他自治体で6年間経験を積み、より専門性の高い分野で力を発揮したいという思いから奈良市役所へ転職された福田さん。
現在は未経験の業務にも挑戦しながら知識と技術の幅を広げ、奈良市の建築職として活躍されています。
福田さんのこれまでのキャリアや建築職への思い、そして奈良市で働く魅力についてお話を伺いました。
―― これまでのご経歴を教えてください。
京都府内の自治体で4年間、奈良県内の自治体で2年間の計6年間、建築技術職員として勤務していました。その時は建築職でありながら、土木工事、建物や道路の維持修繕、用地買収、境界の明示など、幅広い業務に携わり、建築以外の分野にも対応していました。
―― 転職を考えたきっかけは何でしたか?
建築系の学校を卒業して民間企業で活躍している友人が多く、専門的な分野で仕事をしている姿を見て、自分ももっと専門性の高い、建築に特化した仕事をしたいという思いが強くなり、奈良市役所への転職を決意しました。
―― 奈良市を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
私は桜井市、父は奈良市の出身で、地元にゆかりのある土地で働きたいという思いがありました。
奈良市は、建築工事の予算規模が県内トップクラスで、建築基準法に基づく行政事務を所管している、県内でも数少ない自治体の内の一つです。そうした背景から、より専門性の高い仕事に取り組める環境を求めて、奈良市を選びました。
―― 同じ建築職でも、自治体によって違いがあるんですね。
建築職は、自治体によって求められる知識の幅が大きく異なります。技術職員全体が不足している場合、一人の職員がいろんな業務を幅広くこなす必要があって、建築に限らない豊富な知識・経験を得られる一方、どうしても知識が広く浅くなってしまうんですよね。
私は、建築一筋で専門性を深めたいという思いが強くありました。だからこそ、奈良市のように規模が大きい自治体を選ぶ必要があると感じたんです。実際に奈良市では新しい建物の建設にも多く関わっていて、建築指導分野で専門性の高い仕事に従事する機会が多くあります。
―― 経験者採用で入庁されましたが、試験に向けて準備などはされましたか?
建築職の専門試験と2回の面接があったので、専門試験に向けては、1級建築士の試験に出てくるような内容を中心に勉強しました。
面接対策としては、聞かれそうな質問を20題ほど作り、家でシミュレーションしました。面接の雰囲気を想定して自分の考えを口に出してみることで、現場の感覚を少し掴めたように思います。
事前に準備を重ねたことで、落ち着いて臨むことができましたし、自分の経験や思いをしっかり伝えられました。
※現在は専門試験なしで受験できます。
―― 現在の仕事について教えてください。
現在は都市整備部建築指導課の審査係に所属しています。
この部署では、建築基準法に基づく審査や指導などを担っており、私の主な業務も確認申請の審査です。官公庁や民間事業者が計画する建物が法令に適合しているかを事前に確認する制度で、迅速かつ正確な対応が求められます。

―― 前の職場との違いはありますか?
以前勤めていた自治体では、主に工事部署に所属しており、積算や入札、現場管理など工事の流れを一通り担当していました。
法令に関する業務は未経験だったので、今の仕事には苦労もありますが、専門性の高い分野に飛び込んだことで、これまでとは異なる視点や知識が求められ、日々学びの連続です。
―― 今までとは違う分野で働くことに不安はありませんでしたか?
審査業務の経験がなかったので不安や戸惑いはありましたが、周囲のサポート体制がしっかりしていて、非常に働きやすいです。わからないことがあればチームで一緒に解決する体制があり、先輩や上司にも気軽に相談できます。課題を一つひとつクリアしていくプロセスが、自分の知識として蓄積されていく感覚があります。
一人で抱え込むような職場ではなく、チームで支え合いながら業務に取り組める環境があることは、非常に心強いですね。

―― 審査業務に携わるなかで、身についた力などはありますか?
建築指導課に配属され、建物づくりを法的・技術的な側面から多角的に捉える視点が身につきました。
以前は図面通りに遅滞なく完成するように発注・管理する流れで仕事をしていましたが、今では「この計画は建築基準法に適合しているか」「なぜこの部材を選定しているのか」といった点を確認するようになりました。そうした視点は、これまで見えていなかった重要な部分であり、今後どの部署に異動しても必ず役立つ知識だと思います。もともとは工事部署で働きたいと考えていましたが、今では、この部署に配属されてよかったと感じています。
―― 仕事のやりがいを教えてください。
現在、1級建築士の資格取得に向けて勉強中なのですが、業務の中で「あ、これ勉強した内容だ」とか、逆に「実務で経験したことが試験に出てきた」という場面に出会うことがあります。そういう瞬間に知識が実際に活きていることを実感できて、やりがいに繋がっています。
自分が審査を担当した建物が無事に工事を終えて、完了検査に立ち会ったときには、プロジェクトに関われたという実感が湧いて達成感があります。
ただ、完了検査は非常に重要な業務で、構造や意匠など、様々な観点から適法性を確認する必要があります。緊張感もありますが、無事に終えられた時の充実感は大きいです。
―― 働き方やワークライフバランスについてはいかがですか?
開発指導課・建築指導課・都市計画課では、働き方改革の一環で窓口対応時間を9時〜15時(12時〜13時を除く)に設定し、審査業務に集中する時間を確保しています。業務のスケジュールが立てやすく、残業は月3〜4時間程度です。
建築指導課では、少人数体制の中で窓口対応や現場検査などの業務をこなしているため、有給休暇の取得には事前調整が必要ですが、事前に申請していれば問題なく取得できる環境です。

―― 奈良市ならではの魅力を教えてください。
奈良市には東大寺や興福寺、ならまちなど、歴史的・文化的な背景を持つ地域が多くあります。文化財や伝統的な街並みが残る中で、建物の計画に関わることができるのは、奈良市ならではの魅力だと感じています。
自分が観光で訪れたことのある場所の一部が、実際に建築計画として動き出し、その審査に携わることができたことは、とても嬉しい経験です。自分が関わった案件が形になり、街の一部として完成していく様子を見ると、やはり奈良ならではのやりがいを感じます。




