長崎県南島原市役所総務秘書課秘書広報班で働く、林田俊将さんと細波雄太さんにお話を伺いました。
—これまでの経歴と現在のお仕事を教えてください
林田:大学卒業後、平成22年に新卒で南島原市役所に入庁しました。はじめは水産課というお魚を取り扱う部署に配属。その後は、約5年ほど地域振興関係の部署で仕事をしました。
いったん長崎県庁に出向して2年間勤務したのち、南島原に戻ってきました。今は秘書広報班で広報を担当して4年目です。
細波:私は平成28年に入庁して、最初は教育委員会の生涯学習課に配属されました。青少年教育やイベント関連の業務を経験してから、私は長崎県後期高齢者医療広域連合に出向しました。
そこでは75歳以上の医療保険を取り扱う部署で3年ほど働いて、南島原に帰ってきました。今は秘書広報班に所属して2年目で、広報誌やシティプロモーション業務を担当しています。
林田:総務秘書課という部署の中に、私たちが所属する秘書広報班がありまして。在籍メンバー5名のうち、私と細波が広報の仕事を担当しています。
シティプロモーションのほか、ホームページやSNSを通じて情報発信をしています。
—南島原市の魅力を発信するシティプロモーションでは、具体的にどのようなことを手がけられたのですか?
林田:毎年長崎県内のテレビ局4局にプロポーザルの企画提案をお願いし、テレビ番組を活用した情報発信やアニメ、ドラマといった映像の制作を行っています。これまでに、ショートアニメ「巨神と氷華の城」やサウンドロゴなどを手がけました。
細波:昨年度(令和4年度)は、ケンドーコバヤシさんに出演していただいて「転生みそ五郎どん」というドラマも制作したんですよ。
—シティプロモーションはいつから始まったのですか?
林田:シティプロモーションは2014年から行っています。当初は県内のテレビ局だけに企画の提案を依頼していたのですが、今年は初めて全国に公募したところです。おかげさまで、県外のテレビ局や広告会社さんからも幅広く提案を受けることができました。
林田:シティプロモーションを行う前は、南島原でフォトコンテストを開催していたんです。当時主流だったSNSであるFacebookを通じて応募作品を紹介したら、国内だけでなく海外からも高い評価をいただきまして。
Facebookの「いいね!」の数が9万2,000件にもなったんですよ。南島原市民にとっては当たり前の景色でも、市外の人にとっては魅力的なものとして映ることがわかったんです。
これを機に、南島原を全国に向けてPRしていこうという流れができました。そして2014年からは4,000万円の予算を組んで、シティプロモーションを始めたというわけです。
国からの交付金も活用しながら取り組んできたのですが、当時としては他の自治体ではありえない額の予算だったと思いますよ。
—シティプロモーションにはどのような目的があるのですか?
林田:シティプロモーションの目的は3つです。
1つめは、南島原市の認知度や知名度を上げること。
2つめが南島原市への来訪者を増やすこと。
3つめがシビックプライドといって、市民が南島原市に愛着や誇りを持てるようになることです。
PRすることだけを考えれば外部に業務委託するのが話は早いのですが、やはりシビックプライドの観点から、南島原市民にも関わってもらうのが大きなカギになります。
いかに市民の皆さんに関わってもらうかというのが大きな課題でしたね。そこで、市民の皆さんにもテレビ番組やショートフィルムなどに出演してもらったんです。
—アイデア出しなど、クリエイティブな部分にも関わったのですか?
林田:テレビ局の方とはディスカッションしながら企画を進めたのですが、南島原のことに詳しいのはやはり私たち市の職員ですし、任せきりにはしないで積極的に提案しました。さまざまな分野で活躍されている市民の方にも取材をしたことがあります。
細波:ドラマを制作する際は、基本的にプロの方に依頼しました。やっぱりストーリーや演出などはその道のプロにお任せしたほうが、迫力があったり、魅力的な映像に仕上がると思うんです。
でも、市の風景においては私たちのほうが理解が深いという自負があります。企画を立てる段階で、南島原市の魅力の伝え方についてのアイデアを出しました。
例えば、ドラマの中では季節感を出すために海で撮影して欲しいとか、壮大な風景が撮れるスポットを提案したり。ドラマを見たあとに訪れる観光客が素晴らしい景色をベストなタイミングで見られるよう、時期まで考えて場所をピックアップしたんです。
—プロモーション事業はどのように進めているのですか?
細波:まずは公募をかけ、プロポーザルを行います。その審査で選ばれた業者さんと、1年を通して連携しながら各事業を進めていくのが基本的な流れです。
秘書広報班だけで完結できる事業ではなく、市役所の中でも横断的に事業を展開するため、関係部署から1人ずつ審査員を出してもらい、私たちは事務局という立場で南島原をアピールするのに最適なコンテンツを選んでいます。
—やりがいや面白みを感じる部分を教えてください。
林田:テレビ番組で取り上げられると、商品や観光地を求めてお客さんがぐんと増えるんです。そんな光景を見ると、自分たちの仕事の効果を実感しますね。
また、YouTubeをはじめとするSNSのコメントで高く評価されているのを見るとうれしいです。南島原に旅行に行きたい、移住したい、Uターンしたいなんてコメントを見たときは、この仕事をやっていてよかったと感じます。
—YouTubeでは再生回数が数十万回を記録していますが、地元の方の反応はいかがですか?
細波:集客につながったという声を聞きます。テレビで取り上げられた商品をネット販売し、継続して買ってくださるお客さんも出てきたそうです。住民の方からそういう声を聞くと、この事業をやっていてよかったと思います。
また、ドラマを制作したときは、市民の方にエキストラで出演してもらったのですが、出演した市民の方から「友達がドラマを見てくれたよ」「ドラマに出てたでしょと声をかけられた」なんて話を聞くと、ほっこりした気分になりますし、やってよかったなと思いますね。
—お仕事で苦労されたことはありますか?
林田:私と細波が今の部署に配属されたのは、コロナウイルスの感染が拡大している状況下でして。
そんな中でのプロモーションですから、難しいことも多かったですね。緊急事態宣言が発出されて、行動制限がされている状況では「みなさん南島原に来てください」と大きな声でPRできませんよね。観光業界はもちろん、飲食店も疲弊しているのが目に見えてわかる状態でした。
それで、コロナ禍でも可能なプロモーションは何かと考え、「食べチョク」といったECサイトさんと連携した事業や動画の制作を行いました。
南島原に足を運ぶのが難しい状況でも、商品を買ってもらったりPRすることはできる。大変ではありましたが、やりがいもあった仕事ですね。
—どんどん新しい取り組みに着手されているという印象を受けますが、南島原市は新しいアイデアが受け入れられやすいのですか?
林田:そうですね。他の自治体と差別化をはかりたいという意識が、秘書広報班だけでなく市役所全体にあるからだと思います。そのためにも著名人の方を起用したいという思いがあり、ドラマにはケンドーコバヤシさん、観光ムービーには満島ひかりさんを起用することもできました。
細波:上層部も後押ししてくれているので、実現できるんですよね。
林田:「食べチョク」に関しても、都道府県単位で実施している自治体は多くありましたが、市町村単位で実施したのは南島原市は早いほうだったと記憶しています。ですから、他の自治体から問い合わせを受けることも多かったんですよ。
—今後はどのような取り組みを進めていきたいですか?
林田:南島原市には、世界遺産に登録されている原城跡という文化遺産があります。世界遺産に登録された後にコロナが流行したので、とりたててPRができなかったんです。
世界遺産に登録されて今年で5年になるので、5周年記念としてPRをしていきたいと思っています。集客に力を入れるのはもちろん、特産品のPRをしたいですね。
細波:リアルで訪問してもらうだけでなく、今はやりのメタバースといった仮想空間や、LINEを中心としたSNSで積極的に発信したいですね。
また、TikTokやTwitter、Instagramも活用して、ふるさと納税や食べチョク、ECサイトなどで市内の事業者さんがうるおうような仕組みを作りたいと考えているところです。
—最新のトレンドも取り入れて新たなチャレンジを今後も続けていくんですね!では、そうしてPRしていきたい南島原市のおすすめスポットを教えてください。
細波:南島原は夏にぴったりのスポットが多いんですよ。海水浴場があるのはもちろん、イルカウォッチングもできるんです。また、意外と知られていないのが川遊びですね。
暑い夏でも涼しく遊べるところが多いので、暑い都会から涼みに来てください。そして、名物のそうめんもつるっと食べて、力をつけてから帰ってもらえたら。
林田:南島原では、最近人気のキャンプもできますよ。棚田キャンプといって、普段はお米を作っている段々畑でキャンプをするんです。標高が高い場所にあるので、冬は特に星がとてもきれいに見えますよ。
このような新たな観光資源の掘り起こしにも力を入れているところです。
—どのような人と一緒に働きたいですか? メッセージをお願いします。
林田:南島原市は平成18年に8つの町が合併して生まれた、長崎県では一番若い自治体です。そんな南島原市を活性化させていくのって、とてもやりがいのある仕事だと思います。
市の職員は幅広い業務を担当しているので、正直大変な部分もあるとは思います。でも、大変だという以上に、何かを成し遂げたときの喜びや、地域に貢献できたという達成感は非常に大きいです。
『PRするのは広報の仕事』というイメージがあるかもしれませんが、南島原市においては農林や特産品、移住など部門ごとに積極的にPR活動を行っているんですよ。
地域活性化についていろんなアイデアを持って、南島原を一緒に盛り上げてほしいです。南島原のファンを増やすのが私たちの仕事ですから。
細波:私は、いろんな経験をされている方と一緒にお仕事がしたいと思っています。例えば、バックパッカーで世界中を回ったりとか、自転車で日本一周したりとか、特殊な経験をされている方とも働いてみたいですね。
林田:そうそう、我々は仕事柄一眼レフカメラを持って土日のイベントにお邪魔する機会が多いんですが、2人ともなかなかカメラの腕が上がらないんですよね……。カメラのスキルを持った方が来てくださったらうれしいですね。
秘書広報班に限らず、どの部署でもPRに注力しているので、南島原の魅力を発信するというやりがいがあると思いますよ。
―本日はありがとうございました。