福岡県古賀市の総務部経営戦略課経営戦略係に勤務する安部 祐輔(アベ ユウスケ) さんに入庁してからの仕事内容、インキュベーション施設や企業誘致についてお話を伺いました。
—はじめに、これまでの経歴を簡単にご紹介ください。
安部:大学を卒業後すぐ古賀市役所に入庁しました。平成19年入庁ですので、今年度で18年目になります。小学生のときからずっと古賀市に住んでおり、その縁で古賀市役所を選びました。
—なぜ公務員になろうと思ったのでしょうか?
安部:大学で法学部にいたこともあり、公共の仕事をしたいと思っていました。インフラ系の民間企業の道もあったとは思いますが、一番ストレートに公共の仕事ができるのは公務員だなと思い決めました。
—入庁してからのご経歴を教えてください。
安部:最初は、情報管理係に配属となり、システムのサーバー管理や住民情報システム運用を5年間担当しました。エンジニアのみなさんから教えてもらいながらプログラミングやシステムの扱い方を学びました。その後は福祉課で6年間生活保護のケースワーカーをしていました。どちらも庁内で人気のある部署ではありませんが、仕事としてやりがいもあって面白く、自分の幅がどんどん広がっていく、とても良い経験ができたなと思っています。
ケースワーカーは利用者のニーズを直接感じることが出来て、自分で頑張ればできることがたくさんあります。短くてもいいので市役所の皆さんにぜひ経験してほしいですね。
その後は人事係に5年間在籍していました。職員研修や人事評価、採用などを担当し、会計年度任用職員制度の導入にも携わりました。
現在は経営戦略課に来て2年目で、昨年度は快生館というインキュベーション施設の運用を担当しました。今年度は、まち・ひと・しごと総合戦略の改訂の作業を担当しています。
—快生館という施設はどのようなものですか?
安部:元々は民間が運営する温泉旅館でしたが、コロナ禍を機に休業する相談があり、市がワークスペースとしてリノベーションして、令和3年の10月にオープンしました。リニューアルして今年で3年目の施設となります。
元々の旅館の作りと外観はそのままの形で残し、コワーキングスペースとしてドロップインで利用できる部屋やサテライトオフィスとして利用できるスモールオフィスがあります。
市内唯一の天然温泉を有する旅館でしたので、市の地域資源として生かしていきたいという思いがあったんです。温泉があるワークスペースというところが一番の特徴ですね。
施設の運営自体は外部の業者に委託をしていますが、私はその快生館の運営事業として、施設内イベントの企画や実施、またサテライトオフィスの企業誘致活動も行っていました。もう1名担当がおり、施設内の補修や修繕などハード面の対応を行っています。
—イベントはどのようなものですか?
安部:例えば入居している人材サービス企業との取り組みで学生向けのインターンシップイベントや、市民向けのデジタルスキル講座を実施しました。デジタルスキル講座は、デジタル技術を学んだ後に、テレワーカーとして地方都市の古賀に住みながら大都市圏と同じ仕事を受けて働くという新しいはたらき方を創る事業の一環として、企業と一緒に取り組んだ事例です。
他には、ワーケーションを通して宿泊をセットにした形で快生館に来てもらう企画など、企業と一緒に企画して運営していく事業を実施しました。
快生館へ来てくれた企業に定着してもらえるよう、一緒にイベントを作っています。それによって快生館自体を知ってもらい、認知度を上げながら施設の活用に取り組んでいます。
—企業誘致はどのように行なっていますか?
安部:マッチングイベントに参加し、施設自体を紹介します。そこからオンラインでの商談や実際に古賀市へ視察に来てもらって、紹介するという流れです。市外の企業へのプレゼンでは、快生館だけでなく古賀市自体の紹介も行います。
大都市圏からの企業進出も狙っていますが、現在は近隣地域での認知が広がっており、市内の事業者や個人の方にもオフィスとして利用されています。
古賀市は空港から40分程度の距離ですので、ビジネス上のアクセスも良い場所です。ただ、古賀市だからこそできるという唯一無二な点をアピールすることも大事ですので、その点は今後の課題にもなっています。
例えば、実験的に市内でイベントを行い、市内外の事業者とサテライトオフィスへの進出を検討している事業者をつなぐという動きも行なっています。
—具体的にはどういうイベントなんですか?
安部:例えば、AIのロボットを学校の教育現場で使えないかということで、実験的に取り組みました。ロボットが算数の教材を使って児童と一緒にドリルを進めるような授業です。実際に現場の児童や先生方からも好評価をいただき、今後広く展開できないかも検討しています。
他には、ゲームのマインクラフトを使ったワークショップの例もあります。マインクラフトで子供たちに空き施設の活用方法を考えてもらうワークショップです。3Dのモデリング事業をしている事業者と一緒にワークショップを展開してもらい、その教室として快生館を使ってもらいました。
—とても面白い取り組みですね。新しい分野が多いと安部さんが理解するのも大変ですね。
安部:AIやDXに関する提案など、知らない技術ばかりです。それこそ言葉についていくのも大変ですし、そのビジネスモデルを理解すること自体も難しいですね。
ただ、事業者の方と意見交換する交流の中で、公共分野に興味を持っている事業者が多くいらっしゃるんだなということがわかりました。そういう方の話を聞いて所管課と一緒に、どうやってビジネスにつなげていくかも考えています。
大変ですが、新しい技術やビジネスに出会えるところは、本当に面白いです。
ー難しいながらも行政と繋がってうまくできる部分があればとてもいいですよね。話題は変わりますが、経営戦略課には何人いらっしゃるのですか?
安部:経営戦略係は係長を含め3人で、課の中には10人位のスタッフがいます。係の中では、大きく総合計画の進捗管理とインキュベーション施設関連の地方創生事業を2人で分けて運営しています。
ー仕事の忙しさという点ではどうですか?
安部:やることはたくさんありますが、まずは自分の中でできる仕事をと思い取り組んでいます。この日は定時で帰る、ここは仕事をする日とメリハリをつけてやっていますね。
去年までは、子供の保育園の送り迎えを10年間続けていました。自分でスケジュールを立てやすい職場でもあったので、生活との両立は出来ています。
今は働き方改革や業務改革ということで、テレワークを推奨している課に在籍しているので、日によっては在宅勤務であったり、快生館でテレワークをすることもあります。
ー最後に、一言お願いいたします。
安部:公務員の仕事は「あたり前の日常」を繋いでいくことが基本だと思っています。水道やゴミの収集について、皆さんは意識せずに暮らしていると思うのですが、なくなっては困る日常の仕事です。
市民の日常を維持するために、公務員は日々の仕事を行なっています。みなさんが生活できるように、最低限を支えることは公務員の大事な仕事です。
しかし、現在は新しい市の魅力を作っていくことも市役所の仕事になってきたんだなとも感じています。魅力をつくり発信して、市全体をPRしていくことを考え実行する必要がある。時代によって、公務員の仕事は変わっていくんだなと感じています。
市役所の仕事や働き方も変わっていくでしょうし、個人では新しい職場に異動していくと思うので、そういう環境を楽しめることがとても大事かなと思います。
変化や新しいことを受け入れて楽しめる方と一緒に働いていけると嬉しいです。
ー本日は、ありがとうございました。