山口県周防大島町役場で働く徳吉さんのインタビュー記事です。高校卒業後に入庁し、27年にわたり道路、下水道、そして漁港といった町の重要インフラを支え続けてきた徳吉さん。
ベテラン技術職として現場を仕切る一方で、「駅伝部」の初代キャプテンとして、趣味のランニングを通じて地域や若手職員との絆を深めています。島で働くことの魅力と、地図に残る仕事のやりがいについて、語っていただきました。
合併、災害、そしてインフラ整備。現場で培った「現場力」
ー自己紹介をお願いします。
徳吉:山口県の別自治体出身で、現在は周防大島町役場の施設整備課に所属しています。高校は土木科だったのですが、卒業後の平成9年に旧橘町(合併前の現・周防大島町の一部)に入庁しました。キャリアとしては今年で27年目になりますね。
ー入庁されてからの歩みを教えてください。
徳吉:最初は建設課に配属され、3年ほど道路関係の業務に携わりました。その後、下水道の建設工事に3年半ほど従事したタイミングで、大きな転機が訪れました。平成16年の市町村合併です。
ー合併時はかなりお忙しかったのではないですか?
徳吉:そうですね。ちょうど合併のタイミングで大きな台風が島を襲い、大規模な災害が発生したんです。本来の人事では支所勤務になる予定だったのですが、災害対応のために急遽、当時の水産課に兼務が決まりました。支所での仕事は実質2週間ほどで、すぐに漁港や海岸施設の災害復旧業務に駆り出される日々が始まりました。
ー災害復旧は、土木職にとって最も過酷で、かつ重要な局面ですね。
徳吉:防波堤が根こそぎ倒れたり、護岸が崩落したりと、目の前の景色が壊れていく様は衝撃的でした。しかし、それを一つひとつ直していくことが、住民の方々の生活を取り戻すことに直結している。その責任の重さを肌で感じた時期でもありました。その後は、下水道と漁港の部署を4年周期で行ったり来たりするようなキャリアを歩み、現在は漁港の担当になって6年目です。

公務員技師は「調整力」が命。漁師さんと共に歩むインフラづくり
ー現在担当されている漁港のお仕事について、詳しく教えてください。
徳吉:周防大島町には13の漁港があり、船を停めるスポットを含めると30箇所以上の施設があります。仕事のメインは、建設から50年以上が経過した古い施設の更新や、台風対策としての消波ブロックの設置、そして細かい補修工事です。
ー島の産業である漁業を支える、非常に重要な役割ですね。
徳吉:漁港の仕事が大変なのは、ただコンクリート構造物を作るだけではない点です。漁港の中で工事をするには、漁師さんに船を移動してもらったり、作業時間を調整したりと、地元の協力が不可欠です。漁協の方々や漁師さんとの人間関係をどう築くかが、工事の成否を分けると言っても過言ではありません。
ー現場でのコミュニケーションが鍵になるのですね。
徳吉:そうです。漁師さんは皆さん、海と共に生きるプロですから、厳しい意見をいただくこともあります。ですが、こちらの意図を誠実に伝え、相談を重ねることで「協力してやろう」と言っていただけるようになる。そんなやり取りの中にこそ、土木職の醍醐味があると感じています。
地図に残り、人々の足となる。一生の誇りとなった「日良居の桟橋」
ー特に印象に残っている仕事はありますか?
徳吉:若い頃に担当した、離島である「浮島(うかしま)」へ向かう渡船の浮桟橋新設工事ですね。事業費が1億円を超えるような大きな案件で、受注業者も大手ゼネコンでした。若かった私にとっては、毎日が勉強の連続でした。
完成した時、自分の携わったものが明確に形になり、そして地図に載ったのを見た時は震えるような感動がありました。何より、今でもその桟橋を多くの方々が利用している姿を見るたびに、「これは自分が作ったんだ」という誇りが込み上げてきます。工事に携わるいろんな立場の方が同じように「自分が作った」と思うのでしょうが、公務員技師としてもこれこそが働く最大の喜びだと思います。

「分からないことは分からないと言え」。次世代を育てる背中
ー現在は後輩の指導にも当たっているとお聞きしました。
徳吉:現在、私の班には5年目になる若手職員がいます。彼には、できるだけ自分からチャレンジしてもらうように意識しています。土木の仕事は、実際に自分で現場を見て、手を動かさないと絶対に覚えられないですから。
ー指導する上で大切にしていることは何ですか?
徳吉:私がよく言うのは、「分からないことは、正直に分からないと言おう」ということです。工事の現場では、業者さんから厳しい質問をされることもあります。そこで知ったかぶりをして中途半端な答えをしてしまうのが、一番良くない。曖昧な判断は、後々地元の方々への迷惑に繋がりますから。
でも、ミスをしてもいいんです。そのミスをどうカバーするかを考え、次に活かすことが成長に繋がります。バックアップは私がしますから、若いうちはどんどん難しい工事にも挑戦してほしい。今の後輩も、徐々に難しい現場を任せられるようになってきて、頼もしく感じています。
ー職場の雰囲気はいかがでしょうか?
徳吉:建設関係の部署は昔から「男社会で厳しい」というイメージがあるかもしれませんが、うちは非常に風通しが良いですよ。上下関係に縛られすぎず、若手でも「こっちのやり方がいいんじゃないですか?」と意見が言える雰囲気があります。現場での議論は、役職に関係なくフラットに行う。それが良いものを作るための近道だと思っています。
効率的に働き、島を駆ける。ワークライフバランスと「駅伝部」
ー働き方についてもお伺いします。
徳吉:基本的に、毎日定時で帰るようにしています。仕事にはスピードと正確さが求められますが、私は特に効率を重視しています。ダラダラと残るのではなく、集中して終わらせて、自分の時間を大切にする。それが長く働き続ける秘訣ではないでしょうか。
また、有給休暇は年間20日ありますが、できる限り全て消化することを目指して「休むことを頑張って」います。周りの職員も、趣味を大切にしている人が多いですね。
ー徳吉さんご自身の趣味についても教えてください。
徳吉:ランニングが趣味で、役場職員で作った「駅伝部」で活動しています。毎年開催される「大島一周駅伝」に出場するのがメインの目的ですが、この活動を通じて部署や年齢を超えた繋がりができています。

ー「駅伝部」での交流が、仕事に活きることもありますか?
徳吉:大いにありますね。庁舎が違うと普段なかなか話す機会がない若手職員とも、走ることを通じて仲良くなれます。また、他の地域のマラソン大会に出る時にも、駅伝部オリジナルTシャツを着て走るんです。これには周防大島町をアピールする意図もあり、「半分は仕事だ」という気持ちで島のPR活動も兼ねています(笑)。
ー最後に、これから自治体で働くことを考えている方へメッセージをお願いします。
徳吉:土木の経験がある方はもちろん、全く知識がない方でも「新しいことに挑戦してみたい」という気持ちがあれば大丈夫です。私たちの仕事は、前例踏襲のルーティンワークばかりではありません。老朽化したインフラをどう修復するか、制限がある中でどんな工夫ができるか。そこには常にクリエイティブな面白さがあります。ぜひ、この島で一緒に「地図に残る仕事」をしましょう!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年03月取材)



