民間の土木会社で10年近く経験を積んだ後、令和4年度に入庁した職員さんに道路管理課でのお仕事内容や行政で働くことのやりがい、民間との仕事のギャップについてお話を伺いました。
—はじめに、これまでの経歴を簡単にご紹介ください。
もともとは教育系の短大に通っていて、資格を活かすために卒業後は学童の指導員をしていました。その後生活環境の変化に伴い、夫と同じ土木業界で大阪市内の民間土木会社に就職しました。
会社では給水や下水の管理など上下水道に関する仕事を扱っていたのですが、私は監督員の補助として書類の作成や下請け会社との調整、工事の入札、現場補助などを行っていました。
—民間の会社から公務員に転職しようと思ったきっかけは?
これまで請負業者として土木に携わっていたのですが、もう少し市民の方と近い立場で自分が前職で培った知識や資格を活かしながら仕事をしたくなりました。
さらに、安定した仕事だと子育ても今以上に両立できるのではないかと思い、摂津市役所の採用試験を受けました。住まいが摂津市の近隣市ということも理由の一つです。
—決め手はあったのですか?
摂津市の教育制度に惹かれたという点も大きいです。たとえば塾を無料で開いていたり、希望者にはランドセルを無料でプレゼントしてくれたりとか。一人の親として良い街だと魅力を感じました。
また、大規模都市に比べてもまだまだ伸びしろがありますし、自分たちの手でより良くしていけるような内に秘めた魅力があるというところも、自分が公務員として携わる上でやりがいになるのではないかなと思いました。
—試験勉強はどのようにされましたか?
公務員試験用のテキストを買って半年地道に勉強しました。試験を受けようと思ったのも前々から考えていたことではなく突発的だったので、「受かればいいかな」くらいで(笑)。
—現在所属されている部署と仕事内容について教えてください。
入庁から現在まで建設部 道路管理課 管理係に土木技術職員として在籍しています。
仕事内容は、市民の方から寄せられた道路についての要望を聞いて現地確認をし、工事につなげていく業務です。
現地での対応は業者さんにお願いすることもあれば、自分の足で現場に向かうこともあります。すべての要望に応えられるわけではありませんが、基本的には道路の維持補修が主です。
その中で私の業務としては、舗装や床版の修繕工事を設計から担当しています。

—要望を受けてからだと、突発的な仕事が多いのでしょうか?
年間の工事計画があり、それとは別で上記のような問い合わせが入ってきます。たとえば事故で摂津市が管理する構造物が損傷してしまったとか、家の前の道路に穴が開いているなど、緊急性のある工事も対応します。
私もほぼ毎日現場に出ます。例えば今日は建築時の道路後退について、道路調査をするため現地へ行きました。
窓口や電話応対もあるので、課内の他の職員さんとお互いに調整しフォローしながら、突発的な業務は担当していきます。それらが落ち着いたタイミングで年間で決まっている業務を進めたり、現場に行くこともあります。

—市役所での仕事にはすぐ慣れましたか? これは大変だったという業務はありましたか?
最初は電話対応に苦戦しました。前職では職人さん同士のやりとりが多かったのですが、市役所だと市民の方とのやりとりがメインなので、言葉遣いに気をつけたり、確認しなければいけないことが多かったりなどが非常に苦戦しました。緊急性のあるもの以外でどの業務を優先すべきなのかが最初のうちは掴みきれなかったですね。
入庁から3年経った今では「こんな感じかな?」とだいぶ掴めるようになってきました。
—民間と行政での仕事の違いや入庁前後でのギャップはありましたか?
思いのほか市の土木職で対応している仕事の範囲が広いということにまずギャップがありました。ただ、そういった業務内容を知ることで「こんなことも市にお願いすることができるんや」と、市民として生活するうえでも非常に役立つ知識を得られています。
ほかにも入庁する前は市内の道路すべてを市が管理しているものという認識だったのですが、道路には市の管理する認定道路法定外道路なのか、個人管理の私道、大阪府の管理する府道があると業務を行う中で、初めて知る知識も多くありました。
—行政の土木職として働くうえで、やりがいや面白さを感じる部分はどういったところでしょう?
自分の手で設計したものが業者さんの手によって形になったときは達成感がありますね。前職では府や市が出した設計図に沿って仕事をしていたので、自分で設計することはなかったです。
たとえば経年劣化で傷んでいた道路が綺麗になるのを見るだけでも感動しますし、それによって市民の方に「綺麗にしてくれてありがとう」と声をかけてもらうこともあり、自分にとっても市にとっても良いことをしたなと嬉しくなります。
そこは行政で仕事をしていて一番に感じるやりがいです。

—民間と市役所で職場の雰囲気の違いなどは感じましたか?
意外と、課内でのコミュニケーションは民間で働いていた頃とあまり変わらないです。わからないことがあれば教えていただけますし、気を配っていただいており、働きやすさを感じます。
ただ、一緒に仕事をする機会のある部署以外の方とはあまりコミュニケーションを取る機会は今のところないですね。他の部署の方の話も今後聞いてみたいなと思っています。
—他の自治体を見ても女性の技術職はあまり多くないイメージがありますが、他にも女性の技術職は在籍していますか?
道路管理課は課長代理が女性です。私のこともすごく見てくれていて、相談に乗っていただくこともあるのですごく助かっています。
—市役所での働き方の部分はいかがですか?
仕事量は多いですが、お休みは取りやすいので仕事とプライベートのメリハリがつくようになりました。
土日に緊急で対応することがありますし、台風などの災害時に対応することもあるので結構忙しいとは思います。
もう少し自分で効率的に仕事をできるようになりたいのですが、現在入庁3年目なので今後の異動のことを考えると、また一から業務を覚える必要があるということに不安はあります。
ただ、市役所内でコミュニケーションを取っていくうちに知っている人もどんどん増えてきているので、そういった人間関係の部分ではプラスになっていると感じますし、自分でももっとできることがあるんじゃないかと模索中です。
—最後に、民間企業から市役所に転職して一番良かった点をお聞きできればと思います。
いろいろな視点で物事を見られるようになったことでしょうか。
これまで民間で働いていて、市民側の視点で市役所を見ていましたが、市役所で働くようになってから「市役所の人はこんなに大変なんや」とか「いつもこんな仕事もしてくれていたんだ」という気づきもありましたし、民間と行政それぞれの目線で考えられるようになりました。
—本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2024年12月取材)