いは強くなっていきましたね。
ー設計事務所やゼネコンを目指す方も多い印象ですが、そういった道は選ばなかったのですね。
柴嶺:そうですね。大学での課題などを通して、自分は意匠デザインなどの専門特化型よりも、都市計画のような全体を見渡す分野に興味があるのだと気づきました。それに学生時代、ゼネコンや設計事務所で勤めた先輩方から、非常にハードな環境だということをよく聞いていたので、ワークライフバランスの観点からも、自治体で働きたいと思っていました。
試験で初めて三条市に?等身大の志望動機と現在の姿
ー数ある自治体の中で、どうして三条市を選ばれたのでしょうか?
柴嶺:本音をお話ししますと、私が就職活動をしていた年には、建築職の採用募集を出していた自治体がほとんどなかったんです。
私は長岡市の出身なので、長岡市の受験も考えていたのですが、当時建築職の募集はなく、県内で調べても、三条市を含め3〜4自治体しか募集を見つけることができませんでした。
実を言うと、採用試験の筆記試験の日に初めて三条市を訪れたくらいで、当時は街のことすらよく知りませんでした。志望動機といえるものではないかもしれませんが、建築技術職として働きたかったので、三条市を受験したんです(笑)
ーやりたい仕事から勤務地を選ぶというのも、間違っていないと思います。入庁後は、どのような業務に携わってきたのでしょうか?
柴嶺:平成25年度に建築技術職として入庁してから、ずっと建築課に所属しています。
建築課の中には2つの係があり、最初の5年間は「審査指導係」で建築確認申請などの審査業務を担当し、その後現在の「建築係」に異動しました。
建築係では主に、市が保有する公共施設の改修工事や新築工事の監督、修繕の対応、それらに伴う予算要求や設計の発注事務などを担当しています。
ー実際にこれまで働いてきた中で、「三条市を選んでよかった」と思うことはありますか?
柴嶺:三条市は、特定行政庁(建築主事を置いて、建築確認申請の審査や許可などの建築行政事務を行う権限を持つ自治体のこと。)であるという点が、特徴でもあり、選んでよかったと思える理由かもしれないですね。
公共施設の建設や修繕といった現場関係の業務だけでなく、建築確認の審査業務まで幅広い領域で専門性を磨くことができるので、結果として、技術職として成長できる環境だと思っています。
大規模複合施設を手掛けて感じた、市民に愛される建物の本当の価値
ーこれまで手掛けられてきたプロジェクトの中で、特に印象に残っているものはありますか?
柴嶺:三条市立大学の建設工事、歴史民俗博物館の改修、小中学校の屋上防水や外壁改修、児童クラブの新築など、大小問わずさまざまな施設に携わってきたのですが、どれも私が一人でやってきたものではなく、関係部署や民間の方々など、多くの人が関わって形にしているんです。そのため、「特にこれは頑張った」といえるようなものは無いかもしれないですね。
ただ、一番大きなプロジェクトとしては、複合市立図書館「まちやま」の新築工事が印象に残っています。

ーとても大きな施設ですね。完成した際や、利用されている姿を見たときは達成感も大きかったのではないでしょうか?
柴嶺:建物が完成した瞬間よりも、「使われている姿」を見たときに一番の達成感を感じましたね。
「まちやま」が建てられた場所は、もともと地域に親しまれていた小学校の跡地でしたので、解体時には地元の方から反対や寂しがる声も多くいただきました。ですが、完成から時間が経った今、休日に私自身が訪れると、子どもからお年寄りまで本当に多くの方が施設を楽しそうに利用してくださっているんです。
それを見たときに、「この仕事に関われて本当に良かった」と実感することができますね。建物は作って終わりではなく、人に使われて初めて意味を持つんだと実感しました。
ー柴嶺さんにとって、自治体の建築技術職だからこそ味わえる魅力とは何だと思われますか?
柴嶺:民間の建設会社や設計事務所の場合、工事を引き渡したらそれで関わりが薄くなってしまうことが多いと思います。一方で、私たち市役所の建築技術職は、自分たちが計画や工事に関わった施設が街に残り続け、それを自分たちの手でメンテナンスしながら見守っていくことができます。
地元に残り続けて、市民の皆さんが使っている姿を末長く見届けられることこそが、自治体の建築職として働く大きな魅力ではないでしょうか。
デスクワークが8割?ビジネスカジュアルで働く、建築技術職の日常とは
ー建築職というとヘルメットをかぶって毎日現場にいるイメージがありますが、実際の仕事の割合はどのような感じなのでしょうか?
柴嶺:確かに「現場」というイメージを持たれるかもしれませんが、ずっと現場に張り付いているわけではなく、施工業者さんから「現場でこんな問題が出てきた」といった連絡を受けたときや、工事の節目、定期検査のときに現場へ行く形になります。
そのため、ヘルメットをかぶって現場に行く時間としてみると、実際には全体の2割程度ではないでしょうか。残りの8割は庁内でのデスクワークになります。普段はパソコンに向かって書類を作成したり、予算を算出する時間の方が圧倒的に多いですね。

ーデスクワークの方が多いというのは意外ですね。服装についても柔軟に認められているのでしょうか?
柴嶺:三条市では通年でビジネスカジュアルが認められていますので、庁内ではポロシャツといったラフな格好で仕事をしています。もちろん現場に行く日は作業着を着ますが、ずっと作業着でいなければいけないわけではありませんので、非常に働きやすい環境だと感じています。
こういった面も、通常持たれるような「役所」のイメージとは異なるポイントかもしれませんね。
ーワークライフバランスや残業事情についてはいかがでしょうか?
柴嶺:工事の発注が重なる繁忙期にはどうしても残業が増えるタイミングもありますが、基本的には無理な残業はなく、自分のペースで業務を進められています。
休日もしっかり取得できますし、定時で帰れる日も多くありますので、プライベートとの両立はまったく問題ありません。
現場を抱えてしまうと中々休めないという印象があるかもしれませんが、三条市役所はお互いに業務をフォローし合えるような環境なので、現場が動いていたとしても計画的に休みを取ることもできます。
まるで家族のような温かさ。手厚いサポート体制と未来の仲間へのメッセージ
ー柴嶺さんが所属されている建築課のメンバー構成や、職場の雰囲気について教えてください。
柴嶺:建築課は、現在のところ全体で9名の組織です。そのうち事務職が1名で、残りの8名が技術職になります。少人数の部署ということもあり、職場の雰囲気は本当にアットホームですね。
よく求人広告などで「アットホームな職場です」というフレーズを見かけることがありますが、三条市役所の建築課はまさに家族のような温かい関係性です。
中堅の私から見ても、上司と部下の風通しの良さは抜群だと思っています。

ー教育やフォローの体制はいかがでしょうか?中途採用(キャリア採用)の方でも馴染めるか不安な方もいるかと思います。
柴嶺:三条市ではキャリア採用の方に対しても非常に手厚いサポート体制を整えています。
配属後は補佐級の先輩職員がOJT担当としてマンツーマンでつき、日々の業務指導を行っていきます。さらに、業務に追われて相談しそびれることがないよう、2週間に1回のペースで定期的な個別面談を半年間にわたって実施しています。
それに加えて人事課の職員とも月1回程度の面談がありますので、悩みや困りごとを一人で抱え込ませない仕組みができています。
ーキャリア採用でもそこまでサポートしてもらえるのは安心ですね。最後に、三条市の建築職を目指す方や受験を迷っている方へメッセージをお願いいたします!
柴嶺:新しい環境へ飛び込むときは、どうしても「職場の人間関係は大丈夫だろうか」「うまくやっていけるだろうか」と不安な気持ちになると思います。しかし、三条市には、些細なことでも親身になって相談に乗ってくれる上司がいて、若手同士も助け合いながら一つの目標に向かっていく風土が整っています。その点はどうぞ安心してください。
不安を恐れずに、ぜひ思い切って飛び込んできてほしいと思っています。皆さんと一緒に働ける日を楽しみに待っています!

ー本日はありがとうございました。
「実は筆記試験の日に初めて三条市へ来たんです」と笑顔で明かしてくださった柴嶺さん。その率直で親しみやすい語り口の中に、地域を支える建築技術者としての誇りと、三条市への愛着が感じられる非常に魅力的な取材でした。
自身が携わった施設で溢れる市民の笑顔を見て実感したという「建物は使われてこそ意味がある」という言葉には、現場を第一線で見守り続けてきた人にしか語れない重みがありました。アットホームで家族のような職場環境と、手厚いフォロー体制が整った三条市役所。建築の知識を活かして地域に貢献したい方にとって、これ以上なく温かくやりがいに満ちたフィールドになるのではないでしょうか。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)



