「京都市役所の採用ってどうなってるの?」「上下水道局ってどんな組織?」そんな疑問を持つ方へ。
京都市上下水道局の人事担当者へのインタビューです。京都市役所の採用の仕組みと、その中で独立性の高い上下水道局のユニークな立ち位置を解説しています。さらに、琵琶湖疏水から始まる100年以上の歴史と革新性、そしてミスマッチを防ぐための熱心な採用広報活動まで、その魅力とやりがいを伺いました。
京都市上下水道局の立ち位置と採用、組織体制
ーまず、京都市役所内での上下水道局、採用・配属の仕組みについて教えていただけますか。
人事担当者: 京都市役所の組織は、市長部局、交通局、上下水道局、教育委員会事務局、消防局に分かれます。上下水道局は京都市役所の一部局ですが、任命権者が異なる独立性の高い組織です。採用試験は、上下水道局独自で行っておらず、京都市職員採用試験に合格し、上下水道局から内定を受けるという形になります。
ー一度上下水道局に配属されると、ずっと上下水道局で働くことになるのでしょうか。
人事担当者: 部局間の人事異動はあります。毎年、職種を問わず市長部局など他の部局との人事交流が行われています。
ー組織体制も教えてください。
人事担当者: 上下水道局の組織は、総務部、経営戦略室、技術監理室、水道部、下水道部の3部2室の体制になります。採用職種は、事務職、土木職、電気職、機械職、化学職、建築職になり、職種の構成としては、事務職32%、技術職68%と、技術職が全体の7割を占めます。男女比は、技術職の割合が高いため男性が7割、女性が3割程度です。
ー勤務場所はどうなりますか。
人事担当者:上下水道局は河原町御池の市役所庁舎とは別に単独の庁舎を持っています。その中でも勤務する人数が最も多いのが、地下鉄十条駅近くにある「上下水道局総合庁舎」になり、職員約1,100人のうち半数近い500人程度が勤務しています。総合庁舎は令和4年に竣工した新しい庁舎になります。他には地下鉄太秦天神川駅近くの「太秦庁舎」や、3つの浄水場、4つの水環境保全センター(下水処理場)、4つの営業所など、市内各所に勤務場所がありますが、いずれも京都市内ですので、京都市内のどこに住んでも通える場所になります。
事業の特徴と歴史:温故知新の精神
ー京都市上下水道局ならではの事業の特徴や歴史について教えてください。
人事担当者: 京都市の水道事業の根幹には、明治時代に築かれた「琵琶湖疏水」という大きな歴史的財産があります。この疏水がなぜ作られたのかという歴史的背景は、私たちの事業の原点であり、非常に興味深い部分だと思います。
また、京都市内の中心部は北から南へ傾斜している地形を利用し、水道では全体の4割にあたる地域で、ポンプなどを一切使わず、琵琶湖からの自然流下のみで各ご家庭に水道水を送っています。下水道では水環境保全センターを市内南部に建設して、自然に流れてくる下水を集めて処理します。先人たちの知恵が詰まった、非常に合理的な仕組みです。

技術面では、日本で初めて「急速ろ過」という手法を導入したのも市内の蹴上(けあげ)浄水場です。京都は土地が限られていたため、狭い場所でも効率的に水をきれいにできるこの技術をいち早く取り入れました。このように、歴史が古いだけでなく、その時代時代で必要とされる新しい技術を積極的に取り入れてきた「温故知新」の精神が、私たちの組織には根付いています。

働き方、若手の活躍、そしてライフラインを守る使命
ーそうした組織風土は、現在の働き方にも表れていますか?
人事担当者: そうですね。その一例が「若手職員のプロジェクトチーム」です。水道部と下水道部にそれぞれチームがあり、採用1、2年目の職員も参加し、上下水道事業の魅力を広くPRするために精力的に活動しています。
例えば、ポケモンのマンホール『ポケふた』を企画・実現させたり、学生向けの技術職施設見学会を企画・運営したりするなど、若手職員ならではのアイデアを生かして色々と活動しています。市民の重要なライフラインであり、「あって当たり前」「縁の下の力持ち」である私たちの仕事を、もっと知ってもらいたいという思いで、若手職員が主体的に動いています。
ー業務時間内に活動するのでしょうか?
人事担当者: はい、業務の一環として位置づけられています。本来の業務の合間に時間を調整して打ち合わせなどを行います。新規採用職員も積極的に参加するなど、常に新しい風を取り入れながら活発に運営されています。こうした活動を通じて、若手職員が部署の垣根を越えて繋がり、主体的に考えて行動する力が養われていると感じます。
ー若手が活躍できる風土があるのですね。他になにか、特筆すべき活動はありますか?
人事担当者:水道・下水道は重要なライフラインですので、災害時の対応も、私たちの極めて重要な役割です。
例えば、令和6年1月に発生した能登半島地震の際には、私たちの部隊を複数回にわたり現地に派遣しました。給水車による応急給水活動や、被災した下水道管の調査など、専門技術を活かして支援にあたりました。復旧・復興のために長期で職員を派遣することもあります。過去にも、熊本地震や東日本大震災の際に、全国の仲間たちと共に復旧支援活動を行ってきました。

採用広報とミスマッチ防止への取り組み
ー次に、採用活動について伺います。近年、採用広報に非常に力を入れていらっしゃるとのことですが、どのような背景があるのでしょうか。
人事担当者: 公務員全体に言えることですが、京都市でも大卒程度の上級試験、高卒程度の中級試験、民間経験者等の経験者試験とも受験者が減ってきています。そうした背景から受験者を増やす目的と、また採用後のミスマッチを減らすために採用広報活動に力を入れています。上下水道局では技術職が7割になりますので、特に技術職向けの情報発信を強化し、水道事業・下水道事業に興味を持ってもらえればと思っています。
最近は、民間企業等からの転職者をターゲットとして、転職フェアに「京都市上下水道局」として市役所とは別で単独ブースを出展しています。また、上下水道局独自の採用ホームページも令和6年5月に立ち上げました。このような活動を通じ上下水道局に興味を持ち、実際に入庁してくれた方もいます。
ーインターンシップも実施されているそうですね。
人事担当者: 例年8月に、主に理系の大学生を対象とした5日間の技術職インターンシップを実施しています。浄水場や水環境保全センターといったインフラ施設の見学はもちろんですが、実際に職員が普段行っている業務の一部、例えば図面作成などを体験してもらいます。
現場で働く職員と直接話す機会も多く設けており、ライフラインを支える仕事のリアルなイメージを掴んでもらうことを目的としています。参加した学生からの評判も良く、実際に採用試験を受験してくれる方も増えています。インターンシップが好評な一方、現場見学会は、時期や広報の方法に見直しの余地があり、今後の課題として捉えています。
ー採用サイトを立ち上げられたとのことですが、これから上下水道局について知りたいという人は、まずどこから見ると良いでしょうか?
採用サイトはこちら:https://suido-recruitment.city.kyoto.lg.jp/
人事担当者: まずは「仕事を知る」コンテンツの中にある「職種紹介」のページを見ていただくのがおすすめです。上下水道局には事務職のほか、土木、電気、機械、化学、建築といった多様な技術職の職員が働いています。皆さんはご自身の専門分野の職種で受験されることになるので、まずは自分の職種が上下水道局でどのような仕事をしているのかを掴んでいただくのが良いと思います。
また実際に働いている職員へのインタビューもあります。仕事のやりがいはもちろん、ワークライフバランスなど、皆さんが気になるであろう「生の声」をできるだけ載せるようにしています。内定を受け取った方が「上下水道局ってどんなところだろう?」と思った時に、このサイトを見て少しでも疑問を解消できれば嬉しいです。

ー最後に、この記事を読んで京都市上下水道局に興味を持った方へ、メッセージをお願いします。
人事担当者:京都市上下水道局は、市民の皆さまのいのちと暮らしに直結する水道・下水道という重要なライフラインを守り、50年後、100年後の未来に繋いでいくという、非常に重要でやりがいのある役割を担っています。
公務員というと、定型的で変化の少ない仕事だと思われるかもしれません。しかし、私たちの職場は決してそうではありません。若手プロジェクトチームのように、新しいことにチャレンジできる環境がありますし、上司や先輩にも気軽に相談できる風通しの良い雰囲気も整っています。
歴史と伝統を大切にしながらも、常に新しい価値を創造していこうという気概に満ちた組織です。市民生活に貢献したいという強い使命感を持ち、変化を恐れずに新しいことにチャレンジできる方と一緒に働きたいと思っています。少しでも興味を持っていただけたら、是非私たちの採用ホームページを見てください。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)