◎仕事体験参加学生より
この度、奈良市役所人事課の仕事体験に参加した秋尾です。
産業政策課企業誘致係の高田さんに仕事内容について詳しく教えていただきましたので、ぜひ記事をご覧ください。
ーまずご経歴を教えてください。

高田さん:奈良県香芝市で生まれ、大阪の大学の政策学部に進学しました。在学中は地域活性化を学び、両親ともに自営業の家系だったことから、まずは民間企業での経験を積みたいという思いがあり、大学卒業後は民間企業に約2年間勤めました。その後、奈良市役所に入庁し、観光課で7年半勤務後、産業政策課に異動しました。そして市の派遣研修制度を利用して日本貿易振興機構(ジェトロ)に3年間出向し、多くの県内企業と関わりながら、海外とのビジネスについて学びを深めました。現在は産業政策課の企業誘致係に所属しています。
ーどうして奈良市を選ばれたのですか?
高田さん:大学在学中、豪州のホームステイ先で自分の地域の魅力について聞かれる機会があり、そのときに改めて地元の奈良に関心を持つようになりました。奈良市は観光地としてのイメージが強く、ベッドタウンとしても魅力的なまちです。大学時代には大阪など都市の賑やかさや活気に惹かれる部分もありましたが、静かで落ち着いた場所に住む方が自分には合っていると感じました。奈良市は都市機能が充実しており、生活に困ることもありませんし、自然豊かで落ち着いた環境と共存している点も魅力です。奈良市のこうした魅力に惹かれ、ここで働くことを決めました。
ー次に仕事内容を教えてください。
高田さん:私が所属する産業政策課は、奈良市の経済活性化に取り組む部署です。例えば、女性のキャリア支援や障がい者の就労支援に関するキャリア支援係、中小企業支援や商店街の活性化を担う総務係、起業家支援を行う創業支援係、そして私が所属している企業誘致係があります。
企業誘致係では、係名のとおり、奈良市内に企業を誘致する仕事をしています。奈良市の税収構造からみると、法人に関する税の割合は低いです。市内に企業の投資を呼び込み、その企業が奈良を拠点にビジネスを展開していくことで税収増加に貢献することが役割の1つとしてあります。
もう1つは、若者の地域内雇用の創出につなげることです。奈良市は、中核市の中でも学生数が多く、学生のまちと言われていますが、就職を機に県外に出ていく方が多いので、若者にニーズがある職種で、奈良であまり集積のないIT・クリエイティブ分野の企業のサテライトオフィス誘致や、製造業の誘致を進めています。
また、国内外の企業に向けて、企業ごとのニーズを伺いながら奈良市の投資環境の魅力を伝える営業活動も行っています。最近では、ビジネス上のリスク回避のためや首都圏での雇用の難しさから、サテライトオフィスを地方に設置する企業が増えており、奈良市にも進出いただく企業が少しずつ増加しています。

企業誘致に関しては他自治体も力を入れていますが、奈良市が一番力を入れているのが「企業立地コンシェルジュ」によるワンストップサービスです。企業誘致担当の職員がコンシェルジュとなり、物件探しや従業員・ご家族の転居に関するサポート、立地後のアフターフォローまでサポートしています。
特に、立地後のフォローにしっかりと携わっているところが特徴です。例えば、立地が決定した企業と「地域の雇用と経済に関する立地協定」を結び、メディアなどの媒体を通して市民の皆さんをはじめ、広く、その企業の活動を周知します。立地した企業の奈良市を拠点としたビジネスが加速するよう、地域の学術機関や金融機関へのお繋ぎ、人材確保支援など、個社のニーズに合ったビジネス支援を行っています。

ー特にどのような課題に奈良市は直面していますか?
高田さん:企業誘致係としては、県外就業率の高さや地域経済活性化の課題があります。県外の企業に奈良市を「働くまち」という認識を持ってもらい、立地いただくことで、人と人とのビジネスの交流が生まれたり、ゆくゆくは新しい産業が育って集積していったりすればいいなと思っています。近年は、テレワークの普及で「働く」と「住む」の境界線がどんどん曖昧になっていると思います。奈良市は、子育て世代の人口は伸びているので、「住むまち」というイメージに加え、「働くまち」としての注目度の高まりとともに、首都圏からの企業進出も進めていきたいです。
ーこういった仕事内容を踏まえて、どのような人材が奈良市役所で働くのに向いていると思いますか。
高田さん:市役所は人事異動がつきもので、業務の内容ががらっと変わってしまうことがあります。ですが、自分が疑問や課題を持ったことを、調べて提案していける環境だと思うので、業務が変わっても新しい環境で自分の目標を設定し、その目標を楽しめる人が向いていると思います。公務員は決まったことだけやっているというイメージもあるかと思いますが、時代やニーズに合わせたいろいろなサービスを展開しているので、専門性を身に付け、新しいことを学び続けるモチベーションを保つ必要があると思います。
また、人口減少に伴い、市役所の職員数の減少や予算も限られているなかで、市役所が全ての課題を解決していく環境というより、企業や地域の方々と一緒に課題を解決しながらまちを作っていくような流れになってきていると思います。
