医療ドラマへの「憧れ」から一念発起して看護専門学校の門を叩き、選んだのは地元・宇和島市の市立病院。
今、小西さんは3歳の子を持つ「パパ看護師」として、日勤も夜勤もこなしながら、まもなく第2子の誕生を迎えようとしています。 「2人目の育休は、1ヶ月以上しっかり取ろうと思っています」 そう語る小西さんに、周囲の先輩たちは「育休中、奥さんに家事なんかさせたらいかんで!」と釘を刺すくらいに理解のある環境とのこと。
フリーターから看護師へ。そして、一人の父親として。 キャリアも家庭も大切にできる。その背景には、充実した待遇という「安定」と、育児を「当たり前」のこととして支え合う、職場の温かな風土がありました。
- 仕事も育児も!パパ看護師としての働き方
- 意外と知らない?「夜勤」の過ごし方
- 男性看護師としての「働きやすさ」と「頼られどころ」
- 医療ドラマに憧れて。看護師となって感じた「やりがい」と「ギャップ」
- 充実の待遇とここで働く魅力
仕事も育児も!パパ看護師としての働き方
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
小西:市立宇和島病院で看護師をしている小西です。平成29年に入職し、現在は整形外科病棟で勤務をしています。
3歳の子が1人と、今、妻が2人目を妊娠中のため、まさに子育てと仕事を両立するために奮闘中です。実は妻も別の病院で看護師として働いているんです。
妻は時短勤務を取っていますが、私はフルタイムで日勤も夜勤もやっています。
ーお二人とも看護師さんなんですね。お互い勤務時間が不規則になりがちかと思いますが、1日の流れや、お子さんの送迎などはどうされているんですか?
小西:朝はだいたいみんなで7時くらいに起きて、8時頃に家を出ますね。日勤が一緒の平日は、妻が私を病院まで送ってくれて、その帰りに子どもを保育園に連れて行ってくれます。
私が休みの日や夜勤の日は、私が朝の送りや夕方のお迎えを担当しています。
ーお子さんが小さいと、急な発熱でお迎えが必要になることもありますよね。そういう時はどのように対応されているんですか?
小西:そうですね。朝から熱がある時は、妻が休んでくれることが多く、もし急なお迎えが必要になった時は、妻方のお母さんにお願いすることもあります。
幸い親戚が近くにいるということもあり、私自身が途中で抜けてお迎えに行くということは、今のところあまり経験がないのですが、職場としての理解はすごくあると思います。
うちの病棟には時短勤務のママさん看護師もいて、お子さんの熱で早退したり、急に休んだりすることももちろんあります。
そのため、仮に私が「どうしても今日は迎えに行かなきゃいけない」という時には、周りに仕事をお願いして、早めに帰らせてもらうなど、協力してもらえる体制はありますね。
意外と知らない?「夜勤」の過ごし方
ー看護師の仕事といえば「夜勤」があるかと思いますが、小西さんは月に何回くらい入られていますか?
小西:月に5回か6回くらいですね。週に1〜2回あるかないか、という感じです。
うちの病院は「二交代制」なので、夜勤は16時半から翌朝の9時までが勤務時間になります。準夜勤(夕方から深夜まで)は、一部の病棟で曜日によって入ることもありますが、基本的にはないと思います。
ー16時半から翌朝9時までとなると、勤務前の日中はどのように過ごしているのですか?
小西:子どもができるまでは、昼頃までは寝ていることが多かったんですけど、今はもう朝からバリバリ家事をやっています。と言ってもほとんど奥さんがやってくれてますが(笑)
朝9時頃に子どもを保育園に送ってから、洗濯して、お昼を食べて、1時間ほど寝る日もあります。
ーしっかり家事をこなされた上で夜勤に臨んでいるんですね。病院に着いてからは、どのような流れになるのでしょうか?
小西:まず申し送りが始まる前に、自分で必要となる情報収集を行います。電子カルテを開いて、夜間に対応が必要な点滴の種類や本数、患者さんが飲んでいる薬などを確認します。
それから点滴カートから必要な分を出して確認したり、お薬の準備をしたりと、一通りの準備と確認作業を終えてから、日勤の人から申し送りを受けますね。

ーなるほど、まずは自分で準備を整えているのですね。夜勤中、仮眠や休憩は取れるのでしょうか?
小西:そうですね。うちは夜勤の間に長めの休憩が1回あり、22時くらいから順番で休憩に入っているので、そこで仮眠を取るような形となります。
他にも休憩時間はあるため、食事は仮眠とは別にとっている人が多いかと思います。
ーまとまった休憩をとることができるのですね。仮眠室のような場所で休まれているのですか?
小西:病棟にカンファレンス室があって、そこに患者さんが使用する処置台と低反発マットレスを活用した簡易的なベッドのようなものが置いてあります。そこで枕やクッション、タオルケットを使用して寝る感じですね。

休憩に入る前に、残っているメンバーに「この患者さんは手術後なので」「この人はトイレ介助が必要です」といった引き継ぎをしてから入るので、休憩中に呼び出されるようなことは基本的には無く、休憩中はしっかり休むことができます。
ーでは、夜勤とはいえ、休憩中は仮眠することができるのですね。
小西:ずっと仮眠するかどうかは人によりますね(笑)
「朝の準備しとこうかな」とか「カルテにこれ入力し忘れてた」とか、休憩中に気になったことを確認していることもあります。小腹が空いたら夜食を食べてから寝たり、私だけかもしれませんが…。

ーちなみに、この二交代制という働き方自体は、小西さんには合っていますか?
小西:私は好きですね。以前経験した三交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)に比べると、体の負担は少ないと思っています。それに、この勤務リズムに慣れてくると休みがすごく長く感じますね。
夜勤明けは必ず休みになりますし、明けに合わせて希望を出せば連休も作りやすいです。「明け・休み・休み」といった調整をしてしまえば、旅行にも行けてしまうので、休みが不定期ながらもプライベートを充実させることが可能です。
男性看護師としての「働きやすさ」と「頼られどころ」
ー続いて、職場環境についてお伺いします。小西さんが働く整形外科病棟には、男性看護師さんは何名くらいいるのでしょうか?
小西:私を含めて5人くらいですね。病棟全体の看護師が23人くらいなので、割合としてはまあまあ多い方だと思っています。少なくとも、一昔前に比べたら男性看護師の数もだいぶ増えてきましたね。
私が入職した当時も、男性の先輩が3〜4人いたので、「女性の職場だ…」みたいな肩身の狭さを感じたことは特になかったです。
それに、男性だから、女性だからという雰囲気も全然ないので、風通しよく働くことができていると思っています。

ーそれは素敵な職場ですね。むしろ頼られる場面も多いのでしょうか?
小西:それはとても多いですね(笑)
うちは整形外科なので、「ちょっと大きい患者さんを持ち上げたい」とか「ベッドからベッドに移したい」とか、そういう時に「小西君!」ってよく呼ばれます。
あと、病棟には機械もとても多いので、「ちょっと機械見てみて」も多いですね。上手く電源が入らない場合や、機械の調子が悪い時とかに、周囲のベテラン看護師さんなどから「小西君ちょっと見てや〜」みたいに言われることはよくあります。

ー頼りにされていますね(笑)ちなみに、子育て世代の働き方としても教えていただきたいのですが、小西さんは育休も取得されたのですか?
小西:1人目の時に取得することはできたのですが、実は当時病棟が人手不足だったということもあり、短い期間の取得になってしまったんです。
ただ、4月に産まれる予定の第2子については、1ヶ月以上しっかり取ろうと思っています。
看護師というと、なかなかまとまった休みや育休がとれないというイメージもあるかもしれませんが、最近では働き方もだいぶ変わってきています。
周囲の先輩方も育児を経験しているということもあり育休の相談をしても「休みとりさいや~!」と促してくれるような雰囲気ですね。それどころか、「育休期間中、奥さんに家事なんかさせたらいかんで!」って釘を刺されています(笑)
ー職場全体として、育児への理解はあると感じますか?
小西:それはすごく感じます。やはり、育児を経験されてきた先輩方がたくさんいるので、子どものことで休んだり、育休を取ったりすることに対しても、「取れるんやったらちゃんと取りさいや」って感じで、後押ししてくれるような職場だと思います。
医療ドラマに憧れて。看護師となって感じた「やりがい」と「ギャップ」
ー続いてキャリアについてお伺いします。宇和島は元々地元だったのでしょうか?
小西:出身は宇和島市なのですが、親の転勤の関係で小学校から高校までを千葉県で過ごしていました。その後、親が宇和島市に戻るタイミングで、私も再び宇和島市に来ました。
当時はやりたいことも決まっていなかったため、2年ほど飲食店でフリーターとして働いていました。
ーそこから看護師を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?
小西:もともと医療系にはすごく興味があって、医療系の漫画とかドラマを見て「すごいな、楽しそうだな」って憧れがあったんです。
将来、病院で働いてみたいという希望もあったのですが、高校時代は、周囲がみんな大学進学をする友達ばかりだったということもあり、医療に直結するような専門学校に行く、みたいなことは、あまり具体的に考えていませんでした。
そのまま宇和島市に戻ることとなり、2年間はフリーターとして過ごしていたのですが、実家から通える距離に看護専門学校があったということもあり、改めて「看護師になりたい」と思うようになりました。
ー市立宇和島病院で働くことを決めたのは、やはり「地元」だからですか?
小西:もちろん地元であることも大きな理由だったのですが、私は専門学校時代、宇和島市病院局の「奨学金制度」を使わせてもらっていたんです。卒業後、宇和島市病院局(市立宇和島病院等)で一定期間働けば返済が免除されるという制度だったので、それも市立宇和島病院で働くことを決めた大きな要因でした。
また、看護師として働くのなら、しっかりした総合病院で経験を積みたいという想いも持っていたため、他の病院は受験することなく、市立宇和島病院1本に決めていました。
ー医療ドラマに憧れていたということでしたが、実際に看護師になってみて、イメージとのギャップはありましたか?
小西:一番のギャップは、「こんなに医師に提案できるんだ!」ってことですね。
医師の言うことは絶対で、看護師は言われた処置をこなしていく、というイメージを持っていたのですが、実際に働いてみるとそんなことはなく、看護師として治療方針を決めるためのお手伝いができるんです。
医師も患者さん一人一人を全て把握しているわけではないので、いつも近くで見ている私達看護師の意見を尊重してくれることもたくさんあります。
「この件はこうした方がいいんじゃないですか?」とか「この患者さん、〇〇を希望していますよ」とか、患者さんの声を一番届けられる、とてもいい職業だなと改めて思いましたね。

ーチーム医療の一員として、重要な役割なんですね。小西さんが、働いていて「やりがい」を感じるのはどのようなな瞬間ですか?
小西:やっぱり、患者さんが良くなっていく姿を近くで見られる時ですね。
うちの病院は急性期病院(※救急や手術直後の患者さんを主に受け入れる病院)なので、怪我や病気で運ばれてきて、手術や集中治療を受けて、ある程度回復したらリハビリ病院に転院される方が多いのですが、そういう患者さんがリハビリを終えた後、定期受診の日に、わざわざ病棟まで上がってきて「こんなに良くなったよ!」って握手を求めてくれたりすることがあるんです。
入院されていた顔なじみの患者さんから「久しぶり!」「あんたがおったら安心するわ」なんて声をかけてもらえると、やっぱり嬉しいですよね。
充実の待遇とここで働く魅力
ー宇和島市にUターンされて、改めて感じる「宇和島市の良さ」はありますか?
小西:まず何といっても「人がいい」ですよね、宇和島市の人って。
また、これは子育て世代には重要なポイントになると思いますが、思っている以上に保育園が充実していました。都会みたいに「全然入れない」ってことはなく、我が家も希望していた保育園にすぐ入れたので、育児と仕事を両立する上ではとても助かっています。

ー保育園が充実しているのは安心ですね。市立宇和島病院で働く魅力についてはいかがでしょう?
小西:ちょっと失礼な言い方になるかもしれませんが、宇和島市という「地方」であるにも関わらず、とてもしっかりした病院で、近隣を含めた地域の基幹を担う病院であることだと思います。
医療レベルも愛媛県内ですごく高い方だと感じていますし、そこで働くことで新しい知識が入ったり、いろんなことを学ばせてもらったり、いい経験を沢山積むことができる場所ですね。
ーでは、働く上で重要な「待遇面」については、率直にいかがですか?
小西:待遇はすごくいいと思います。夜勤手当やその他の手当も実績に応じてしっかりと出ていますし、若いからといって申請がしにくいなんてこともありません。
他で勤めてる友達と話していると「就職してすぐは、残業代を自分からは申請しにくかった」とか「1年目はボーナスがなかった」といったことを聞くこともありますが、うちは実績通りきちんと手当をもらうことができますし、ボーナスも初年度から出ます。
待遇に関して不満を感じたことは、今のところないですね。
ーでは最後に、この記事を読んでいる未来の仲間に向けて、メッセージをお願いします。
小西:公立病院で働くことの最大の魅力は、生活の安定に繋がることです。この安定こそが、看護師として長く、そしてやりがいを持って働くための重要な土台になると思っています。
そして、キャリアの第一歩を踏み出すなら、まずは総合病院で経験を積むことをお勧めします。ここでは多種多様な病気や怪我、手術の症例を幅広く経験でき、それが必ず質の高い看護スキルと知識を身につけた良い看護師になるための糧となります。
また、市立宇和島病院は子育て中の職員への理解が非常に深い病院だと思っています。例えば、時短勤務制度を利用して働いている人も多いですし、男性職員でも育児と両立している例も多くあり、子育ての状況に合わせて外来勤務を希望することも可能です。
この記事を読んで、看護師として、そして市立宇和島病院で働く魅力が少しでも伝われば嬉しいですね。

ー本日はありがとうございました。
取材中、「育休中は、奥さんに家事なんかさせたらいかんで!」と先輩から釘を刺されているんです、と笑顔で話してくれた小西さん。その一言に、市立宇和島病院のあたたかな風土が凝縮されているように感じました。
看護師という専門職であると同時に、一人の「パパ」でもある。その当たり前の日常を、職場全体で「当たり前」のこととして支えようとする。そんな温かい眼差しがあるからこそ、小西さんは今日も安心して患者さんと向き合い、そして家族との時間を大切にできるのでしょう。 キャリアも、暮らしも、どちらも諦めない。そんな働き方が、この場所には確かにありました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年10月取材)



